ホーム >> 公表裁決事例集等の紹介 >> 公表裁決事例 >> 裁決事例集 No.74 >> (平19.7.9、裁決事例集No.74 326頁)

(平19.7.9、裁決事例集No.74 326頁)

《裁決書(抄)》

1 事実

(1) 事案の概要

 本件は、審査請求人が相続により取得した土地の価額は財産評価基本通達(昭和39年4月25日付直資56ほか国税庁長官通達。ただし、平成17年5月17日付課評2−5による改正前のものをいい、以下「評価通達」という。)24−4《広大地の評価》(以下「本件通達」という。)の定めを適用して算出した評価額が相当であるなどとして行った更正の請求について、原処分庁が、本件通達を適用すべきではないとして更正をすべき理由がない旨の通知処分等を行ったのに対し、審査請求人が、これらの処分は違法であるとして同処分等の全部の取消しを求めた事案である。

トップに戻る

(2) 審査請求に至る経緯

イ 審査請求人A、同B、同C、同D及び同E(以下、これら5名を併せて「請求人ら」という。)は、平成16年3月○日に死亡したF(以下「被相続人」という。)の共同相続人であり、この相続(以下「本件相続」という。)の開始に係る相続税の申告書に、別表1の「申告」欄のとおり記載して、法定申告期限内に共同で提出した。
ロ 請求人らは、平成17年11月2日、相続した土地の一部について評価額が過大であったとして、別表1の「更正の請求」欄記載のとおりとすべき旨の各更正の請求をした。
ハ これに対し、原処分庁は、C及びEに対し、平成18年4月25日付で、更正をすべき理由がない旨の各通知処分(以下「本件各通知処分」という。)を、同年4月26日付で、別表1の「更正処分等」欄記載のとおり、各更正処分及び過少申告加算税の各賦課決定処分を行い、また、A、B及びDに対し、同日付で同表同欄記載のとおり、各更正の請求の一部を認容する減額の各更正処分をした(以下、請求人らに対する各更正処分を併せて「本件各更正処分」という。)。
ニ 請求人らは、本件各通知処分及び本件各更正処分を不服として、平成18年6月23日、異議申立てをしたところ、異議審理庁は、一部の土地の評価に誤りがあったとして、平成18年9月21日付で、別表1の「異議決定」欄記載のとおりの異議決定をした。
ホ 請求人らは、当審判所に対し、平成18年10月21日、異議決定を経た後の原処分に不服があるとして、審査請求をした。
 なお、請求人らは、Aを総代として選任し、同日、その旨を届け出た。

(3) 関係法令等(要旨)

 本件における関係法令等(要旨)は、別紙1記載のとおりである。

(4) 当事者間に争いがなく、証拠により容易に認定できる事実等(以下「争いのない事実等」という。)

イ 請求人らが、相続財産のうち、本件通達の定めを適用すべきとする土地は、被相続人の自宅の敷地として使用されていたP市p町○○番の宅地1,279.03平方メートル(以下「本件土地」という。)のみである。
ロ A及びBは、本件土地を本件相続により共有持分各2分の1ずつ取得した。
ハ 本件土地は、○○線「R駅」東北東約1キロメートル(道路距離)に位置し、南側で幅員16メートルの都市計画道路○○線(以下「S通り」という。)に約29メートル、東側で幅員8メートルの市道(以下「東側道路」という。)に約44メートル、また、北側で幅員6メートルの市道(以下「北側道路」という。)に約29メートル接する三方路に面した矩形の平坦な土地である。
ニ S通りは、昭和62年○月○日付都市計画道路の変更の告示により、その幅員が20メートルに変更されており、都市計画決定の告示から都市計画事業の認可・承認までの期間において、現在同道路に接している部分から両側に2メートル後退した区域が都市計画道路予定地として、建物の建築等に制限を受けている。
ホ 本件土地は、評価通達11《評価の方式》に定める路線価地域で、かつ、同通達14−2《地区》に定める普通住宅地区に該当し、平成16年分の路線価は、S通りは150,000円、東側道路及び北側道路は各140,000円であった。
ヘ 本件土地が属する都市計画法第8条《地域地区》第1項第1号に規定する用途地域(以下「用途地域」という。)は、第二種住居地域で建ぺい率(建築基準法第53条《建ぺい率》)が60%、容積率(同法第52条《容積率》)が200%である。
ト P市の市街化区域の都市計画法第29条《開発行為の許可》第1項に規定する開発許可を受けなければならない開発行為の面積規模は500平方メートル以上とされている。

(5) 争点

 本件土地は、本件通達に定める広大地に当たるか。

トップに戻る

2 主張

(1) 請求人ら

イ 本件土地は著しく地積が広大な土地であるから、別紙2の図1のとおり、本件土地近隣の標準的な分譲面積である100平方メートルから120平方メートルで本件土地を画地割すると、幅員4メートルの通り抜け道路が必要となり、この通り抜け道路用地は、本件通達に定める公共公益的施設用地に該当するから広大地として評価すべきである。
 なお、P市では、P市○○条例第○条及び第○条において、300平方メートル以上の土地の開発の場合には、開発地に接する幅員6メートル以上(同条例施行規則第○条により、最低でも幅員4メートル以上)の道路の確保を義務づけている。
ロ 原処分庁の主張する分割図である別紙2の図2及び図3は、次のとおり評価通達の趣旨に反するものである。
(イ) 標準的な画地割とは画地補正率を限りなく1.0に近い画地に分割するものであり、路地状敷地のように、かげ地割合が生ずることにより不整形地補正率及び間口狭小補正率等の補正率を用いて評価減を要するような画地を生じさせる画地割は不自然であり、別紙2の図2及び図3とも西側に標準的な分譲面積を超える150平方メートルから169平方メートルの路地状敷地が必要となり、標準的な画地割とはいえない。
(ロ) また、本件土地を奥行価格補正、三方路線影響加算で評価した価額(都市計画道路予定地に係る補正率を乗じる前の自用地としての価額)に対し、別紙2の図2及び図3のように画地割を行った後の土地について相続税の評価通達に従い奥行長大補正、間口狭小補正を行うと、その合計評価額は分割前の評価額より低くなる。これは、本来整形地であった本件土地を、無理に不整形かつ地積大小の画地により分割しているからである。
ハ また、国税速報(平成18年2月27日第5773号)に掲載された平成16年6月28日裁決例でも、公道から離れた画地の公道に通ずる通路部分は通路として用途が限定され、公共公益的施設用地としての道路の開発と同様であるから、そのような画地割をしなければならない土地は広大地評価を適用すべきとしている。
ニ したがって、本件土地は、別紙2の図1が標準的な画地割であり、公共公益的施設用地の負担が必要な土地であるから、本件通達に定める広大地に当たる。

(2) 原処分庁

イ 本件土地について開発行為を行う場合は、別紙2の図2及び図3のように画地割することにより、通り抜け道路のような公共公益的施設用地となる地積を生じさせることなく開発許可を受けることができる。
ロ 請求人らが主張する別紙2の図1の画地割は、道路用地として206平方メートルに相当する土地の負担が生じ、有効宅地面積は1,073平方メートルにとどまることから、別紙2の図2及び図3の画地割に比して必ずしも経済的に合理的であるとは認められない。
ハ また、請求人らは、別紙2の図2及び図3は、路地状敷地を生じさせる不自然な画地割である旨主張するが、路地状敷地とすることにより、容積率及び建ぺい率の算定に当たっては、路地状部分の面積も画地面積に含まれるため、より広い建物を建てることが可能となり、また、価格や用途の異なる購買者の資力に応じた物件提供も可能となるから、別紙2の図2及び図3の画地割は、経済的合理性があり、本件通達の趣旨に反する不自然なものではない。
ニ さらに、請求人らは、上記(1)ハのとおり、国税速報に掲載された平成16年6月28日付の裁決例を引用し、本件土地についても同様に広大地の評価を適用すべきである旨主張するが、本件土地と地域及び土地の形状等が異なる土地を単純に比較することはできない。
ホ したがって、本件土地は、開発行為を行うとした場合に、公共公益的施設用地の負担が必ずしも必要と認められないため、本件通達に定める広大地には当たらない。

トップに戻る

3 判断

(1) 法令等の趣旨

イ 相続税法第22条は、相続財産の価額は、相続税法に特別の定めがある場合を除き、当該財産の取得の時における時価によるべき旨規定しているが、ここでいう時価とは、相続開始時における当該財産の客観的な交換価値をいうものと解される。
 しかしながら、客観的な交換価値は、必ずしも一義的に確定されるものではないから、課税実務上は、相続財産評価の一般的基準が評価通達によって定められ、そこに定められた画一的な評価方式によって相続財産を評価することとされている。これは、相続財産の客観的な交換価値を個別に評価する方法を採ると、その評価方式、基礎資料の選択の仕方等により異なった評価額が生じることが避け難く、また、回帰的かつ大量に発生する課税事務の迅速な処理が困難となるおそれがあること等から、あらかじめ定められた評価方式によりこれを画一的に評価する方が、納税者間の公平、納税者の便宜、徴税費用の節減という見地からみて合理的であるという理由に基づくものと解される。
 そうすると、相続財産の評価は、評価通達に定められた評価方式によらないことが正当として是認されるような特別な事情がある場合を除き、課税の公平の観点から、原則として、評価通達の評価方式に基づいて行うことが相当と解される。
ロ 本件通達について
(イ) 評価通達は、評価通達11《評価の方式》から評価通達26−2《区分地上権等の目的となっている貸家建付地の評価》において宅地の評価方式を定め、評価通達11において、市街地的形態を形成する地域にある宅地の価額は、原則として、路線価方式により評価した価額をもってその評価額とすべき旨の一般的な評価方法を定めるとともに、他方、不整形地であること、無道路地であること、間口が狭小な宅地であることなど評価の対象となる宅地の価額に影響を及ぼすべき客観的な個別事情に応じ、路線価方式により評価した価額を減額補正する旨の評価方法を定めている。このような定めは、あくまでも評価の対象となる宅地の現況を踏まえ、当該宅地の価額に影響を及ぼすべき客観的な個別事情がある場合には、価値が減少していると認められる範囲で減額の補正を行う旨の定めであると解される。
(ロ) 本件通達を定めた趣旨は、評価の対象となる宅地(以下「評価宅地」という。)の地積が、1当該宅地の価額の形成に関して直接に影響を与えるような特性を持つ当該宅地の属する地域の標準的な宅地の地積に比して著しく広大で、2評価時点において、当該宅地を当該地域において経済的に最も合理的な特定の用途に供するためには、公共公益的施設用地の負担が必要な都市計画法に規定する開発行為を行わなければならない土地である場合にあっては、当該開発行為により土地の区画形質の変更をした際に道路、公園等の公共公益的施設用地としてかなりの潰れ地が生じ、評価通達15から評価通達20−5による減額の補正では十分とはいえない場合があることから、このような土地の評価に当たっては、潰れ地が生じることを当該宅地の価額に影響を及ぼすべき客観的な個別事情として、価値が減少していると認められる範囲で減額の補正を行うこととしたものである。
(ハ) このような本件通達を定めた趣旨等にかんがみれば、本件通達でいう評価宅地の属する「その地域」とは、1河川や山などの自然的状況、2行政区域、3都市計画法による土地利用の規制など公法上の規制等、4道路、5鉄道及び公園など、土地の使用状況の連続性及び地域の一体性を分断する場合がある客観的な状況を総合勘案し、利用状況、環境等がおおむね同一と認められる、ある特定の用途に供されることを中心としたひとまとまりの地域を指すものと解するのが相当である。
(ニ) また、本件通達では、広大地から除かれる土地として、中高層の集合住宅等の敷地用地に適しているもの(その宅地について、経済的に最も合理的であると認められる開発行為が中高層の集合住宅等を建築することを目的とするものであると認められるものをいい、以下「マンション適地等」という。)を定めている。
 これは、戸建住宅分譲用地として開発した場合に、道路等の潰れ地が生じる土地に広大地の評価の適用があることを前提としているものの、マンション等の敷地のように細分化せずに一体として有効利用できる場合には、地積過大による減価を行う必要がないことからこのように定められたと解される。このことは土地評価の適正化のために定められた土地価格比準表(昭和50年1月20日付国土庁土地局地価調査課長通達「国土利用計画法の施行に伴う土地価格の評価等について」。ただし、平成6年3月15日付国土地第56号による改正後のもの。)において、「一体利用することが市場の需給関係等を勘案して合理的と認められる場合には、地積過大による減価を行う必要がない」と定めていることとも整合するものであり、当審判所においても相当と認められる。したがって、評価対象地がマンション適地等と認められる場合には、通常、公共公益的施設用地となる部分の地積の負担が生じないため、広大地の評価の適用がないとする本件通達の定めは、当審判所においても相当であると認められる。
 なお、評価対象地がマンション適地等と認められる場合とは、その評価対象地における用途地域・建ぺい率・容積率や地方公共団体の開発規制等が厳しくなく、交通、教育、医療等の公的施設や商業地への接近性から判断(社会的・経済的・行政的見地から判断)して、マンション適地等と認められる場合や評価対象地の「その地域」に現にマンション等が建てられており、また、現在も建築工事中のものが多数ある場合、つまり、マンション等の敷地としての利用に地域が移行しつつある状態で、しかもその移行の程度が相当進んでいる場合をいうものと解するのが相当である。

トップに戻る

(2) 認定事実

 上記1(4)争いのない事実等に加え、当審判所の調査の結果によれば、次の各事実が認められる。
イ 都市計画上の位置付け
(イ) P市では、都市計画法第18条の2《市町村の都市計画に関する基本的な方針》に基づき、「P市都市計画プラン」(以下「P市プラン」という。)を策定し、P市における都市計画の基本方針を定めている。
(ロ) P市プランの全体構想の都市整備の目標の中では、本件土地が面するR駅から○○○までのS通りの沿道について、Q県南東部地域の中核的都市機能を担う人、物、情報の流れの基幹的軸となる中央都市軸と位置付け、商業・娯楽・業務・文化機能等を有した都市性の高い魅力ある地域形成を図ることを基本方針としている。
(ハ) さらに、P市プランの地区別構想では、○○○から東方に位置するP市p町を含む地域一体を○○地区としており、その中で本件土地の所在する地域をU地域と呼称し、快適・良好な住宅地環境を保全し、魅力ある住宅地の形成を図ることとしているが、U地域の中でも、中央都市軸であるS通りの沿道については、商業・文化機能等を強化し、良好な景観に配慮した建築物の誘導等による魅力ある地域の形成を図る旨の方針を示している。
(ニ) P市プランは、平成17年に改訂されたが、上記(ロ)の中央都市軸の都市整備目標に変更はなく、さらに、U地域内の中央都市軸については、商業・文化機能等を強化し、沿道の有効な土地利用の実現のため、良好な景観に配慮した建築物の誘導等による魅力ある中央都市軸の形成を図る旨の方針が明確化されている。
(ホ) Q県は、用途地域を指定する際の基本方針として「Q県用途地域指定の基本方針及び指定基準」を策定し、その中で「幹線道路の沿道」については、原則として、道路等に環境施設帯がある場合や緑地帯が確保された場合など住環境の保護に支障がないと認められる場合を除き、良好な住居の環境を保護する住居専用地域(低層住居専用地域及び中高層住居専用地域)は定めないこととし、幹線道路の沿道には、一定の規模の店舗等の立地を許容する第一種住居地域又は規模に制限のない店舗等の立地を許容する第二種住居地域などの用途地域を定めることとしている。
ロ 用途地域及び利用状況
(イ) 本件土地を含むU地域のS通りの沿道は、第二種住居地域に指定され、一定の工場や劇場などの建築が制限されるほかは、事務所や店舗の建築については制限がなく(建築基準法第48条《用途地域》第6項)、戸建住宅のほか、アパート、マンション、1階部分が店舗又は事務所で2階以上が集合住宅である建物(以下「店舗併用集合住宅」という。)などの中高層の集合住宅及び事務所、大規模な店舗などの商業施設が混在する地域となっている。
 そして、S通りの沿道の後背地は、主に良好な住環境の保護を図る第一種中高層住居専用地域に指定されている。
(ロ) 本件土地周辺の第二種住居地域内で、本件相続時以前10年間において、建築物を建築するために開発許可が必要となる地積500平方メートル以上の土地に係る建築物の建築状況をみると、戸建分譲が行われた例はなく、平成9年に店舗1棟(1階建、地積707平方メートル)、平成11年に共同住宅1棟(2階建、地積557.7平方メートル)、平成12年に事務所1棟(2階建、地積512.85平方メートル)、平成14年に分譲マンション1棟(7階建、地積1,372.15平方メートル)及び平成15年に店舗1棟(2階建、地積1,500.03平方メートル)が建築されている。
 特に、上記7階建分譲マンションは、本件土地とS通りを挟んで南側に位置し、規模、形状及び接道状況が本件土地と酷似する土地に建築されたものである。
(ハ) 本件土地は、上記1(4)争いのない事実等ハのとおり、R駅から約1キロメートル、徒歩約12分の距離に位置するため、交通が極めて利便な土地である。

トップに戻る

(3) 判断

 請求人ら及び原処分庁は、本件土地が本件通達に定める広大地に該当するか否かについて、広大地から除かれるマンション適地等には当たらないとして、上記2のとおり、戸建分譲に係る公共公益的施設用地の負担の必要性について主張する。
 しかしながら、上記(2)の認定事実及び上記1(4)争いのない事実等に基づき判断すると、次のとおりである。
イ 本件土地が属する「その地域」とは、上記(2)のとおり、用途地域の指定及びP市プランにおける商業・文化機能を強化し、良好な景観に配慮した建築物の誘導等による魅力ある中央都市軸の形成を図る方針などを踏まえ、総合勘案すれば、P市プランの地区別構想にいうところの、U地域のうち、○○を西端、県道○○線を東端とするS通りの沿道で用途地域が第二種住居地域に指定されている地域(以下「本件地域」という。)と認められる。
 そうすると、本件地域は、1上記(2)イ(ホ)に示された基本方針に基づき、幹線道路であるS通りの沿道であることから、規模に制限のない店舗等を許容する第二種住居地域に指定され、その結果、幹線道路の交通量を勘案して、沿道の後背地にある主に第一種中高層住居専用地域の住環境を保護する効果をもたらしている地域であり、また、2上記(2)イのとおり、P市プランにおいて、商業・文化機能等を強化した建築物の誘導等を推進する地域にあり、R駅前商業地域に隣接して、上記(2)ロ(ハ)のとおり、極めて交通の便も良く、中高層の集合住宅等のほか大規模な店舗や事務所の建築に適した地域で、3現に、上記(2)ロ(イ)のとおり、戸建住宅のほか、アパート、マンション、店舗併用集合住宅などの中高層の集合住宅及び事務所、大規模な店舗などの商業施設が混在し、4加えて、上記1(4)争いのない事実等ト及び上記(2)ロ(ロ)のとおり、建築物の建築をするために開発許可が必要となる地積500平方メートル以上の土地に係る建築物の建築状況をみると、集合住宅等や商業施設などが建築されている状況にあり、特に、本件土地とS通りを挟んで南側に位置する本件土地と規模、形状、接道状況が酷似する土地には、7階建ての分譲マンションが建築されていることなどから、本件土地は、社会的・経済的・行政的見地から総合的にみても、マンション適地等に該当するものと認められる。
 したがって、本件通達に定める広大地には当たらない。
ロ 請求人らは、上記2(1)のとおり、本件土地は広大な土地であり、本件土地近隣の標準的な分譲面積である100平方メートルから120平方メートルで別紙2の図1のとおり画地割すると、通り抜け道路が必要となるから、本件通達の定めを適用して評価すべき旨主張し、他方、原処分庁は、上記2(2)のとおり、本件土地について開発行為を行う場合は、通り抜け道路のような公共公益的施設用地となる地積を生じさせることなく開発許可を受けることができるなどの理由から、本件通達の定めの適用はない旨主張するが、上記イで判断したとおり、本件土地はマンション適地等に該当することから、戸建分譲を前提とした請求人ら及び原処分庁の主張についてはいずれも採用することはできない。

(4) 本件土地の評価額

 本件土地は、上記(3)記載のとおり、本件通達の定めの適用はなく、本件土地の評価額を算出すると、その評価額は、別表2の「原処分庁主張額14」欄と同額となる。

(5) 結論

 以上より、請求人らの相続税の課税価格及び納付すべき税額を算定すると、その額は別表1の「異議決定」欄記載の金額と同額になり、原処分にはこれを取り消すべき理由はない。

(6) 原処分のその他の部分については、請求人らは争わず、当審判所に提出された証拠資料等によっても、これを不相当とする理由は認められない。

トップに戻る