別紙

当事者の主張
争点1 相続税法第40条第2項に規定する延納税額の滞納の事実があるか否か。
原処分庁 請求人
 別表2の番号1記載の税額(以下「第13回利子税の額」という。)は、本件延納許可取消処分の日現在納付されておらず、相続税法第40条第2項に規定する滞納に該当する。  第13回利子税の額の滞納は、以下の理由から、相続税法第40条第2項に規定する滞納に該当しない。
(1) 第13回利子税の額について
第13回利子税の額が滞納であるか否かと請求人の所得金額の多寡は、関係がない。
(1) 第13回利子税の額について
請求人の第13回利子税の額は、わずかに○○○○円であり、請求人の所得金額と比較しても滞納とはいえない。
(2) 担保不動産の任意売却について
延納の許可をする場合には、その延納税額に相当する担保を徴さなければならない。仮に、延納税額に相当する以上の評価額の担保を徴している場合、その超過する評価額に相当する部分の担保につき解除を行うことは可能であるが、担保の評価額が必要担保額に不足する場合は、担保を解除する理由がない。
 原処分庁が、平成16年2月2日及び同年3月23日の事前相談時において、担保解除に応じなかった理由は、当時の担保の評価額が必要担保額に不足していたためである。
 すなわち、平成16年2月2日及び同年3月23日の時点において、必要担保額○○○○円に対し、担保の評価額は、平成15年の路線価で評価した○○○○円であり、平成16年8月9日の時点においては、必要担保額 ○○○○円に対し、担保の評価額は、平成16年の路線価で評価した○○○○円であった。ただし、土地の形状等から判断すると、担保の実際の評価額は相当下がると思われた。
(2) 担保不動産の任意売却について
請求人は、平成16年2月2日及び同年3月23日の面談の際に、担保不動産の売却を申し出たが、原処分庁はこの申出に応じなかった。税務署長が複数の不動産を延納許可の担保としている場合、当該不動産全体で評価割れしているとの理由だけで、一部の不動産の任意売却を認めず、別途の金銭を用立てして納税を求めることは、法的根拠がない。
 このように、原処分庁が請求人の上記申出を拒否したため、第13回利子税の額が滞納になったのであるから、当該滞納につき請求人の責めに帰すべき事由は存在しない。

争点2 本件における弁明手続は適法にされたか否か。
原処分庁 請求人
 原処分庁は、請求人の第13回利子税の額が滞納となったことから、請求人の弁明を聴くために、「相続税延納取消しに対する弁明を求めるためのお知らせ」と題する書面(以下「本件通知書」という。)を平成16年6月8日付で請求人の自宅あてに郵送したが、受取人不在による保管期間満了を理由に返送された。そこで、原処分庁は、平成16年6月23日及び同年8月18日に請求人の自宅において、通則法第12条第5項第2号に規定する本件通知書の差置送達をした。しかしながら、請求人は弁明の期限までに、弁明をしなかった。
 以上のとおり、原処分庁は、適法に弁明手続をしている。
 請求人は、本件通知書を受け取っていない。仮に、これが自宅の郵便受けに差し置かれていたとしても、請求人は送達場所に継続して居住しており、かつ書類の受領を拒んだ事実はないから、通則法第12条第5項第2号所定の要件を満たしておらず、送達の効力が生じていない。
 このように、請求人には、相続税法第40条第2項に規定する弁明の機会が付与されていないから、弁明手続は違法である。

争点3 原処分庁が行った延納許可の取消しの判断に違法はあるか否か。
原処分庁 請求人
(1) 原処分庁は、第13回利子税の額○○○○円が分納期限までに納付されず滞納となったことから、相続税法第40条第2項に規定する弁明の聴取を行うために、請求人に対し、平成16年6月23日及び同年8月18日に本件通知書を送達した。しかしながら、請求人は、弁明の期限までに、弁明をしなかった。
 そこで、原処分庁は、滞納が早期に解消される見込みがなく、次回以降の分納税額についても延納条件に従って納付される見込みはないと判断したのであり、その判断に違法はない。
(2) 原処分庁の担当職員(以下「徴収担当職員」という。)は、事前相談時の平成16年3月23日に請求人の代理人であるG弁護士及びF税理士に対し、請求人については延納分に滞納がなく担保変更により一時的に延納取消しを免れることができるが、相続税には連帯納付責任があり、他の相続人の滞納も相続によって受けた利益の範囲内で納付する義務があるため、他の相続人の滞納を納付しなければ、請求人も延納取消しになる可能性が高い旨説明しており、延納許可を取り消すことが権利の濫用であるとはいえない。
 請求人の第13回利子税の額は、わずかに○○○○円であり、毎年数千万円ある請求人の所得金額に比較して滞納額が少額であるから、その滞納のみを理由として延納許可を取り消すことは、権利の濫用であり、違法である。

争点4 本件延納許可の取消処分は信義則違反となるか否か。
原処分庁 請求人
 原処分庁が信義誠実の原則に反するような行為を行った事実はない。  仮に、第13回利子税の額の滞納が、相続税法第40条第2項に規定する滞納に該当する(争点1)としても、当該滞納は、○○○○円と少額であり、これを原因として延納許可を取り消すことは、原処分庁と請求人とが協議により分割支払額等を決定し、納付してきたというこれまでの経緯に照らせば、信義に反し、違法なものと評価せざるをえない。
 原処分庁がこれを覆し、延納許可を取り消すことは、信義誠実の原則に反するというべきである。

トップに戻る