(平成23年4月21日裁決)

《裁決書(抄)》

1 事実

(1) 事案の概要

 本件は、審査請求人D、E及びF(以下、これら3名を併せて「請求人ら」という。)が、Dが相続により取得した土地は財産評価基本通達に定める広大地に該当するとして行った更正の請求について、原処分庁が、当該土地は広大地に該当しないとして更正をすべき理由がない旨の通知処分をしたのに対し、請求人らが違法を理由にその全部の取消しを求めた事案であり、争点は、当該土地が広大地に該当するか否かである。

(2) 審査請求に至る経緯

 審査請求(平成22年5月6日請求)に至る経緯は、別表1のとおりである。
 なお、請求人らは、Dを総代として選任し、審査請求の日と同日にその旨を当審判所へ届け出た。

(3) 関係法令等

イ 相続税法第22条《評価の原則》は、相続により取得した財産の価額は、特別の定めのあるものを除き、当該財産の取得の時における時価による旨規定している。
ロ 財産評価基本通達(昭和39年4月25日付直資56ほか国税庁長官通達。ただし、平成20年3月14日付課評2−5ほかによる改正前のものをいい、以下「評価通達」という。)は、財産の価額について、以下のとおり定めている。
(イ) 評価通達1《評価の原則》は、財産の価額は、時価によるものとし、時価とは、相続により財産を取得した日において、それぞれの財産の現況に応じ、不特定多数の当事者間で自由な取引が行われる場合に通常成立すると認められる価額をいい、その価額は、この通達の定めによって評価した価額による旨定めている。
(ロ) 評価通達7−2《評価単位》の(1)は、宅地は、1画地(利用の単位となっている1区画の宅地をいう。以下同じ。)を評価単位とする旨定めている。
(ハ) 評価通達24−4《広大地の評価》は、その地域における標準的な宅地の地積に比して著しく地積が広大な宅地で都市計画法第4条《定義》第12項に規定する開発行為(以下「開発行為」という。)を行うとした場合に公共公益的施設用地の負担が必要と認められるもの(評価通達22−2《大規模工場用地》に定める大規模工場用地に該当するもの及び中高層の集合住宅等の敷地用地に適しているもの(その宅地について、経済的に最も合理的であると認められる開発行為が中高層の集合住宅等を建築することを目的とするものであると認められるものをいう。)を除く。以下「広大地」という。)の価額は、その広大地が同通達13《路線価方式》に定める路線価地域に所在する場合、その広大地の面する路線の路線価に、評価通達15《奥行価格補正》から評価通達20−5《容積率の異なる2以上の地域にわたる宅地の評価》までの定めに代わるものとして次の算式により求めた広大地補正率を乗じて計算した価額にその広大地の地積を乗じて計算した金額によって評価する旨定めている(以下、評価通達24−4を「広大地通達」という。)。
(算式)
 広大地補正率 = 0.6 − 0.05 × 広大地の地積/1,000平方メートル 
 なお、評価通達16は側方路線影響加算、評価通達17は二方路線影響加算、評価通達18は三方または四方路線影響加算、評価通達20は不整形地の評価、評価通達20−2は無道路地、評価通達20−3は間口の狭小な宅地等の評価、評価通達20−4はがけ地等を有する宅地の評価について、それぞれ定めており、評価通達19の内容は削除されている。

(4) 基礎事実

 次の事実については、請求人らと原処分庁との間に争いがなく、当審判所の調査の結果によってもその事実が認められる。
イ 相続の開始
 請求人らは、平成19年12月○日(以下「本件相続開始日」という。)に死亡したG(以下「被相続人」という。)に係る相続(以下「本件相続」という。)の共同相続人4名のうちの3名である。
 なお、請求人ら以外の共同相続人は、被相続人の配偶者であるHである。
ロ 広大地該当性が問題となっている土地等について
 Dは、a市c町○−○、同○番の地積合計742.98平方メートルの土地(以下「甲土地」という。)及び同○番の地積489.45平方メートルの土地(以下「乙土地」といい、甲土地と併せて「本件各土地」という。)を本件相続により取得した。
 甲土地上には、平成14年1月18日に新築された延床面積965.7平方メートル、総戸数16戸の鉄筋コンクリート造陸屋根4階建共同住宅(以下「甲地上建物」という。)が存在し、乙土地上には、平成2年8月8日に新築された延床面積950.79平方メートル、総戸数17戸の鉄骨造陸屋根4階建共同住宅(以下「乙地上建物」といい、甲地上建物と併せて「本件各建物」という。)が存在する。
 また、本件各建物は、本件相続開始時において各入居者に賃貸されていた。
ハ 本件相続に係る納税申告
 請求人らは、平成20年9月29日、本件相続に係る相続税の申告書を原処分庁に提出した。
 なお、同申告書における本件各土地の評価額は、広大地通達を適用せずに算定されていた。
ニ 本件各土地以外の土地に係る更正の請求
 請求人らは、平成21年8月17日に、本件相続によりH及びDが共同で相続したa市c町○−○の地積797.00平方メートルの土地(以下「丙土地」という。)が広大地に該当するとして、相続税の更正の請求を原処分庁に対して行った。
ホ 上記ニの更正の請求に係る更正処分
 原処分庁は、平成21年10月2日付で、上記ニの相続税の更正の請求についてはその理由があるとして、別表1の「更正処分」欄のとおり、相続税を減額する内容の更正処分(以下「別件減額更正処分」という。)を行った。
ヘ 本件各土地に係る更正の請求
 請求人らは、平成21年10月21日に、本件各土地が広大地に該当するとして、相続税の更正の請求を原処分庁に対して行った。
ト 上記ヘの更正の請求に係る通知処分
 原処分庁は、平成22年1月13日付で、上記ヘの相続税の更正の請求については、その理由がないとして原処分を行った。

トップに戻る

2 主張

 別紙2のとおりである。

トップに戻る

3 判断

(1) 法令等の解釈

イ 財産の評価について
 相続税法第22条は、相続財産の価額は、特別の定めのあるものを除き、当該財産の取得の時における時価によるべき旨規定しているが、ここでいう時価とは、相続開始時における当該財産の客観的な交換価値をいうものと解される。
 もっとも、客観的な交換価値は、必ずしも一義的に確定されるものではないから、課税実務上は、相続財産評価の一般的基準が評価通達によって定められ、そこに定められた画一的な評価方式によって相続財産を評価することとされている。これは、相続財産の客観的な交換価値を個別に評価する方法を採ると、その評価方式、基礎資料の選択の仕方等により異なった評価額が生じることが避け難く、また、回帰的かつ大量に発生する課税事務の迅速な処理が困難となるおそれがあること等から、あらかじめ定められた評価方式によりこれを画一的に評価する方が、納税者間の公平、納税者の便宜、徴税費用の節減という見地からみて合理的であるという理由に基づくものと解される。
 そうすると、相続財産の評価は、評価通達に定められた方式によらないことが正当として是認されるような特別な事情がある場合を除き、課税の公平の観点から、評価通達の評価方式に基づいて行うことが相当と解される。
ロ 広大地通達について 
(イ) 減額補正の趣旨等
 広大地通達は、広大地について減額補正をして評価すべきものとしているが、それは、次のような趣旨に基づくものと解される。すなわち、その属する地域における標準的な宅地の地積に比して著しく広大である宅地につき、それが評価時点において経済的に最も合理的に使用(以下、宅地を経済的に最も合理的に使用することを「最有効使用」ともいう。)されておらず、例えば、戸建住宅地等として開発行為を行う場合には、開発許可を受けるために道路、公園等の公共公益的施設の設置用地の負担が必要となり、かなりの潰れ地が生じることがあるところ、このような潰れ地の発生という減価要因を評価通達15から20−5により減額補正するだけでは十分といえない場合があることから、これを当該宅地の価額に影響を及ぼすべき客観的な個別事情として、別途価値が減少していると認められる範囲で減額補正することとしたものと解される。
 このような広大地通達の趣旨に照らすと、評価対象宅地につき、現に最有効使用がされていない場合であっても、その時点における当該宅地の属する地域の標準的使用の状況に照らして、当該宅地を分割することなく一体として使用することが最有効使用であると認められる場合には、公共公益的施設用地の負担の必要がないものと考えられるから、このような宅地は広大地に該当しないものと解するのが相当である。また、既に開発行為を了しているマンションなどの敷地用地や現に宅地として有効利用されている建築物の敷地用地などについては、標準的な地積に比して著しく広大であっても、特段の事情がない限り、「広大地」には該当しないことになるものと解せられる。
(ロ) 広大地通達における「その地域」及び「開発行為」等
 広大地通達では、「その地域における標準的な宅地の地積に比して地積が広大な宅地で開発行為を行うとした場合に公共公益的施設用地の負担が認められるもの」の価額の算定について、所定の減額計算を行う旨定められており、ここにいう「その地域」とは、まる1河川や山などの自然的状況、まる2行政区域、まる3都市計画法による土地利用の規制など公法上の規制等、まる4道路、まる5鉄道及び公園など、土地の使用状況の連続性及び地域の一体性を分断する場合がある客観的な状況を総合勘案し、利用状況、環境等がおおむね同一と認められる、ある特定の用途に供されることを中心としたひとまとまりの地域を指すものと解するのが相当である。
 また、「開発行為」とは、都市計画法第4条第12項に規定されている「主として建築物の建築又は特定工作物の建設の用に供する目的で行う土地の区画形質の変更」をいうものと解するのが相当であり、単なる分合筆や、形式的な区画の分割又は統合によって建築物等を建築する行為(建築物の建築に際し、切土、盛土等の造成工事を伴わず、かつ、従来の敷地の境界の変更について、既存の建築物の除却や塀、垣、柵等の除却、設置が行われるにとどまるもので、公共施設の整備の必要がないと認められるもの)は開発行為に該当せず、当該開発行為に該当しない場合には、国土交通省による開発許可制度の運用指針、都市計画法等の法令及び市長村における宅地開発指導要綱等に基づく道路等の公共公益的施設用地の負担が不要になるものと解される。

(2) 認定事実

 請求人らの提出資料、原処分関係資料及び当審判所の調査の結果によれば、本件各土地については次の事実が認められる。
イ 本件各土地及び丙土地に係る土地区画整理事業等について
 本件各土地及び丙土地は、a市が施行したd地区土地区画整理事業(昭和○年○月○日事業認可、平成○年○月○日換地処分の公告。以下「本件土地区画整理事業」という。)に基づき換地された土地であり、土地区画整理事業による開発済みの土地である。
ロ 本件各土地及び丙土地並びに本件各建物の位置、使用状況等
 本件各土地及び丙土地は、都市計画法第8条《地域地区》第1項第1号に規定する第2種住居地域(別紙6中の太線で囲まれた地域)に指定された地域(以下「本件第2種住居地域」という。)に所在し、具体的な位置関係、形状及び使用状況等は以下のとおりである。
(イ) 甲土地及び甲地上建物について
A 甲土地は、別紙6及び別紙8中の「甲土地」と表示された場所にあり、K鉄道L駅の西方約2,000メートル、第一級河川M川の東方約300メートル、国道N号線P交差点の西方約250メートルに位置する。
B 甲土地は、南北の長さ約28メートル、東西の長さ約26メートル、ほぼ、く形の土地で、西側及び南側の二方において公道に面しており、西側の公道は幅員約7メートル、南側の公道は幅員約5メートルである。
C 甲土地は、本件土地区画整理事業の施行期間中に、被相続人がa市に対し、都市計画法第29条《開発行為の許可》に規定する開発許可に関する工事の検査を受けた後、平成14年1月18日に新築された甲地上建物の敷地及び甲地上建物の入居者専用の駐車場用地として使用されている。
 甲地上建物に係る賃貸料として定められた金額に対する実際に賃貸に供されたこと等より収入すべき金額の割合(以下、「実効収入割合」という。)は、平成19年1月1日から本件相続開始日である同年12月26日までの間について98.19%であり、平成20年1月1日から同年末までの間について98.53%であった。
 なお、甲地上建物の減価償却資産の耐用年数等に関する財務省令で定める耐用年数は47年であり、当該建物について、外観上建築後の経年によることを超えて著しく老朽化又は損傷している事実は認められない。
(ロ) 乙土地及び乙地上建物について
A 乙土地は、別紙6及び別紙8中の「乙土地」と表示された場所にあり、甲土地の南側に幅員約5メートルの公道を挟んで位置する。
B 乙土地は、南北の長さ約29メートル、東西の長さ約17メートル、ほぼ、く形の土地で、西側及び北側の二方において公道に面しており、西側の公道は幅員約7メートル、北側の公道は幅員約5メートルである。
C 乙土地は、本件土地区画整理事業の施行期間中に、被相続人がa市に対し、土地区画整理法第76条《建築行為等の制限》第1項に規定する建築行為の許可を受けた後、平成2年8月8日に新築された乙地上建物の敷地及び乙地上建物の入居者専用の駐車場用地として使用されている。
 乙地上建物に係る実効収入割合は、平成19年1月1日から同年12月26日までの間について100%であり、平成20年1月1日から同年末までの間について96.73%であった。
 なお、乙地上建物の減価償却資産の耐用年数等に関する財務省令で定める耐用年数は34年であり、当該建物について、外観上建築後の経年によることを超えて著しく老朽化又は損傷している事実は認めらない。
(ハ) 丙土地について
A 丙土地は、別紙6及び別紙8中の「丙土地」と表示された場所にあり、乙土地のさらに南東約40メートルに位置し、南東側及び南側で公道に面している。
B 丙土地は、本件相続開始日においては更地であった。
ハ 本件第2種住居地域の状況について
(イ) 建ぺい率等
 本件第2種住居地域において、建築基準法によるいわゆる建ぺい率は60%、容積率は200%である。
(ロ) 周囲の状況
 別紙6のとおり、本件第2種住居地域は、その西側及び北側で第1種住居地域に、東側及び南東側で準工業地域に、南側で工業地域と接している。これらの地域と本件第2種住居地域は、建築基準法によるいわゆる建ぺい率及び容積率は異ならないものの、別表4のとおり、建築できる建物の用途等の制限において異なっている。例えば、第2種住居地域は、第1種住居地域と比して別表4の順号(15)の建築することができる事務所等の面積制限の有無や順号(19)及び順号(20)の遊技場用建物の建築の可否などにおいて異なり、準工業地域及び工業地域と比して順号(22)の営業用倉庫、3階以下又は床面積の合計が300平方メートルを超える自動車車庫(一定規模以下の付属車庫等を除く)の建築の可否などにおいて異なる。
(ハ) 状況概要
A 本件第2種住居地域は別紙6の太線で囲まれた部分のとおりであるところ、当該地域内はすべてe県a市内に所在し、県道又は国道等のいわゆる幹線道路や一級河川等は当該地域内を通過していない。
B 本件第2種住居地域には、平成23年3月14日現在、別表2及び別表3のとおり、戸建住宅、中高層の建物、倉庫、車庫及び工場の敷地の用に供されている土地並びに私道、農地及び駐車場その他の雑種地の敷地に供されている土地が混在しており、各土地の面積も大小様々な状況にある。そして、当該画地の状況と平成○年○月○日付の本件土地区画整理事業に係る換地図に示された土地の区画の状況とはほぼ同様の状況にある。ただし、下記(ニ)に掲げる地域については、周辺の工業地域又は準工業地域の土地と一体となって利用されている土地が多く含まれ、建築物の用途制限などについて異なる規制の影響を受ける可能性があるので、別表2及び別表3による集計、分析の対象としていない。
C 本件第2種住居地域に所在する土地について、農地、私道及び駐車場その他の雑種地を除いてみると、宅地として利用されている土地の地積の総合計は、別表3の「宅地合計」の「計」欄のとおり、53,984.01平方メートルである。
 これらの宅地の用途別の面積の割合についてみると、戸建住宅用地が約26%、共同住宅用地が約22%、法人等事業所用地が約21%、倉庫・車庫・工場用地が約30%である。
 また、別表3の「500平方メートル以上」の「宅地合計」の「画地数」欄のとおり、これらの宅地のうちa市における開発行為の許可の要否の基準となる500平方メートル以上の画地は35個あり、その合計面積は32,767.53平方メートルであり、地積が500平方メートル未満の画地は195個あり、その合計面積は21,216.48平方メートルである。
(ニ) 本件第2種住居地域のうち、周辺の地域の土地と一体となって利用されている画地の含まれる地域について 
A 別紙7のまる1として太線で囲まれた部分について
 当該部分は、a市f地区の一部であり、工業地域に係る土地と一体となって、ガス供給会社や倉庫及び資材置場敷地として利用されている地積が大きい土地を含む地域である。
B 別紙7のまる2として太線で囲まれた部分について
 当該部分は、a市g地区の一部であり、準工業地域に係る土地と一体となって、物流センターやガスサービス会社又は集合住宅の敷地として利用されている地積が大きい土地を含む地域である。
(ホ) 近傍の「公示地」及び「基準地」
 請求人が、その主張の中で引用する本件各宅地の近傍の地価公示地であるa市h町○−○、及び、e県の基準地である同町○−○の各宅地は、別紙6中の「地価公示地」又は「e県基準地」と表示された場所にあり、いずれも都市計画法第8条第1項第1号に規定する第1種住居地域に所在する。

(3) 判断

 本件審査請求においては、上記2のとおり、本件各土地が広大地通達で定める「広大地」に該当するか否かに関して争いがあるが、この点を除き、本件相続に係る相続財産の評価につき、評価通達の定めによることについては請求人らと原処分庁との間に争いはなく、当審判所の調査の結果によっても、評価通達に定められた方式によらないことが正当として是認されるような特別な事情は認められない。
 そこで以下、評価通達の定めに従って判断する。
イ 本件各土地の所在する「その地域」について
 「その地域」については、上記(1)のロの(ロ)のとおり、まる1河川や山などの自然的状況、まる2行政区域、まる3都市計画法による土地利用の規制など公法上の規制等、まる4道路、まる5鉄道及び公園など、土地の使用状況の連続性及び地域の一体性を分断する場合がある客観的な状況を総合勘案し、利用状況、環境等がおおむね同一と認められる、ある特定の用途に供されることを中心としたひとまとまりの地域をいうところ、上記(2)のハ、別表2及び別紙6のとおり、本件第2種住居地域内には一級河川等の大きな河川や山等、いわゆる幹線道路、鉄道、大きな公園等は存在せず、さらに、当該地域はすべて同一の行政区域及び都市計画法による同一の建築物の用途制限の下にあることが認められ、その環境としてはおおむね同一であることが認められる。そして、上記(2)のハ及び別紙6のとおり、公法上の規制の異なる工業地域及び準工業地域に存する土地と一体となって利用されるなどしている土地が存する上記(2)のハの(ニ)の部分を除いては、本件第2種住居地域の利用状況はおおむね同一であると認めることができる。
 以上によれば、本件第2種住居地域から、上記(2)のハの(ニ)の部分(別紙7の太線で囲まれたまる1及びまる2の各部分)を除いた部分、すなわち、別紙8の太線で囲まれた地域は、その利用状況、環境等がおおむね同一と認められる、ある特定の用途に供されることを中心としたひとまとまりの地域と認めることができる(この地域を、以下「本件地域」という。)。
ロ 本件各土地の地積
 広大地通達の適用される土地は、その地域における標準的な宅地の地積に比して著しく地積が広大な宅地に該当する必要があるところ、上記1の(4)のロのとおり、甲土地の地積は742.98平方メートルであって、a市における都市計画上の開発許可を要する面積基準である500平方メートルを上回っているが、乙土地の地積は489.45平方メートルであって、上記基準を若干下回っている。
ハ 本件各土地の使用状況
 上記(2)のロの(イ)のC及び同(ロ)のCのとおり、甲土地は、開発行為に関する工事の検査を受けて平成14年1月18日に新築された鉄筋コンクリート造陸屋根4階建の共同住宅(甲地上建物)の、乙土地は、平成2年8月8日に新築された鉄骨造陸屋根4階建の共同住宅(乙地上建物)のそれぞれ敷地として使用されており、本件各建物は、実効収入割合が100%に近いほどに有効に利用されている。そして、本件各建物につき財務省令で定める耐用年数は、甲地上建物については47年、乙地上建物については34年であり、いずれの建物も外観上建築後の経年によることを超えて著しく老朽化又は損傷している事実は認められず、また、本件の全証拠によってもこれらの事実を認めることができないことからすれば、いずれの建物も今後相当の期間利用することができるものと見込まれる。
 以上のとおり、本件各土地は開発行為を了した上共同住宅の敷地として使用されており、近い将来において新たな開発行為を行うべき事情も認められない。
ニ 本件地域における宅地の使用状況
 本件地域内に存する宅地の用途別の面積の割合は、上記(2)のハの(ハ)のCのとおり、戸建住宅用地が約26%、共同住宅用地が約22%、法人等事業所用地が約21%、倉庫・車庫・工場用地が約30%であり、これらの用途のいずれもが本件地域における宅地の標準的な使用形態であると認めるのが相当である。そして、本件各土地は、これらの標準的な使用形態の一つである共同住宅用地として使用されているものと認められ、周囲の状況に比して特殊な形態で利用されているものとは認められない。すなわち、本件各土地は、その周辺地域の標準的使用状況に照らしても、共同住宅用地として有効に利用されているものと認められる。
ホ 小括
 上記イないしニによれば、本件各土地は、その地積がa市が定める開発許可を要する面積基準を上回るか、又は同基準を若干下回るものの、既に開発行為を了した共同住宅の敷地として、その周辺地域の標準的な使用状況に照らしても有効に利用されているものと認められるから、上記(1)のロの(イ)の広大地通達の趣旨にかんがみても、広大地通達にいう広大地には該当しないものと認めるのが相当である。
ヘ 請求人らの主張について
(イ) 本件各土地について開発行為を行うとした場合に公共公益的施設用地の負担が必要である旨の主張について
 上記(1)のロの(イ)のとおり、広大地通達の趣旨によれば、いわゆる開発許可を要する面積基準以上の土地であっても、公共公益的施設用地の負担がほとんど生じないと認められる土地については、「広大地」に該当しないと解されるところ、請求人は、本件各土地について、開発行為を行うとした場合に別紙3のとおり道路として公共公益的施設用地の負担が必要になる旨主張する。
 しかしながら、上記ホのとおり、本件各土地は、既に開発行為を了した共同住宅の敷地として有効に利用されていると認められるから、本件各土地について開発行為を行うとした場合に公共公益的施設用地である道路を開設することの要否について検討する必要はなく、この点に関する請求人らの上記主張は、採用することができない。
(ロ) 地価公示地等に比して本件各土地の地積が著しく広大なこと等について
 請求人らは、本件各土地は近傍の地価公示地及びe県の基準地を参考にする限り、地積が著しく広大なことは明らかであり、また、平成17年情報には「ミニ開発分譲が多い地域に存する土地については、開発許可を要する面積基準に満たない場合であっても、広大地に該当する場合があることに留意する。」と記載されていることから、乙土地は、地積がa市の都市計画法上の開発許可を要する面積基準に満たないものの、所在する周辺地域にミニ開発分譲が多いことから、広大地に該当する旨主張する。
 しかしながら、仮に、請求人らの主張するとおり、本件各土地の地積が近傍の地価公示地及びe県基準地と比較し広大であるとしても、これらの地価公示地及びe県基準地は、上記(2)のハの(ホ)のとおり、いずれも本件地域と異なる第1種住居地域に存するから、本件各土地と上記(1)のロの(ロ)で述べた利用状況、環境等がおおむね同一の地域にあるとは認められない上、本件各土地が既に開発行為を了した共同住宅の敷地として有効に利用されていると認められることは、上記ホで述べたとおりである。
 したがって、本件各土地がミニ開発分譲の多い地域に存するか否かについて検討するまでもなく、請求人らの上記主張は、採用することができない。
(ハ) 宅地上に建物が建築されていることは広大地の判定に影響を及ぼさない旨の主張について
 請求人らは、平成17年情報には「著しく広大であるかどうかの判定は、当該土地上の建物の有無にかかわらず、当該土地の規模により判定することに留意する。」と注記されていることから、本件各土地上に建物が建築されていることは、地積が著しく広大であるか否かの判定に影響を及ぼさず、本件各土地が広大地に該当する旨主張する。
 確かに、本件各土地上に建物が建築されていることは、地積が著しく広大であるか否かの判定に直接影響を及ぼすものではないが、上記ホのとおり、本件各土地は、既に開発行為を了した共同住宅の敷地として有効に利用されていると認められるのであるから、広大地通達の趣旨にかんがみても同通達にいう広大地には該当しないものと認められるのであって、請求人らの上記主張は、採用することができない。
(ニ) 別件減額更正処分との関係
 請求人は、原処分庁が別件減額更正処分において、本件各土地から約40メートルしか離れていない丙土地の経済的最有効使用が戸建住宅分譲用地であるとして広大地通達の適用を認めており、本件各土地についても広大地通達が適用されるべきである旨主張する。
 しかしながら、本件各土地は、上記ホのとおり、既に開発行為を了した共同住宅の敷地として有効に利用されていると認められるのであるから、たとえ、更地であって地積が797.00平方メートルの丙土地について、原処分庁が広大地通達の適用があることを前提として別件減額更正処分をしたとしても、本件各土地に係る上記判断が左右されるものではない。
 したがって、この点に関する請求人らの上記主張は、採用することができない。
(ホ) 請求人のその余の主張について
 以上認定説示したところによれば、請求人のその余の主張についても、いずれも採用することができない。
ト まとめ
 以上のとおり、請求人らの主張にはいずれも理由がなく、上記1の(4)のヘの更正の請求に対し、更正をすべき理由がないとした原処分に違法はない。

(4) その他

 原処分のその他の部分については、請求人らは争わず、当審判所に提出された証拠資料等によっても、これを不相当とする理由は認められない。

トップに戻る

トップに戻る