(平成24年3月1日裁決)

《裁決書(抄)》

1 事実

(1) 事案の概要

 本件は、不動産貸付業を営む審査請求人(以下「請求人」という。)が、相続により取得したマンション等の減価償却資産について、減価償却資産の耐用年数等に関する省令(ただし、平成20年分以前については平成20年財務省令第32号による改正前のもの。以下「耐用年数省令」という。)第3条《中古資産の耐用年数等》第1項第2号の規定を適用して算出された耐用年数を基礎として償却費の額の計算を行い、当該償却費の額を請求人の平成19年分ないし平成21年分の不動産所得の金額の計算上、必要経費に算入して確定申告をしたところ、原処分庁が、減価償却資産を相続により取得した場合には同規定を適用することはできず、当該規定を適用して算出された耐用年数を基礎として計算された償却費の額が過大に計上されているなどとして、所得税の各更正処分及び過少申告加算税の各賦課決定処分を行ったことに対し、請求人が、原処分庁の法令解釈に誤りがあり原処分は違法であるとして、その全部の取消しを求めた事案であり、争点は、相続により取得した減価償却資産に係る償却費の額の計算に当たり、その計算の基礎となる耐用年数について耐用年数省令第3条第1項に規定する中古資産の耐用年数によることができるか否かである。

(2) 審査請求に至る経緯

 審査請求(平成23年4月12日請求)に至る経緯は、別表1のとおりである。

(3) 関係法令

 別紙のとおりである。

(4) 基礎事実

 次の事実については、請求人及び原処分庁との間に争いがなく、当審判所の調査の結果によってもその事実が認められる。
イ 請求人の配偶者であるCは、昭和58年8月頃、a市d町○−○、○番地、○番地○、a市e町○−○所在・家屋番号○番の鉄筋コンクリート造陸屋根3階建てで延床面積994.68平方メートルのマンション(以下「本件マンション」という。)を新築により取得し、同年9月8日付で本件マンションについてCを所有者とする所有権保存登記手続を行った。
 その後、Cは、本件マンションを賃貸の用に供し、不動産所得の基因となる賃料収入を得ていたが、同人の不動産所得の金額の計算上、本件マンションに係る償却費の額については、本件マンションが耐用年数省令別表第一の建物のうち「鉄骨鉄筋コンクリート造又は鉄筋コンクリート造のもの」の「住宅用、寄宿舎用、宿泊所用、学校用又は体育館用のもの」に該当するとして、その耐用年数につき法定耐用年数である47年を適用して算出していた。
ロ 本件マンションは、平成4年6月に塗装工事、平成9年10月に防水工事、平成13年10月に出窓に係る改造工事及び平成14年7月に大規模修繕工事がそれぞれ施工されたが、Cは、同人の不動産所得の金額の計算上、当該各工事に係る資本的支出相当部分のうち、塗装工事に係る資本的支出についてその耐用年数を15年として、その他の各工事に係る資本的支出について本件マンションの耐用年数と同じく47年の法定耐用年数を適用して償却費の額の計算を行った。
 また、本件マンションに係る建物附属設備の工事として、平成12年10月に水道設備及び平成14年11月にドア設備(以下、水道設備と併せて「本件各附属設備」といい、本件マンションと併せて「本件マンション等」という。)に係る各工事が施工されたが、Cは、同人の不動産所得の金額の計算上、本件各附属設備に係る耐用年数について耐用年数省令別表第一のとおり、水道設備に係る耐用年数を15年とし、ドア設備に係る耐用年数を18年としてそれぞれの償却費の額の計算を行った。
 さらに、Cは、平成14年7月に本件マンションに係る掲示板(以下「本件備品」といい、本件マンション等と併せて「本件各減価償却資産」という。)を取得したが、同人の不動産所得の金額の計算上、本件備品に係る耐用年数について耐用年数省令別表第一のとおり5年として償却費の額の計算を行った。
ハ 請求人は、平成14年12月○日、Cの死亡に伴い、本件各減価償却資産を相続(以下「本件相続」という。)により取得し、引き続き賃貸の用に供した。
 なお、請求人は、本件相続に係る相続財産について限定承認を行わなかった。
ニ 請求人は、少なくとも平成19年分、平成20年分及び平成21年分(以下「本件各年分」という。)の各不動産所得の金額の計算上、償却費の額の計算に当たり、本件各減価償却資産に係る耐用年数についてCが適用した耐用年数省令別表第一に規定する法定耐用年数によらず、別表2のとおり、耐用年数省令第3条第1項第2号に規定する耐用年数の算定方法(以下「簡便法」という。)のうち、同号ロに規定する方法により算出した各耐用年数を適用した。

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2 主張

原処分庁 請求人
 本件各減価償却資産に係る償却費の額は、以下のとおり耐用年数省令第3条に規定する簡便法に基づいて算出された耐用年数を適用して計算することができない。  本件各減価償却資産に係る償却費の額は、以下のとおり耐用年数省令第3条に規定する簡便法に基づいて算出された耐用年数を適用して計算することができる。
1 耐用年数省令第3条第1項は、個人において使用された減価償却資産の取得をした場合に適用されるところ、請求人は、平成14年12月○日(本件相続による取得日)以前から本件各減価償却資産を引き続き所有していたものとみなされることから、同日に個人において使用された減価償却資産の取得をしたものとは認められない。 1 耐用年数省令第3条は、個人において使用された一定の資産(中古資産)を取得した場合に適用することのできる耐用年数について規定しているところ、所得税法第60条等の取得には相続による取得が含まれることを当然の前提としている一方で、耐用年数省令第3条に規定する取得には相続を除く旨の明文の規定はないことから、文言解釈の統一性の要請から、同条に規定する取得は相続による取得を含むと解すべきである。
2 所得税法第60条第1項は、個人が相続等により取得した資産を譲渡した場合の所得金額の計算について、相続人が当該資産を「引き続き所有していたものとみなす」旨規定しているところ、同項の規定は、所得税法上、相続等を取得原因とする資産については、取得価額、取得時期及び未償却残高など税額計算に関連する全ての事情が被相続人から相続人にそのまま引き継がれることを意味するものとされており、そうすると、請求人は被相続人から本件各減価償却資産の取得価額だけでなく、取得時期等についても引き継ぐことになると解することが相当である。 2 所得税法施行令第126条第2項は、相続等により取得した減価償却資産の取得価額について当該減価償却資産を取得した者が引き続き所有していたとみなすと規定しているにすぎず、相続人は被相続人の当該資産の取得価額のみならず取得時期や未償却残高を引き継ぐと解釈することが相当であるが、資産の取得価額の算定とは関係のない耐用年数について、所得税法施行令第126条第2項を援用し、簡便法の適用はできないとする原処分庁の主張には条文解釈上重大な誤りがある。
 さらに、償却方法について、相続を含む全ての取得に関して当然には引き継がれないと定められているにも関わらず、耐用年数については引き継がれるとする原処分庁の主張は、法令の明文規定と矛盾する。

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3 判断

(1) 法令解釈

イ 所得税法第49条第1項は、居住者のその年12月31日において有する減価償却資産につきその償却費としてその者の不動産所得の金額の計算上必要経費に算入する金額は、その取得をした日及びその種類の区分に応じ政令で定める償却の方法の中からその者が当該資産について選定した償却の方法に基づき政令で定めるところにより計算した金額とする旨規定し、同条第2項は、前項の選定をすることができる償却の方法の特例、償却の方法の選定の手続、償却費の計算の基礎となる減価償却資産の取得価額その他減価償却資産の償却に関し必要な事項は、政令で定める旨規定しており、これを受けて、所得税法施行令第120条第1項は、平成19年3月31日以前に取得された減価償却資産の償却費の額の計算上選定をすることができる政令で定める償却の方法は、平成10年3月31日以前に取得された建物については旧定額法(当該建物の取得価額からその残存価額を控除した金額にその償却費が毎年同一になるように当該建物の耐用年数に応じた償却率を乗じて計算した金額を各年分の償却費として償却する方法)又は旧定率法(当該建物の取得価額又は未償却残額にその償却費が毎年一定の割合で逓減するように当該建物の耐用年数に応じた償却率を乗じて計算した金額を各年分の償却費として償却する方法)とし、それ以外の建物については旧定額法とするとし、平成19年3月31日以前に取得された減価償却資産のうち建物附属設備及び備品については、旧定額法又は旧定率法とすると規定している。
 減価償却資産の償却費の必要経費算入に関する上記の規定は、建物等の減価償却資産が長期間にわたって収益を生み出す源泉であり、その取得に要した金額は将来の収益に対する費用の前払の性質を持っているので、費用収益対応の原則から、当該金額は取得の年度に一括して費用に計上するのではなく、使用又は時間の経過によってそれが減価するのに応じ、当該減価償却資産に係る耐用年数の期間を通じて徐々に費用化するのが妥当であるとの趣旨によるものであると解される。
ロ 所得税法施行令第126条第1項は、減価償却資産の取得価額について、当該減価償却資産の取得の態様別に区分し、まる1建物等を購入した場合の取得価額は、当該建物等の購入対価等の額とし、まる2購入等以外の方法により取得した建物等の取得価額は、当該取得時の当該建物等の時価相当額とする旨規定しているが、その一方で、同条第2項は、減価償却資産を相続等により取得した場合の取得価額について、当該減価償却資産を取得した受贈者、相続人、受遺者又は低額譲受人(以下、これらを併せて「相続人等」という。)が引き続き所有していたものとみなした場合における当該減価償却資産の取得価額に相当する金額とする旨規定している。
 所得税法施行令第126条第2項の規定は、譲渡所得に対する課税(資産の譲渡が営利を目的として継続的に行われるため事業所得若しくは雑所得に該当する場合又は山林の伐採若しくは譲渡に該当するため山林所得に該当する場合における当該所得に対する課税を含む。以下同じ。)が、資産の値上がりによりその資産の所有者に帰属する増加益(有償、無償を問わない。)を所得として、その資産が他に移転するのを機会にこれを清算して課税する趣旨のものであることを前提に、所得税法第60条第1項が、譲渡所得課税の一つの例外として、相続等により相続人等に資産が移転した場合にその時期には譲渡所得課税をしないこととし、当該資産の譲受人である相続人等が後にこれを譲渡し、譲渡所得課税を受ける場合において、譲渡所得の金額を計算するときに、相続人等が贈与者、被相続人又は低額譲渡人(以下、これらを併せて「被相続人等」という。)の前所有者からの取得時から引き続き当該資産を所有していたものとみなして、被相続人等が取得した時にその価額で取得したものとする旨規定することにより、いわゆる課税時期の繰延べを行っていることを受けたものであって、相続等により相続人等が減価償却資産を譲り受けた場合には、課税時期の繰延べを行う趣旨から、当該減価償却資産のその相続等の時点の価額(時価)が被相続人等の前所有者からの取得価額に比してその取得後の使用により当然に価値が下落していると見込まれるにも関わらず、相続人等は、当該減価償却資産を被相続人等の前所有者からの取得価額により取得したこととし、相続人等と被相続人等との間でいわゆる取得価額の引継ぎを行うものとして、償却費の額の計算をすることとしたものと解される。
 所得税法施行令第126条第2項の規定の上記趣旨からすれば、同規定は、相続等により取得した減価償却資産について、単に当該減価償却資産の取得価額を引き継いで償却費の額の計算を行うにとどまらず、被相続人等の前所有者からの取得の時期の他、被相続人等の前所有者からの取得時から相続等までの期間である経過年数及び相続等の時点における当該減価償却資産に係る未償却残額をも併せ引き継いで償却費の額の計算を行うことを当然の前提として規定するものと解するのが相当である。
ハ 所得税法施行令第129条は、償却費の額の計算に必要な減価償却資産の耐用年数及び当該耐用年数に応じた償却率等については財務省令で定める旨規定し、同条の委任を受けた耐用年数省令第1条は、減価償却資産の種類、用途ないし機能別に法定耐用年数を規定しているところ、これは、償却費の額の計算における耐用年数については、減価償却資産の本来の効用の持続する年数とすべきところ、これを客観的に測定し、個々の資産に適合するように納税者が自主的に耐用年数を定めることは、技術的にも決定が困難であり、恣意的になりやすいため、個々の資産の個性には着目せず、減価償却資産を類型的に区分し、耐用年数を一律に定めて画一的にすることによって、課税の公平を図ることとしているものと解される。
 他方で、耐用年数省令第3条第1項は、個人において使用された減価償却資産の取得をしてこれを個人の業務の用に供した場合の耐用年数については、法定耐用年数によらず、取得後の使用可能期間を見積もる方法又は簡便法(以下、取得後の使用可能期間を見積もる方法と併せて「簡便法等」という。)により算定した耐用年数によることができる旨規定しているところ、この規定は、個人において使用されたいわゆる中古資産の耐用年数については、既に使用した期間があり、したがって、使用される前の新品の減価償却資産に係る使用可能と予測される年数より、その使用分の年数が短縮されているという基本的な考えに基づき、当該中古資産の取得価額(時価相当額)をその取得後における効用持続期間において費用化することができるようにしたものであると解される。

(2) 判断

イ 上記(1)のイないしハのとおり、不動産所得の金額の計算における建物等の減価償却資産に係る償却費の必要経費への算入(減価償却)については、当該減価償却資産が長期間にわたって収益を生み出す源泉であり、その取得に要した費用の合計額である取得価額が将来の収益に対する費用の前払的性格を有することから、その使用又は時間の経過によって、その価値が減価するのに応じて当該減価償却資産に係る耐用年数の期間を通じて徐々に費用化するのが妥当であるとの観点から認められたものである。
 そして、建物等の減価償却資産に係る償却費の額の計算における取得価額については、所得税法施行令第126条第1項において、当該減価償却資産の取得の態様別に区分した上、建物等を購入した場合の取得価額については、当該建物等の購入対価等の額とし、建物等を購入等以外の方法により取得した場合の取得価額については、当該取得時の当該建物等の時価相当額とするものとしている。
 また、建物等の減価償却資産に係る償却費の額の計算における耐用年数については、当該減価償却資産の本来の効用の持続する年数とすべきところ、課税の公平を図る観点から、所得税法施行令第129条の委任を受けた耐用年数省令第1条において、減価償却資産を類型的に区分した上、当該区分に応じた耐用年数(法定耐用年数)を一律に定めている。
 もっとも、当該減価償却資産が個人において使用された中古資産である場合については、既に使用された期間があり、使用される前の新品の資産に係る使用可能と予測される年数よりもその使用分の年数が短縮されていると考えられることから、当該中古資産の取得価額をその取得後における効用持続期間において費用化することができるようにするために、耐用年数省令第3条第1項において、当該中古資産の取得後の耐用年数については、法定耐用年数によらず、簡便法等により算定した耐用年数によることができるものとされている。その趣旨からすれば、耐用年数省令第3条第1項は、取得時における当該減価償却資産の当該取得価額(所得税法施行令第126条第1項の規定する購入対価等の額ないし時価相当額等)をその取得後における効用持続期間において費用化することを前提として規定されたものと解される。
 他方で、減価償却資産を相続等により取得した場合については、所得税法第60条第1項の規定を受けた所得税法施行令第126条第2項において、譲渡所得課税に係るいわゆる課税時期の繰延べを行う趣旨から、相続人等は、当該減価償却資産を被相続人等の前所有者からの取得価額により取得したものとし、相続人等と被相続人等との間でいわゆる取得価額の引継ぎを行うものとして、償却費の額の計算をすることを規定している。
 減価償却資産についても相続等による取得の場合について譲渡所得課税に係る課税時期の繰延べを行うという所得税法施行令第126条第2項の規定の上記趣旨からすれば、同規定は、単に当該減価償却資産の取得価額を引き継いで償却費の額の計算を行うにとどまらず、被相続人等の前所有者からの取得の時期、当該取得時から相続等による取得までの経過年数及び相続等による取得時における未償却残額も併せ引き継ぐことを当然の前提として規定していると解される。そうであるとすれば、上記規定は、減価償却資産を相続等により取得した場合における償却費の額の計算において、被相続人等が用いていた当該減価償却資産に係る耐用年数をも引き継ぐことをその前提として規定しているものと解するのが相当であり、取得時における当該減価償却資産の当該取得価額(所得税法施行令第126条第1項の規定する購入対価等の額ないし時価相当額等)をその取得後における効用持続期間において費用化することを前提として規定された耐用年数省令第3条第1項の簡便法等によることは許されないものと解すべきである。
ロ これを本件についてみると、上記1の(4)のイないしハのとおり、本件各減価償却資産は、請求人がCから本件相続により取得した後、引き続き賃貸の用に供していたものであることからすれば、請求人の不動産所得の金額の計算上、本件減価償却資産に係る償却費の額の算定において適用すべき耐用年数は、Cが用いていた耐用年数である法定耐用年数によるべきである。
ハ 請求人の主張について
(イ) 請求人は、所得税法第60条等の取得には相続による取得が含まれることを当然の前提としている一方で、耐用年数省令第3条に規定する取得には相続を除く旨の明文の規定はないので、文言解釈の統一性の要請から、耐用年数省令第3条における取得にも相続による取得が含まれる旨主張する。
 しかしながら、上記イのとおり、耐用年数省令第3条第1項は、所得税法施行令第126条第1項の規定する取得時における当該減価償却資産の当該取得価額(購入対価等の額ないし時価相当額等)をその取得後における効用持続期間において費用化することを前提とする規定であるところ、減価償却資産を相続等により取得した場合については、所得税法第60条の規定を受けた所得税法施行令第126条第2項において、譲渡所得課税に係るいわゆる課税時期の繰延べを行う趣旨から、相続人等は、当該減価償却資産を被相続人等の前所有者からの取得価額により取得したものとし、相続人等と被相続人等との間でいわゆる取得価額の引継ぎを行うものとして、償却費の額の計算をするものとされているのであるから、取得時における当該減価償却資産の当該取得価額をその取得後における効用持続期間において費用化することを前提とする耐用年数省令第3条第1項の規定を適用して相続等による取得後の当該減価償却資産に係る償却費の額の計算を行うことはできないというべきである。
 したがって、請求人の上記主張は採用することができない。
(ロ) さらに、請求人は、所得税法施行令第120条に規定する減価償却資産の償却の方法については、相続等により当該減価償却資産を取得した相続人等に当然には引き継がれないにも関わらず、耐用年数が引き継がれるとすることは、法令の明文規定に矛盾する旨主張する。
 しかしながら、上記イのとおり、所得税法第60条第1項の規定を受けた所得税法施行令第126条第2項が減価償却資産を相続等により取得した場合についても譲渡所得課税に係るいわゆる課税時期の繰延べを行うものとしている趣旨からすれば、同項が明文で規定する被相続人等の前所有者からの取得価額のみならず、その取得時期、当該取得時から相続等による取得までの経過年数及び相続等による取得時の未償却残額並びに耐用年数をもそれぞれ引き継ぐことを当然の前提として規定したものと解されるものの、減価償却資産を相続等により取得した場合に当該減価償却資産の償却の方法については引き継がれず相続人等において被相続人の選定していた償却の方法と異なる償却の方法を選定することができるものとしたとしても、譲渡所得課税に係るいわゆる課税時期の繰延べの趣旨を損なうことにはならないことからすれば、同項の規定を根拠に償却の方法についても引き継がれるものと解することはできず、その結果、減価償却資産を相続等により取得した場合に当該減価償却資産の耐用年数については相続人等に引き継がれ、償却の方法については相続人等に引き継がれないこととなったとしても、所得税法第60条1項や所得税法施行令第126条第2項の趣旨に矛盾するということはできない。
 したがって、請求人の上記主張も採用することができない。

(3) まとめ

 上記(2)のイ及びロのとおり、相続等により取得した建物等の減価償却資産に係る償却費の額の計算においては、当該減価償却資産の耐用年数は、被相続人等の前所有者が用いた耐用年数によるべきであり、請求人は、本件各減価償却資産に係る償却費の額の計算において、耐用年数省令第3条第1項に規定する簡便法等により算出した耐用年数を適用することはできない。
 なお、平成19年3月31日以前に減価償却資産について資本的支出を行った場合には、その資本的支出は、その支出に係る減価償却資産と一体として償却費の額の算定を行うものとされているところ(所得税法施行令第127条)、当該規定を適用して計算した本件各年分の本件各減価償却資産に係る償却費の額は、別表3の各年分の「償却費」の各「合計」欄のとおりとなる。
 そうすると、請求人の本件各年分の不動産所得の金額は、別表4の各年分の「審判所認定額」の各「不動産所得の金額」欄のとおりとなり、同表の「原処分額」の各「不動産所得の金額」欄の額と同額であることから、本件各年分の所得税の各更正処分は適法である。

(4) その他

 原処分のその他の部分については、請求人は争わず、当審判所に提出された証拠書類等によっても、これを不相当とする理由は認められない。

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