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(平14.5.21裁決、裁決事例集No.63 645頁)

《裁決書(抄)》

1 事実

(1)事案の概要

 本件は、無認可の保育施設を営む審査請求人(以下「請求人」という。)が保育施設を営む事業として行った資産の譲渡等について、消費税が非課税の対象となる資産の譲渡等に該当するか否かを争点とする事案である。

(2)審査請求に至る経緯

イ 請求人は、平成10年1月1日から同年12月31日まで及び平成11年1月1日から同年12月31日までの各課税期間(以下、順次「平成10年課税期間」及び「平成11年課税期間」といい、これらを併せて「本件各課税期間」という。)の消費税及び地方消費税(以下「消費税等」という。)について確定申告書を提出しなかったところ、原処分庁は平成13年2月6日付で別表の「決定処分等」欄のとおり各決定処分(以下「本件決定処分」という。)及び無申告加算税の各賦課決定処分をした。
ロ 請求人は、これらの処分を不服として、平成13年3月7日に異議申立てをしたところ、異議審理庁は、同年6月1日付で別表の「異議決定」欄のとおり、平成10年課税期間についてはいずれも原処分の一部を取り消す異議決定をし、平成11年課税期間については決定処分の一部を取り消し、また、賦課決定処分については棄却の異議決定をした。
ハ 請求人は、異議決定を経た後の原処分に不服があるとして、平成13年6月29日に審査請求をした。

(3)基礎事実

 請求人が営む保育施設は、児童福祉法第35条第4項の都道府県知事の認可を得て設置された保育施設(以下、「認可保育所」といい、また、当該認可を得ていない保育施設を「無認可保育所」という。)ではなく、平成13年12月4日現在も知事の認可を得ていないことについては、請求人及び原処分庁の双方に争いがなく、当審判所の調査によってもその事実が認められる。

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2 主張

(1)請求人の主張

 原処分は、次の理由により違法であるから、その全部を取り消すべきである。
イ 無認可保育所の事業は、消費税法(平成9年法律第124号による改正前のもの。以下同じ。)別表第1第7号イに規定する「社会福祉事業法第2条《定義》に規定する社会福祉事業」には該当しないものの、児童福祉法第7条に規定する児童福祉施設には該当することから、無認可保育所が行う資産の譲渡等は、児童福祉法第7条に規定する児童福祉施設が行う資産の譲渡等に当たり、消費税法施行令(平成11年施行令第262号による改正前のもの。以下同じ。)第14条の2《社会福祉事業として行われる資産の譲渡等に類するものの範囲》第1号に規定する資産の譲渡等に該当する。
ロ 児童福祉法第35条では、児童福祉施設は都道府県知事の認可を得て設置することができる旨規定しているが、それはあくまでも「設置」に関して「できる」と規定しているだけであり、無認可保育所も現実に施設を設置していれば、同法第59条に基づく調査や命令等を受けることになるから、認可保育所と同様に児童福祉法の管轄下にあり、同法第7条に規定する児童福祉施設に該当することから、無認可保育所の行う事業も社会福祉事業に該当する。
ハ 以上のことから、請求人が経営する保育施設に関し、当該保育施設を経営する事業として行われた資産の譲渡等は、消費税法別表第1第7号ロに規定する「社会福祉事業として行われる資産の譲渡等に類するもの」に当たり、消費税法第6条《非課税》の非課税規定の適用がある。

(2)原処分庁の主張

 原処分は、次の理由により適法である。
イ 保育施設の事業から生ずる資産の譲渡等が非課税とされるためには、当該保育施設が社会福祉事業法第2条に規定する社会福祉事業に該当することが必要である。
ロ 児童福祉法にいう保育所とは、同法第35条第4項の規定に基づき設置された保育施設であるところ、無認可保育所は、同法第35条第4項の規定に基づき設置された保育施設ではなく、児童福祉法にいう保育所には該当しないことから、無認可保育所の行う事業は社会福祉事業法第2条に規定する社会福祉事業には該当しない。
ハ 請求人が経営する保育施設は、児童福祉法に基づいて設置されたものではないから、当該保育施設を経営する事業として行われる資産の譲渡等については、消費税法第6条の適用はなく、課税される。
ニ なお、請求人が経営する保育施設は児童福祉法にいう保育所には当たらないから、当該保育施設が行う資産の譲渡等は消費税法施行令第14条の2第1号にも該当せず、消費税法別表第1第7号ロにも該当しない。よって、消費税法第6条の適用はない。

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3 判断

(1)本件決定処分について

 本件審査請求の争点は、無認可保育所を経営する事業として行われた資産の譲渡等について、消費税等が非課税か否かにあるので、以下審理する。
イ 消費税法等の規定
(イ)消費税法第6条第1項は、「国内において行われる資産の譲渡等のうち、別表第1に掲げるものには、消費税を課さない。」と規定している。
(ロ)それを受け、消費税法別表第1では、第7号イにおいて、要旨、「社会福祉法第2条(定義)に規定する社会福祉事業として行われる資産の譲渡等」と規定しており、また、第7号ロにおいて、「イに掲げる資産の譲渡等に類するものとして政令で定めるもの」と規定している。
(ハ)消費税法施行令第14条の2においては、「消費税法別表第1第7号ロに規定する政令で定めるものは、次に掲げるものとする。」として、第1号において「児童福祉法第7条(児童福祉施設)に規定する児童福祉施設を経営する事業として行われる資産の譲渡等(消費税法別表第1第7号イに掲げるものを除く。)」と規定している。
(ニ)地方税法附則第9条の4《譲渡割の賦課徴収の特例等》第1項において、「譲渡割(地方消費税)の賦課徴収は、当分の間、国が消費税の賦課徴収の例により、消費税の賦課徴収と併せて行うものとする。」旨規定している。
ロ 社会福祉事業法等の規定
(イ)社会福祉事業法第2条では、第1項において、「この法律において社会福祉事業とは、第1種社会福祉事業及び第2種社会福祉事業をいう。」と規定し、第3項において、「児童福祉法にいう保育所を経営する事業を第2種社会福祉事業とする。」旨規定している。
 また、第4項において、「児童福祉法にいう保育所等を経営する事業であっても、常時保護を受ける者が、収容保護を行うものにあっては5人、その他のものにあっては20人に満たないものは、社会福祉事業法における「社会福祉事業」には含まれない。」旨規定している。
(ロ)児童福祉法では、第7条において、「児童福祉施設とは、助産施設、乳児院、保育所等とする。」旨規定しており、また、第35条第4項において、「国、都道府県及び市町村以外の者は、命令の定めるところにより、都道府県知事の認可を得て、児童福祉施設を設置することができる。」と規定し、第39条において、「保育所は、日々保護者の委託を受けて、保育に欠けるその乳幼児又は幼児を保育することを目的とする施設とする。」と規定している。
(ハ)なお、児童福祉法第59条においては、無認可保育所に対し、「都道府県知事は児童の福祉のため必要があると認めるときは、その施設の設置者若しくは管理者に対し、必要と認める事項の報告を求め、又は当該職員をして、その施設に立ち入り、その施設の設備若しくは運営について必要な調査若しくは質問をさせることができる。」旨規定している。
ハ 上記イ、ロの規定を本件に当てはめて審理する。
(イ)児童福祉法にいう保育所は、社会福祉事業法第2条第3項及び第4項の規定により、同法に規定する社会福祉事業に該当するものと該当しないものとに区分される。
(ロ)児童福祉法にいう保育所で、社会福祉事業に該当するものが社会福祉事業として行う資産の譲渡等は、消費税法別表第1第7号イの規定により、同法第6条の非課税の適用を受けることができる。
(ハ)また、児童福祉法にいう保育所で、社会福祉事業に該当しないものが児童福祉施設を経営する事業として行う資産の譲渡等は、消費税法施行令第14条の2の規定から、消費税法別表第1第7号ロに規定する「社会福祉事業として行われる資産の譲渡等に類するもの」に該当し、同法第6条の非課税の適用を受けることができる。
(ニ)つまり、児童福祉法にいう保育所であれば、社会福祉事業法にいう社会福祉事業に該当する場合も、該当しない場合も、いずれの場合もその施設を営む事業として行われた資産の譲渡等は、消費税法第6条の適用を受け非課税となる。
(ホ)そうすると、請求人が営む保育施設である無認可保育所が児童福祉法にいう保育所に当たるか否かが問題となるところであるが、当該施設が無認可保育所であることについては請求人、原処分庁の双方に争いのないところ、請求人は、児童福祉法第35条の規定はあくまでも施設の「設置」に関して「できる」と規定しているだけであること、現実に施設を設置していれば同法第59条による調査、命令等に関する適用を受けるから児童福祉法の管轄下にあることを理由に、無認可保育所であっても児童福祉法にいう保育所に当たる旨主張する。
(ヘ)しかし、児童福祉法では、「日々保護者の委託を受けて、保育に欠けるその乳幼児又は幼児を保育することを目的とする」保育所は、国、都道府県及び市町村以外の者については、知事の認可を得て設置することができる旨規定しており、また、無認可保育所については、同法第59においても「保育所と目的を同じくする施設」という表現をし、「保育所」とはしていないことから、児童福祉法にいう保育所には無認可保育所は含まれないと解するのが相当である。
 したがって、児童福祉法は施設の設置に関し「できる」と規定しているだけで、無認可保育所も同法による調査、命令等を受けることから児童福祉法の管轄下にあり、児童福祉法にいう保育所に当たるとする請求人の主張は請求人独自の見解というべきものであり、請求人の主張には理由がなく、採用することはできない。
ニ 上記ハのとおり、請求人の主張には理由がなく、また、本件各課税期間に係る基準期間における課税売上高は、当審判所の調査によれば3,000万円を超えており、消費税法第9条《小規模事業者に係る納税義務の免除》の規定も適用がないことから、無認可保育所を経営する事業として行われた資産の譲渡等は非課税ではないとして、消費税法及び地方税法附則第9条の4第1項に基づいて行われた本件決定処分は適法である。

(2)無申告加算税の賦課決定処分について

 上記(1)のとおり、本件決定処分は適法であり、期限内に申告書が提出されなかったことについて、国税通則法第66条《無申告加算税》第1項ただし書に規定する正当な理由がある場合に該当しないので、同法第66条第1項及び地方税法附則第9条の9《譲渡割に係る延滞税等の計算の特例》第1項の規定に基づいてされた無申告加算税の賦課決定処分は適法である。
(3)原処分のその他の部分については、請求人は争わず、当審判所に提出された証拠資料等によっても、これを不相当とする理由は認められない。

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