別紙3

争点1 所得税の更正処分等の取消しを求める請求の利益があるか否か

原処分庁 請求人
 請求人は、Hハイツに係る賃貸料収入は不動産所得ではなく、事業所得であるとして、課税標準の算定の一部を争いつつも、結果的に原処分の税額を超えて納付すべき税額があったことを認めているのであるから、そもそも平成19年分の所得税に係る更正処分等の一部取消しを求める審査請求の利益がない。  Hハイツは、販売を目的に仕入れた物件なので、同物件に係る賃貸料収入は、不動産所得ではなく、事業所得に当たる。
 そうすると、別表1の「審査請求」欄のとおり、請求人の平成19年分の総所得金額は、○○○○円(内訳、事業所得の金額○○○○円、不動産所得の損失金額○○○○円、給与所得の金額○○○○円)及び納付すべき税額は○○○○円となる。
 原処分庁が、審査請求における請求人の主張する納付すべき税額が原処分の税額を超えていることから、請求人に審査請求の利益がないと主張するのは、請求人の納税申告の意思を無視している。

争点2 Hハイツの取得に係る消費税額の控除の可否

請求人 原処分庁
 以下の(1)ないし(4)の理由から、請求人は、取得に伴い付随して得る賃貸料収入ではなく、販売を目的として中古資産であるHハイツを購入した。
 よって、Hハイツの取得は、個別対応方式の適用上、「課税資産の譲渡等にのみ要する課税仕入れ」に該当するので、消費税等の納付すべき税額の計算上、消費税法第30条第2項第1号に規定する「課税資産の譲渡等にのみ要する課税仕入れ等の税額」が適用され、Hハイツの取得に係る消費税額を全額控除することができる。
 原処分庁の主張は、Hハイツの売却時点で預かる消費税等については建物に係る消費税等を全額納めることと比較して不利益を生じ、課税の公平が損なわれる上、課税売上割合は変動的であり課税仕入れ時点での状況により控除対象仕入税額が大きく変わることから妥当でない。
(1) 平成20年中に他の物件を取得、売却しているように、Hハイツも販売の目的で購入したこと。
(2) Hハイツは、取得時に棚卸資産として帳簿に計上し、減価償却をしていないこと。
(3) 消費税法上、販売を目的として購入したか否かの判断は所得税法上の事業所得又は不動産所得の該当性と関係ないこと。
(4) Hハイツでは、「仕入不動産売却時期要綱」を作成し、販売用不動産として管理したこと。
 Hハイツは、請求人がその取得した時点において、115室中の10室が住宅の貸付けに供されており、非課税売上げである住宅の賃料が生じ又は生じることが予定されていること、215室中の4室が店舗等の貸付けに供されており、課税売上げである店舗等の賃料が生じ又は生じることが予定されていることから、その取得に係る課税仕入れの用途区分は、課税資産の譲渡等にのみ要する課税仕入れにも、その他の資産の譲渡等にのみ要する課税仕入れにも該当しない。
 よって、Hハイツの取得は、個別対応方式の適用上、課税資産の譲渡等とその他の資産の譲渡等に共通して要する課税仕入れに該当することから、請求人がHハイツを販売目的で購入したとしても、消費税等の納付すべき税額の計算上、控除が可能なのは、消費税法第30条第2項第1号に規定する「課税資産の譲渡等にのみ要する課税仕入れ等の税額」ではなく、同号に規定する「課税資産の譲渡等とその他の資産の譲渡等に共通して要する課税仕入れ等の税額」であるHハイツの取得に係る消費税額に、課税売上割合を乗じて計算された金額のみである。

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