別紙

当事者の主張
請求人 原処分庁
1 本件一次修正申告書の提出は、次のとおり、通則法第65条第5項に規定する「調査があったことにより更正があるべきことを予知してされたものではないとき」に該当する。 1 本件一次修正申告書の提出は、次のとおり、通則法第65条第5項に規定する「調査があったことにより更正があるべきことを予知してされたものではないとき」には該当しない。
 また、本件一次修正申告に係る本件横領の行為は仮装に当たり、Aが請求人の経理の主担者であり、請求人の申告行為に重要な関係のある地位に就いていた者であったと認められ、同人の行為は請求人の行為と同一視できるから、重加算税が課されることとなる。
(1) 東京地裁昭和56年7月16日判決及びこの2審である東京高裁昭和61年6月23日判決において、いずれも更正予知の上での修正申告でないことの主張、立証責任は納税者側にある旨の判断がなされている。つまり、更正予知の上での修正申告でないことの主張、立証ができれば、加算税を課されないこととなる。
 これを本件についてみると、請求人が本件横領を発見し、直ちにこれを本件関与税理士に連絡、その指示により関係資料を取り揃え修正申告に至る行動を開始したが、全容の解明に至る前に、たまたま税務調査の予告があり、平成20年10月1日から調査を受けることとなった。
 そこで、本件調査の初日に調査担当職員に本件横領の事実を告げ、その段階で呈示できる資料も提出し、解明でき次第、修正申告書を提出する旨の申出を行っている。
 調査担当職員が、本件調査の最後の講評の際、「Aの件については、請求人及び本件関与税理士に任せます。」との意思表明をしているが、このことこそ正に請求人が自ら修正申告書を提出することを決意していることを調査担当職員が認識したことの現れであり調査に基づく更正予知後の修正申告ではないことの主張、立証として十分であると考える。
(1) 納税者が、修正申告書の提出を予定して、 これに先立って、課税庁に対して修正申告の決意表明を行っていた場合における「更正を予知してされたものでないとき」の判断については、納税者が、自ら進んで修正申告を確定的に決意したというだけでは足りず、課税庁に対して修正申告の確定的な決意の表明をし、この確定的な表明に基づいて修正申告をすることを必要とし、また、「修正申告をする決意」が客観的に認められる場合に限って認められるものと解するのが相当である。
 本件の場合、本件調査の初日である平成20年10月1日の時点において、本件横領の事実及びこれに係る経理処理等を確認している途中であり、引き続き解明したい旨の申出がなされた事実は認められるが、本件一次修正申告書は平成21年1月16日に提出されており、この申出をもって、請求人が修正申告書の提出を予定し、これに先立って、原処分庁に対して真に自発的な修正申告の確定的な決意の表明があったものとは認められない。
(2) 通則法第65条第5項は、「調査があったことにより更正があるべきことを予知して・・」と規定されているので、その調査に基づいて更正が行われることが予知されていたかどうかが問われる。言い換えれば、その調査に基づいて更正処分が行われることが予想されたかどうか、つまり、その調査により更正処分に至る確定的な非違事項の把握がされていたかどうかが判断基準となる。そうすると、単に調査があったというだけでは足りず、更正処分に至る非違事項が把握されていたかどうかということが重要なポイントとなる。
 本件の場合、本件横領に関しては、全く調査が行われていないという事実に対し、原処分庁が主張するような抽象論を主張しても意味はないといわざるを得ない。
(2) 通則法第65条第5項にいう「調査」とは、所得金額の計算の基礎となった事実や法令の解釈適用に係る誤りの個別具体的な指摘を意味するものではなく、課税標準又は税額等を認識するに至る一連の判断過程の一切を意味し、課税庁の証拠資料の収集、証拠の評価あるいは経験則を通じての課税要件事実の認定、租税法その他の法令解釈適用を含む税務調査全般を指すものと解される。
 調査担当職員は、請求人から本件調査の初日において本件横領の事実及び引き続き当該事実関係の解明に努めたい旨の申出並びに関係資料の提出を受けているのであるから、調査担当職員は当然に本件調査において本件横領に係る事項等をも念頭に置いた上で、請求人の帳簿類等の確認を行っているのであり、調査担当職員が請求人等に本件横領に係る事項等に関する具体的な質問をせず、また提出された資料についての説明を求めなかったとしても、本件規定にいう「調査」が全く行われていないと評価されるものではない。
2 本件二次修正申告のうち、平成17年2月期に係る修正申告は、措置法第42条の4に規定する中小企業等の試験研究費の額に係る法人税の特別控除の計算誤りがあったことによるものであり、通則法第68条第1項に規定する仮装又は隠ぺいの事実に基づいてなされたものではないから、通則法第65条第1項に規定する過少申告加算税相当額を超える部分については、取り消されるべきである。 2 平成17年2月期に係る法人税の本件一次修正申告においては、税額の計算に当たり過誤が認められ、本来修正申告すべき税額に比して過少に税額が計算されていることから、当該過少な税額となっている部分のうち本来修正申告すべき税額により、重加算税が課される部分の税額が圧縮されているものと認められる。
 そうすると、本件二次修正申告により納付すべき税額についても、通則法第68条第1項所定の基礎となるべき税額として重加算税を課することが相当である。

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