(平成23年3月28日裁決)

《裁決書(抄)》

1 事実

(1) 事案の概要

 本件は、審査請求人(以下「請求人」という。)が、無人時間貸駐車場(通称:コインパーキング)事業を行う法人に対し、当該駐車場事業に係る用地として土地を貸し付けたところ、原処分庁が、当該土地の貸付けは、消費税法施行令第8条《土地の貸付けから除外される場合》に規定する「駐車場その他の施設の利用に伴って土地が使用される場合」に当たり、課税資産の譲渡等に該当するとして、消費税及び地方消費税(以下「消費税等」という。)の各決定処分並びに無申告加算税の各賦課決定処分をしたのに対し、請求人が、当該土地の貸付けは消費税法別表第一(第6条関係)に掲げられる非課税とされる土地の貸付けに当たり、当該貸付けの対価である賃料を除いた額で基準期間の課税売上高を計算すると、請求人は各処分の対象となった全期間において、消費税法第9条《小規模事業者に係る納税義務の免除》第1項に規定する消費税を納める義務を免除される事業者に該当するとして、その全部の取消しを求めた事案であり、争点は、当該無人時間貸駐車場(コインパーキング)に係る土地の貸付けが、消費税法施行令第8条に規定する「駐車場その他の施設の利用に伴って土地が使用される場合」に当たり、課税資産の譲渡等に該当するか否か等である。

(2) 審査請求に至る経緯

イ 確定申告について
 請求人は、平成17年1月1日から平成17年12月31日まで、平成18年1月1日から平成18年12月31日まで、平成19年1月1日から平成19年12月31日まで及び平成20年1月1日から平成20年12月31日までの各課税期間(以下、順次「平成17年課税期間」、「平成18年課税期間」、「平成19年課税期間」及び「平成20年課税期間」といい、これらを併せて「本件各課税期間」という。)に係る消費税等について、いずれも確定申告書を提出していなかった。
ロ 原処分庁の処分について
 原処分庁は、平成22年3月30日付で、請求人の本件各課税期間の消費税法第2条《定義》第1項第14号に規定する基準期間に当たる平成15年1月1日から平成15年12月31日まで(以下「平成15年課税期間」という。)、平成16年1月1日から平成16年12月31日まで(以下「平成16年課税期間」という。)、平成17年課税期間及び平成18年課税期間(以下、これらの課税期間を併せて「本件各基準期間」という。)における課税売上高はいずれも10,000,000円を超えることから、本件各課税期間の消費税等について、請求人は消費税法第9条第1項に規定する納税義務を免除される事業者(以下「免税事業者」という。)に該当しないとして、別表1の「決定処分等」欄のとおり、本件各課税期間の消費税等の各決定処分(以下、平成20年課税期間の決定処分を除く平成17年課税期間ないし平成19年課税期間の各決定処分を「本件各決定処分」という。)及び平成17年課税期間ないし平成19年課税期間に係る無申告加算税の各賦課決定処分(以下「本件各賦課決定処分」という。)をした。
ハ 異議申立て及び異議決定について
 請求人は、平成22年4月8日に、上記ロの本件各課税期間の消費税等の各決定処分及び本件各賦課決定処分を不服として、別表1の「異議申立て」欄のとおり、当該各処分の全部の取消しを求める異議申立てをしたところ、異議審理庁は、同年5月18日付で平成20年課税期間に係る申立てを却下、その他の課税期間に係る申立てを棄却とする異議決定をした。
ニ 審査請求について
 請求人は、異議決定を経た後の原処分に不服があるとして、平成22年6月9日に審査請求をした。

(3) 関係法令等

 別紙1のとおりである。

(4) 基礎事実

 次の事実については、請求人と原処分庁との間に争いがなく、当審判所の調査の結果によってもその事実が認められる。
イ a市c町○−○所在の土地(全体で865.37平方メートルあるもの。以下「本件不動産」という。)の使用状況等について
(イ) 平成13年11月10日以前の使用状況
 請求人は、本件不動産の一部(南側283.00平方メートルの部分)を建物の敷地として使用し、当該敷地部分を除く土地(本件不動産の北側の582.37平方メートルの部分)については、平成7年ころにアスファルトを敷設して、以後、賃貸を目的とした駐車場(26台分)として使用していた。
(ロ) 本件不動産の一部の貸付け等
 請求人は、平成13年10月24日に上記(イ)の駐車場(26台分)として使用していた土地(582.37平方メートルの部分)のうち、東側235.72平方メートルの部分(駐車場12台分。以下「本件土地」という。)につき、L社との間において、一時使用駐車場用地賃貸借契約(以下「本件甲契約」という。)を締結して、同年11月10日から、同社に対し、本件土地を同社が行う無人時間貸駐車場事業に係る用地として貸し付けた。
 なお、本件甲契約に係る契約書の要旨は、別紙2のとおりである。
 また、上記(イ)の駐車場(26台分)として使用していた582.37平方メートルの部分のうち、本件土地を除く346.65平方メートルの部分(駐車場14台分)については、従来どおり、請求人と各賃借人との間において締結した駐車場賃貸借契約に基づき、各賃借人に対し、駐車場(以下「M」という。)として貸し付けていた。
(ハ) 本件甲契約の解除及び本件土地の明渡し
 請求人は、平成15年9月5日付で、L社との間において「解約合意書」と題する書面(以下「本件解約合意書」という。)を取り交わして、上記(ロ)の本件甲契約を解除し、同年11月18日に、同社から本件土地の明渡しを受けた。
 なお、本件甲契約の解除に係る本件解約合意書の要旨は、別紙3のとおりである。
(ニ) 本件土地の再度の貸付け
 請求人は、L社から上記(ハ)の明渡しを受ける以前の平成15年10月14日付で、本件土地につき、N社(以下、L社と併せて「L社等」という。)との間において、一時使用駐車場用地賃貸借契約(以下「本件乙契約」といい、本件甲契約と併せて「本件各契約」という。)を締結して、上記(ハ)の明渡しを受けた後の同年12月1日より、同社に対し、本件土地を同社が行う無人時間貸駐車場事業に係る用地として引き渡し、審査請求日(平成22年6月9日)現在においても、本件乙契約に基づく貸付けを継続していた。
 なお、本件乙契約に係る契約書の要旨は、別紙4のとおりである。
ロ 本件土地の賃料について
(イ) L社関係
 L社は、請求人に対し、平成15年課税期間中において、本件甲契約に基づく賃料の額3,090,000円に別途消費税等相当額154,500円を含めた合計額3,244,500円を支払った。
(ロ) N社関係
 N社は、請求人に対し、消費税等相当額が含まれている本件乙契約に基づく賃料の額として、平成15年課税期間中においては315,000円を、平成16年課税期間ないし平成20年課税期間中においては各課税期間中にそれぞれ3,780,000円を支払った。
ハ 本件土地の賃料以外に係る請求人の課税売上高について
(イ) 請求人が行った本件土地の貸付け以外の消費税法上の資産の譲渡等
A 請求人は、平成15年課税期間ないし平成20年課税期間を通じて、上記ロの本件土地の賃料以外に、ピアノの講師としての収入を得る傍ら、M、a市d町○−○所在の土地(以下「S」という。)及びa市e町○−○所在の土地(以下「Q」という。)を、それぞれ請求人と各賃借人との間において締結した駐車場賃貸借契約に基づき、駐車場として賃貸し、賃料を得ていた。
B また、請求人は、平成16年課税期間ないし平成20年課税期間において、a市f町○−○所在の土地(以下「R」という。)を駐車場として賃貸し、賃料を得ていた。
C さらに、平成15年課税期間、平成17年課税期間、平成18年課税期間及び平成20年課税期間において、車庫証明発行手数料等の不動産賃貸に付随する収入を得ていた。
D 加えて、平成20年課税期間においては、本件不動産上の建物の一部を店舗又は事務所として第三者に賃貸したことによる賃料を得ていた。
(ロ) 課税資産の譲渡等に該当すると認められる上記(イ)の資産の譲渡等から算定される課税売上高
 請求人が行った上記(イ)のA、B及びDの資産の譲渡等及び上記(イ)のCの不動産賃貸に付随する収入のうち平成20年課税期間における不動産賃貸に付随する収入の一部である6,220,000円の受領に係る取引を除いたその余の資産の譲渡等が、課税資産の譲渡等(以下「課税取引」という。)に該当することにつき、請求人と原処分庁との間に争いはなく、当審判所の調査の結果によっても、これと矛盾する事実を認めるに足りないことから、平成15年課税期間ないし平成20年課税期間における本件土地の賃料以外に係る請求人の課税売上高は、別表2のとおりであり、平成20年課税期間を除き、いずれも10,000,000円を下回っている。

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2 主張

原処分庁 請求人
 本件土地の貸付けは、以下の(1)ないし(3)のとおり、課税取引に該当する。
 そうすると、本件土地の貸付けの対価の額を加算して計算した本件各基準期間における課税売上高は、いずれも10,000,000円を超えるから、請求人は課税事業者に該当する。
 なお、平成20年課税期間の決定処分は、課税事業者である請求人の消費税等の税額を還付するものであり、請求人の権利又は法律上の利益を何ら侵害するものではない。
 本件土地の貸付けは、以下の(1)ないし(3)のとおり、非課税取引に該当する。
 そうすると、本件各基準期間における課税売上高は、いずれも10,000,000円以下となり、請求人は免税事業者に該当する。
 なお、請求人は、免税事業者であるため、消費税等の税額を還付するものである平成20年課税期間の決定処分についても取消しを求める。
(1) 請求人は、駐車場として使用していた、アスファルトが敷設され、12台分の駐車区画ラインが引かれた本件土地を、L社等に貸し付けたものである。 (1) 請求人は、たまたまアスファルトを敷設していた本件土地をL社等に一時使用駐車場用地(土地)として貸し付けたものである。
(2) L社等は、本件土地を無人時間貸駐車場として使用するに当たり、路面の変更、駐車区画ラインの引き直し及び駐車機器等を設置した程度で、アスファルト等の請求人の設備をそのまま使用したものである。
 それは、L社等に対し、本件土地の返還の際に、駐車区画ラインの引き直し等の駐車場として貸し付けることができる状態への原状回復義務が課されていることからも明らかである。
(2) L社等は、本件土地を無人時間貸駐車場として使用するに当たり、駐車区画ラインを12台分から10台分に変更し、同駐車場の機械設備を新設するために本件土地を掘削し、配線設備を敷設するなど改修して使用しており、請求人が貸付ける直前の本件土地の形状をそのまま使用したものではない。
(3) 上記(1)及び(2)の理由により、本件土地の貸付けは、土地の貸付けではなく、施設の貸付けにほかならず、消費税法上非課税とされる資産の譲渡等(以下「非課税取引」という。)である土地の貸付けから除かれる消費税法基本通達6−1−5に定める土地を使用させる行為、すなわち、「施設の利用に伴って土地が使用される場合」に該当し、原処分は適法である。 (3) 原処分庁は、非課税取引である駐車場用地の貸付けと課税取引である駐車場の経営とは消費税法上絶対的な相違があるにもかかわらず、上記(1)及び(2)の性質を有する本件土地の貸付けにつき、消費税法基本通達6−1−5を誤って拡大解釈して課税取引に当たるとして原処分を行ったものであり、原処分は違法である。

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3 判断

(1) 法令解釈

イ 消費税法施行令第8条の趣旨
 消費税法第6条第1項は「国内において行われる資産の譲渡等のうち、別表第一に掲げるものには、消費税を課さない。」とし、同表第1号で「土地の譲渡及び貸付け(一時的に使用させる場合その他の政令で定める場合を除く。)」と規定して、土地の貸付けを原則として非課税取引としつつ、消費税法施行令第8条で消費税法別表第一第1号に規定する政令で定める場合として、「駐車場その他の施設の利用に伴って土地が使用される場合」を規定して、この場合の「土地の貸付け」を非課税取引から除き、課税取引としている。
 これは、消費税が物品又はサービスの消費に税負担を求めるという性格であるところ、土地の貸付けは、消費そのものではなく、単なる資本の振替ないし移転であると考えられることから、原則として非課税取引とするものの、「駐車場その他の施設の利用に伴って土地が使用される場合」は、土地そのものの貸付けではなく、駐車場その他の施設の利用に消費としての性格が認められることから、課税取引としたものであると解される。
ロ 消費税法基本通達6−1−5の(注)1の定めの相当性
 消費税法基本通達6−1−5の(注)1は、「事業者が駐車場として土地を利用させた場合において、その土地につき駐車場としての用途に応じる地面の整備又はフェンス、区画、建物の設置等をしていないときは、その土地の使用は、土地の貸付けに含まれる。」と定めているところ、このことは、「事業者が駐車場として土地を利用させた場合において、その土地に駐車場としての用途に応じる地面の整備若しくはフェンス、区画、建物の設置等をしている場合、その土地の使用は、施設の貸付けに該当する。」と解されるものであるが、この取扱いは、上記イのとおりの消費税法第6条第1項、同法別表第一第1号及び消費税法施行令第8条の各規定の法令解釈に沿って、駐車場として土地を利用させた場合に、それが土地そのものの貸付けに該当するのか、駐車場その他の施設の利用として土地が使用される場合に該当するのかの判断基準を示したものということができ、当審判所においても相当であると認める。

(2) 認定事実

 請求人提出資料、原処分関係資料及び当審判所の調査の結果によれば、次の事実が認められる。
イ 本件不動産に係る減価償却資産の取得状況について
 請求人は、本件土地を含む部分の本件不動産に、昭和59年1月にブロック積工事を、平成7年12月にアスファルト敷及びフェンス工事を、さらに、平成10年1月にブロック積、アスファルト敷、アルミ柵、ネットフェンス、駐車区画ライン、車止めブロック及び照明灯等の築造工事を行い、それぞれを請求人が所有する減価償却資産(構築物)として、平成12年分以後の各年分の所得税青色申告決算書(不動産所得用)に計上している。
ロ 本件土地の使用状況等について
(イ) 本件甲契約に基づく貸付け時の使用状況
 L社は、上記1の(4)のイの(ロ)の本件甲契約に基づき、平成13年11月5日までに、同社に所有権が帰属する次の設備及び機器の設置を完了し、同月6日から無人時間貸駐車場の営業を開始した。
A 集中精算機 1基
B フラップ板 10基
C 駐車区画内車止め(スチール製) 10基
D 集中精算機覆いテント 1基
E Uバリカー 7基
F 案内看板、P(駐車場)看板、約款看板及び注意書看板 各1基
G 一次電源ポール 1基
H 水銀灯 1基
I 駐車区画ラインの引き直し 10台分
(ロ) 本件甲契約終了時の本件土地の明渡し状況
 L社は、上記1の(4)のイの(ハ)の本件解約合意書における合意事項に基づき、平成15年11月18日に上記(イ)のAないしHの撤去を完了した。
 上記(イ)のIの駐車区画ラインの引き直しについては、請求人が、本件甲契約終了後のL社から本件土地の明渡しを受けた時点において、既に上記1の(4)のイの(ニ)の本件乙契約を締結し、N社に対し、本件土地を無人時間貸駐車場用地として貸し付けることを決定していたことにより、L社の負担による駐車区画ラインの引き直しを要しないとしたことから、L社は、上記(イ)のIの駐車区画ラインの引き直しを行わず、請求人に本件土地を明け渡した。
 なお、上記(イ)のAないしHの撤去後のアスファルトについては、本件甲契約において、舗装された状態にて請求人に明け渡すことが合意されていたが、上記の事情により、撤去部分の埋め戻しは行われなかった。
(ハ) 本件乙契約に基づく貸付け時の使用状況
 N社は、平成15年12月1日までに、上記1の(4)のイの(ニ)の本件乙契約に基づき、大部分にアスファルト舗装がされ、上記(イ)のIの駐車区画ライン(10台分)が引かれた状態の本件土地につき、当該ラインの引き直し等をして一時使用駐車場設備を設置し、無人時間貸駐車場の営業を開始した。

(3) 本件土地の各賃借人の答述及びその信用性

 L社等は、当審判所に対し、要旨以下のとおりそれぞれ答述した。
 なお、答述内容は、いずれも具体的かつ詳細になされているところ、上記1の(4)のイの(ロ)及び(ニ)の本件各契約の内容並びに上記1の(4)のロの(イ)及び(ロ)の各賃料の支払状況の内容と整合的であることに加え、各答述者はいずれも請求人と特別な利害関係を有している者ではないことから、その答述は十分に信用することができる。
イ L社
 L社は、請求人が本件土地の管理を委託しているV社から、請求人が駐車場として使用していた本件土地が空き車室となったため、無人時間貸駐車場として利用できないかとの商談を受け、既に敷設されているアスファルト舗装はそのまま利用し、既存の駐車場を借り受けるという内容で請求人と合意をした。
ロ N社
(イ) N社は、駐車場の時間貸ビジネスを展開する上で、駐車場を最初から作るのではなく、既存の駐車場をそのまま利用することは初期投資を考慮しても有効な手段であるとして、当該利用を積極的に行っており、本件乙契約も当該利用に係るものと認識している。
(ロ) N社は、請求人が本件土地の管理を委託しているV社を契約交渉の窓口として、既存の駐車場を借り受けるという内容で請求人と合意をした。

(4) 判断

イ 本件土地の貸付けが、消費税法施行令第8条に規定する「駐車場その他の施設の利用に伴って土地が使用される場合」に当たり、課税取引に該当するか否か。
(イ) 本件土地の使用状況について
 請求人は、上記(2)のイのとおり、L社に対して本件土地を貸し付けるまでに、本件土地上に存するアスファルト及び駐車区画ライン等を設置し、これらを請求人が所有する減価償却資産(構築物)として、平成12年分以後の各年分の所得税青色申告決算書(不動産所得用)に計上していることからすると、本件土地上には、駐車場としての機能を有した施設があったといえる。
 また、請求人は、上記1の(4)のイの(イ)及び(ロ)、上記(2)のイ、同ロの(イ)及び(ロ)並びに上記(3)のとおり、L社に対する貸付け以前も駐車場として利用し、アスファルトが敷設され駐車区画ラインが引かれた本件土地を、駐車場として引き続き使用可能な機能を維持した状態でL社に貸し付けたことを認めることができる。
 さらに、請求人は、上記1の(4)のイの(ニ)、上記(2)のロの(ロ)及び(ハ)のとおり、L社との間において締結した本件甲契約を解除した後、請求人が敷設したアスファルト上にL社の仕様による駐車区画ラインを残した状態の本件土地をN社に対して貸し付けていることからすると、駐車場として利用可能な機能を維持した状態でN社に本件土地を貸し付けたものと認めることができる。
(ロ) 本件甲契約締結の前提事情等について
 上記(3)のイのとおり、L社は、既に敷設されているアスファルト舗装はそのまま利用し、既存の駐車場を借り受けるという内容で請求人と合意をしたとしていることからすると、L社は、本件甲契約の締結に当たり、従前から駐車場として利用されていた本件土地には減価償却資産であるアスファルト舗装が設置されていること、換言すると、駐車場としての機能を備えた施設があることに着目し、これを利用して無人時間貸駐車場を経営しようという前提で本件甲契約を締結したものであると認めるのが相当である。
 そして、本件甲契約においては、別紙2のとおり、L社が、本件土地において無人時間貸駐車場の営業を開始するに当たり必要なコイン式無人時間貸駐車機器、看板類、フェンス及び場内照明燈等を設置し、無人時間貸駐車場として使用することを請求人において承諾すること(第1条)、L社の時間貸しの利用車両が、本件土地の附属定着物及び既存設備に損傷等を与えた場合等、L社の責めに帰する事由による請求人に対する損害について、L社が、自己の負担によりこれを補修・交換等の上、原状回復する義務を負うこと(第19条)が合意されており、これらの合意の内容は、本件甲契約が本件土地上の上記(2)のイのアスファルト舗装等の減価償却資産(構築物)の存在を前提としていることをうかがわせるものといえる。
 また、本件甲契約において、賃料を月額300,000円(消費税別)とする旨の定めがあるところ、上記1の(4)のロの(イ)のとおり、請求人は、実際にL社から賃料に加えて消費税等相当額の支払を受けていたのであるから、請求人においても、本件土地の賃貸に関し消費税等の課税の認識があったものと推認することができる。
 これらの事実によれば、請求人も、本件甲契約の相手方であるL社と同様に、L社が駐車場としての機能を備えた本件土地を利用して無人時間貸駐車場を営むことを認識した上で、その前提で本件甲契約を締結するに至ったものであると認めるのが相当である。
(ハ) 本件乙契約締結の前提事情等について
 上記(3)のロのとおり、N社は、駐車場の時間貸ビジネスを展開する上で、駐車場を最初から作るのではなく、既存の駐車場をそのまま利用することは初期投資を考慮しても有効な手段であるとして、既存の駐車場を借り受けるという内容で請求人と合意をしたとしていることからすると、N社も、L社と同様に、本件乙契約の締結に当たり、本件土地には駐車場としての機能を備えた施設があることに着目し、これを利用して無人時間貸駐車場を経営しようという前提で本件乙契約を締結したものであると認めるのが相当である。
 そして、本件乙契約においては、別紙4のとおり、本件土地を時間貸駐車場機器、同機器運営用看板及び照明設備を設置する目的によりN社に使用させること(第1条)、万一、N社の時間貸し利用者が、本件土地あるいは隣接の月ぎめスペース内に存する既存設備等に損害を与えた場合、N社は、これを自己の責任と負担により、補修・交換等の上、原状回復する義務を負うこと(第6条第3項)、本件乙契約における「原状」とは、アスファルト舗装については整然と舗装された状態とし、また、駐車区画ラインについては本件土地に区画12台分の駐車ができるペイントを施した上、各区画に車止めも設置された状態を指すものとすること(第7条第1項)が合意されており、これらの合意の内容は、本件乙契約が本件土地上の上記(2)のイのアスファルト舗装等の減価償却資産(構築物)の存在を前提としていることをうかがわせるものといえる。
 また、本件乙契約において、賃料を月額315,000円(消費税込み)とする旨の定めがあること、また、上記1の(4)のロの(ロ)のとおり、請求人は、実際に、N社から消費税相当額を含めた月額賃料の支払を受けていたのであるから、請求人においても、本件土地の賃貸に関し消費税等の課税の認識があったものと推認することができる。
 これらの事実によれば、請求人は、本件乙契約の相手方であるN社と同様に、N社が駐車場としての機能を備えた本件土地を利用して無人時間貸駐車場を営むことを認識した上で、その前提で本件乙契約を締結するに至ったものであると認めるのが相当である。
(ニ) 法令等へのあてはめ
A 上記(1)のとおり、消費税法施行令第8条は、土地の貸付けが消費そのものではなく、単なる資本の振替ないし移転であると考えられることから、原則として非課税取引とするものの、「駐車場その他の施設の利用に伴って土地が使用される場合」は、土地そのものの貸付けではなく、駐車場その他の施設の利用に消費としての性格が認められることから、課税取引としたものであると解されるところ、上記(イ)ないし(ハ)のとおり、請求人は、本件甲契約の締結前も駐車場として利用していたアスファルト舗装等の減価償却資産(構築物)が存する本件土地につき、L社等との間において、本件土地に無人時間貸駐車場の運営上必要な施設が追加された上で、無人時間貸駐車場として利用されることを認識しながら、本件土地上の駐車場として利用可能なアスファルト舗装等の減価償却資産(構築物)が存するまま貸与する旨合意し、実際に貸与したものであるから、本件各契約に基づく賃貸借は、いずれも単なる「土地の貸付け」ではなく、駐車場としての機能を備えた施設の利用に伴って土地が使用される場合に該当するものと認めるのが相当である。
B 以上によれば、本件土地の貸付けは、消費税法施行令第8条に規定する「駐車場その他の施設の利用に伴って土地が使用される場合」に当たり、課税取引に該当することから、本件土地の貸付けの対価である上記1の(4)のロの各賃料の額は課税売上高に含まれる。
ロ 請求人の主張について
(イ) 請求人は、たまたまアスファルトを敷設していた本件土地をL社等に一時使用駐車場用地(土地)として貸し付けたものであり、L社等が、本件土地を無人時間貸駐車場として使用するに当たり、本件土地を改修して使用しており、貸し付ける直前の本件土地の形状をそのまま使用したものではないから、本件土地の貸付けは、非課税取引とされる土地の貸付けに該当する旨主張する。
 上記(2)のロの(イ)及び(ハ)のとおり、確かに、L社等は、無人時間貸駐車場の経営をするために、駐車区画ラインの引き直しを行うなど本件土地上に存する施設に手を加えてはいるが、上記イの(ニ)のAのとおり、請求人が本件土地を貸し付けた時点においても、駐車場として利用可能な施設を有した状態であり、当該貸付け時の状況をもって、本件各契約に基づく賃貸借は、いずれも単なる「土地の貸付け」ではなく、駐車場としての機能を備えた施設の利用に伴って土地が使用される場合に該当すると判断される以上、本件各契約に基づく賃貸借の後になされた上記のL社等の行為は当該判断を左右するものではなく、請求人の主張を採用することはできない。
(ロ) また、請求人は、原処分が違法である理由として、原処分庁が、非課税取引である駐車場用地の貸付けと課税取引である駐車場の経営とは消費税法上絶対的な相違があるにもかかわらず、本件土地の貸付けにつき、消費税法基本通達6−1−5を誤って拡大解釈し、課税取引に当たるとしたものである旨主張している。
 請求人の当該主張の趣旨は、まる1消費税法基本通達6−1−5は自らが駐車場の経営をした場合の定めであって、本件土地の貸付けのように駐車場用地として貸し付けた場合の判断基準として用いるべきではない旨の主張、又は、まる2本件土地の貸付けは当該通達の定めた場合に当たらない旨の主張と解し得るため、以下、それぞれについて検討する。
 まず、まる1の主張については、消費税法基本通達6−1−5の(注)1は、「事業者が駐車場として土地を利用させた場合」としており、その文理上、当該通達は、必ずしも事業者自らが駐車場の経営をした場合に限定した定めであるということはできない。
 また、まる2の主張については、上記(1)のロのとおり、消費税法基本通達6−1−5の(注)1は、事業者が駐車場として土地を利用させた場合の当該土地に駐車場としての用途に応じる地面の整備若しくはフェンス、区画、建物の設置等をしている場合、その土地の使用は、施設の貸付けに該当する旨を定めているものと解されるところ、上記(2)のイ及び上記イの(イ)のとおり、請求人は、アスファルト舗装という減価償却資産(構築物)が設置され、駐車区画ライン及びフェンス等の設置がされた、駐車場としての機能を有した本件土地をL社等に貸し付けて利用させている以上、当該通達の定めに照らしても、本件土地のL社等への貸付けは、単なる土地の貸付けではなく、施設の利用に伴って土地が使用される場合に該当するものといえる。
 以上によれば、請求人の主張には理由がない。
ハ 小括
 以上のとおり、請求人が行った本件土地の貸付けは、課税取引に該当し、非課税取引とされる土地の貸付けには当たらない。

(5) 本件各課税期間に係る消費税の納税義務は免除されるか否か。

 本件土地の貸付けに係る対価である賃料は、上記(4)のイ及びハのとおり、消費税法第4条第1項により消費税の課税の対象となることから、本件土地の賃料の額は、本件各基準期間の各課税売上高に含まれる。
 よって、上記1の(4)のハ、すなわち、別表2の争いなく認めることができる本件各基準期間における各課税売上高に、上記1の(4)のロのとおりの平成15年課税期間ないし平成18年課税期間における本件土地の賃料の額をそれぞれ含めて、本件各基準期間の各課税売上高を計算すると、別表3のとおり、いずれも10,000,000円を超えることから、請求人は、本件各課税期間に係る消費税の納税義務を免除されない。

(6) 原処分について

イ 平成20年課税期間の消費税等の決定処分の取消しを求める審査請求について
 請求人は、審査請求において、平成20年課税期間の消費税等の決定処分について免税事業者に該当することから当該処分は違法であるとして、その全部の取消しを求めているところ、原処分庁は、別表1のとおり、請求人は平成20年課税期間の基準期間である平成18年課税期間における課税売上高が10,000,000円を超え、消費税法第9条に規定する免税事業者とならないとして、還付金の額に相当する税額を消費税について○○○○円、地方消費税について○○○○円とする平成20年課税期間の消費税等の決定処分をしたものであることが認められる。
 ところで、租税行政処分に対して審査請求等の不服を申し立てることが認められるのは、当該租税行政処分によって請求人の権利又は法律上の利益が侵害されている場合に限られる。
 そうすると、本件における消費税等を還付する決定処分は、請求人の権利又は法律上の利益を侵害するものではないから、請求人は、同決定処分に対して審査請求の利益を有さず、審査請求を申し立てることはできない。
 したがって、請求人の平成20年課税期間の消費税等に対する審査請求は不適法であるから、本件における消費税等を還付する決定処分の適法性を判断するまでもなく、却下するのが相当である。
ロ 本件各決定処分について
 上記(4)及び(5)のとおり、本件各課税期間において、請求人は消費税の課税事業者に当たることが認められるところ、平成17年課税期間ないし平成19年課税期間の各課税売上高については、上記(4)及び(5)の判断に基づき算定された別表3の「課税売上高(税抜き)」欄のとおり、本件各決定処分における課税売上高と同額となる。
 さらに、本件の全証拠によれば、原処分庁は、請求人の平成17年分ないし平成19年分の所得税の各確定申告における事業所得及び不動産所得に係る必要経費の額を基礎として、平成17年課税期間ないし平成19年課税期間の課税仕入れに係る消費税額の控除額をそれぞれ算定したものと認められるところ、当審判所の調査の結果によっても、当該各課税期間の課税仕入れに係る消費税額の控除額は本件各決定処分に係る各課税仕入れに係る消費税額の控除額を上回ると認めるに足りない。
 以上によれば、本件各課税期間における請求人が納付すべき消費税等の額が、本件各決定処分における納付すべき消費税等の額(別表1の「決定処分等」欄のとおり)を下回ると認めることはできないから、本件各決定処分は適法である。
ハ 本件各賦課決定処分について
 本件各決定処分は、上記ロのとおり適法であり、期限内申告書の提出がなかったことについて、国税通則法第66条第1項ただし書に規定する正当な理由がある場合に該当しないので、同条第1項又は第2項及び地方税法附則第9条の4又は同法附則第9条の9第1項の規定により、本件各賦課決定処分は適法である。

(7) 原処分のその他の部分については、請求人は争わず、当審判所に提出された証拠書類等によってもこれを不相当とする理由は認められない。

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