別紙2

争点及び主張
争点 本件基準期間における課税売上高が1,000万円以下であるか否か。
請求人 原処分庁
 請求人とE社との間には、上記1(事実)の(4)のイの(イ)及び(ハ)のとおり、本件部品の納品も請求人の出荷要請により双方が合意して行われているから、本件基準期間において、E社が本件部品を請求人の規格に合わせて製作し供給する製造物供給契約(以下「本件売買契約」という。)が成立している。請求人は、次に述べるとおり、本件売買契約の成立により取得したE社に対する本件部品の引渡請求権(以下「本件部品引渡請求権」という。)をE社に対する代金支払債務23,316,000円(税抜き)の債務引受と見合いで、F社に対し債権譲渡により譲渡しており、このうち16,284,000円(税抜き)については、本件部品の引渡しが完了し、これにより本件部品引渡請求権は実現している。  請求人は、次に述べるとおり、本件基準期間において、本件部品の課税売上を行った事実は認められない。また、請求人の主張する本件部品引渡請求権の譲渡については、F社との間で当該「権利」を「資産」と認識して「債務引受額」を「対価」とする合意がなされていることが必須の要件であるところ、下記2のとおり、同社が合意したとする事実はなく、更に、実際にも当該「権利」そのものとしての対価の授受がない。
 そして、本件部品引渡請求権は、消費税法でいう「資産の譲渡」の「資産」に当たり、同請求権の譲渡はその「譲渡」に当たり、非課税の「資産の譲渡」には該当しないから、本件基準期間における課税売上高は1,000万円を超えている。
 なお、資産の「譲渡」の有無は、私法に基づき法律的に判断しなければならないところ、これを「仕入」「売上」により事実認定した原処分は、法の論理を無視した違法な処分であり、消費税法上も根拠がない。
 したがって、請求人の主張は消費税法第4条第1項に規定する消費税等の課税対象となる要件のうち、「資産」及び「対価」の2要件を欠くこととなるから、消費税法上の「資産の譲渡」には該当しないため、本件基準期間における課税売上高は1,000万円以下である。
1 本件部品引渡請求権の取得について
請求人は、上記1(事実)の(4)のイの(イ)及び(ハ)のとおり、本件基準期間において本件部品をE社に発注し、これにより成立した本件売買契約により、同社に対して代金支払債務を負うと同時に本件部品引渡請求権を取得している。
1 本件部品引渡請求権の取得について
本件引受書によって、請求人の主張する本件部品引渡請求権者は請求人からF社に変更されている。これによりF社はE社から本件部品を仕入れている。このことは、上記1(事実)の(4)のロの(ロ)及び(ハ)からも明らかである。
 したがって、本件基準期間において、請求人が主張する、請求人自身が本件部品を取得したという事実は認められない。
2 本件部品引渡請求権の譲渡について
(1) 本件引受書について
イ 本件引受書には、上記1(事実)の(4)のイの(ロ)のとおり、本件部品権利義務を引き受ける旨記載されているから、債権譲渡、債務引受を内容とする請求人とF社との合意契約書であり、F社が、請求人のE社に対する本件部品に係る代金支払債務を引き受けることを見合いに、請求人のE社に対する本件部品引渡請求権を譲り受けることを約したものである。
 そして、F社は、これにより取得したE社に対する本件部品引渡請求権に基づきE社から本件部品を取得するとともに、この債務引受に基づきE社に対し代金の支払いを行っている。
2 本件部品引渡請求権の譲渡について
(1) 本件引受書について
イ 本件引受書は、上記1及び上記(事実)1の(4)のイの(ロ)のとおり、請求人の主張するF社との間で本件部品引渡請求権や本件部品そのものを譲渡することを取り決めたものでなく、本件部品の取得に係る権利及び代金決済等の義務を請求人からF社に引き継いだことを明らかにしたものにすぎない。
 そして、この引継ぎにより、F社はE社から本件部品を取得し、同社に本件部品の代金の支払いを行っている。
ロ なお、E社のJ支社長代理は、異議申立てに係る調査の担当職員(以下「異議調査担当職員」という。)に対し、本件引受書は請求人とF社との取決め事項である旨申述し、また、F社のK部長は、異議調査担当職員に対し、本件引受書は請求人との間で何度もやりとりして作成したもので、F社が本件部品を請求人から仕入れるという約束ではなく、その債務を請求人から引き受け、E社から仕入れるという主旨で作成した旨申述しており、これらの申述は、上記1(事実)の(4)のイの(ロ)が確定的合意であることを裏付けるとともに上記1(事実)の(4)のイの(ハ)並びにロの(ロ)及び(ハ)の各事実も上記イを裏付けるものである。 ロ F社のK部長は、原処分に係る調査の担当職員及び異議調査担当職員に対し、請求人が取得できない事情が生じたので、請求人から引き継いでE社から本件部品そのものを仕入れた旨申述しており、請求人が主張するような本件部品引渡請求権の譲渡を受けたとか、その対価が債務の引受けを見合いとしたものであるとの認識は元よりない。F社の支払業者台帳及びE社の売掛残明細表も上記1(事実)の(4)のロの(ロ)及び(ハ)に示すとおり、上記イを裏付けるものである。
(2) 譲渡の対価性について
 消費税法上、経済的利益は「対価」に当たり、請求人は、F社の債務引受によりE社に対する本件部品に係る代金支払債務が消滅するという経済的利益を得ているから、本件部品引渡請求権に係る債権譲渡は、対価性がある。そして、本件部品のうち16,284,000円(税抜き)に相当する部品は、本件基準期間において、引渡しが完了し、権利が実現しているから、同期間における課税資産の譲渡等に該当する。
(2) 譲渡の対価性について
 上記(1)のとおり、請求人は、本件部品及び請求人の主張する本件部品引渡請求権をF社に譲渡したものではない。仮に請求人の主張に立ったとしても、上記(1)のとおり、当事者間で本件部品引渡請求権を「資産」と合意した事実はなく、また、その権利譲渡は請求人とF社との間で実際にも当該「権利」そのものとしての対価の授受がない無償の譲渡であるから、課税資産の譲渡等には該当しない。

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