別紙2

当事者の主張

争点1(請求人は、本件土地を贈与により取得したものであるか否か。)について
原処分庁 請求人
(1) 1本件土地は、本件旧相続登記によって現に所有権移転登記がなされており、当該登記申請の際、遺産分割協議書又は相続分なきことの証明書が添付されていたとみるのが相当であり、また、2本件調停調書に当該遺産分割協議が無効である旨の記載があるとしても、そのことをもって共同相続人全員による遺産分割協議自体存在しなかったことにはならず、さらに、3請求人は、原処分庁所属の調査担当職員(以下「調査担当職員」という。)に対して、本件旧相続登記に際し、請求人は兄Hから詐欺や脅迫を受けていない旨申述していることから、本件旧相続登記の手続時において遺産分割協議は有効に成立していたとみるのが相当である。 (1) 1本件調停前に本件被相続人の遺産について遺産分割協議がなされた事実はなく、遺産分割協議書を見たことも、署名・捺印したこともないのであり、また、2不動産の所有権移転登記手続では印鑑証明が必要とされるのに、請求人は、本件旧相続登記の当時、印鑑登録さえしたこともないことからすると、本件旧相続登記の手続は、請求人の意思に基づかずに作成された偽造文書を用いて、兄Hが独断で行ったものとしか考えられない。
 したがって、遺産分割協議は、不成立である。
(2) 本件申立て及び本件調停の成立に至った原因、経緯、時期、目的、関係当事者の認識等の諸事情を総合してみても、1請求人は、本件旧相続登記から35年以上も経過した後に本件申立てを行っていること、2請求人は、調査担当職員に対し、姉Jの夫が本件相続不動産の一部を取得したことを起因として、いくらかの代償金を求めて本件申立てをした旨申述していること、3兄Hは、本件旧相続登記をした不動産の一部を売却又は貸付けし、売却代金又は貸付けによる地代等を収受していること、4本件調停では、本件土地のみに係る遺産分割協議が無効であるとしており、兄Hが本件旧相続登記により取得した他の土地に関しては何も触れられていないことからすると、本件土地の所有権移転は、遺産分割の合意解除によるものとは認められない。 (2) 上記(1)のとおり、遺産分割協議は不成立であるから、本件旧相続登記の原因となる遺産分割の事実はない。
 なお、農村部における相続は、家業を継ぐ長男の地位は絶対的であり、嫁に行った姉妹に対しては、長男から恩恵的に遺産の一部が分け与えられるというのが実態であり、遺産の全体が明らかにされずに、その姉妹には恩恵的に遺産の一部が分け与えられるという分割方法は決して珍しいことではなく、また、本件申立てにおいて、請求人は、兄Hに対し、本件相続不動産を明らかにするよう求めたが、兄Hがこれを拒んだため、遺産分割の対象財産を本件土地のみにすることに同意したものである。
 したがって、このことをもって本件土地の所有権移転が遺産の再配分によるものであるとする原処分庁の主張には理由がない。
(3) 以上のとおり、本件新相続登記は、遺産分割申立てによる調停の名の下に行われた相続人間の遺産の再配分と認められ、請求人は、平成17年8月10日に兄Hから贈与によって財産を取得したとみるのが相当である。 (3) 以上のとおり、請求人は、本件被相続人から相続によって本件土地を取得したものである。

争点2(請求人が贈与により取得したものとした場合における本件土地の価額は、市による買収予定価額によることが相当であるか否か。)について
原処分庁 請求人
 本件土地については、1贈与時点において道路用地になることが明らかな事実があること、2P市が、本件土地についての平成17年7月5日の売買交渉において、兄Hに対し本件買収予定価額と同額を示しており、本件買収予定価額が維持される状況にあったこと、3調査担当職員に対する請求人の申述によれば、請求人は、本件土地が買収されることを兄Hから聞いていることからすると、本件土地の取得の時における時価として客観的交換価値を示す価額である本件買収予定価額が現に存在していたと認められる。また、本件土地について評価基本通達に定められた評価方式で評価した場合の価額は、本件買収予定価額を時価とした場合に比べ著しく低額となり、評価基本通達に定められた評価方式により評価することがかえって実質的な租税負担の公平を著しく害すると認められる。  仮に、本件土地が贈与により取得されたものであるとしても、評価基本通達6は、本来、評価基本通達を機械的に適用した場合に、その価額が時価よりも高くなるなど不合理な結果が生じることがある場合に、主として納税者を救済するための定めであると解されている。
 原処分庁は、単に本件買収予定価額を時価として計算した場合に比べて、評価基本通達で定められた評価方法を適用した場合の贈与税額の方が著しく低額になるということだけをもって、課税の公平を著しく害すると判断しているが、このことは評価基本通達6の趣旨に反し、請求人が公平な課税を受ける権利の侵害にもつながる不当なものである。
 したがって、本件土地の評価は、評価基本通達6に定める特別の事情がある場合に当たり、本件買収予定価額とするのが相当である。  したがって、本件土地の評価は、評価基本通達に定められた評価方式により評価すべきである。

争点3(請求人の譲渡所得の計算に当たって、本件特例の適用があるか否か。)について
原処分庁 請求人
 争点1の(3)で述べたとおり、本件土地は、請求人が平成17年8月10日に兄Hから贈与により取得したものである。また、上記1の(4)のへの(イ)のとおり、本件土地について、P市が最初に買取り等の申出をしたのは平成15年9月3日であり、その時の本件土地の所有者は兄Hである。
 したがって、請求人に対し最初に買取り等の申出を受けた者は請求人である旨記載された本件申出証明書が交付されていたとしても、請求人は本件土地について最初に買取り等の申出を受けた者でないことから本件特例の適用はない。
 争点1の(3)で述べたとおり、本件土地の所有権は、本件新相続登記によって、兄H名義の所有権が本件被相続人が死亡した時点にさかのぼって抹消され、請求人が相続により取得したものである。
 したがって、本件申出証明書に最初に買取り等の申出を受けた者は請求人である旨記載されており、請求人が、本件土地について最初に買取り等の申出を受けた時の所有者であるから、本件特例の適用がある。

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