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(平19.2.14、裁決事例集No.73 536頁)

《裁決書(抄)》

1 事実

(1) 事案の概要

 本件は、審査請求人(以下「請求人」という。)が取得した信託受益権の信託財産である不動産物件に関して発生した付随費用(以下「本件付随費用」という。)に係る課税仕入れについて、原処分庁が、消費税法第30条《仕入れに係る消費税額の控除》第2項に規定する課税仕入れの税額の計算を行うに当たっての同項第1号に規定する方法(以下「個別対応方式」という。)の適用上、本件付随費用のすべてを「課税資産の譲渡等とその他の資産の譲渡等に共通して要するもの」に区分すべきであるとして行った消費税及び地方消費税(以下「消費税等」という。)の更正処分等に対し、請求人が、本件付随費用の一部は「課税資産の譲渡等にのみ要するもの」に区分すべきであるとして、同処分等の全部の取消しを求めた事案である。

(2) 審査請求に至る経緯

イ 請求人は、平成15年4月1日から平成16年3月31日までの課税期間(以下「本件課税期間」という。)の消費税等について、確定申告書に別表1の「確定申告」欄のとおり記載して、法定申告期限までに申告した。
ロ 原処分庁は、平成17年6月29日付で、別表1の「更正処分等」欄のとおりの更正処分(以下「当初更正処分」という。)及び過少申告加算税の賦課決定処分をした。
ハ 請求人は、これらの処分を不服として、平成17年7月26日に異議申立てをしたところ、異議審理庁は、同年10月26日付で、別表1の「異議決定」欄のとおり原処分の一部を取り消す異議決定(以下「本件異議決定」という。)をした。
ニ 請求人は、本件異議決定を経た後の更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分(以下、それぞれ「本件更正処分」及び「本件賦課決定処分」という。)に不服があるとして、平成17年11月24日に審査請求をした。

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(3) 関係法令等

イ 消費税法第14条《信託財産に係る資産の譲渡等の帰属》第1項は、信託財産に属する資産に係る資産の譲渡等については、受益者が特定している場合には、その受益者がその信託財産を有するものとみなして、同法の規定を適用する旨規定している。
ロ 消費税法第30条第1項は、事業者が、国内において行う課税仕入れについては、国内において課税仕入れを行った場合に当該課税仕入れを行った日の属する課税期間の課税標準額に対する消費税額から、当該課税期間中に国内において行った課税仕入れに係る消費税額を控除する旨規定している。
ハ 消費税法第30条第2項は、同条第1項の場合において、当該課税期間における課税売上割合(国内において行った資産の譲渡等の対価の額の合計額のうちに国内において行った課税資産の譲渡等の対価の額の合計額の占める割合をいう。以下同じ。)が100分の95に満たないときは、同条第1項により控除する課税仕入れに係る消費税額(以下「課税仕入れの税額」という。)は、同条第1項にかかわらず、同条第2項各号に定める方法により計算した金額とする旨規定している。
 そして、消費税法第30条第2項第1号は、当該課税期間中に国内において行った課税仕入れにつき、1課税資産の譲渡等にのみ要するもの(以下「課税対応」という。)、2課税資産の譲渡等以外の資産の譲渡等(以下「その他の資産の譲渡等」という。)にのみ要するもの(以下「その他対応」という。)及び3課税資産の譲渡等とその他の資産の譲渡等に共通して要するもの(以下「共通対応」という。)にその区分が明らかにされている場合には、課税仕入れの税額は、課税対応の税額に、共通対応の税額に課税売上割合を乗じて計算した金額を加算する方法による旨規定している。
ニ 消費税法第2条《定義》第1項第9号は、課税資産の譲渡等とは、資産の譲渡等のうち、同法第6条《非課税》第1項の規定により消費税を課さないこととされるもの以外のものをいう旨規定している。
 そして、消費税法第6条第1項は、国内において行われる資産の譲渡等のうち、同法別表第一に掲げるものには、消費税を課さない旨規定し、同表第1号は土地の譲渡及び貸付けを、同第13号は住宅(人の居住の用に供する家屋又は家屋のうち人の居住の用に供する部分をいう。)の貸付けを掲げている。
ホ 消費税法第2条第1項第12号は、課税仕入れとは、事業者が、事業として他の者から資産を譲り受け、若しくは借り受け、又は役務の提供を受けること(当該他の者が事業として当該資産を譲り渡し、若しくは貸し付け、又は当該役務の提供をしたとした場合に課税資産の譲渡等に該当することとなるものに限る。)をいう旨規定している。
ヘ 消費税法基本通達11−2−18《個別対応方式の適用方法》は、個別対応方式により仕入れに係る消費税額を計算する場合には、その課税期間中において行った個々の課税仕入れについて、必ず、課税対応、その他対応及び共通対応とに区分しなければならない旨定めている。
ト 消費税法基本通達11−2−19《共通用の課税仕入れ等を合理的な基準により区分した場合》は、共通対応に該当する課税仕入れであっても、例えば、原材料、包装材料、倉庫料、電力料等のように生産実績その他の合理的な基準により課税対応とその他対応とに区分することが可能なものについて当該合理的な基準により区分している場合には、当該区分したところにより個別対応方式を適用することとして差し支えない旨定めている。
チ 消費税法基本通達11−2−20《課税仕入れ等の用途区分の判定時期》は、個別対応方式により仕入れに係る消費税額を計算する場合において、課税仕入れを課税対応、その他対応及び共通対応に区分する場合の当該区分は、課税仕入れを行った日の状況により行うこととなる旨定めている。

(4) 基礎事実

 以下の事実は、請求人及び原処分庁の双方に争いがなく、当審判所の調査の結果によってもその事実が認められる。
イ 請求人は、J社との間で、平成15年12月1日付で受益権売買契約書(以下「本件受益権売買契約書」という。)を取り交わし、その後、同月19日付で債権譲渡契約書兼受益権売買契約変更覚書を取り交わして、同日付で本件受益権売買契約書に係る信託受益権(以下「本件信託受益権」という。)を取得した。
ロ 請求人は、本件信託受益権の唯一の受益者であり、請求人が取得した本件信託受益権の信託財産である土地付建物及び駐車場(以下「本件不動産」という。)の種類、取得目的及び物件数は、別表2のとおりである。
ハ 請求人の本件課税期間における課税売上割合は100分の95に満たず、請求人は課税仕入れの税額を個別対応方式に基づいて計算している。
ニ 本件付随費用の支払先、内容及び金額は、別表3のとおりである。
ホ 本件付随費用のうち、L社が作成した請求人に対する別表3の不動産鑑定等の費用15,290,987円に係る平成15年12月19日付の請求書には、本件不動産について不動産鑑定等の業務を行った者(以下「本件各鑑定業者」という。)及び本件各鑑定業者ごとの請求金額が明記されている。
 なお、本件各鑑定業者のL社に対する本件不動産鑑定等の費用に係る各請求書には、本件不動産の各物件名及び当該物件に係る鑑定等業務の報酬額が記載されている。
ヘ 請求人は、本件付随費用の総額を本件受益権売買契約書に記載された本件不動産を構成する各土地及び各建物(以下「本件個々の資産」という。)の売買価額の比で当該本件個々の資産の取得価額に配賦し、本件付随費用に係る課税仕入れについて、個別対応方式の適用上、当該本件個々の資産の取得価額に配賦した金額ごとに別表4の「個別対応方式における区分」の「請求人の区分」欄のとおり区分し、それに基づき課税仕入れの税額の計算を行っている。
ト 請求人は、課税仕入れの税額の計算に当たり、本件付随費用の課税仕入れについて、消費税法基本通達11−2−19の取扱いを適用していない。

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2 主張

(1) 請求人

 原処分は、次の理由によりいずれも違法であるから、その全部の取消しを求める。
イ 本件更正処分について
(イ) 消費税法第30条第2項第1号に規定する課税仕入れとは、同法第2条第1項第12号に規定する消費税の課税対象となる取引を意味する。したがって、消費税の課税対象となる一の取引金額の内訳又は複数の取引金額の合計の内訳について、消費税法第30条第2項第1号に規定する「課税対応」、「その他対応」及び「共通対応」の区分が明らかにされていれば、その明らかとなっている区分に応じて個別対応方式による対応関係を判定すべきである。
(ロ) そして、請求人は、上記1の(4)のヘのとおり、本件付随費用の総額を本件個々の資産の売買価額の比で当該本件個々の資産の取得価額に配賦し、本件付随費用に係る課税仕入れについて、個別対応方式の適用上、当該本件個々の資産ごとに別表4の「個別対応方式における区分」の「請求人の区分」欄のとおり区分し、それに基づき課税仕入れの税額の計算を行っており、この方法は上記(イ)の法令解釈に照らし正当である。
(ハ) 請求人が行った本件付随費用に係る課税仕入れの税額の計算方法が正当である理由は、次のとおりである。
A 本件付随費用を本件個々の資産の取得価額に配賦することは、企業会計及び法人税法の観点からも原価配分の手続として要請されるものであって、事業者が法人である限り、課税仕入れの税額の計算においても、法人税法や企業会計における処理を可能な限り尊重することが計算経済性の観点から求められるものである。このことは、消費税法第2条第1項並びに消費税法施行令第4条《棚卸資産の範囲》及び同第5条《調整対象固定資産の範囲》が企業会計や法人税法で使用されている用語又は同旨の定義であり、また、消費税法第36条《納税義務の免除を受けないこととなった場合等の棚卸資産に係る消費税額の調整》第1項も企業会計や法人税法における手続を前提としていることからも明らかである。
B そして、資産の取得価額に算入するため合理的な基準により判定区分の単位である本件個々の資産に配賦計算を行った本件付随費用の各金額は、その本体である本件個々の資産の取得目的に応じて個別対応方式による区分を行ったものといえる。したがって、その明らかとなっている区分に応じて個別対応方式における対応関係を判定すべきである。
 また、別表4の「販売目的の駐車場」の取得に係る付随費用の消費税について、請求人が当該駐車場の取得価額に配賦した付随費用に係る消費税相当額を、原処分庁は、当該駐車場の取得に係る付随費用の消費税額と認めた上で、個別対応方式におけるその区分結果に誤りがあるとして当初更正処分を行っている。このことは、個別対応方式における区分方法について、原処分庁が当初更正処分を行った際に、上記Aに記載する請求人の主張と同様の取扱いをしていた、すなわち請求人の主張が不合理なものではないことを如実に表しているものである。
(ニ) 本件更正処分が違法である理由は、次のとおりである。
A 個別対応方式における対応関係の判定について、消費税法第30条第2項第1号は、区分の判定単位に関する記述は一切なく、「課税仕入れごと」に行うという規定はしておらず、同法第2条第1項第12号においても「課税仕入れごと」という概念は存在しない。消費税法基本通達11−2−18及び同11−2−20も同様に、個別対応方式における区分についての判定単位に関する記述は一切ない。
 また、異議審理庁は本件異議決定において自己的に概念を創出した「課税仕入れごと」や「その取引ごと」という用語について具体的に明示しておらず、納税者に法令上規定のない概念に基づき申告することを強制することは違法である。
B 個別対応方式における区分判定を「課税仕入れごと」を単位として行うという原処分庁の主張を認めることはできないが、仮にそのように考えるとしても、本件付随費用は本件不動産に共通して発生したものばかりではなく、不動産鑑定費用や所有権移転登記費用等のように特定の物件に直接的に対応している課税仕入れが含まれているのであるから、これらについては本件信託受益権を単位としてその取得目的により判定するのではなく、本件個々の資産の取得目的に応じて個別対応方式における区分を判定すべきである。
ロ 本件賦課決定処分について
 上記イのとおり本件更正処分は違法であるから、本件賦課決定処分についてはその全部を取り消すべきである。

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(2) 原処分庁

 原処分は、次の理由によりいずれも適法であるから、本件審査請求を棄却するとの裁決を求める。
イ 本件更正処分について
(イ) 仕入れに係る消費税額の控除について、消費税法第30条第2項第1号は、当該課税期間中に国内において行った課税仕入れにつき、課税対応、その他対応及び共通対応にその区分が明らかにされている場合に、個別対応方式による課税仕入れの税額を算定する旨規定している。
 そして、個別対応方式における区分の判定は、次の理由により、個々の「課税仕入れごと」に、具体的にはその取引ごとに行うこととなる。
A 消費税法第30条第2項第1号は、当該課税期間中に国内において行った「課税仕入れにつき」、課税対応、その他対応及び共通対応にその区分が明らかにされている場合に個別対応方式による課税仕入れの税額を算定する旨規定していること。
B 消費税法基本通達11−2−18は、「個別対応方式により仕入れに係る消費税額を計算する場合には、その課税期間中において行った個々の課税仕入れについて、必ず、課税対応、その他対応及び共通対応に区分しなければならない」と定め、その取扱いを具体的に明らかにしていること。
C 消費税法基本通達11−2−20は、「個別対応方式による区分は、その課税仕入れを行った日の状況により行う」ことを明らかにしていること。
(ロ) ところで、請求人は、上記1の(4)のヘのとおり、本件付随費用の総額を本件個々の資産の売買価額の比で当該本件個々の資産の取得価額に配賦し、本件付随費用に係る課税仕入れについて、個別対応方式の適用上、当該本件個々の資産ごとに別表4の「個別対応方式における区分」の「請求人の区分」欄のとおり区分し、それに基づき課税仕入れの税額の計算を行っている。
 すなわち、請求人は、個別対応方式における区分の判定について、個々の「課税仕入れごと」ではなく「本件付随費用の総額」で行っており、この方法は上記(イ)の法令解釈に照らし違法である。
(ハ) 本件更正処分が適法である理由は、次のとおりである。
A 個別対応方式における区分の判定は、上記(イ)のとおり課税仕入れごとに行うべきであり、原処分庁は、別表3の課税仕入れである8種類の各取引についてその区分を判定していること。
B 本件付随費用は、本件信託受益権の信託財産である本件不動産を取得するために要した費用であり、本件付随費用の個別対応方式における区分は、その発生の基因となった本件不動産の取得目的により判定すべきところ、原処分庁は、別表2の本件不動産のそれぞれの取得目的により判定していること。
C 本件付随費用について、別表3の8種類の課税仕入れごとに、本件不動産の取得目的により個別対応方式による区分を判定すると、いずれの課税仕入れもその他対応及び共通対応が混在していることから、8種類の課税仕入れのすべてが共通対応に区分されたこと。
(ニ) 請求人は、本件付随費用を本件個々の資産の取得価額に配賦することは、企業会計及び法人税法の観点からも原価配分の手続として要請されるものであり、これらに基づいた課税仕入れ等の税額の計算方法は正当である旨主張する。
 しかしながら、仕入税額控除の制度は、消費税が、事業者が国内において行った課税資産の譲渡等を課税の対象とする多段階課税であるため、税の累積を避けるために仕入れに含まれている消費税額を控除するという制度であり、消費税法第30条第1項及び同条第2項の各規定のとおり、課税仕入れの税額は、付随費用を資産の取得価額に配賦する企業会計及び法人税法上の手続に影響されることなく計算されるものであり、請求人の主張には理由がない。
(ホ) また、請求人は、個別対応方式における対応関係の判定について、消費税法第30条第2項第1号は、「課税仕入れごと」に行うという規定はしておらず、同法第2条第1項第12号においても「課税仕入れごと」という概念は存在しない旨主張する。
 しかしながら、個別対応方式における区分の判定は、個々の「課税仕入れごと」に行うこととなるのは、上記(イ)のとおりであり、請求人の主張には理由がない。
ロ 本件賦課決定処分について
 上記イのとおり本件更正処分は適法に行われており、請求人には、国税通則法第65条《過少申告加算税》第4項に規定する「正当な理由があると認められるものがある場合」に該当する事由も認められないことから、本件賦課決定処分は適法である。

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3 判断

(1) 本件更正処分について

 本件審査請求は、消費税法第30条第2項第1号に規定する個別対応方式において、対応区分を判定する際の課税仕入れの単位に争いがあるので、審理したところ、次のとおりである。
イ 認定事実
 原処分関係資料及び当審判所の調査の結果によれば、次の事実が認められる。
(イ) 別表3の本件付随費用の個別対応方式における区分の判定について、請求人は、別表4の「個別対応方式における区分」の「請求人の区分」欄のとおり、本件付随費用の総額を本件個々の資産の売買価額の比で当該本件個々の資産の取得価額に配賦した金額を単位として区分を判定し、原処分庁は、別表3の8種類の各付随費用を単位として区分を判定している。
(ロ) 別表3の本件付随費用について、支払先からの請求書等には、要旨次のとおり記載されており、また、次の事実が認められる。
A K社の請求書
(A) 請求年月日は、平成15年12月31日付。
(B) 請求金額は、1,450,000円(消費税等の額を含まない金額である。以下Hまで同じ。)。
(C) 請求内容は、「W社(請求人の社名)の不動産投資プロジェクトに関する税務上の取扱い」作成に係る報酬。
(D) この請求書には、本件不動産の特定の物件に係る明細はない。
B L社の請求書
(A) 請求年月日は、平成15年12月19日付。
(B) 請求金額は、15,290,987円。
(C) 請求内容は、L社が立て替えていた請求人が負担すべき費用で、本件各鑑定業者の不動産の評価及び調査業務に係る対価であり、本件各鑑定業者の請求書の内容、評価、調査等物件は、別表5の「内容」欄及び「評価、調査等物件」欄のとおりである。
 なお、この請求書には、上記以外にM司法書士事務所の登記費用13,806,100円の記載があるが、同費用は、登録免許税及び印紙税等の費用であり、消費税等の対象とならないものである。
C L社の請求書
(A) 請求年月日は、平成15年12月19日付。
(B) 請求金額は、6,632,764円。
(C) 請求内容は、X社とL社との間で締結された「不動産信託受益権の斡旋・仲介に関する基本合意書」に基づく委託手数料相当額。
(D) この請求書には、本件不動産の特定の物件に係る明細はない。
D M司法書士事務所の請求書
(A) 請求年月日は、平成16年1月8日付。
(B) 請求金額は、11,389,700円。
(C) 請求内容は、丸1所有権移転登記及び信託登記、丸2受益者変更登記、丸3事前謄本取寄せ及び確認、丸4事後謄本取寄せ等に係る手続の代理、書類の作成等の報酬。
E N法律事務所の請求書
(A) 請求番号:○○○○
(B) 請求金額は、7,272,000円。
(C) 請求内容は、平成15年11月1日から同年12月31日までの本件信託受益権購入に係る弁護士報酬。
(D) この請求書には、本件不動産の特定の物件に係る明細はない。
F T法律事務所の請求書
(A) 請求年月日は、平成15年12月25日付。
(B) 請求金額は、1,882,062円。
(C) 請求内容は、平成15年11月から同年12月19日までの各種契約書及び書類の準備、検討等の法的サービスに係る弁護士報酬。
(D) この請求書には、本件不動産の特定の物件に係る明細はない。
G U弁護士事務所の請求書
(A) 請求年月日は、平成16年1月13日付。
(B) 請求金額は、4,273,008円。
(C) 請求内容は、L社ローンに係る弁護士報酬。
(D) この請求書には、本件不動産の特定の物件に係る明細はない。
H V社の請求書
(A) 請求年月日は、平成16年3月1日付。
(B) 請求金額は、60,000円。
(C) 請求内容は、保険手数料。
(D) この請求書には、本件不動産の特定の物件に係る明細はない。
ロ 法令解釈
(イ) 仕入れに係る消費税額の控除は消費税法第30条において規定されており、同条第1項は、事業者が国内において行う課税仕入れについて、同項各号に掲げる場合の区分に応じ当該各号に定める日の属する課税期間の課税標準額に対する消費税額から、当該課税期間中に国内において行った課税仕入れに係る消費税額を控除する旨規定し、同項第1号は、課税仕入れに係る消費税額は、当該課税仕入れを行った日の属する課税期間において控除する旨規定している。
(ロ) そして、消費税法第30条第2項は、同条第1項に規定する課税期間における課税売上割合が100分の95に満たない場合に、同条第1項の規定により控除する「課税仕入れの税額の合計額」の計算方法を規定しており、同項第1号は、当該課税期間中に国内において行った課税仕入れにつき、課税対応、その他対応及び共通対応にその区分が明らかにされている場合の計算方法を規定している。
(ハ) 更に、消費税法第2条第1項第12号は、課税仕入れとは、事業者が、事業として他の者から資産を譲り受け、若しくは借り受け、又は役務の提供を受けることをいう旨定義していることからすれば、課税仕入れとはこれらの個々の取引を指すものと解され、課税仕入れに該当するか否かの判定が個々の取引ごとに行われることは明らかである。
(ニ) 以上のことから、消費税法第30条第2項第1号に規定する個別対応方式における課税標準額に対する消費税額から控除する「課税仕入れの税額」は、個々の課税仕入れについて課税対応、その他対応又は共通対応に区分した上で、課税対応に係る消費税額と、共通対応に係る消費税額に課税売上割合を乗じて計算した金額を合計したものと認められる。
(ホ) 消費税法基本通達11−2−18は、個別対応方式の適用方法について、個別対応方式により仕入れに係る消費税額を計算する場合には、その課税期間中において行った個々の課税仕入れについて、必ず、課税対応、その他対応、共通対応に区分しなければならない旨定めており、このことは、消費税法第30条第2項第1号における課税仕入れの区分判定は、個々の取引を単位として判定することを念のため明らかにしたものとされている。
 また、消費税法基本通達11−2−20は、課税仕入れの用途区分の判定時期について、原則として課税仕入れを行った日の状況により行う旨定めており、用途区分の判定はその課税仕入れである取引を単位として行うことを前提としていると解するのが相当である。
 これらの通達は、いずれも個別対応方式を適用する際の留意事項を確認的に定めたものであり、当該取扱いは、当審判所においても相当と認められる。
(ヘ) したがって、個別対応方式を適用する際に課税仕入れを課税対応、その他対応、共通対応に区分する判定の単位は、個々の課税仕入れごとでなければならないと解するのが相当である。
ハ 本件付随費用の個別対応方式における判定単位
(イ) 本件付随費用の個別対応方式における判定単位については、上記ロの(ヘ)のとおり課税仕入れごとに判定することとなるが、当審判所の調査の結果によれば、L社が立て替えていた不動産鑑定等の費用については、実質的には請求人と本件各鑑定業者との取引であると認められることから、本件各鑑定業者ごとの請求内容により区分を判定すべきである。すなわち、別表3の支払先ごとに係る取引のうち、L社が立て替えていた不動産鑑定等以外の7種類の取引及び本件各鑑定業者との28件の取引について、その取引ごとに区分を判定すべきである。
(ロ)  請求人は、上記イの(イ)のとおり、本件付随費用の総額を本件個々の資産の売買価額の比により本件個々の資産の取得価額に配賦した金額を単位として区分を判定しており、上記(イ)の判定単位により判定していないことから、請求人の課税仕入れの判定単位には誤りがある。
 したがって、個別対応方式において対応区分を判定する際の課税仕入れの単位に関する請求人の主張には理由がない。
(ハ) 原処分庁は、本件付随費用の個別対応方式における区分について、上記イの(イ)のとおり、別表3の8種類の各付随費用を単位として課税仕入れの区分を判定しているが、L社が立て替えていた本件各鑑定業者ごとの不動産鑑定等の費用については、その取引を更に28件の取引に細分化して上記(イ)の判定単位により判定していないことから、原処分庁の判定単位にも一部誤りがあるというべきである。
ニ 審判所における判定区分
(イ) 本件付随費用について、別表2の本件不動産の種類ごとにその取得目的から判断すると、個別対応方式における区分は、それぞれ次に該当すると認められる。
A 事務所賃貸及び販売を目的とする15件の土地付建物の取得に係る付随費用は、建物の事務所用賃貸及び販売が課税資産の譲渡等に該当し、土地の販売がその他の資産の譲渡等に該当することから、共通対応に該当する。
B 居住用賃貸及び販売を目的とする3件の土地付建物の取得に係る付随費用は、建物の販売が課税資産の譲渡等に該当し、建物の居住用賃貸及び土地の販売がその他の資産の譲渡等に該当することから、共通対応に該当する。
C 駐車場賃貸及び販売を目的とする2件の駐車場の取得に係る付随費用は、駐車場の賃貸が課税資産の譲渡等に該当し、土地の販売がその他の資産の譲渡等に該当することから、共通対応に該当する。
D 販売を目的とする60件の土地付建物の取得に係る付随費用は、建物の販売が課税資産の譲渡等に該当し、土地の販売がその他の資産の譲渡等に該当することから、共通対応に該当する。
E 販売を目的とする1件の駐車場(土地)の取得に係る付随費用は、土地の販売がその他の資産の譲渡等に該当することから、その他対応に該当する。
F 上記AからEまでを整理すると、本件付随費用は、丸1Eの駐車場(土地)単独に係るものである場合だけがその他対応に該当し、丸2複数の物件に係るもの等丸1以外の場合は、すべて共通対応に該当することとなる。
(ロ) 上記(イ)を前提とし、当審判所が調査したところ、本件付随費用に係る個別対応方式の区分は、それぞれ次のとおりとなる。
A 特定の物件のみに係る付随費用であれば、通常は請求書に対象物件の明細等が表示されると思料されるところ、K社の請求書には、本件不動産の特定の物件に係る明細がない。また、その請求内容は「W社(請求人の社名)の不動産投資プロジェクトに関する税務上の取扱い作成に係る報酬」と記載されている。
 そこで、当該付随費用について、対象物件名等の表示及び請求内容から判断すると、本件信託受益権全体に係るもの又は複数の物件に係るものであると認められる。
 したがって、当該付随費用の個別対応方式の区分は、共通対応と認定することが相当である。
B L社の不動産鑑定等に係る請求書の請求内容は、本件各鑑定業者が行った不動産鑑定等の費用をL社が立て替えたものであることから、上記ハの(イ)のとおり、本件各鑑定業者ごとに各鑑定業者が行った役務提供について、それぞれ個別対応方式における区分を判定する必要がある。
 そして、本件各鑑定業者の請求書の内容、評価、調査等物件は別表5の「内容」欄及び「評価、調査等物件」欄のとおりであり、本件各鑑定業者ごとの取引から個別対応方式の区分を判定すると、各請求書の評価、調査等物件にはいずれもその付随費用が共通対応となる土地付建物を含んでいると認められる。
 したがって、各鑑定業者が行った鑑定業務等に係る当該付随費用の個別対応方式の区分は、同表の「区分」欄のとおり、いずれも共通対応と認定することが相当である。
C L社の仲介業務に係る請求書には、本件不動産の特定の物件に係る明細がなく、その請求内容が「不動産信託受益権の斡旋・仲介に関する基本合意書に基づく委託手数料」であることからすると、当該付随費用は、本件信託受益権全体に係るもの又は複数の物件に係るものであると認められる。
 したがって、当該付随費用の個別対応方式の区分は、共通対応と認定することが相当である。
D M司法書士事務所の所有権移転登記等業務に係る請求書の請求内容は、上記イの(ロ)のDの(C)のとおりであり、報酬額が土地と建物に区分されていない。
 したがって、当該付随費用の個別対応方式の区分は、共通対応と認定することが相当である。
E N法律事務所の請求書には、本件不動産の特定の物件に係る明細がなく、その請求内容が「平成15年11月1日から同年12月31日までの本件信託受益権購入に係る弁護士報酬」であることからすると、当該付随費用は、本件信託受益権全体に係るもの又は複数の物件に係るものであると認められる。
 したがって、当該付随費用の個別対応方式の区分は、共通対応と認定することが相当である。
F T法律事務所の請求書には、本件不動産の特定の物件に係る明細がなく、その請求内容が「平成15年11月から同年12月19日までの各種契約書及び書類の準備、検討等の法的サービスに係る弁護士報酬」であることからすると、当該付随費用は、本件信託受益権全体に係るもの又は複数の物件に係るものであると認められる。
 したがって、当該付随費用の個別対応方式の区分は、共通対応と認定することが相当である。
G U弁護士事務所の請求書には、本件不動産の特定の物件に係る明細がなく、その請求内容が「L社ローンに係る弁護士報酬」であることからすると、当該付随費用は、本件信託受益権全体に係るもの又は複数の物件に係るものであると認められる。
 したがって、当該付随費用の個別対応方式の区分は、共通対応と認定することが相当である。
H V社の保険手数料に係る請求書には、本件不動産の特定の物件に係る明細がなく、その請求内容が「保険手数料」であることからすると、当該付随費用は、本件信託受益権全体に係るもの又は複数の物件に係るものであると認められる。
 したがって、当該付随費用の個別対応方式の区分は、共通対応と認定することが相当である。
(ハ) 上記(ロ)のとおり、本件付随費用の各取引の個別対応方式における区分は、いずれも共通対応に該当すると認定することが相当である。そして、当審判所の判定結果は、別表6の「審判所」欄のとおりであり、原処分庁の判定結果は、同表の「原処分庁」欄のとおりであることから、原処分庁の判定単位には誤りがあるものの、判定結果には誤りはないこととなる。
ホ 本件更正処分の適否
 以上のとおり、請求人の本件付随費用の個別対応方式における判定単位及び課税仕入れの税額の計算には誤りがあり、一方、原処分庁の本件付随費用の個別対応方式における判定単位には誤りがあるものの、判定結果は、別表6のとおり誤りがなく、したがって、課税仕入れの税額の計算には誤りはないことから、本件更正処分に違法はない。
ヘ 請求人の主張に対する判断
 個別対応方式における対応区分を判定する際の課税仕入れの単位に関する請求人の主張に対する当審判所の判断は、次のとおりである。
(イ) 請求人は、消費税法第30条第2項第1号に規定する課税仕入れとは、同法第2条第1項第12号に規定する消費税の課税対象となる取引を意味し、消費税の対象となる一の取引金額の内訳又は複数の取引金額の合計金額の内訳について、同法第30条第2項第1号に規定する課税対応、その他対応及び共通対応に区分が明らかにされていれば、その明らかとなっている区分に応じて個別対応方式における対応関係を判定すべきであり、本件個々の資産の取得価額に算入するために合理的な基準により配賦された本件付随費用の各金額は、本件個々の資産の取得目的により区分が明らかとなっている旨主張する。
 しかしながら、請求人は本件付随費用について、別表3に記載の付随費用の総額を一つの単位とし、各付随費用の合計額を本件個々の資産の取得価額の比率により按分した結果をもって課税対応、その他対応及び共通対応それぞれの区分に係る課税仕入れの額として集計したにすぎず、国内において行った課税仕入れについて、同法第30条第2項第1号の規定のとおりに課税仕入れにつきその区分の判定を行っていないことは明らかであるから、請求人の主張には理由がない。
(ロ) 請求人は、個別対応方式における対応関係の区分判定の単位について、消費税法第30条第2項第1項は「課税仕入れごと」に行うという規定はしておらず、同法第2条第1項第12号においても「課税仕入れごと」という概念は存在しないため、消費税の対象となる一の取引金額の内訳又は複数の取引金額の合計金額の内訳について同法第30条第2項第1号に規定する課税対応、その他対応及び共通対応に区分が明らかにされていれば、その明らかとなっている区分に応じて個別対応方式における対応関係を判定すべきである旨主張する。
 しかしながら、個別対応方式においては「課税仕入れにつきその区分」が明らかにされていることが必要であり、課税仕入れとは同法第2条第1項第12号の定義のとおり資産を譲り受け、若しくは借り受け、又は役務の提供を受けること等の取引を指すものと解されることから、課税仕入れの区分は、個々の取引についてそれぞれ判定を行う以外にない。また、消費税法基本通達11−2−18においても個別対応方式により仕入れに係る消費税額を計算する場合には、その課税期間中に行った「個々の課税仕入れ」について、必ず、区分しなければならない旨定めている。同通達は個別対応方式における区分の判定単位は課税仕入れごとであり、課税仕入れごとにその対応区分を判定する手続を定めていると解されるところ、当審判所においても、法令の解釈として相当と認められる。
 したがって、この点に関する請求人の主張には理由がない。
(ハ) また、請求人は、不動産の取得に係る付随費用は、企業会計及び法人税法の規定により当該不動産への原価配賦を求められることから、個別対応方式における課税仕入れの税額の計算においても同様の計算方法がより合理的である旨主張する。
 しかしながら、仕入れに係る消費税額の計算は消費税法第30条に規定する方法により行うものであり、企業会計や法人税法の手続に影響されるものではないことから、請求人の主張には理由がない。
(ニ) さらに、請求人は、仮に個別対応方式における区分判定を原処分庁が主張する「課税仕入れごと」を単位として行うとしても、本件付随費用は各物件に共通して発生したものばかりではなく、不動産鑑定費用や所有権移転登記費用等のように特定の物件に直接的に対応して生じているものが含まれているのであるから、これらについては本件個々の資産の取得目的に応じて対応区分の判定を行うべきである旨主張する。
 しかしながら、丸1本件各鑑定業者からの不動産鑑定費用は、土地付建物又は駐車場に係るものであり、土地付建物の鑑定費用について土地と建物に区分されていないこと、丸2所有権移転登記費用等も土地付建物又は駐車場にかかるものであり、土地付建物の当該費用について土地と建物に区分されていないこと、並びに丸3不動産鑑定等の費用及び所有権移転登記等の費用については、上記ニの(ロ)のB及びDに記載のとおり、いずれもが共通対応に該当することから、請求人の主張には理由がない。

(2) 本件賦課決定処分について

 本件更正処分は上記(1)のとおり適法であり、これにより納付すべき税額の計算の基礎となった事実が本件更正処分前の税額の計算の基礎とされていなかったことについて、国税通則法第65条第4項に規定する正当な理由があるとは認められないから、同条第1項及び第2項並びに地方税法附則第9条の9《譲渡割に係る延滞税等の計算の特例》第1項の規定に基づいてされた本件賦課決定処分は適法である。

(3) その他

 原処分のその他の部分については、請求人は争わず、当審判所に提出された証拠資料等によっても、これを不相当とする理由は認められない。

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