別紙4

争点に対する当事者双方の主張

原処分庁 請求人
 H社は、本件K国工場における生産管理、人事管理、労務管理及び財務管理を自ら行い、製造に関するリスクを負担していることから、同工場における製造行為は、H社がM社の外殻を得て、自らの計算と負担で主体的に行っているものと認められるから、同社の主たる事業は、卸売業ではなく製造業であると認められる。
 そうすると、H社は、その事業を主として本店所在地国等であるL区において行っているとは認められず、適用除外要件のすべてを満たすことにならない。
 H社は、自らは製造を行わないで、自己の所有する原材料を、K国側の当事者となっている企業(以下「K国の企業」という。)に支給して製品を造らせ、これを自己の名称で販売しているから、日本標準産業分類によれば、製造問屋であり、卸売業に該当する。
 そうすると、H社の販売に係る収入金額のうちに、非関連者との取引の割合が50%を超えているから、適用除外要件のすべてを満たすことになる。
1 本件協議書及び本件借用契約書等に基づく委託加工契約について
 H社の主たる事業の判定に当たっては、単に本件協議書及び本件借用契約書等の文言によるのではなく、本件K国工場で行われている製造行為に関する事実に基づき認定したものである。
1 本件協議書及び本件借用契約書等に基づく委託加工契約について
(1) 次のことから本件K国工場における製造行為は、H社が自らの計算と負担で主体的に行われてはいないというべきである。
イ 本件協議書の内容は、H社が、M社に対し、原材料を支給し、N社が所有する本件K国工場において製品を製造させ、H社が自己の名称で同製品を販売するというものである。
ロ 本件協議書では、M社が、製品の製造を行い、加工費を受領するか、あるいは工場賃借料、土地使用料及び管理費を受領すること、そして、製品はすべてH社へ輸出する旨明記されている。
ハ H社が製品を造らせている本件K国工場とは、K国の企業であるが、M社は、本件協議書において、N社が所有する本件K国工場で製造加工を行っている経営主体であり、N社は、本件借用契約書において、H社に建物を賃貸している。
(2) 加工費は、P市○○会が製品ごとに定めた単価に製造数量を乗じて算出される加工費とそれを超える部分の加工費を別々に振込みすることをK国の企業から要請され、支払っているものである。
したがって、H社とM社の関係は製造委託の実質を備えたものである。
2 本件製品の製造へのH社の関与について 2 本件製品の製造へのH社の関与について
(1) H社は、本件K国工場の製造業務を管理・統括している。
(2) H社は、本件K国工場における製造事業計画を主体的に策定している。
(3) H社は、本件K国工場における工程管理を行っている。
(4) N社の主な役割は建物と土地の提供にすぎず、本件K国工場における製造設備及び製造ノウハウはH社が提供している。
(5) 人事管理及び労務管理について
イ 本件K国工場における人事管理及び労務管理は、H社のS職の事務分掌である。
ロ 本件借用契約書において、H社が本件K国工場の工場長及び○○員に係る給与を負担するとともに解雇できる権限を有している旨定められている。
ハ 本件K国工場の人員配置計画をH社が作成し、実績と対比しながら新規採用を行っている。
ニ 本件K国工場の従業員の募集規定の策定は、S職の決裁を要するとされている。
ホ H社は本件K国工場における従業員の人事評価に関する権限を掌握している。
(6) 財務管理について
イ H社は、本件K国工場に係る資金について、S職が残高確認や資材等の購入・給料の支払等を承認することによって管理しているほか、各月の必要経費額をS職が承認し、その承認に基づきH社が不足資金の送金を決定している。
ロ H社は、本件K国工場における製造行為に必要な機械設備、原材料及び仕掛品並びに同工場に送金した金員を自らの資産として計上している。
ハ 加工費名目で支出した金額のうち、P市等への手数料を控除した後の残金は、本件借用契約書のとおりH社に帰属し、H社の会計帳簿上、「K国小口現金」として管理されている。
ニ 不足する本件K国工場の運転資金の支出は、H社の会計帳簿上、同社の預金勘定から同社の本件K国工場分の現金勘定に振り替えられており、本件K国工場の運転資金はH社が管理している。
(1) H社から本件K国工場にS職及び各部長職を派遣しているのは、K国の企業からの要請に基づく技術支援のほか、工場周辺の得意先企業に対する営業サポート等のためであり、このような事実があったからといって、H社が「自ら製造している」ことにはならない。
(2) 本件K国工場における生産管理は、K国の企業のK国人管理職が行っている。
(3) 本件K国工場における人事管理及び労務管理について
イ 本件借用契約書に、工場長及び○○員に係る給与はH社が負担するとともに解雇権についても同社が有するとの条項があっても、事実は異なる。工場長の労働契約はK国の企業が行っており、海外にあるH社に法的な解雇権はない。本件K国工場の工場長の選任、解雇権は、K国の企業が有しており、H社は工場長の解雇要請にとどまるということが同条項の正しい解釈である。
ロ 本件K国工場における就業規定、工場服務規程、要員採用規定及び宿舎管理規定等各種規則は、すべて、K国の企業が作成している。そして、工員の全員について、K国の企業がその名称で募集、採用するほか解雇も行っており、同工場の人事権はK国の企業にあり、労務管理はすべてK国の企業が行っている。 なお、H社が行う決裁、承認は、K国の企業の求めに応じて、必要な範囲で行っているものである。
(4) 経営管理・財務管理について
 本件K国工場の資金は同工場の現地採用者が管理しており、H社のS職は、同社の加工費の支払の必要上、確認しているにすぎない。K国の企業が経営管理及び財務管理に疎く、本件K国工場の財務管理、資金管理をH社に委託するとしても、K国の企業及び本件K国工場の損益リスク・資金リスクまでもH社が負担するものではない。
 なお、本件K国工場における機械設備、原材料及び仕掛品をH社が自らの資産として計上したのは、それらの資産の所有権が同社にあることから当然である。また、本件K国工場の小口現金勘定は、通常の前渡金勘定と同じ性質の勘定である。
3 本件製品の製造から生じる損益の帰属について 3 本件製品の製造から生じる損益の帰属について
(1) 本件K国工場の建物、用地の使用料をH社が負担しているほか、同工場における製造行為に必要な設備は、H社に帰属している。
(2) 本件協議書第5条によれば、H社が、製品品質の検収を行い、原料、補助材料が基準に合致しない場合、あるいは技術指導の誤りにより廃品、二級品が発生した場合には、H社の責任とし、加工をやり直さなければならない場合は、同社がその費用を負担する旨定められている。
(3) 加工費名目で支出した金額は、製品のサンプルの単価と個数で決まるが、H社が不足する本件K国工場の運転資金を別途送金することから、本件K国工場は損失のリスクを負わない。
(4) 本件K国工場における製造行為に係る損益、資金はH社の決算書に反映されており、H社は、本件K国工場の製造行為に係る損益計算を自らの損益として所得金額を計算している。
(1) 製造設備の使用権者、土地建物の所有権者は、K国の企業である。
(2) 廃品、二級品の発生に起因する負担は、その原因が本件K国工場側にある場合には、本件K国工場の負担とすることは本件協議書第5条の反対解釈から当然に導かれるものであり、廃品等の発生に起因する負担は、受託者であるK国の企業が負担することを当然の前提とした上で、同条は、その原因が委託者であるH社にある場合の特則を定めたものである。
(3) ○○制度における加工費は、K国の企業の要請に基づき、製品のサンプルによって決定される加工費と別途送金分の合計であり、H社とK国の企業との関係は製造委託の実質を備えたものである。

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