(平成23年6月30日裁決)

《裁決書(抄)》

1 事実

(1) 事案の概要

 本件は、廃油回収業を営む審査請求人(以下「請求人」という。)が、当該廃油回収業はすべて消費税法第37条《中小事業者の仕入れに係る消費税額の控除の特例》第1項及び消費税法施行令第57条《中小事業者の仕入れに係る消費税額の控除の特例》第1項に規定する第一種事業に該当するとして、課税仕入れに係る消費税額の控除額(以下「控除対象仕入税額」という。)を算定し、消費税及び地方消費税(以下「消費税等」という。)の申告をしたところ、原処分庁が、課税売上高に誤りがあることに加え、当該廃油回収業は同法第37条第1項及び同施行令第57条第5項に規定する第一種事業、第四種事業及び第五種事業に該当するとして、控除対象仕入税額を算定し、更正処分等を行ったのに対し、請求人が、その全部の取消しを求めた事案である。

(2) 審査請求に至る経緯

イ 申告
 請求人は、原処分庁に対し、平成18年1月1日から平成18年12月31日まで、平成19年1月1日から平成19年12月31日まで及び平成20年1月1日から平成20年12月31日までの各課税期間(以下、順次「平成18年課税期間」、「平成19年課税期間」及び「平成20年課税期間」といい、これらを併せて「本件各課税期間」という。)の消費税等について、別表1の「確定申告」欄のとおり、いずれも法定申告期限までに確定申告をした。
 また、請求人は、平成18年課税期間の消費税等について、別表1の「修正申告」欄のとおり、平成20年3月5日に修正申告をした。
ロ 処分
 原処分庁は、本件各課税期間の消費税等について、別表1の「更正処分及び賦課決定処分」欄のとおり、平成22年3月15日付で、各更正処分及び過少申告加算税の各賦課決定処分をした。
ハ 不服申立て
(イ) 異議申立て及び異議決定
 請求人は、上記ロの処分を不服として、平成22年5月13日に異議申立てをしたところ、異議審理庁は、別表1の「異議決定」欄のとおり、同年8月10日付で、本件各課税期間の各更正処分及び平成19年課税期間の過少申告加算税の賦課決定処分について、いずれもその一部を取り消す旨、平成18年課税期間及び平成20年課税期間の過少申告加算税の各賦課決定処分について、いずれも棄却する旨の異議決定をした(以下、異議決定により一部につき取り消された後の各更正処分を「本件各更正処分」といい、平成18年課税期間及び平成20年課税期間の過少申告加算税の各賦課決定処分及び異議決定により一部につき取り消された後の平成19年課税期間の過少申告加算税の賦課決定処分を併せて「本件各賦課決定処分」という。)。
(ロ) 審査請求
 請求人は、異議決定を経た後の本件各更正処分及び本件各賦課決定処分に不服があるとして、平成22年9月8日に審査請求をした。

(3) 関係法令等

 関係法令等の要旨は、別紙のとおりである。
 なお、以下、消費税法第37条第1項に規定する100分の60及び消費税法施行令第57条第1項に規定する100分の90、100分の80、100分の70及び100分の50の各割合を併せて「みなし仕入率」、同法第37条第1項に基づき仕入れに係る消費税額を計算する特例を「簡易課税制度」、事業者が、国内において行った課税資産の譲渡等につき、返品を受け、又は値引き若しくは割戻しをしたことにより、当該課税資産の譲渡等の対価の額と当該対価の額に100分の5を乗じて算出した金額との合計額の全部若しくは一部の返還又は当該課税資産の譲渡等の対価の額と当該対価の額に100分の5を乗じて算出した金額との合計額に係る売掛金その他の債権の額の全部若しくは一部の減額をすることを「売上げに係る対価の返還等」といい、同施行令第57条第5項に規定する第一種事業ないし第五種事業を総じて「各種事業」といい、各種事業の区分を「事業区分」という。

(4) 基礎事実

イ 簡易課税制度の選択
 請求人は、原処分庁に対し、適用開始課税期間を「自平成17年1月1日至平成17年12月31日」と、事業の内容を「廃油の回収と業者への販売」と、事業区分を「第1種事業」とそれぞれ記載した簡易課税制度の適用を受けるための届出書を、平成16年3月12日に提出した。
ロ 基準期間の課税売上高
 請求人の本件各課税期間の各基準期間における課税売上高は、いずれも10,000,000円超であり、かつ、50,000,000円以下である。
ハ 請求人の事業である廃油回収業の概要等
 請求人は、本件各課税期間において、請求人及びH社の各契約先である各事業者が排出する動植物廃油を収集し(以下、請求人が収集した廃油を「本件廃油」という。)、原則として、請求人の契約先の廃油をJ社及びK社(以下、H社及びJ社と併せて「本件再生業者等」という。)に、H社の契約先の本件廃油をH社に、それぞれ販売する事業(以下「本件事業」という。)を行っており、ほかに、排出事業者の廃油用タンクを管理する事業及びバイオディーゼル燃料をK社へ販売する事業(以下、これらの各事業を併せて「本件各付随事業」といい、本件事業と併せて「本件事業等」という。)を行っていた。
ニ 本件各付随事業の事業区分
 本件各付随事業の事業区分は、排出事業者の廃油用タンクを管理する事業が第五種事業、バイオディーゼル燃料をK社へ販売する事業が第一種事業である。

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2 争点

(1) 争点1 本件事業の課税資産の譲渡等に係る取引は、消費税法施行令第57条第5項に規定するいずれの事業に該当するか。

(2) 争点2 (仮に、本件事業が消費税法施行令第57条第5項に規定する第一種事業以外の事業区分に該当するとされた場合に、)本件事業等の各種事業に係る課税売上高について、該当する事業の種類ごとに区分をしていないものがあったか否か。

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3 主張及び判断

(1) 争点1 本件事業の課税資産の譲渡等に係る取引は、消費税法施行令第57条第5項に規定するいずれの事業に該当するか。

イ 主張

原処分庁 請求人
 本件事業の課税資産の譲渡等に係る取引は、次のとおり、第一種事業、第四種事業及び第五種事業にそれぞれ該当する。
(1) 請求人が、排出事業者から処分料又は回収運搬料を受領して廃油を収集する取引は、サービス業に該当し第五種事業となる。
(2) 請求人が、H社の指示に基づき、H社が排出事業者から引き取る廃油を運搬する事業は、運輸業又はサービス業に該当し、いずれも第五種事業となる。
(3) 請求人が、排出事業者から購入した廃油を、その性質及び形状を変更しないで本件再生業者等に販売する取引は、卸売業に該当し第一種事業となる。
(4) 請求人が、無償あるいは処分料を受領して回収した廃油を、その性質及び形状を変更しないで本件再生業者等に販売する取引は、当該廃油が他の者から購入したものではないため、卸売業(第一種事業)には該当せず、また、第二種事業、第三種事業及び第五種事業のいずれにも該当しないから、第四種事業となる。
 本件事業の課税資産の譲渡等に係る取引は、次のとおり、第一種事業のみに該当する。
 本件廃油の回収形態(有償、無償及び処分料を受領の別)にとらわれず、物(廃油)の流れを重要視して事業区分を判断すべきであり、本件廃油をそのままの状態で販売している。

ロ 判断
(イ) 法令等解釈
 消費税法基本通達13−2−4に定める日本標準産業分類は、統計調査の結果を産業別に表示する場合の統計基準として、事業所において社会的な分業として行われる財及びサービスの生産又は提供に係るすべての経済活動を分類するものであり、統計の正確性と客観性を保持し、統計の相互比較性と利用の向上を図ることを目的として設定されたものであるから、その分類は社会通念に基づく客観的なものということができるのであって、簡易課税制度の公平な適用という観点からしても、当該産業分類の大分類に掲げる分類を基礎として、事業の範囲を判定することには合理性があると認められ、この取扱いは当審判所においても相当と認められる。
(ロ) 認定事実
 請求人提出資料、原処分関係資料及び当審判所の調査の結果によれば、次の事実が認められる。
A 本件廃油の種類
 本件廃油は、比較的きれいな植物廃油(以下「A油」という。)、A油以外の植物廃油(以下「B油」という。)及び動物廃油のラードに区分される。
B 本件廃油に係る取引形態
(A) 請求人の契約先である事業者から排出される廃油の収集
 請求人は、請求人の契約先である事業者から排出されるA油、B油及びラードを、まる1無償で、まる2排出事業者から処分料を徴して、まる3排出事業者に当該廃油の買取り代金を支払って、それぞれ収集している。
(B) H社の契約先である事業者から排出される廃油の収集及び運搬
a H社の専務取締役であるNの当審判所に対する答述内容
 H社は、請求人との間で業務委託に係る契約書を作成した事実はないが、請求人に委託した業務の内容は下記bの業務委託等契約の内容と同じである。
 また、委託料の支払金額に見合う額を請求人の廃油の買取り分の支払金額と同様な価格設定で精算する方法として、下記bのまる2のとおり記載したが、H社は、請求人に対し、収集運搬業務を委託していたことになる。その後、廃油の仕入相場の高騰等による調整が必要となり、平成20年1月から、H社の仕入代金の一部を請求人に負担してもらうようにした。具体的にその負担額は、原則として、H社の1リットル当たりの仕入単価○○円以上の取引について、最高5円までを請求人に負担してもらっており、例えば仕入単価○○円の場合には2円を、同○○円の場合には5円を負担してもらい、請求人の請求代金から相殺している。
b H社との業務委託等契約の締結状況及びその主な内容
 請求人を代表取締役とするL社が平成20年5月1日に設立されたことに伴い、L社とH社との間で平成20年5月1日に業務委託及び車輌賃貸借契約が締結されたが、その主な内容は、まる1H社は、L社に対し動植物廃油の収集運搬業務を委託し、L社はこれを受託する、まる2H社は、L社の植物廃油を、1リットル当たりA油を○○円、B油を○○円で買い取るとするものである。
c 上記a及びbから認められる事実
 請求人は、H社から、A油及びB油の収集及び運搬業務を委託され、これを行ってきたものであり、平成20年1月から、請求人の請求代金から相殺された負担金は、請求人が動植物廃油を回収するために排出事業者に対し直接支払うものではなく、請求人の請求代金を減額するものである。
C 本件廃油の保管状況等
 請求人は、本件廃油を、請求人が管理するp県q市r町○−○所在の保管場において、次の(A)ないし(C)のとおり、保管した上で販売又は搬出している。
(A) A油
 A油は、請求人の契約先である事業者からの回収分とH社の契約先である事業者からの回収分とに区分されたA油置場に、ドラム缶で保管され、請求人の契約先から回収されたA油は、H社、J社及びK社に販売され、H社の契約先から回収されたA油は、H社に搬出された。
(B) B油
 請求人の契約先である事業者から回収されたB油は、B油置場にドラム缶で保管され、原則としてJ社に、ごく一部がH社に販売され、また、H社の契約先である事業者から回収されたB油は、油槽タンク内(平成20年4月以降は10キロリットルタンク内。以下同じ。)に保管され、H社に搬出された。
(C) ラード
 ラードは、請求人の契約先である事業者からの回収分とH社の契約先である事業者からの回収分に区分されたラード置場に、ドラム缶又は小缶で保管され、請求人の契約先から回収されたラードは、J社及びH社に、それぞれ販売され、H社の契約先から回収されたラードは、H社に搬出された。
(ハ) 本件への当てはめ
 上記(ロ)のB及びCの各事実を総合してみると、請求人の売上げに係る取引の形態は、下記AないしDのとおりとなり、それらの形態に応じて、事業区分を判断した結果は、以下のとおりである。
A 請求人の契約先である事業者から処分料を徴して廃油を収集する取引(上記(ロ)のBの(A)のまる2の取引)
 請求人の契約先である事業者から処分料を徴して廃油を収集する取引は、廃油の収集運搬業であり、日本標準産業分類の大分類の運輸業又はサービス業に該当することから、いずれも消費税法施行令第57条第5項第4号に規定する第五種事業となる。
B 請求人の契約先である事業者から無償で又は処分料を徴して収集した廃油を本件再生業者等に販売する取引(上記(ロ)のBの(A)のまる1又はまる2のとおり収集し、同Cのとおり販売した取引)
 請求人の契約先である事業者から無償で又は処分料を徴して収集した廃油は、その代価が支払われていないから、他の者から購入した商品とは認められないので、当該廃油を本件再生業者等に販売する取引は、消費税法施行令第57条第5項第1号に規定する第一種事業である卸売業には該当せず、同項第2号に規定する第二種事業である小売業、同項第3号に規定する第三種事業である農業ないし水道業、同項第4号に規定する第五種事業である不動産業ないしサービス業のいずれにも該当しないから、同項第5号に規定する第四種事業(前各号に掲げる事業以外の事業)となる。
C 請求人の契約先である事業者に買取り代金を支払って収集した廃油を本件再生業者等に販売する取引(上記(ロ)のBの(A)のまる3のとおり収集し、同Cのとおり販売した取引)
 請求人の契約先である事業者に買取り代金を支払って収集した廃油を本件再生業者等に販売する取引は、請求人が排出事業者から買い取った廃油を、その性質及び形状を変更しないで他の事業者である本件再生業者等に販売する取引に相違ないから、消費税法施行令第57条第5項第1号に規定する第一種事業である卸売業に該当する。
D H社の契約先である事業者から排出される廃油の収集及び運搬に係る取引(上記(ロ)のBの(B)の取引)
 上記(ロ)のBの(B)のcのとおり、請求人は、H社から、A油、B油及びラードの収集及び運搬業務を委託され、これを行ってきたものであり、平成20年1月から、請求人の請求代金から相殺された負担金は、請求人が動植物廃油を回収するために排出事業者に対し直接支払うものではなく、請求人の請求代金を減額するものであるから、本件各課税期間において行われたH社の契約先である事業者から排出される廃油の収集及び運搬に係る取引は、平成20年1月から負担金を相殺されるようになった以降も、請求人が当該廃油を買い取るためにされた取引ということはできず、単に当該廃油を収集及び運搬するためにされた取引というべきであるから、日本標準産業分類の大分類の運輸業又はサービス業に該当し、消費税法施行令第57条第5項第4号に規定する第五種事業となる。
E まとめ
 上記AないしDのとおり、本件事業は、消費税法施行令第57条第5項第1号に規定する第一種事業、同項第4号に規定する第五種事業及び同項第5号に規定する第四種事業に該当する。
(ニ) 請求人の主張の採否
 請求人は、上記イの「請求人」欄のとおり、本件廃油の回収形態(有償、無償及び処分料を受領の別)にとらわれず、物(廃油)の流れを重要視して事業区分を判断すべきであり、本件廃油をそのままの状態で販売していることから、本件事業は卸売業に該当する旨主張する。
 しかしながら、上記(ハ)のEのとおり、本件事業は、消費税法施行令第57条第5項に規定する第一種事業、第四種事業及び第五種事業に該当するのであるから、請求人の主張は、独自の見解を述べるものといわざるを得ず、採用することができない。

(2) 争点2 本件事業等の各種事業に係る課税売上高について、該当する事業の種類ごとに区分をしていないものがあったか否か。

イ 主張

原処分庁 請求人
 請求人とH社との取引は、第一種事業、第四種事業及び第五種事業に該当するものの、これらを明確に区分することができず、また、J社及びK社との取引は、第一種事業及び第四種事業に該当するものの、これらを明確に区分することができないので、本件事業等の各種事業に係る課税資産の譲渡等について、該当する事業の種類ごとに区分をしていないものがあった。  本件事業は、第一種事業のみに該当し、本件各付随事業は、取引先ごとに区分されているので、本件事業等の各種事業に係る課税資産の譲渡等について、該当する事業の種類ごとに区分していないものはなかった。
 そもそも、有価物のすべてを業者に販売しているという認識である以上、複数の事業区分などあり得ようもなく、区分経理をしていないことを理由に高率の課税を行うことは、租税法律主義に違反する。

ロ 判断
(イ) 法令解釈
 消費税法施行令第57条第4項に規定する課税資産の譲渡等につきこれらの事業の種類ごとの区分をしていないものとは、簡易課税制度が事業者の選択により適用され、事業区分ごとの課税売上高にそれぞれのみなし仕入率を乗ずることにより課税仕入れに係る消費税額を算定する制度であることからすれば、事業者の帳簿、書類等に基づいて、当該事業者の行う事業の種類ごとの課税売上高の区分をすることができない場合をいうものと解される。
(ロ) 認定事実
 請求人提出資料、原処分関係資料及び当審判所の調査の結果によれば、次の事実が認められる。
A 請求人の帳簿、書類等の記載内容
(A) 総勘定元帳
 本件各課税期間の総勘定元帳の「廃油売上」勘定には、本件事業等に係るすべての売上げについて、年月日、相手科目名、売上先名等、金額が記載されており、当該総勘定元帳がすべて保存されている。
(B) 請求書等
 請求書には、商品名が「廃油回収」と記載され、ほかに、請求先名、年月日、伝票番号、数量、単価、金額が記載されており、平成20年課税期間の請求書の控えのみ保存されている。
 また、「H社 月別精算表」と題する書面には、前記1の(4)のハの排出事業者の廃油用タンクを管理する事業に係る平成20年1月ないし同年9月の取引金額及び取引の相手方を「M」として記載されている。
(C) 領収証
 領収証には、入金先名、年月日、金額のほか、ただし書きとして「廃油回収代金」又は「油代金」と記載されており、本件各課税期間の領収証の控えを保存している。
B 上記A以外の帳簿、書類の作成又は保存状況
 上記A以外の帳簿、書類等は作成又は保存されておらず、本件廃油を収集する取引の形態ごとに区分して管理していたことが明らかとなる資料はなく、その数量の受払いを管理した書類も作成されていない。
(ハ) 本件への当てはめ
 上記(1)のロの(ハ)のEのとおり、本件事業は、消費税法施行令第57条第5項第1号に規定する第一種事業、同項第4号に規定する第五種事業及び同項第5号に規定する第四種事業に該当し、前記1の(4)のニのとおり、本件各付随事業のうち、排出事業者の廃油用タンクを管理する事業が第五種事業、バイオディーゼル燃料をK社へ販売する事業が第一種事業であるから、本件事業等は、第一種事業、第四種事業及び第五種事業に該当することとなるが、上記(ロ)のAの(A)の総勘定元帳の売上先名等、同(C)の領収証の控えの入金先名、平成20年課税期間については同(B)の請求書の控えの請求先名により、上記(1)のロの(ハ)のAの取引に係る課税売上高を、また、上記(ロ)のAの(B)の「H社 月別精算表」と題する書面により、平成20年課税期間については、前記1の(4)のハの廃油用タンクの管理事業に係る課税売上高を、それぞれ区分することができるものの、上記(ロ)のBのとおり、上記の帳簿、書類等以外には作成、保存されておらず、本件廃油を収集する取引の形態ごとに区分して管理していたことが明らかとなる資料はなく、その数量の受払いを管理した書類も作成していないことからすれば、本件事業等の各種事業に係る課税売上高について、上記以外に、区分することができるものがあったとは認められない。
 したがって、本件事業等の各種事業に係る課税売上高について、該当する事業の種類ごとに区分をしていないものがあったと認めるのが相当である。
(ニ) 請求人の主張の当否
 請求人は、上記イの「請求人」欄のとおり、本件事業は、第一種事業のみに該当し、本件各付随事業は、取引先ごとに区分されているので、本件事業等の各種事業に係る課税資産の譲渡等について、該当する事業の種類ごとに区分していないものはなく、そもそも、有価物のすべてを業者に販売しているという認識である以上、複数の事業区分などあり得ようもなく、区分経理をしていないことを理由に高率の課税を行うことは、租税法律主義に違反する旨主張する。
 しかしながら、上記(イ)によれば、消費税法施行令第57条第4項に規定する課税資産の譲渡等につきこれらの事業の種類ごとの区分をしていないものとは、事業者の帳簿、書類等に基づいて、当該事業者の行う事業の種類ごとの課税売上高の区分をすることができない場合をいうものと解されるところ、上記(ハ)のとおり、本件事業等の各種事業に係る課税売上高について、一部を除き、区分することができるものがあったとは認められないから、該当する事業の種類ごとに区分をしていないものがあったと認めるのが相当であり、請求人が複数の事業区分となることを認識しておらず、本件事業等の事業区分を第一種事業のみであるとして区分経理をしていなかったということを理由に、事業の種類ごとに区分していなかったとするものではない。また、事業の種類ごとに区分していなかった場合には、消費税法第37条第1項及びこれを受けた消費税法施行令第57条第4項の規定に基づき適用される事業区分によることとなるのは、まさしく租税法律主義の要請に基づくものである。
 したがって、請求人の主張には理由がない。

(3) 本件各更正処分の適法性

イ 課税標準額及び消費税額
 原処分庁が主張する本件各課税期間に係る課税売上高には、別表2の「理由等」欄のとおり、算定誤りが認められることから、これらを加減算して、本件各課税期間の課税売上高を改めて算定すると、同表の「課税売上高(審判所認定額)」欄の「金額」欄のとおりとなるので、本件各課税期間の課税標準額(1,000円未満の端数切捨て)は、別表3の「課税標準額」欄の「審判所認定額」欄のとおり、平成18年課税期間が○○○○円、平成19年課税期間が○○○○円、平成20年課税期間が○○○○円であり、本件各課税期間の課税標準額に対する消費税額は、別表3の「消費税額」欄の「審判所認定額」欄のとおり、平成18年課税期間が○○○○円、平成19年課税期間が○○○○円、平成20年課税期間が○○○○円である。
ロ 控除対象仕入税額
 上記(2)のロの(ハ)のとおり、本件事業等は、第一種事業、第四種事業及び第五種事業に該当することとなるが、上記(1)のロの(ハ)のAの取引(第五種事業)に係る課税売上高、また、平成20年課税期間については、前記1の(4)のハの廃油用タンクの管理事業(第五種事業)に係る課税売上高以外の本件事業等の各種事業に係る課税売上高を事業の種類ごとに区分することはできないので、消費税法施行令第57条第4項第4号の規定により、その区分することのできない課税売上高をすべて第五種事業に係る課税売上高とすることとなる。
 そうすると、本件事業等の事業区分はすべて第五種事業となるので、上記イの課税標準額に対する消費税額から下記ハの売上げに係る対価の返還等の金額に係る消費税額を控除した残額に第五種事業に係るみなし仕入率を乗じて、本件各課税期間に係る控除対象仕入税額をそれぞれ算出することとなり、その金額は、別表3の「控除対象仕入税額」欄の「審判所認定額」欄のとおり、平成18年課税期間が○○○○円、平成19年課税期間が○○○○円、平成20年課税期間が○○○○円である。
ハ 売上げに係る対価の返還等の金額に係る消費税額の控除額
 上記(1)のロの(ロ)のBの(B)のcのとおり、平成20年1月から、請求人の請求代金から相殺された負担金は、請求人が動植物廃油を回収するために排出事業者に対し直接支払うものではなく、請求人の請求代金を減額するものであるから、消費税法第38条第1項に規定する売上げに係る対価の返還等に該当すると認められるところ、請求人は、平成20年課税期間における当該負担金の金額について、総勘定元帳の「仕入高」勘定に、年月日、名称及び金額を記載し、上記(2)のロの(ロ)のAの(B)の「H社 月別精算表」と題する書面には、月別の金額(上記「仕入高」勘定に記載された金額のほか、現金支払済分の金額も記載されている。)及び「仕入買取」である旨記載されているので、消費税法施行令第58条第1項及び第2項に規定する要件も満たされていると認めるのが相当である。
 そうすると、平成20年課税期間における上記負担金の金額が○○○○円(消費税等を含む。)であると認められるので、この金額に105分の4を乗じた金額が、平成20年課税期間の売上げに係る対価の返還等の金額に係る消費税額となり、その金額は、別表3の「売上げに係る対価の返還等の金額に係る消費税額」欄の「審判所認定額」欄のとおり、○○○○円である。
ニ 納付すべき消費税等の額
 本件各課税期間の納付すべき消費税等の額は、下記(イ)及び(ロ)の合計額となり、別表3の「審判所認定額」欄の「納付すべき消費税等の額」欄のとおり、平成18年課税期間が○○○○円、平成19年課税期間が○○○○円、平成20年課税期間が○○○○円である。
(イ) 消費税の額
 上記イから上記ロ及びハを控除した金額(100円未満切捨て)が、本件各課税期間の消費税の額となり、その金額は、別表3の「審判所認定額」欄の「消費税額」欄のとおり、平成18年課税期間が○○○○円、平成19年課税期間が○○○○円、平成20年課税期間が○○○○円である。
(ロ) 地方消費税の額
 上記(イ)の消費税額に100分の25を乗じた金額(100円未満切捨て)が、本件各課税期間の地方消費税の額となり、その金額は、別表3の「審判所認定額」欄の「地方消費税額」欄のとおり、平成18年課税期間が○○○○円、平成19年課税期間が○○○○円、平成20年課税期間が○○○○円である。
ホ まとめ
 本件各課税期間の納付すべき消費税等の額は、上記ニのとおりであり、いずれも本件各更正処分の額を上回る。
 したがって、本件各更正処分はいずれも適法である。

(4) 本件各賦課決定処分の適法性

 本件各更正処分は、上記(3)のホのとおり適法であり、これにより納付すべき税額の計算の基礎となった事実について、通則法第65条《過少申告加算税》第4項に規定する正当な理由があったとは認められず、本件各賦課決定処分は、同条第1項並びに地方税法附則第9条の4《譲渡割の賦課徴収の特例等》及び第9条の9《譲渡割に係る延滞税等の計算の特例》第1項の規定に従い適切に行われている。
 したがって、本件各賦課決定処分はいずれも適法である。

(5) その他

 原処分のその他の部分については、当審判所の調査によっても、これを不相当とする理由は認められない。

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