(平成23年10月17日裁決)

《裁決書(抄)》

1 事実

(1) 事案の概要

 本件は、会社員である審査請求人(以下「請求人」という。)が、平成12年中に居住を開始した家屋の取得に係る借入金は、租税特別措置法(平成13年法律第7号による改正前のもの。以下「措置法」という。)第41条《住宅借入金等を有する場合の所得税額の特別控除》第1項の適用対象であるとして、平成13年に確定申告をしたところ、原処分庁の指摘を受け、請求人が、同年に当該確定申告を撤回し、それから9年を経過した平成22年において、再び、当該家屋は新築により請求人が持分を取得したものであるので同項の適用が受けられるとして、平成17年分ないし平成21年分の確定申告をしたのに対し、原処分庁が、当該家屋は同項に規定する新築に該当せず、また、請求人が所有している家屋に行った増築でもないので同条第4項に規定する増改築等にも該当せず、請求人は同条第1項の適用を受けることができないとして、所得税の更正処分等を行ったため、請求人が、それらの全部の取消しを求めた事案である。

(2) 審査請求に至る経緯

イ 確定申告
 請求人は、原処分庁に対し、平成17年分、平成18年分、平成19年分、平成20年分及び平成21年分(以下「本件各年分」という。)の所得税について、平成12年中に新築したa県b市g町○−○ほかに所在する家屋番号○番の居宅(以下「本件家屋」という。)に、その新築の日から6か月以内に入居し、引き続き居住の用に供しているから、本件家屋の取得に係る借入金には、措置法第41条第1項に規定する住宅借入金等特別税額控除額の控除(以下「住宅借入金等特別控除」という。)の適用があるとして、別表1の「確定申告」欄のとおり、平成22年3月12日に、それぞれ確定申告をした。
ロ 処分
 原処分庁は、本件各年分の所得税について、住宅借入金等特別控除の適用は認められないとして、別表1の「更正処分及び賦課決定処分」欄のとおり、平成22年5月28日付で、各更正処分(以下「本件各更正処分」という。)及び過少申告加算税の各賦課決定処分をした。
ハ 不服申立て
 請求人は、上記ロの各処分を不服として、平成22年7月24日に、異議申立てをしたところ、異議審理庁が同年9月22日付で棄却する旨の異議決定をしたので、同年10月19日に審査請求をした。

(3) 関係法令

イ 措置法第41条
 第1項は、居住者が、国内において、住宅の用に供する家屋で政令で定めるものの新築若しくは居住用家屋で建築後使用されたことのないもの若しくは建築後使用されたことのある家屋で政令で定めるものの取得又はその者の居住の用に供する家屋で政令で定めるものの増改築等をして、これらの家屋を平成9年1月1日から平成13年12月31日までの間にその者の居住の用に供した場合(これらの家屋をその新築の日若しくはその取得の日又はその増改築等の日から6月以内にその者の居住の用に供した場合に限る。)において、その者が当該住宅の取得等に係る借入金又は債務の金額を有するときは、当該居住の用に供した日の属する年以後15年間(同日の属する年が平成12年である場合)の各年(当該居住の用に供した日以後その年の12月31日まで引き続きその居住の用に供している年に限る。)のうち、その者のその年分の所得税に係るその年の合計所得金額が30,000,000円以下である年については、その年分の所得税の額から、住宅借入金等特別税額控除額を控除する旨規定している。
 また、第4項は、第1項に規定する増改築等とは、当該居住者が所有している家屋につき行う増築、改築その他の政令で定める工事で当該工事に要した費用の額が1,000,000円を超えるものであることその他の政令で定める要件を満たすものをいう旨規定している。
ロ 租税特別措置法施行令第26条《住宅借入金等を有する場合の所得税額の特別控除》
 第1項は、上記イに規定する住宅の用に供する家屋で政令で定めるものは、個人がその居住の用に供する次に掲げる家屋とする旨規定している。
(イ) 第1号 1棟の家屋で床面積が50平方メートル以上であるもの。
(ロ) 第2号 1棟の家屋で、その構造上区分された数個の部分を独立して住居その他の用途に供することができるものにつきその各部分を区分所有する場合には、その者の区分所有する部分の床面積が50平方メートル以上であるもの。

(4) 基礎事実

イ 請求人の家族関係及び住民票上の住所の変遷等
 請求人は、平成9年12月9日に、肩書地に居住していたL夫妻を両親とするDと婚姻するとともに、L夫妻との間で養子縁組をした。
 請求人の住所は、平成12年6月1日に、d市e町○−○から肩書地に異動し、その後、異動していない。
 なお、請求人は、上記養子縁組等により、住所を異動した後、Lの母であるEとも同居していたが、Eは平成21年9月○日に死亡した。
ロ 工事請負契約の内容
 Lは、平成11年1月15日付で、F社との間で、同人が当時所有していた木造瓦葺平家建(床面積211.16平方メートル)の居宅(以下「本件旧家屋」という。)の一部を取り壊し、木造瓦葺2階建(床面積248.46平方メートル)の住宅1棟(以下「本件建築家屋」という。)を、請負金額43,000,000円で建築する旨の工事請負契約を締結した。
 なお、本件建築家屋の工事請負契約に係る「御見積書」の表紙には、G邸新築工事と記載されており、見積金額の値引後の合計として43,000,000円と算定されている。
 また、本件建築家屋の工事設計図における配置図、1階平面図及び2階平面図は、別表2及び3のとおりである。
ハ 本件旧家屋の取壊しの状況
 本件旧家屋は、本件建築家屋の建築後に生前のEが寝室として使用していた部屋(以下「本件寝室」という。)及び附属建物のトイレ(以下「旧トイレ」という。)の部分を残して、平成11年3月27日に取り壊された。
ニ 本件家屋の現況等
 本件家屋の現況は、別表4のとおりであり、本件建築家屋と本件寝室が幅約0.6メートル、長さ約10.9メートルの木製の廊下(以下「本件廊下」という。)を介して接合され、屋内で相互に移動ができるようになっており、本件廊下に接続して新しくトイレ(以下、本件廊下と併せて「本件廊下等」という。)が建築されている。
 なお、本件旧家屋の建物図面及び各階平面図は別表5及び6のとおりであり、本件建築家屋の建築後の建物図面及び各階平面図は別表7及び8のとおりである。
ホ 建築確認申請書の工事種別
 本件家屋に係る建築確認申請書の工事種別には、増築と表示されている。
ヘ 本件家屋の登記の状況
 本件家屋の登記簿の主たる建物の表示に関する登記は、平成12年8月9日に、床面積の錯誤(平成11年3月27日一部取毀)並びに構造及び床面積の平成12年6月26日変更、増築を原因として、構造が木造瓦葺平家建から木造瓦葺2階建へ、床面積が211.16平方メートルから1階224.11平方メートル、2階85.72平方メートルへと、それぞれ変更された。
 また、本件家屋の所有権に関する事項については、昭和53年4月28日受付で、所有者をLとする所有権保存登記がなされ、平成12年7月31日受付で、錯誤を原因として、共有者の持分を、請求人が90分の43、Lが90分の47とする所有権更正登記がされた。
ト 本件家屋及び附属建物の持分の算定根拠
 請求人及びLの委任を受け、本件家屋の建物表示変更・更正登記に係る登記申請を行ったM測量事務所が作成した「確認書」には、本件旧家屋の固定資産税評価額546,005円を床面積231.39平方メートルで除して求めた1平方メートル当たりの価額2,360円に本件寝室の床面積34.03平方メートルを乗じて求めた価額80,310円とL所有の既存の附属建物の固定資産税評価額1,815,655円の合計額1,895,965円をLの持分、本件建築家屋43,000,000円の出資額の割合を請求人及びLそれぞれ2分の1として、本件家屋及び上記附属建物の持分は、請求人が90分の43、Lが90分の47になると記載されている。
チ 請求人の本件建築家屋に係る借入金の状況
 請求人が本件各年分の所得税の確定申告書に添付した住宅取得資金に係る借入金の年末残高等証明書には、借入れの契約を締結した年月日が平成12年8月31日、借入れの当初金額が21,000,000円、償還期間又は賦払期間が平成12年9月から平成37年8月までの25年間、住宅借入金等の内訳が住宅のみと記載されている。

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2 争点

 本件建築家屋は、新築されたものか否か。

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3 主張

 当事者双方の主張は、別紙のとおりである。

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4 判断

(1) 認定事実

 請求人提出資料、原処分関係資料及び当審判所の調査の結果によれば、次の事実が認められる。
イ 本件建築家屋の建築経過等
(イ) 本件建築家屋の建築目的
 Lは、平成10年の秋頃に、本件旧家屋の裏に請求人夫妻が住む家を建てる予定だったが、請求人夫妻と話合いの結果、本件建築家屋に同居することになった。
(ロ) 本件建築家屋の間取り及び部屋割り等
 本件建築家屋の間取り及び部屋割りは平成10年11月頃に話合いによって、L夫妻及びEが本件建築家屋の1階、請求人夫妻がその2階と決められ、設計図面は同年暮れ頃には出来上がった。本件寝室は、西座敷と呼ぶ特別な部屋でLが取り壊したくなかったので残すことにした。
(ハ) 本件建築家屋の建築資金の負担
 Lは、本件建築家屋を一人で建てるつもりで、最初は工事契約等を全て一人で進めていたが、平成11年1月15日の工事請負契約時(以下「本件契約時」という。)には、請求人も建築資金の2分の1を負担することになった。
(ニ) 本件建築家屋の工事着工日
 平成11年4月21日にLが申請した確認申請書(建築物)によれば、工事着手予定年月日が同年5月20日と記載されていることから、本件建築家屋は、同月頃着工されたものと認められる。
(ホ) 本件建築家屋と本件寝室とを接続した経緯等
 本件寝室は、平成12年5月中旬に、Lが本件寝室をEの部屋とすることを決め、同人が使用することになった。
 本件寝室は古い建物であり、壊れて本件建築家屋にもたれかかってしまうおそれがあるので、本件契約時には、本件寝室と離して本件建築家屋を建築することとしていたが、本件建築家屋の工事が終わりかけた平成12年5月中旬に、F社の棟梁から、本件建築家屋と本件寝室を廊下でつないで行き来したらどうかと言われ、棟梁から話があった翌日に、Lが本件廊下等を造るよう棟梁に伝えた。
 なお、本件旧家屋の一部を取り壊した後の本件寝室の屋根の補修工事は、本件寝室の屋根を伸ばして本件建築家屋につなぐ方法により、本件建築家屋の屋根工事と同時期に行われたが、本件廊下等の工事について、F社は変更契約書を取り交わしておらず、工事費用の追加請求もなかった。
(ヘ) 請求人が本件建築家屋に居住した日
 請求人は、平成12年5月27日に本件建築家屋に引っ越して居住を開始した。
ロ 本件寝室の設備内容
 本件寝室には、居住に必要な設備として電灯設備のほか、隣接する附属設備として旧トイレがあった。
ハ 本件建築家屋の設備内容
 本件建築家屋には、別表3のとおり、1階に玄関ホール、ダイニングキッチン、浴室、トイレ、洗面室、物置室並びに洋間(1室)及び和室(4室)があり、2階に書斎、洋間(3室)、和室(1室)及びトイレがある。
ニ 本件建築家屋と本件寝室の接合部分の構造
 本件廊下の基礎工事は、本件廊下の北南両側に行われており、その上に根太掛(根太の端を載せるため柱に打ちつけた横木)を2本渡し、それを本件建築家屋と本件寝室のそれぞれに取り付け、その上に根太(床板を受けるために床下に渡す横木)を渡し、床板を貼り付けてある。本件建築家屋と本件寝室の梁は一体となっておらず、本件廊下の屋根は、本件寝室の桁(柱の上に渡して垂木を受ける材)をそのままにして、本件建築家屋の桁に垂木(屋根の裏板を支えるため棟から軒に渡す材)を付け、それに野地板(屋根葺きの材料を取り付けるための下地板)を付けて、屋根を取り付けている。本件建築家屋と本件寝室は、本件寝室が古いため、いずれ本件寝室を取り壊すことを考えた工法により接合されており、構造的に一体となっていない。
ホ 本件建築家屋と本件寝室の接合部分の現状
(イ) 本件建築家屋と本件寝室は、本件廊下及び屋根で接合されている。本件廊下は、別表4のとおり、 本件建築家屋と本件寝室との間を両建物に沿って南北に配置され、南北の両端2か所に基礎工事が行われ、壁で塞がれており、南側の壁の外側に本件寝室の雨戸の戸袋が取り付けられている。本件廊下の北側は、別表3の本件建築家屋の北側の廊下と接続し、扉などで区切られておらず、また、南側は、同表の本件建築家屋の南側の広縁と接続し、扉で区切られているものの、本件廊下の北側及び南側ともに、本件建築家屋と本件寝室との間の行き来が可能である。
(ロ) 本件廊下の床の高さは、本件建築家屋の北側の廊下及び南側の広縁の床の高さと比較して、約18センチメートル低く、両者の間の床の高さに段差が生じており、その段差部分は、本件廊下の北側の端から南側の端まで、防腐剤を施した本件建築家屋の土台の一部が露出している。
(ハ) 別表3の本件建築家屋の南側の広縁に面した雨戸の戸袋の柱は、本件廊下の東側の外壁に埋め込まれている。
(ニ) 本件廊下の北側の基礎は、本件建築家屋の基礎とつなげてあるものの、異なる色のセメントが使用され、外見上、表面の質感が異なり、接合面の境界線が明らかであり、本件建築家屋の基礎と一体として形成されたものでなく、別に作られている。
(ホ) 本件建築家屋の本件廊下に面した壁は外壁材ではなく、仕上げが本件寝室の本件廊下に面した壁と統一された白色の化粧壁で上塗りされており、本件建築家屋の外壁と異なるが、下地は本件建築家屋の外壁と同様に荒壁で塗られている。

(2) 争点(本件建築家屋は、新築されたものか否か。)について

 措置法第41条に規定する住宅借入金等特別控除は、持家取得の促進と良質な住宅ストックの形成を図るとともに、住宅投資の活発化を通じた景気刺激策として、所得税額から一定額を控除することを目的として、創設された税額控除であるところ、同条第8項は、同条第1項の規定を受けようとする場合には、確定申告書に、財務省令で定める金額の計算に関する明細書、登記簿の抄本その他の書類の添付をすることを求めていることからすれば、大量かつ回帰的に発生する住宅借入金等特別控除の適用の可否について、第一義的には、確定申告書に添付された書類に基づいて判断することを認めたものと解するのが相当である。
 しかしながら、措置法第41条における「新築」の定義については特段の規定がないにも関わらず、単に、登記簿その他関係書類上、それが、「増築」と記載されていることだけを理由として、形式的にその「新築」性を否定するのは相当ではない。
 したがって、登記簿その他関係書類に記載された内容が実情にそぐわない場合にまで、飽くまでもそれに基づいて判断することを求めたものと解するのは、上記の住宅借入金等特別控除が創設された目的からみても相当ではなく、そのような場合には、建築家屋の現況及び建築経過等を総合し、措置法第41条における「新築」に該当するかを実質的に判断するべきである。
 そこで、本件についてみると、本件建築家屋は、上記(1)のハのとおり、家屋として、請求人夫妻とその子、L夫妻及びEの全員が十分生活できる設備が整っている一方、本件寝室は、同ロのとおり、居住に必要な設備として電灯設備及び旧トイレがあるだけで、本件寝室のみで生活ができる設備が整っているとはいえない。また、まる1同ニのとおり、本件建築家屋と本件寝室の梁は一体となっていないこと、まる2同ホの(ロ)のとおり、本件廊下と本件建築家屋の床の高さは約18センチメートルの段差が生じていることからみても、本件建築家屋は本件廊下によって本件寝室とつないでいるものの、本件建築家屋と本件寝室とは、構造的に一体となっているとは認めらない。すなわち、本件建築家屋は、本件寝室とは別棟であり、これは正に新築住宅にほかならない。
 さらに、上記(1)のイの(イ)のとおり、請求人は、平成10年の秋頃、Lとの話合いにより、本件建築家屋を建て、同居することになったが、同(ロ)のとおり、本件寝室については、Lの要望により取り壊さないこととなったにすぎず、そもそも本件建築家屋は、本件旧家屋(ただし、本件寝室を除く。)を取り壊した後、同一の場所に請求人夫妻とL夫妻が同居する目的で建築する予定になっており、同(ホ)のとおり、老朽化した本件寝室と離して本件建築家屋を建てる予定で工事を進めたが、本件建築家屋の完成間近になって、本件廊下によって本件寝室とをつなぐこととなったものである。そして、まる1前記1の(4)のロ並びに別表2及び3によれば、本件廊下の工事が当初から予定されたものではないこと、まる2上記(1)のニのとおり、本件建築家屋と本件寝室の梁は一体となっていないこと、まる3同ホの(ロ)のとおり、本件廊下と本件建築家屋の床の高さは約18センチメートルの段差が生じており、その段差部分では、本件廊下の北側の端から南側の端まで、防腐剤を施した本件建築家屋の土台の一部が露出していること、まる4同ホの(ハ)のとおり、本件建築家屋の南側の広縁に面した雨戸の戸袋の柱は本件廊下の外壁に埋め込まれていること、まる5同ホの(ニ)のとおり、本件廊下の北側の基礎は、本件建築家屋の基礎と一体として形成されたものでなく別に作られていることによれば、本件廊下の北側の基礎工事は本件建築家屋の基礎工事とは異なる時期に行われたものと認められることからみても、本件建築家屋と本件廊下は、構造的に一体となっているとは認められず、同ニのとおり、本件寝室が古いため、いずれ取り壊すことを考えた工法によって接合されていることからすると、本件建築家屋と本件寝室は、本件廊下によってじ後的かつ簡易に接合されたものであると認めるのが相当である。
 そして、本件建築家屋と本件寝室とが本件廊下を介して接合されることとなった時期が居住開始日の前であるか後であるかは明らかではないが、上記(1)のイの(ホ)のとおり、少なくとも、本件契約時から本件建築家屋の工事が終わり近くとなった平成12年5月中旬までは、本件廊下を介して接合されることが予定されていたとは認められない。
 これらのことからも、本件建築家屋は、建築された当時、本件寝室と構造的に一体となっておらず、機能的にも十分に整っている一方で、本件建築家屋と本件寝室は、本件廊下によってじ後的かつ簡易に接合されたものであるから、本件建築家屋は、請求人の家族が同居するために新築された家屋と認めるのが相当である。

(3) 原処分庁の主張の採否

 原処分庁は、別紙の「原処分庁」欄の1のとおり、本件建築家屋及び本件寝室は、構造及び居住用家屋としての機能が一体であり、請求人の本件建築家屋への居住開始日において本件建築家屋及び本件寝室が本件廊下を介して接合していないとする事実は確認できない旨主張する。
 しかしながら、構造が一体となっているとする点については、結果として、本件建築家屋と本件寝室との間は、上記(1)のホの(イ)及び(ホ)のとおり、本件廊下により屋内で行き来できる現状となっており、本件建築家屋の本件廊下に面した壁は、本件寝室の本件廊下に面した壁と統一された白色の化粧壁となっているものの、そのことをもって本件建築家屋と本件寝室が元々一体の建物として建築されたことの証拠とはならず、むしろ、同ニ及びホの(ロ)ないし(ニ)のとおり、本件建築家屋及び本件寝室は、構造的に一体となっているとはいえない。
 また、居住用家屋としての機能が一体であるとする点については、本件寝室の機能は、上記(1)のロのとおり、その設備内容からみて飽くまで従属的なものであることは明らかであり、一方、本件建築家屋は、同ハのとおり、設備内容からみて単独で居住用として使用するのに十分な機能が整っていると認められるにも関わらず、本件寝室が本件家屋の一部として一体的に機能することを理由に、本件家屋が、建築当初、又は居住開始日の前から、本件建築家屋及び本件寝室を一体とした1軒の建物として建築されたとみなすことは、本件建築家屋の現況及び建築経過等の事実を考慮せず、本件建築家屋の建築物としての独立性を看過するものであり、上記(2)の住宅借入金等特別控除の創設の目的に照らし相当とは認められない。
 なお、請求人の本件建築家屋への居住開始日において本件建築家屋及び本件寝室が本件廊下を介して接合していないとする事実は確認できないとする点については、上記(2)のとおり、本件建築家屋と本件寝室とが本件廊下を介して接合されることとなった時期が居住開始日の前であるか後であるかは明らかではないものの、仮に、請求人の本件建築家屋への居住開始日が本件建築家屋及び本件寝室が本件廊下を介して接合した後であったとしても、そのことのみによって、本件建築家屋の現況、建築経過等の事実に基づき総合し、実質的に判断した上記(2)の結果が左右されるものではない。
 以上のとおりであるから、原処分庁の上記主張を採用することはできない。

(4) 本件各更正処分の適法性

 上記(2)のとおり、本件建築家屋は、新築されたものであり、措置法第41条第1項の規定が適用される家屋に該当し、前記1の(4)のロ、ト及びチのとおり、本件家屋の請求人の持分は90分の43であるが、本件建築家屋の請求人の持分は2分の1と認められ、請求人の本件建築家屋の取得対価の額は21,500,000円である。そして、請求人は、住宅借入金等特別控除の対象となる借入金21,000,000円を有しており、他に、請求人が、本件各年分において、住宅借入金等特別控除の適用要件を満たしていないとする事実は認められない。
 以上に基づき、改めて本件各年分の住宅借入金等特別税額控除額及び還付金の額に相当する税額を算定すると、それらの金額は、いずれも本件各年分の確定申告の各金額と同額である。
 したがって、本件各更正処分は、いずれもその全部が取り消されるべきである。

(5) 本件各年分の過少申告加算税の各賦課決定処分の適法性

 上記(4)のとおり、本件各更正処分は、いずれもその全部が取り消されるべきであるから、本件各年分の過少申告加算税の各賦課決定処分も、いずれもその全部が取り消されるべきである。

(6) その他

 原処分のその他の部分については、当審判所の調査によっても、これを不相当とする理由は認められない。

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