(平成23年7月21日裁決)

《裁決書(抄)》

1 事実

(1) 事案の概要

 本件は、弁護士業を営む審査請求人(以下「請求人」という。)が、事務所の移転に伴い受領した金員を一時所得の収入金額として申告したところ、原処分庁が、その金員の一部は事業所得の収入金額に該当するなどとして所得税の各更正処分及び過少申告加算税の各賦課決定処分をしたことから、請求人が原処分の一部の取消しを求めた事案である。

(2) 審査請求に至る経緯

イ 請求人は、平成18年分、平成19年分及び平成20年分(以下、これらを併せて「本件各年分」という。)の所得税について、確定申告書に別表1の「確定申告」欄のとおり記載して法定申告期限までにそれぞれ申告した。
ロ 原処分庁は、これに対し、平成22年3月12日付で、別表1の「更正処分等」欄のとおりの本件各年分の所得税の各更正処分及び過少申告加算税の各賦課決定処分をした。
ハ 請求人は、これらの処分のうち、事務所の移転に伴い受領した金員に係る部分を不服として、平成22年5月7日に異議申立てをしたところ、異議審理庁は、同年7月5日付で別表1の「異議決定」欄のとおり、上記各処分の一部を取り消す異議決定をした。
ニ 請求人は、異議決定を経た後の上記各処分に不服があるとして、平成22年7月30日に審査請求をした。
 なお、審査請求に至るまでの、請求人及び原処分庁の主張する所得区分は別表2のとおりである。
ホ その後、原処分庁は、請求人の扶養親族が○○に当たるとして、平成23年5月27日付で、本件各年分の所得税についての各減額更正処分及び過少申告加算税の各変更決定処分をした(以下、減額更正処分後の本件各年分の各更正処分を、順次「18年分更正処分」、「19年分更正処分」及び「20年分更正処分」といい、これらを併せて「本件各更正処分」という。また、変更決定後の本件各年分の過少申告加算税の各賦課決定処分を、順次「18年分賦課決定処分」、「19年分賦課決定処分」及び「20年分賦課決定処分」といい、これらを併せて「本件各賦課決定処分」という。)。
ヘ これを受けて、請求人は、審査請求の対象を本件各更正処分及び本件各賦課決定処分に変更した。
ト なお、請求人は、所得税法第16条《納税地の特例》第2項の規定に基づき、請求人の事務所のあるg県d市e町○−○を、本件各年分の所得税の納税地としている。

(3) 関係法令等の要旨

 別紙2のとおりである。

(4) 基礎事実

イ 請求人は、g県d市f町○−○所在のHビルの3部屋(以下「旧事務所」という。)及び駐車場を賃借していた。
ロ 請求人は、平成18年1月31日付で、J社との間で、旧事務所及び駐車場に関する「明渡合意書」と題する書面(以下「本件合意書」という。)を取り交わした。
ハ 本件合意書による両者間の合意事項は、要旨次のとおりである。
(イ) 旧事務所及び駐車場の各賃貸借契約を、平成18年1月31日、合意解除する。
(ロ) 請求人は、J社に対し、同年10月末日限りで旧事務所及び駐車場を明け渡す。ただし、請求人は、できるだけ早く旧事務所及び駐車場を明け渡す努力をし、明渡しの見通しがついた場合には、J社と請求人は、速やかに具体的な明渡しのための協議を行い、明渡し期日を特定する。なお、請求人は、J社に対し、上記イの賃貸借契約にある原状回復義務の規定にもかかわらず、旧事務所を現状有姿の状態で明け渡すこととする。
(ハ) J社は、請求人に対し、旧事務所の明渡移転費用及び平成18年の差額賃料補てん費用等として○○○○円(以下「18年受領金員」という。)を、以下のとおり、請求人名義の普通預金口座(以下「本件銀行口座」という。)に振り込んで支払う。
A 本件合意書締結時に○○○○円
B 旧事務所明渡しと引換えに○○○○円
(ニ) J社は、請求人が新しく賃借する部屋(上記(2)のト記載の物件であり、これを以下「新事務所」という。)の賃料・共益費・空調費等雑費の差額補てん費用の一部として、請求人に対し、以下のとおり金員を支払う。
A 平成19年1月1日現在において、請求人が、新事務所の賃貸借契約を継続していた場合には、同日限りで○○○○円(同年1月から同年12月までの分)(以下「19年受領金員」という。)
B 平成20年1月1日現在において、請求人が、新事務所の賃貸借契約を継続していた場合には、同日限りで○○○○円(同年1月から同年12月までの分)(以下「20年受領金員」といい、18年受領金員及び19年受領金員と併せて「本件受領金員」という。)
C J社は、上記A及びBの支払義務を担保するため、本件合意書締結時(平成18年1月31日)に、○○○○円を本件銀行口座に振り込んで、請求人に預託する。
D 請求人は、上記A及びBの各期日において、約定の金員を預託金から取り崩し、各支払に充てることができる。
E J社は、請求人に対して、上記Cの預託金○○○○円の担保の取消しを請求できない。ただし、上記A及びB記載のJ社の新事務所差額補てん義務は、請求人又は請求人のパートナー弁護士が、上記A及びB記載の各支払期日及びその後に新事務所の賃貸借契約を継続していることが発生要件であり、それ故、上記各支払期日後、請求人又は請求人のパートナー弁護士が、新事務所の賃貸借契約を解消した場合には、その解消後のJ社の新事務所差額補てん義務は消滅し、その解消後の賃料差額補てん分相当額(月額833,333円×その月数)を、請求人は、J社に対し、返還しなければならない。
ニ 請求人は、平成18年3月7日、新事務所について、賃料を月額2,607,400円とし、賃貸借期間を同年4月1日から平成20年3月31日までとする旨の賃貸借契約を締結し、平成18年5月から新事務所の賃料等の支払を開始し、同月3日(水)に旧事務所を明け渡して新事務所に移転し、同月8日(月)に新事務所での営業を開始した。これに伴い、請求人は、別表3のとおり、旧事務所の明渡移転及び新事務所での営業開始のための各費用(合計12,838,788円)を支出した。
 なお、請求人は、平成20年12月31日に至るまで、新事務所の賃借を継続しており、その間の旧事務所の賃料等(月額1,952,820円。消費税抜き)と新事務所の賃料等(月額○○○○円。消費税抜き)との差額(以下「賃料等差額」という。)は、月額○○○○円(年額○○○○円)であった。
ホ 請求人は、本件合意書に基づき、以下のとおり、本件受領金員等を、J社から順次受け取った。
(イ) 平成18年1月27日の本件銀行口座への入金
A 18年受領金員のうち○○○○円(上記ハの(ハ)のA)
B 19年受領金員及び20年受領金員各○○○○円の支払預託金○○○○円(上記ハの(ニ)のA及びB)
C 旧事務所に係る預託保証金20,725,950円
(ロ) 平成18年4月7日の本件銀行口座への入金
 18年受領金員のうち○○○○円(上記ハの(ハ)のB)
(ハ) 平成19年1月12日の本件銀行口座から請求人の事業用の銀行口座への振替入金
 19年受領金員○○○○円(上記ハの(ニ)のA)
(ニ) 平成20年1月8日の本件銀行口座から請求人の事業用の銀行口座への振替入金
 20年受領金員○○○○円(上記ハの(ニ)のB)
ヘ 請求人は、平成18年5月10日、同月8日に納税地を旧事務所から新事務所へ異動した旨の「所得税・消費税の納税地の異動に関する届出書」を原処分庁に提出した。
 その上で、請求人は、本件受領金員を、その支払時期に応じた本件各年分の一時所得の収入金額にそれぞれ算入するとともに、平成18年に支出した別表3記載の各費用に相当する金額(合計12,838,788円)を、同年分の事業所得の金額の計算上、必要経費に算入して、本件各年分の所得税の各確定申告をした。
ト これに対し、原処分庁は、18年分更正処分において、18年受領金員のうち、上記ヘの請求人が平成18年分の事業所得の金額の計算上、必要経費に算入した別表3記載の各費用に相当する金額(合計12,838,788円)、及び上記ニの賃料等差額(月額○○○○円)に基づいて算出した同年分の賃料等差額の合計額(8か月分の○○○○円)を、同年分の事業所得の収入金額に該当するとした(以下、別表3記載の各費用に相当する金額の合計12,838,788円を「本件移転関係費用」という。)。
 また、原処分庁は、19年分更正処分及び20年分更正処分において、19年受領金員及び20年受領金員のうち、上記ニの賃料等差額(月額○○○○円)に基づいて算出した両年分の賃料等差額の各合計額(12か月分の各○○○○円)を、それぞれの年分の事業所得の収入金額に該当するとした(以下、本件各年分の賃料等差額の合計額○○○○円を「本件賃料等差額費用」という。)。

(5) 争点

 本件の争点は、本件受領金員のうちに、事業所得の収入金額に該当する金額があるか否かである。

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2 主張

(1) 原処分庁

 本件受領金員のうち、本件移転関係費用及び本件賃料等差額費用の補てんに相当する金額は、請求人の弁護士業の遂行による得べかりし利益の喪失に対して支払われたものであり、事業所得に係る収入金額に代わる性質を有するから、所得税法施行令第94条第1項第2号に規定する「当該業務の収益の補償として取得する補償金その他これに類するもの」に該当し、事業所得の収入金額に含まれる。
 なお、所得税基本通達34−1(7)は、各種所得に該当する金員が一時所得に該当しないことを改めて明らかにするとともに、その注書の1で、必要経費を補てんするための金額を、各種所得の収入金額に算入すべき旨を定めたものであり、これは請求人が主張するように収益補償的な補てん金に限定されるものではない。

(2) 請求人

 本件受領金員は、すべて、弁護士事業の遂行により生じた収入ではなく、弁護士業務とは関係がなく、継続性のない一時的な収入である。また、請求人は、新事務所で弁護士業務を開始するまでの間、旧事務所で同業務を行っていたのであるから、所得税法施行令第94条第1項第2号に規定する業務の休止や廃止等の事実はなく、得べかりし利益の喪失もないから、本件受領金員は、すべて、収益補償的な意味を持たない。したがって、本件受領金員は、すべて、事業所得の収入金額ではなく、一時所得の収入金額に含まれる。
 なお、所得税基本通達34−1(7)の「業務の休止期間中に使用人に支払う給与等借家人の各種所得の金額の計算上必要経費に算入される金額を補てんするための金額」とは、すべての必要経費を補てんする金額を想定しているのではなく、収益補償的な意味を持つ必要経費を補償する金額のみが、事業所得に該当する旨を定めたものである。

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3 判断

(1) 認定事実

イ 当審判所の調査の結果によれば、請求人は、平成17年12月末ころ、J社から旧事務所の明渡しを求められたが、それに伴って提示されたいわゆる立退料に当たる金員の額が少なかったため、明渡しを合意するには至らず、平成18年に入って、同社から「(上記立退料に当たる金員の額は)請求人の考える金額でよい」旨の話があったことから、請求人が自ら、本件合意書を作成し、同社との間で本件合意書のとおりの合意をしたことが認められる。
ロ 請求人の答述によれば、請求人は、本件合意書を作成するに当たり、本件受領金員の金額の内訳を、次の(イ)及び(ロ)のとおりとしたことが認められる。
(イ) 旧事務所の明渡しに係る引越費用等の明渡移転費用として○○○○円
(ロ) 旧事務所と同程度の物件を新たに賃借する場合に生じる年間○○○○円程度の賃料等差額の3年分の補てん費用として○○○○円

(2) 法令解釈

イ 所得税法第27条第2項及び第36条第1項によれば、その年分の事業所得の金額の計算上、総収入金額に算入すべき金額は、別段の定めがあるものを除き、その年において収入すべき金額である。ここでいう事業所得の総収入金額に算入すべき金額に、本来の事業活動によって得た収入金額が含まれることは当然であるが、これに加えて、同法施行令第94条は、事業所得を生ずべき業務を行う者が受ける当該業務の収益の補償として取得する補償金等で、その業務の遂行により生ずべき事業所得に係る収入金額に代わる性質を有するものも、上記事業所得の総収入金額に含まれることを明らかにしている。また、事業所得を生ずべき事業とは、継続的に行われる利益を目的とした多様な経済活動の総体であり、そのような事業の遂行に伴って本来企図した収入以外の収入が付随して生じることが少なくないことにかんがみると、本来の事業活動によって得た収入そのものではないが当該事業の遂行に付随して生じた収入についても、所得税法上別の所得に区分されるものを除き、上記事業所得の総収入金額に含まれると解するのが相当である。
ロ さらに、所得税法は、所得の性質や発生の様態によって担税力が異なることから、担税力に応じた公平な課税をするために、所得を10種類に区分し、その各種所得の金額の計算上必要経費に算入されるべき金額については、それに対する補てんの有無にかかわらず、各種所得の金額の計算上、必要経費として控除できることとしている。このことに照らすと、事業所得に係る必要経費の補てん金の支払を受けた場合には、その金額を事業所得の収入金額に算入しなければ、担税力に応じた公平な課税を目的とする所得税法の立法趣旨を損なうことになる。このように、事業所得に係る必要経費の補てん金に相当する金額についても、事業所得の収入金額に含まれると解するのが相当である。

(3) 当てはめ

イ 本件受領金員の区別について
 上記1の(4)のハの本件合意書の内容、及び同ホの金員の受取状況、並びに上記(1)のロの金額の算定根拠を総合すれば、請求人が、18年受領金員のうち平成18年1月27日に受領した○○○○円を、上記(1)のロの(イ)のとおり、旧事務所の明渡しに係る引越費用等の明渡移転費用の名目で受領し(以下、この金額を「明渡移転料」という。)、また、18年受領金員のうち新事務所の賃貸借契約締結後の同年4月7日に受領した○○○○円並びに19年受領金員及び20年受領金員を、上記(1)のロの(ロ)の旧事務所と同程度の物件を新たに賃借する場合に生じる年間○○○○円程度の賃料等差額の3年分の補てん費用の名目で受領した(以下、この金額を「賃料等差額補てん金」という。)ことは、明らかである。
ロ 賃料等差額補てん金の事業所得該当性について 
 上記1の(4)のハの(ニ)のA、B及びEのとおり、請求人が賃料等差額補てん金を受領するための条件は、賃料等差額補てん金の支払期日以降も請求人が新事務所の賃貸借契約を継続していることのみであり、実際に旧事務所と同程度の事務所を新たに賃借することは、賃料等差額補てん金の受領条件ではない。また、上記1の(4)のハの(ハ)及び(ニ)のとおり、請求人は、賃料等差額補てん金と実際の賃料等差額とが異なる場合に、余剰金額の返還義務を負担する旨や不足金額の追加請求をすることができる旨の合意はなく、新事務所の賃貸借契約を継続してさえいれば、3年にわたり、所定の金額を3回に分けて受領できることとされていた。
 そうすると、請求人が受領した賃料等差額補てん金は、賃料等差額そのものを直接的に補てんする趣旨で支払われたものではなく、請求人に対し、新事務所の賃貸借契約の継続を条件に、請求人が支払う新事務所の賃料等の一部、すなわち請求人の事業所得に係る必要経費を補てんする趣旨で支払われたものと認められる。
 したがって、本件各年分の賃料等差額補てん金は、すべて、上記(2)のロのとおり、請求人の事業所得の総収入金額に算入すべき金額である。
ハ 明渡移転料の事業所得該当性について
(イ) 上記1の(4)のハ、ホ及び上記(1)のロのとおり、明渡移転料の使途は、本件合意書上、特定されていないものの、その支払時期や名目に照らし、その一部に旧事務所を明け渡すための費用を補てんする趣旨で支払われたものが含まれていたことは明らかである。そして、請求人は、現に、別表3の順号6及び7のとおり、平成18年5月17日にK社に対して支払った引越費用1,312,500円(同順号6)及び同月22日にL社に対して支払った旧事務所の電話工事費用298,042円(同順号7)という、旧事務所を明け渡すための各費用(合計1,610,542円)を支出している。
 そうすると、請求人が明渡移転料として受領した○○○○円のうち、旧事務所を明け渡すための各費用(合計1,610,542円)に相当する金額は、請求人の事業所得に係る必要経費を補てんするために支払われたものと認められる。
 したがって、明渡移転料のうち1,610,542円は、上記(2)のロのとおり、請求人の事業所得の総収入金額に算入すべき金額である。
(ロ) 他方で、明渡移転料のうち上記(イ)の1,610,542円を除く○○○○円については、上記1の(4)の基礎事実及び上記(1)の認定事実、並びに当審判所の調査の結果によっても、本件移転関係費用のうち、上記(イ)の旧事務所を明け渡すための各費用以外の額(請求人が新事務所での営業を開始するために支出した合計11,228,246円の金額)を、その算定根拠としたことが、具体的に明らかであるとはいえない。
 そうすると、請求人が明渡移転料として受領した○○○○円のうち、旧事務所の明渡移転のための費用(合計1,610,542円)を除く○○○○円に相当する金員が、請求人の事業所得に係る収入金額又は必要経費を補てんするために支払われたものであるとは認められない。
 したがって、明渡移転料のうち○○○○円は、上記(イ)と異なり、請求人の事業所得の総収入金額に算入すべき金額ではなく、また、営利を目的とする継続的行為から生じた所得以外の一時の所得で労務その他の役務又は資産の譲渡の対価としての性質を有しないものであるから、所得税法第34条の規定により、一時所得の収入金額に算入すべき金額となる。
ニ 請求人は、本件の場合には所得税基本通達34−1(7)の適用がない旨主張するが、同通達の定めは、一般に借家人が立退きに際して受領する金員は、明渡しに至る経緯、明渡しに要する費用の額、借家の使用状況など種々の要因に基づき算定されることから、その支払に至るまでの諸事情を総合勘案し、上記金員のうちの別の所得に区分されるべき一定のものを除いて、一時所得に区分される旨を、また、同通達の注書の1は、収入金額又は必要経費に算入される金額を補てんするための金額は、すべて、各種所得の収入金額に算入される旨を、上記(2)の法令解釈に沿って、それぞれ明示したものであるから、上記ロ及びハに記載の当審判所の判断に影響を及ぼすものではない。よって、請求人の主張には理由がない。
ホ 本件各年分の事業所得及び一時所得の各金額について
 以上によれば、請求人の受領した明渡移転料及び差額賃料補てん金の所得区分は、別表2の「審判所の認定」欄のとおりとなり、請求人の本件各年分の各所得については別表4のとおり、平成18年分の事業所得及び一時所得の各金額は、それぞれ○○○○円及び○○○○円となり、また、平成19年分及び平成20年分の事業所得の各金額は、それぞれ○○○○円及び○○○○円(一時所得の各金額は、いずれも○○○○円)となる。

(4) 本件各更正処分について

 上記(3)のホを前提とすると、請求人の本件各年分の総所得金額及びその内訳、並びに納付すべき税額は、それぞれ別表1の「審判所認定額」欄のとおりとなる。
 したがって、平成18年分については、当審判所が認定した請求人の総所得金額及び納付すべき税額が、18年分更正処分の金額を下回るから、同処分は別紙1のとおりその一部を取り消すべきである。
 他方で、平成19年分及び同20年分については、当審判所が認定した請求人の各総所得金額及び各納付すべき税額が、19年分更正処分及び20年分更正処分の各金額を上回るから、両処分はいずれも適法である。

(5) 本件各賦課決定処分について

 上記(4)のとおり、18年分更正処分はその一部を取り消すべきであるから、18年分賦課決定処分の基礎となる納付すべき税額は○○○○円となり、また、この税額の計算の基礎となった事実のうちに、18年分更正処分前の税額の計算の基礎とされていなかったことについて、国税通則法第65条《過少申告加算税》第4項に規定する正当な理由があるものは認められない。
 そうすると、請求人の平成18年分の過少申告加算税の額は○○○○円となり、18年分賦課決定処分の金額に満たないから、同賦課決定処分は別紙1のとおりその一部を取り消すべきである。
 他方で、上記(4)のとおり、19年分更正処分及び20年分更正処分はいずれも適法であり、また、これらの処分に係る納付すべき税額の計算の基礎となった事実のうちに、これらの処分前の税額の計算の基礎とされていなかったことについて、国税通則法第65条第4項に規定する正当な理由があるものは認められないから、19年分賦課決定処分及び20年分賦課決定処分はいずれも適法である。

(6) その他

 原処分のその他の部分については、当審判所に提出された証拠資料等によっても、これを不相当とする理由は認められない。

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