(平成23年6月30日裁決)

《裁決書(抄)》

1 事実

(1) 事案の概要

 本件は、審査請求人(以下「請求人」という。)が、新築した建物の工事費の額を上回る課税標準の額に基づき登録免許税を納付したことは誤りであったとして、還付通知の請求をしたところ、原処分庁が、還付通知をすべき理由がない旨の通知処分を行ったのに対し、請求人が、新築した際に支払った工事費の額を課税標準の額とすべきであるとして、同処分の全部の取消しを求めた事案である。

(2) 審査請求に至る経緯

イ 登記申請
 請求人は、原処分庁に対し、別表1記載の倉庫(以下「本件倉庫」という。)及び事務所(以下「本件事務所」といい、本件倉庫と併せて「本件各建物」という。)の登録免許税について、本件倉庫の課税標準の額を○○○○円、税額を○○○○円、また、本件事務所の課税標準の額を○○○○円、税額を○○○○円と、それぞれ記載した各登記申請書に、当該各税額に相当する金額の収入印紙をちょう付して、平成22年3月29日に提出した。これにより、本件各建物の所有権保存登記(以下、本件倉庫に係る平成22年3月29日受付第○○○○号の登記を「本件倉庫登記」、本件事務所に係る同日受付第○○○○号の登記を「本件事務所登記」といい、これらを併せて「本件各登記」という。)が完了した。
ロ 還付請求
 請求人は、原処分庁に対して、本件倉庫登記に係る登録免許税の課税標準の額は370,000,000円、登録免許税の額は1,480,000円、また、本件事務所登記に係る登録免許税の課税標準の額は15,000,000円、登録免許税の額は60,000円であるとして、平成22年8月25日に、本件各登記に係る登録免許税の各還付通知請求書を提出することにより、本件各登記に係る各還付請求をした。
ハ 処分
 原処分庁は、上記ロの各還付請求に対し、平成22年8月25日付で、いずれも還付通知をすべき理由がない旨の各通知処分をした。
ニ 不服申立て
 請求人は、上記ハの各通知処分を不服として、平成22年8月27日に、審査請求をした。

(3) 関係法令等

イ 登録免許税法第10条《不動産等の価額》
 第1項は、不動産の登記の場合における課税標準たる不動産の価額は、当該登記の時における不動産の価額による旨規定している。
ロ 登録免許税法附則第7条《不動産登記に係る不動産価額の特例》
 本条は、不動産の登記の場合における登録免許税法第10条第1項の課税標準たる不動産の価額は、当分の間、当該登記の申請の日の属する年の前年12月31日現在又は当該申請の日の属する年の1月1日現在において地方税法第341条第9号(固定資産税に関する用語の意義)に掲げる固定資産課税台帳(以下「課税台帳」という。)に登録された当該不動産の価格(以下「台帳価格」という。)を基礎として政令で定める価額によることができる旨規定している。
ハ 登録免許税法施行令附則第3項
 本項は、登録免許税法附則第7条に規定する政令で定める価額は、台帳価格のある不動産については、登記の申請の日がその年の1月1日から3月31日までの期間内であるものは、その年の前年12月31日現在の台帳価格に100分の100を乗じて計算した金額に相当する価額とし、台帳価格のない不動産については、当該不動産の登記の申請の日において当該不動産に類似する不動産で台帳価格のあるものの上記の金額を基礎として当該登記に係る登記機関が認定した価額とする旨規定している。
ニ C法務局長通達
 上記イないしハの規定を受けて、C法務局では、管内登記所における台帳価格のない建物に係る登録免許税の課税標準の額の認定に当たっては、「建物の課税標準価額認定要領の改正について」(平成21年4月1日付不登第274号C法務局長通達)を定め、第1条《趣旨》では、台帳価格のない建物の登録免許税の課税標準の額はこの要領に定めるところにより取り扱う旨、第2条《課税価額の定め方》では、台帳価格のない建物に係る登録免許税の課税標準の額の認定は、第3条《基準表の作成》の規定によるC法務局管内新築建物課税標準価格認定基準表の価額に準拠して、各登記所の登記官が認定する旨、第3条では、C法務局管内新築建物課税標準価格認定基準表の作成及び改訂は、地方税法第422条《総務大臣に対する固定資産の価格等の概要調書の送付》の規定により、各市町村が作成した固定資産の価格等の概要調書に記載された価格を参酌して首席登記官が行う旨、それぞれ定めている。

(4) 基礎事実

イ 本件各建物の新築年月日
 本件各建物は、平成22年1月14日に新築された建物である。
ロ 本件各建物の工事費
 請求人とE社d支店(以下「E社」という。)との間で取り交わされた本件各建物一括の工事請負契約書(以下「本件請負契約書」という。)には、工事価格が一括で385,000,000円と記載されているほか、本件請負契約書に係る工事に関し、発注者(請求人。以下同じ。)との間の契約に基づいて、発注者から監理業務を委託されていることを証するためここに記名押印する旨記載され、監理者として、e県f市g町○−○所在のF社Gの記名押印がなされている。
ハ 本件各建物の設計及び工事監理業務に係る費用
 本件各建物の設計及び工事監理業務に係る費用(以下「本件設計監理料」という。)は、一括で15,000,000円である。
ニ 課税台帳への登録の有無
 本件各建物は、本件各登記の申請の日現在、台帳価格のない不動産であった。
ホ C法務局管内新築建物課税標準価格認定基準表の内容
 「評価額のない新築建物の課税標準価格認定基準の改訂等について」(平成21年3月27日付不登第162号C法務局民事行政部首席登記官(不動産登記担当)通知)には、これに基づき首席登記官が作成した「C法務局管内新築建物課税標準価格認定基準表」と題する書面(以下「認定基準表」という。)を、同年4月1日から適用する旨記載され、認定基準表には、「本基準により難い場合は、類似する建物との均衡を考慮し個別具体的に認定することとする。」と記載されている。
 なお、認定基準表は、建物を9種類、構造を6種類に分類しており、その1平方メートル当たりの単価は、平成17年から平成19年にe県内で新築又は増築された建物について、同種類同構造の建物の総価格及び総床面積から各単年ごとの1平方メートル当たりの単価を算定し、それを基礎に、建築物価の変動割合である再建築費評点補正率を加味して3年分の平均単価を算定する方法で、種類、構造ごとに決定されたものである。

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2 争点

 本件各登記に係る登録免許税の課税標準の額を認定基準表により算定することが相当か否か。

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3 主張

請求人 原処分庁
 本件各建物の課税標準の額は、以下の理由から、認定基準表により算定すべきではなく、請求人が建築業者に支払った本件各建物の工事費の額とすべきである。  本件各建物の課税標準の額は、以下の理由から、認定基準表により算定することが相当である。
(1) 請求人が建築した本件各建物は、徹底してコストダウンを図った工法で建築した、標準的建物と比較して例外的部分が多い建物である。
 また、建物の価値は取得後だんだん下がっていくものであり、新築での取得に要した金額以上の額で評価されることはあり得ない。
 本件各建物は例外的部分が多い建物であり、認定基準表により難い場合に該当するので、本件各建物を認定基準表にそのまま当てはめることは、実態に合わず、原処分庁が例外的事情を何らしんしゃくせず算定した課税標準の額は客観的時価を超えたものであり、実情とかけ離れた過大な金額をもって本件各建物の課税標準の額を認定することは違法である。
(1) 登録免許税法第10条、同法附則第7条及び登録免許税法施行令附則第3項の規定を受け、各法務局・地方法務局では台帳価格のない不動産については、価額認定が適正かつ統一的にされるよう作成された登録免許税の課税標準額認定基準に基づいて各局所属の登記官が新築建物等の価額を認定しており、C法務局においても認定基準表を定めている。
 認定基準表は3年ごとに改訂され、社会情勢の変化に応じた適正な価格を認定することにより課税の公平を図ろうとするものであり、統一基準を用いて課税標準の額を算定することは相当である。
 本件各建物は、本件各登記の申請の日において台帳価格のない不動産であり、また、その種類及び構造は広く一般に普及しているものであるので認定基準表により難い場合にも該当せず、本件各建物について、認定基準表を適用して算定した課税標準の額は、適正な手続により認定されたもので、処分に違法性はない。
(2) 本件各建物の工事費は、5社によるコンペの結果落札された、通常の取引による正当な金額であるので、当該工事費が本件各建物の時価であり、これを課税標準の額とすべきである。 (2) 取引当事者間で実際に支払った金額を課税標準の額にするとすれば、個々の取引に関する個別事情が加わる結果、公平な価格が求められず、国税としての画一的な取扱いが阻害されることとなって、課税の公平を損なうこととなる。

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4 判断

(1) 法令解釈

イ 登録免許税法第10条第1項に規定する不動産の価額
 登録免許税法第10条第1項に規定する登記の時における不動産の価額とは、当該登記の時における当該不動産の客観的交換価値、すなわち時価と解される。
ロ 登録免許税法附則第7条に規定する台帳価格
 登録免許税法附則第7条が、課税標準たる不動産の価額を、当分の間、台帳価格に基づいた価額によることができると規定しているのは、登録免許税が、国税通則法第15条《納税義務の成立及びその納付すべき税額の確定》第3項第5号に規定される納税義務の成立と同時に特別の手続を要しないで納付すべき税額が確定する自動確定方式による国税で、流通税的な性格を有し、このような性格を持つ登録免許税において、登記官が、課税標準たる不動産の登記の時における時価をその都度判断することは容易ではなく、登記事務の簡易迅速性の要請や、台帳価格という課税基準を一律に適用することにより課税の公平が担保されること等を考慮して規定したものと解される。
ハ 登録免許税法施行令附則第3項に規定する台帳価格のない不動産の価額
 台帳価格のない不動産の価額については、登録免許税法施行令附則第3項に、類似する不動産の台帳価格を基礎として登記機関が認定した価額とする旨規定されているのは、上記ロの登録免許税法附則第7条の趣旨をかんがみれば、台帳価格のある不動産とこれがない不動産の価額の間で不均衡が生じないよう、課税の公平を図るために、飽くまで台帳価格に依拠してその価額を求め、登録免許税の課税標準を決しようとする趣旨と解されるので、登記機関が、台帳価格のない建物について認定基準表に基づき認定する価額は、それが選定した類似する建物の台帳価格を基礎として合理的に算定されたものであれば、適法であると解される。ただし、その台帳価格のない建物が、認定基準表の作成に当たり選定された建物の状況と類似しているとは認められず、認定基準表に基づき認定された価額が、登録免許税法施行令附則第3項に規定する類似する不動産の台帳価格を基礎として登記機関が認定した価額を表していない場合には、登記申請人は、当該建物と類似する近傍の建物の台帳価格があればその台帳価格を基にして求めた価額を、当該建物と類似する近傍の建物の台帳価格がなければ他の方法により求めた不動産の価額(時価)を採用できると解するのが相当である。

(2) 認定事実

 請求人提出資料、原処分関係資料及び当審判所の調査の結果によれば、次の事実が認められる。
イ 本件各建物の建築の発注
 請求人は、本件各建物の建築に当たり、5社の建築業者から提出された見積書を検討の上、最低価額を提示したE社に、本件各建物の建築を発注し、E社は建築工事を施工した。
 なお、請求人とE社との間に、見積りにおいて最低価額を提示した建築業者という以外、特別な関係があるとは認められず、E社が本件請負契約書に添付した見積書に記載された各工事費は、別表2のとおりであり、その総額は385,000,000円である。
ロ 本件各建物の仕様・構造
(イ) 本件倉庫の仕様・構造
 本件倉庫は、請求人の関係法人が取り扱う日用雑貨を管理、保管するための平家建ての常温倉庫である。床面はコンクリート張りで、保管する物品の関係上、耐荷重レベルは高くなく、屋根は一般的なつりさげ式とせずに平らとして、支柱の間隔を構造計算上可能な限り広くすることで支柱の本数を減らし、柱梁材等の鋼材には、特別な加工を不要とする既製品が使用されている。また、内装に関して、内壁面には装飾ボード等を使用せずに鉄骨等構造材が、天井は屋根材がむき出しの状態であり、昇降設備、空調設備及び給排水衛生設備を設置せず、消防設備を備えるだけであるなど、一般的な倉庫に比して簡易な仕様・構造の建物である。
(ロ) 本件事務所の仕様・構造
 本件事務所は、本件倉庫と同じ敷地内にあり、鉄骨造りの2階建てで、1階に事務室、食堂兼休憩室及びトイレが、2階には会議室及び女子ロッカー室があり、空調設備は設置されているが、その他特筆するべき設備は認められず、資材及び内外装等は、標準的な事務所のものと比べて差が大きいものはなく一般的な仕様・構造の建物である。
ハ 本件倉庫に類似する建物の有無
 C法務局H支局の管内において、新築年、床面積、階層などの観点から本件倉庫に類似する平成21年12月31日現在の課税台帳に登録された建物は、同支局の管内には認められない。

(3) 本件への当てはめ及び請求人の主張の採否

 前記1の(4)のイ及びニのとおり、本件各建物は、平成22年1月14日に新築されたため、本件各登記の申請の日現在、台帳価格のない不動産であったので、本件各登記に係る登録免許税の課税標準の額となる登録免許税法附則第7条に規定する台帳価格に基づいた価額は、登録免許税法施行令附則第3項の規定により、類似する建物の平成21年12月31日現在における台帳価格を基礎として登記機関が認定した価額となる。
 ところで、上記(1)のハによれば、台帳価格のない建物と認定基準表の作成に当たり選定された建物の状況が類似している限り、登記機関が、台帳価格のない建物について認定基準表に基づき認定する価額は、それが選定した類似する建物の台帳価格を基礎として合理的に算定されたものであれば、適法であると解されるところ、上記(2)のロの(ロ)のとおり、本件事務所は、一般的な仕様・構造の建物であることからすると、本件事務所の状況が認定基準表の作成に当たり選定された建物の状況と類似しているものと認められ、また、認定基準表における建物の1平方メートル当たりの単価の計算方法(前記1の(4)のホ)からすると、認定基準表は類似する建物の台帳価格を基礎として合理的に算定されたものと認められることから、本件事務所については、その登記に係る登録免許税の課税標準の額を認定基準表により算定することは相当であり、請求人は他の方法により求めた本件事務所の価額(時価)を採用することができない。
 他方、上記(1)のハのただし書のとおり、台帳価格のない建物と認定基準表の作成に当たり選定された建物の状況が類似せず、認定基準表に基づき認定された価額が、登録免許税法施行令附則第3項に規定する類似する不動産の台帳価格を基礎として登記機関が認定した価額を表していない場合には、登記申請人は、当該建物と類似する近傍の建物の台帳価格があればその台帳価格を基にして求めた価額を、当該建物と類似する近傍の建物の台帳価格がなければ他の方法により求めた不動産の価額(時価)を採用できると解するのが相当であるところ、上記(2)のロの(イ)のとおり、本件倉庫は、簡易な仕様・構造の建物であり、本件倉庫の状況が認定基準表の作成に当たり選定された建物の状況と類似していないことは明らかであるから、認定基準表に基づく本件倉庫の価額は、上記にいう類似する不動産の台帳価格を基礎として登記機関が認定した価額を表しているとは認められず、また、上記(2)のハのとおり、本件倉庫に類似する建物は、本件倉庫登記の申請の年の前年12月31日現在において認められないことからすると、請求人は認定基準表による方法や他の建物の台帳価格を基礎とする方法によらず、他の方法により求めた本件倉庫の価額(時価)を採用することができることとなる。
 そこで、請求人が主張する本件倉庫の価額(時価)について、その相当性を検討することとなるが、請求人は、前記3の「請求人」欄のとおり、本件各登記に係る登録免許税の課税標準の額は、認定基準表によるべきでなく、本件各建物の工事費の額とすべきである旨主張し、その額は、本件各建物の一括の工事費である385,000,000円を基として、前記1の(2)のイの各登記申請書に記載された本件各建物の各課税標準の額によりあん分して算定されたものであり、本件倉庫は370,000,000円であるとする。
 しかしながら、本件倉庫登記に係る登録免許税の課税標準の額は、認定基準表を適用して原処分庁が認定した価額によるものであるところ、請求人自身が同価額を適切とせず採用しないのであるから、同価額を基礎として求めた請求人が主張する本件各登記に係る登録免許税の課税標準の額もまた、適切な価額とはいえないから、請求人が本件倉庫登記に係る登録免許税の課税標準の額を認定基準表により算定すべきではないとする点を除き、その算定価額を含め、請求人の上記主張を採用することはできない。
 以上のとおりであるから、本件倉庫の価額(時価)を算定する上で相当と認められる方法等を検討した結果は、次のとおりである。
イ 本件倉庫の建築価額の内容
 建物の建築価額には、建物を建築するために直接要する費用だけでなく、建物に附属してその機能を発揮するための電気設備、給排水衛生設備などの設備に要する費用も含まれ、さらに、建築基準法第5条の4《建築物の設計及び工事監理》第1項及び第4項並びに建築士法第3条《一級建築士でなければできない設計又は工事監理》第1項及び第3条の2《一級建築士又は二級建築士でなければできない設計又は工事監理》第1項の各規定により、本件各建物は、一級建築士の設計及び工事監理によらなければ、建築することができないことになるので、このために必要不可欠な設計監理料も含まれるとみるのが相当である。
 したがって、本件倉庫の建築価額は、工事費及び設計監理料の合計額である。
ロ 本件請負契約書に添付された見積書記載の金額等の客観性の有無及び本件倉庫の建築価額(時価)
 上記(2)のイのとおり、請求人は、本件各建物の建築に当たり、建築業者5社から提出された各見積書を検討した上で、最低価額を提示したE社に、本件各建物の建築を発注し、E社は建築工事を施工しており、請求人とE社との間に、見積りにおいて最低価額を提示した建築業者という以外、特別な関係があるとは認められないことからすると、本件請負契約書及びそれに添付された見積書に記載された工事費の金額385,000,000円は、し意性のない通常の取引による客観的な価額と認めるのが相当である。そして、前記1の(4)のロ及びハのとおり、本件各建物の工事監理業務は、請求人がF社Gに対して委託しており、その経緯は明らかでないものの、建築士の報酬は、建築士法第25条《業務の報酬》には、国土交通大臣が報酬の基準を定めることができる旨規定されているように、客観的な基準に基づいて算定されるものであることからすれば、本件設計監理料15,000,000円は、通常の取引による客観的な価額と認めるのが相当である。
 したがって、これらを基に本件倉庫の建築価額を算定することが、本件倉庫の価額(時価)を算定する上で相当と認められるところ、その金額は次の(イ)ないし(ハ)のとおりである。
(イ) 工事費
 前記1の(4)のロのとおり、本件請負契約書による本件各建物の工事費は、一括で記載されているが、上記(2)のイ及び別表2のとおり、本件請負契約書に添付された見積書の工事費の金額と一致し、本件各建物ごとの工事費のほとんどの部分が、当該見積書により明らかにされているので、そこに記載された各金額を本件各建物ごとの工事費の金額と認めるのが相当である。そして、当該見積書によっても本件各建物ごとの金額を明らかにできない部分のうち、同表の「雑工事(外構工事)」欄記載のものは、本件各建物の工事ではなく外構工事であるので、本件各建物ごとの工事費とすべき費用ではないが、同表の「仮設工事」欄記載のものは、本件各建物の仮設工事そのものであり、本件各建物ごとの工事費とすべき費用であるところ、本件各建物ごとの仮設工事の金額は、他の工事に係る費用の金額によって左右されるものではなく、工事の施行面積に応じた金額となるものであるので、本件各建物の床面積によりあん分して算定するのが相当である。また、同表の「諸経費」欄記載のものは、各工事すべてに共通する費用であるので、本件各建物ごと及び外構工事に係る諸経費の金額は、当該見積書により本件各建物ごとの工事費の金額が明らかにされている部分の金額、上記の本件各建物ごとの仮設工事の金額及びそのいずれにも属さない上記外構工事に係る費用の金額の合計金額によりあん分して算定するのが相当である。
 上記によって算定された本件各建物ごとの工事費の合計金額からそれぞれの出精値引き額に相当する金額を差し引いた後の金額が、本件各建物ごとの工事費の総額となるが、出精値引き額は値引き前の価額に応じて算定されることから、本件各建物ごとの出精値引き額は、出精値引き額を差し引く前の本件各建物ごとの各工事費の金額及び外構工事に係る費用の金額の合計金額によりあん分して算定するのが相当である。
 以上のとおり、本件倉庫の工事費の金額を算定すると、別表3の「本件各建物ごとの工事費及び外構工事に係る費用の各金額」欄のとおり、○○○○円となる。
(ロ) 設計監理料
 前記1の(4)のロ及びハのとおり、本件設計監理料は、一括で15,000,000円であるが、本件請負契約書には、本件各建物の工事(385,000,000円)に関し、請求人からF社Gに対して監理業務が委託された旨記載されているのであるから、本件設計監理料15,000,000円は、本件各建物ごとの各工事費の合計金額及びそのいずれにも属さない上記(イ)の外構工事に係る費用の金額の合計金額によりあん分して算定するのが相当であり、これらに基づき本件倉庫の設計監理料の金額を算定すると、別表4の「本件各建物ごと及び外構工事に係る設計監理料の各金額」欄のとおり、○○○○円となる。
(ハ) まとめ
 上記(イ)及び(ロ)のとおり、本件倉庫の工事費の金額は○○○○円、設計監理料の金額は○○○○円であるから、本件倉庫の建築価額は○○○○円であるところ、本件倉庫は、完成後約2か月で本件倉庫登記が完了しており、完成から本件倉庫登記までの間に増改築は行われていないこと、また、損壊の事実もないことからすれば、本件倉庫登記の時において、本件倉庫の建築価額と時価が明らかに異なることを示すような事実は認められない。
 以上によれば、本件倉庫登記の時における本件倉庫の価額(時価)は、本件倉庫の建築価額であるということができ、その金額は上記のとおりである。

(4) 前記1の(2)のハの各通知処分の適法性

 前記1の(2)のイのとおり、本件各登記に係る登録免許税の課税標準の額は、本件倉庫が○○○○円、本件事務所が○○○○円であるところ、上記(3)のとおり、本件倉庫登記に係る登録免許税の課税標準の額を認定基準表により算定することは相当とは認められず、本件倉庫登記に係る登録免許税の課税標準の額は、本件倉庫登記の時における本件倉庫の価額(時価)○○○○円によることとなり、その額は○○○○円(1,000円未満切捨て)となるが、本件事務所登記に係る登録免許税の課税標準の額を認定基準表により算定することが相当であると認められるから、本件事務所登記に係る登録免許税の課税標準の額は上記のとおり、○○○○円となる。
 そうすると、本件各登記に係る登録免許税の額は、上記の各課税標準の額に登録免許税法第9条《課税標準及び税率》の規定による1,000分の4の割合をそれぞれ乗じた額(100円未満切捨て)、すなわち、本件倉庫登記が○○○○円及び本件事務所登記が○○○○円となり、請求人が既に納付した本件倉庫登記に係る登録免許税の額○○○○円を下回り、本件事務所登記に係る登録免許税の額○○○○円と同額である。
 したがって、本件倉庫登記に係る還付請求に対する還付通知をすべき理由がない旨の通知処分は、課税標準の額○○○○円及び登録免許税の額○○○○円を超える部分につき取り消されるべきであり、本件事務所登記に係る還付請求に対する還付通知をすべき理由がない旨の通知処分は適法である。

(5) その他

 原処分のその他の部分については、当審判所の調査の結果によっても、これを不相当とする理由は認められない。

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