(平成24年6月29日裁決)

《裁決書(抄)》

1 事実

(1) 事案の概要

 本件は、原処分庁が、2店舗の風俗店(ファッションヘルス)を営む審査請求人(以下「請求人」という。)に対し、事業に係る帳簿等の保存がされていないことを理由に、請求人の平成17年分ないし平成21年分の事業所得の金額並びに平成19年1月1日から平成19年12月31日までの課税期間及び平成20年1月1日から平成20年12月31日までの課税期間の課税資産の譲渡等の対価の額をそれぞれ推計する方法により、所得税並びに消費税及び地方消費税(以下「消費税等」という。)の各決定処分ないし更正処分並びに無申告加算税ないし重加算税の各賦課決定処分を行ったことに対し、請求人が、原処分の推計方法に事実誤認があるとして、その全部の取消しを求めた事案であり、争点は、請求人が営む風俗店のうちのJと称するファッションヘルスに係る推計課税の計算方法に合理性が認められるか否かである。

(2) 審査請求に至る経緯

 審査請求(平成23年7月19日請求)に至る経緯は、別表1及び別表2のとおりである。
 なお、平成17年分、平成18年分、平成19年分、平成20年分及び平成21年分を、以下「本件各年分」といい、平成19年1月1日から平成19年12月31日まで及び平成20年1月1日から平成20年12月31日までの各課税期間を、以下順次「平成19年課税期間」及び「平成20年課税期間」といい、それらを併せて「本件各課税期間」という。

(3) 関係法令

 別紙2のとおりである。

(4) 基礎事実

 次の事実については、請求人と原処分庁との間に争いがなく、当審判所の調査の結果によってもその事実が認められる。
イ 請求人は、平成22年○月○日に、風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律(以下「風営法」という。)違反(○○○○)被疑事件に係る被疑者として警察に逮捕されたが、当時、請求人は、a市c町○−○所在のdビル○階に受付事務所を置くLe店と称するファッションヘルス(以下「本件L店」という。)及び同○丁目○番○号所在のfビル○階に受付事務所を置くJと称するファッションヘルス(以下「本件J店」といい、本件L店と併せて「本件各店舗」という。)をそれぞれ経営していた。
 なお、本件L店は、平成18年3月17日にM名義で、また、本件J店は、平成17年9月7日にN名義で、それぞれ風営法に規定する「無店舗型性風俗特殊営業」に係る届出書が提出されていた。
ロ 請求人が風営法違反被疑事件に係る被疑者として警察に逮捕された時期と前後して、本件L店の当時の店長であったP、Pの前任の本件L店の店長であったM、本件J店の当時の店長であったQ及びQの前任の本件J店の店長であったNは、それぞれ風営法違反被疑事件に係る被疑者として警察の取調べを受けた。
ハ 平成21年分の所得税について、平成22年3月12日付で、納税地(事業所所在地)を本件J店の受付事務所の所在地とし、その申告者の職業を記載する欄に「サービス業」、当該職業に係る屋号等を記載する欄に「J」とそれぞれ記載されているQ名義の確定申告書が、R税務署長に提出された。
 なお、平成20年分の所得税についても、納税地(事業所所在地)を本件J店の受付事務所の所在地とし、屋号を「J」とするQ名義の確定申告書が、法定申告期限内にR税務署長に提出されていた。
ニ 平成22年3月15日、平成21年分の所得税について、別表1の「確定申告」の「平成21年分」欄のとおり記載され、さらに、住所地をa市g町○−○とする請求人名義の確定申告書が、当該住所地を管轄するS税務署長に提出された。
 当該請求人名義の平成21年分の所得税の確定申告書には、請求人名義の平成21年分の事業所得に係る収支内訳書が添付されていたが、当該収支内訳書には、本件L店の受付事務所の所在地が事業所所在地として記載されており、さらに、事業所得の総収入金額が○○○○円並びに必要経費として給与賃金が9,350,000円、地代家賃が9,360,490円及びその他の経費合計が○○○○円であって、請求人の平成21年分の事業所得の金額の計算上生じた損失の金額が○○○○円である旨記載されていた。
 なお、平成20年分の所得税について、納税地(事業所所在地)を本件L店の受付事務所の所在地とし、その申告者の職業を記載する欄に「サービス業」、当該職業に係る屋号等を記載する欄に「Le店」とそれぞれ記載されているM名義の確定申告書が、平成21年3月13日付で、R税務署長に提出されていた。
ホ 請求人は、本件各年分のうち平成21年分を除く各年分の所得税の確定申告書及び本件各課税期間の消費税等の確定申告書をいずれも納税地を所轄するS税務署長に提出しなかった。
ヘ 原処分に係る調査担当職員(以下「調査担当職員」という。)は、平成22年10月19日に、請求人に対する所得税及び消費税等に係る調査(以下「本件調査」という。)を開始した。
 その際、調査担当職員は、本件L店内で警察により差し押さえられたUSBメモリーから、本件L店に係る平成21年10月分ないし同年12月分の女子従業員別の売上金額、客数、女子従業員への支払金額及び粗利益等を記載した真実の営業データ表(以下「本件データ表」という。)を把握した。
 これによれば、本件L店の平成21年10月分ないし同年12月分の売上金額は、別表3の「売上金額」欄のとおり、10月分15,889,700円、11月分14,162,200円及び12月分17,620,500円で合計47,672,400円であった。
ト 請求人は、本件調査の際、調査担当職員に以下のとおりの書類(以下「本件書類」という。)を提示したが、その他の書類については廃棄したとして、本件調査の終了の時までに本件書類以外の帳簿書類の提示を行わなかった。
(イ) 平成20年分及び平成21年分の本件各店舗に係る月別売上金額等を記載した月報(以下「本件月報」という。)
(ロ) 平成20年分及び平成21年分の本件L店の経費に係る領収証
(ハ) 平成21年分の本件J店の経費に係る領収証
チ 本件月報において、平成21年10月分ないし同年12月分の本件L店の売上金額であるとして記載された金額は、別表4の「売上金額」欄のとおり、10月分3,838,000円、11月分3,742,000円及び12月分3,862,000円で合計11,442,000円であるが、これらの金額は、本件L店の平成21年10月分ないし同年12月分の真実の売上金額が入力された本件データ表に記載された売上金額よりも少額であった。
リ 請求人は、平成22年10月26日付で、a市b町○−○に転居した。
ヌ 原処分庁は、平成23年3月11日付で、平成18年3月17日から平成21年1月31日までの期間に係る本件L店の事業所得が本件L店の店長であったMに帰属するとして、また、本件各年分のうち上記期間を除く期間に係る本件各店舗の事業所得が請求人に帰属するとして、原処分を行った。

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2 主張

原処分庁 請求人
 本件J店の平成21年分の売上金額は、同店のバスタオルの年間使用枚数から算出した客数に、客1人当たりのプレイ料金の最低金額である60分コース16,000円を乗じて推計計算したものであり、これに基づいた原処分の推計課税には合理性がある。  原処分庁は、本件J店の通常料金における最低料金である16,000円を客1人当たりのプレイ料金であるとして、本件J店に係る事業所得の推計計算を行っているが、本件J店は同業者の過当競争から低価格で営業を行っており、スポーツ新聞等に70分13,000円と掲載して同料金で営業していたし、また、10,000円で営業していた時期もある。
 このように、本件J店は、実際には、通常料金よりもディスカウントして営業しているにも関わらず、客単価を16,000円と認定してされた原処分の推計課税は、事実誤認に基づく違法なものである。

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3 判断

(1) 推計の必要性について

 請求人は、推計の必要性について何ら主張しないところ、上記1の(4)のヘ、ト、チ及びヌのとおり、請求人は、平成22年10月19日から平成23年3月11日までの間の調査担当職員による本件調査において、本件書類以外の帳簿書類は廃棄したとして提示を行わず、また、日々の営業において現金売上げを主体としているにも関わらず、金銭出納帳等の日々の現金出納を管理する帳簿の保存を行っていないこと、さらに、本件月報に記載されている売上金額は、真実の売上金額よりも少額であり適正に記録されたものではないことが認められることから、原処分庁が請求人の本件各年分の事業所得の金額及び本件各課税期間の消費税の課税資産の譲渡等の対価の額を帳簿書類に基づく実額収支計算の方法によらず、推計の方法により算定したことはやむを得ないものであると認められる。
 さらに、当審判所の調査、審理手続においても、請求人は帳簿書類を提示していないから、本裁決時においても推計の必要性があると認められる。

(2) 本件J店に係る推計課税の計算方法に合理性が認められるか否か。

イ 法令解釈
 課税処分における課税標準の認定は、実額収支計算の方法によるのが原則であるが、所得税法第156条は、所得金額を推計して課税することを認めているところ、これは、まる1納税義務者が収支を明らかにし得る帳簿書類を備え付けていないこと、まる2帳簿書類の備付けがあっても、その記載内容が不正確であること、あるいは、まる3納税義務者が資料の提供を拒否する等税務署長の行う税務調査に非協力であることなどにより、所得金額を実額で把握することが不可能又は著しく困難である場合に、課税の公正性を確保する観点から、現実に把握可能な間接的な資料と経験則とを組み合わせて所得金額を推計し、これを課税の基礎とすることを許容したものであると解される。そして、推計課税が実額による課税方法が採れない場合に納税者が不当に納税義務を免れることがないように認められる課税方法であること等に鑑みると、推計課税における推計方法は、経験則に照らして合理的なものであれば足りると解するのが相当である。
 また、消費税法も、消費税の課税資産の譲渡等の対価の額を上記のような推計の方法により認定することを当然に許容していると解される。
ロ 認定事実
 請求人提出資料、原処分関係資料及び当審判所の調査の結果によれば、次の事実が認められる。
(イ) 原処分庁は、平成21年分の本件J店に係る事業所得の金額について、まる1請求人の取引先に対する調査(以下「反面調査」という。)を行い、本件各店舗で使用するバスタオルの賃借取引の相手先であるT社への反面調査により本件J店で使用したバスタオルの数量を把握し、まる2本件J店のバスタオルの年間使用枚数を客1人当たりのバスタオルの使用枚数9枚で除することにより年間の客数を算定し、まる3本件J店の通常の最低料金である16,000円に当該客数を乗じることにより年間の収入金額を算定し、まる4当該収入金額から領収証等に基づき算定した必要経費の金額を控除することにより、事業所得の金額を認定した。
 そして、原処分庁は、平成20年分の本件J店に係る事業所得の金額について、平成21年分で算定した本件J店に係る事業所得の金額の収入金額に占める割合(以下「所得率」という。)を本人比率として算出し、平成21年分と同様の方法で算定した平成20年分の本件J店の収入金額に当該本人比率を乗じて算出した。
(ロ) 原処分庁は、平成21年分の本件L店に係る事業所得の金額について、まる1本件データ表に記載されている真実の売上金額を基礎とし、T社への反面調査により把握した本件L店に係るバスタオルの使用枚数を用いて、平成21年10月分ないし同年12月分のバスタオル1枚当たりの平均売上金額を算出し、まる2当該バスタオル1枚当たりの平均売上金額に、平成21年2月分ないし同年12月分のバスタオルのレンタル枚数の総数を乗じて算出して年間の収入金額を算定し、まる3当該収入金額から本件データ表及び領収証等に基づき算定した必要経費の金額を控除することにより、事業所得の金額を認定した。
 そして、原処分庁は、平成17年分及び平成18年分の本件L店に係る事業所得の金額について、まる4本件L店が平成19年1月3日以後、プレイ料金の改定をしていることから、当該料金の改定率を考慮したバスタオル1枚当たりの平均売上金額を計算し、まる5当該バスタオル1枚当たりの平均売上金額に平成17年分及び平成18年分(ただし、平成18年分については、同年3月16日までの期間)に係るバスタオルのレンタル枚数を乗じて当該各年分の各収入金額を算出するとともに、まる6平成21年分で算定した本件L店に係る所得率を本人比率として算出し、当該平成17年分及び平成18年分の本件L店の各収入金額に当該本人比率を乗じて算出した。
(ハ) 本件J店におけるプレイ料金は、平成20年分及び平成21年分を通じて、60分で16,000円、90分で23,000円及び120分で30,000円であり、初めての客は、当該プレイ料金のほかに原則として入会金1,000円が必要であり、指名を行う場合は別途2,000円が、30分の延長の場合は別途10,000円の延長料金がそれぞれ必要であった。
 また、時期によって、風俗情報誌等に割引情報が掲載されることがあり、入会金、パネル指名料及びプレイ料金込みで、70分で13,000円、100分で19,000円及び130分で25,000円の料金のいわゆる「イベント」が行われていた。
 なお、上記イベントの際でも、人気のある女子従業員を指名する場合には、別途2,000円の指名料が必要であった。
(ニ) 本件L店におけるプレイ料金は、平成19年1月3日以降、10時から17時までが60分で13,000円、90分で19,000円及び120分で26,000円であり、17時から24時までが60分で15,000円、90分で22,000円及び120分で30,000円であった。初めての客は、当該プレイ料金のほかに原則として入会金1,000円が必要であり、指名を行う場合は別途1,000円又は2,000円が、30分の延長の場合は別途10,000円の延長料金がそれぞれ必要であった。
 また、本件L店においては、時期によって、風俗情報誌等に割引情報が掲載されることがあり、入会金、パネル指名料及びプレイ料金込みで、70分で13,000円、100分で19,000円及び130分で26,000円である旨等のイベントが行われていた。
(ホ) 本件L店の平成19年1月2日以前のプレイ料金は、10時から12時までが60分で11,000円及び90分で17,000円であり、12時から19時までが60分で13,000円及び90分で19,000円であり、19時から24時までが60分で15,000円及び90分で21,000円であった。
 なお、初めての客が原則として支払う入会金1,000円及び指名を行う場合の指名料1,000円又は2,000円については、料金の変更はなく、平成19年1月2日以前においても、それぞれ必要であった。
(ヘ) 本件データ表によれば、本件L店に係る平成21年10月分から同年12月分の真実の売上金額及び客数から計算される本件L店の客1名当たりの平均単価は、別表3の「客単価」の「合計」欄のとおり16,116円である。
(ト) 本件J店の元従業員であるUは、調査担当職員に対して、客1人当たりのバスタオルの使用枚数については9枚程度である旨申述し、さらに、請求人のバスタオルの賃借取引の相手先であるT社の取締役であるVは、調査担当職員に対して、配達担当者が現場で使用しているバスタオルの枚数を確認しているが、客1人当たりのバスタオルの使用枚数は8枚程度であるとのことであった旨申述する。これらの申述内容に加えて後記(チ)の事実にも鑑みると、本件J店における客1人当たりのバスタオルの使用枚数は、多くとも9枚を超えることはない。
(チ) 本件データ表に入力された本件L店における平成21年10月分ないし同年12月分の客数は、別表3の「客数」のとおり、同年10月分が989人、同年11月分が898人及び同年12月分が1,071人であり、また、同じ時期における請求人のT社からの本件L店に係るバスタオルのレンタル枚数は、別表5のとおり、同年10月分が8,180枚、同年11月分が6,600枚及び同年12月分が8,480枚であって、客1人当たりのバスタオル使用枚数は、同年10月分が8.27枚、同年11月分が7.35枚及び同年12月分が7.92枚となる。
(リ) 本件各店舗は、ファッションヘルスに係る客へのサービスの用に供するため、複数のマンションを賃借していたが、その際、請求人を賃借名義人として賃貸借契約を締結せず、当該賃借マンションの賃借名義人は、賃貸借契約を締結した当時の本件各店舗の店長又は従業員であった。
 なお、平成20年分及び平成21年分の本件各店舗における支払家賃及び水道光熱費に係る支払名義人は、別表6−1及び別表6−2のとおりである。
ハ 関係者の警察に対する供述
 本件L店の店長であったP並びに本件J店の店長であったQ及びN(以下、併せて「Pら」という。)は、風営法違反被疑事件に係る被疑者として警察の取調べを受けたものであるが、Pらの警察に対する以下の供述は、互いに整合的であり、明瞭で具体的であって、格別不自然な点は認められず、信用することができるものと認められる。
(イ) Pの供述
A 平成17年5月頃に本件L店に採用されて働き出し、平成21年1月頃、それまで同店の営業責任者であったMの後任として同店の営業責任者を務めた。本件L店の営業責任者への就任は、請求人からの指示によるものである。
B 警察が本件L店を捜査していることが分かった平成22年1月頃、経営者である請求人及び本件J店のQと話合いの場を持ったが、請求人から業態を派遣型デリバリーヘルスに変更するのでマンションの賃貸借契約を解約するよう指示を受け、当該指示に従ってマンションの賃貸借契約を解約した。
C 本件L店の業務は、まる1来客の受付、案内、まる2女子従業員の勤務管理、採用及び面接、まる3売上金の計算、管理、まる4広告媒体への広告、宣伝、まる5タオル等の備品の補充並びにまる6マンションの家賃の支払等であるが、このうちまる3売上金の計算、管理は、基本的に営業責任者であるPが行っており、当該売上金について、必要経費を除いた1か月分の利益相当額の金員を翌月の10日頃までに経営者である請求人に手渡すこととしていた。
 なお、Pを含む本件L店の従業員の給与については、請求人に1か月分の利益相当額の金員を手渡した後の毎月15日頃に請求人から受領していた。
D 本件L店の運営については、請求人からある程度任されており、女子従業員の面接、採用については基本的にPが行っていたが、マンションの賃借名義の変更等については請求人の指示に従っていた。本件L店で使用していたマンションのうち1つだけP名義で賃借していたが、これは当時の営業責任者であったMから名義を貸してほしいと求められたためである。
(ロ) Qの供述
A 平成20年3月頃に本件J店の従業員として、当時本件J店の営業責任者をしていたNの下で働き始めた。
B 本件J店に勤めだして間もなく、Nから、自分はこの仕事を辞めようと思っているので、本件J店をやってみないかとの話があったため、自分の店を持つことができると思い、喜んで引き受けた。
 しかしながら、その後、Nから、本件J店の経営者は請求人であり、Nは風営法の届出上の名義人である旨、請求人は本件L店も経営しており、普段の営業等のうちイベントや女子従業員の採用等は任されているが、毎月の売上げ及び客付については必ず請求人に報告しなければならず、賃借マンションの契約や解約は請求人の指示がないとしてはいけない旨の説明を受けた。
C Nから本件J店を引き継ぐに当たり、同人からまる1風営法上の届出書は、無店舗型性風俗特殊営業届出であるが、届出の名義を変更すると無店舗型性風俗特殊営業をすることができなくなることから、届出名義であるNの名義で営業を続けてもよい旨、まる2毎日客付表を記録し、請求人に対してその月の売上金額及び客付数(客数)を翌月の初めに電話で報告する旨、まる3売上金を請求人のところに持って行くか否かは、その都度請求人に確認する旨、及び、まる4賃借しているマンションの賃料及び公共料金については、当該マンションごとに契約者名義が異なるため、「W」名義のキャッシュカードを使って、契約者の氏名を入力して振り込む旨等の本件J店を営業していく上での諸注意を受けた。
D 平成20年5月頃、Nから本件J店の営業に関する引継ぎを受けて、Nから聞いていた請求人の携帯電話の番号に電話をし、引継ぎを受けた旨の報告を行ったところ、請求人から頑張るよう激励を受けた。
E 割引等のイベントについては、請求人から営業を一任されていることから、営業責任者であるQ自身が考えて本件J店の売上げを伸ばすためにやっていたものである。また、本件J店の7か所の賃借マンションの一部を解約すれば経費節約になるとも思ったが、Qが本件J店の経営者ではないことから、勝手に解約することはできなかった。
F 請求人からの指示で、平成20年分から本件J店の事業所得に係る確定申告書をQ名義で提出するようになった。申告の基礎となる資料は、本件J店に係る売上金額のデータであり、当該データをUSBメモリーに入れて業者の事務所へ持参していた。
 なお、当該データは、不正確なものであり、本件J店に係る真実の売上金額ではなかった。
(ハ) Nの供述
A 友人の紹介で本件L店に従業員として入店したが、当時の営業責任者であるMが請求人に毎月の売上げを報告したり、売上げを手渡ししているのを見て、請求人が本件L店の経営者であること知っていた。
B 本件L店に入店から半年後に、請求人から、新しい店を出すので警察に届出書を出すよう指示され、N名義の本件J店の無店舗型性風俗特殊営業届出をR警察署に提出した。
C 本件J店の営業責任者になってからは、本件J店の毎月の売上げを請求人に渡し、当該売上げの中から自分の給料をもらっていた。
D Qが平成20年3月又は4月頃に本件J店に入店して1週間程して、同人に対して、本件J店を辞めたい旨話したところ、同人から本件J店を引き続きやらせてほしい旨頼まれた。
 そのため、請求人に対して、風営法上の届出をN名義のままQに営業を引き継ぐことについての了解を求め、請求人の了解を得て、1か月程で業務を引き継いだ。その際、Qに対して、まる1本件J店の経営者は請求人であること、まる2月に一度、本件J店の売上げを請求人に報告し、売上金を請求人に渡さなければならないこと及びまる3イベントの内容の決定や、女子従業員の採用は、営業責任者が決めていいが、マンションの賃貸借契約に関することについては請求人に許可を得なければならないこと等の申し送りを行った。
E 以前、警察で事情聴取を受けた際には、自分が本件J店の経営者である旨供述したが、請求人から、警察に摘発された際には請求人の名前を言わないよう口止めされていたため、このように供述したのであり、実際には、本件J店の経営者は請求人であり、自分は営業責任者という店長のような立場である。
ニ 請求人の当審判所に対する答述
 請求人の答述は、Pらの供述内容と整合しており、さらに、自己に不利な内容のものであることから、信用することができるものと認められる。
(イ) 請求人は、本件各店舗をそれぞれ平成22年○月までの間経営していたが、本件各店舗とも風営法上違法な営業をしていたので、自分の名前が出ることは絶対にないように注意していた。そのため、本件各店舗に係る事業に関する取引、契約及び書類などの名義については、警察の捜査があった後の平成21年分の本件L店の申告や源泉所得税の納付を除いて、Mらの各店長や従業員の名前で行うよう指示し、経費の支払用の銀行口座も従業員の名義のものを使っていた。
(ロ) 風営法の届出の名義は、本当の経営者である請求人の身代りとなる者として、実際に店にいる責任者である店長とする必要があったので、Mが店長になったときに同人の名義で届出をしたが、それ以後は、風営法の運用により、店の名義を変えることが簡単にできなくなり、店長が交代しても風営法上の届出の名義を変更しなかった。
(ハ) 本件月報は、税務申告用にPらに命じて作成させたものであり、本件月報記載の売上金額等は、実際の売上金額より少額である。また、本件調査において提示した本件書類以外の所得金額の計算に必要な書類は、保管していない。
(ニ) 本件各店舗は、ファッションヘルスであり、そのサービス内容等について店ごとに違いはないが、本件J店は、本件L店よりも高級なイメージの店舗であり、プレイ料金等の金額についても、本件J店の方が、本件L店よりも高めに価額設定していた。
ホ 判断
(イ) 上記(1)並びに上記ロの(イ)及び(ロ)のとおり、原処分庁は、請求人の本件各店舗に係る事業所得の金額を実額収支の方法で計算することができないことから、本件J店に係る事業所得の金額について、料金表等で判明する通常の最低料金である16,000円に、バスタオルの使用枚数に基づいて算定した客数を乗じる方法によって、本件J店の売上金額を認定したものである。
 そして、上記ロの(ハ)、(ニ)及び(ヘ)のとおり、平成21年分における本件L店の通常の最低料金が、10時から17時までが60分で13,000円、17時から24時までが同じく60分で15,000円であり、イベント期間における最低料金については入会金等を含めて70分で13,000円であるのにも関わらず、本件L店の同年10月から同年12月までの間の実際の平均客単価は、これらをいずれも上回る16,116円であること、本件各店舗の料金システムとも、プレイ時間が長くなれば最低料金よりも高額なプレイ料金を支払う必要があり、入会金、指名料のほか、プレイ時間の延長をする際には延長料金が加算されるものであること、さらに、上記ニの(ニ)のとおり、請求人自身、本件J店は、本件L店よりも高めに価額設定していたとする旨答述していることを併せ考えると、原処分庁が平成20年分及び平成21年分の本件J店に係る事業所得を推計するに当たり、本件J店における通常の最低料金である16,000円をもって客単価とした推計方法には、一応の合理性が認められる。
(ロ) なお、上記ロの(イ)のとおり、原処分庁は、反面調査により把握したバスタオルの使用枚数から請求人の平成20年分及び平成21年分の本件J店に係る収入金額を推計し、当該収入金額から領収証等を基礎として算出した必要経費の金額を控除して平成21年分の本件J店に係る事業所得の金額を認定し、さらに、平成20年分の本件J店に係る事業所得の金額については、請求人の平成21年分の本件J店の事業所得に係る所得率を算出し、これを本人比率として平成20年分の本件J店に係る収入金額に乗じる方法により認定している。
 ところで、一般に、ファッションヘルス業においては、特段の事情がない限り、バスタオルの使用枚数と収入金額との間には相関関係があることが通例であり、請求人が営んでいた事業についても上記特段の事情はうかがわれない。
 そして、上記ロの(ハ)及び(ト)のとおり、本件J店においては平成20年分と平成21年分にはコース料金等の変更が認められず、さらに、客1人に対して使用するバスタオルの使用枚数についてはほぼ一定しており、客によって使用枚数に変動があると認められないこと、また、本件の全証拠をもってしても、本件各年分においてファッションヘルスという請求人の事業の基本的な内容、態様について変更があるとは認められないことからすれば、原処分庁が本件J店に係るバスタオルの使用枚数を基礎として、請求人の平成20年分及び平成21年分の本件J店に係る収入金額を推計したこと及び平成21年分の本件J店の事業所得に係る所得率を用いて平成20年分の本件J店に係る事業所得の金額を推計したことには、いずれも合理性が認められるというべきである。
(ハ) 請求人の主張
 請求人は、本件J店に係る客単価を16,000円であるとしてされた原処分における推計方法が事実誤認に基づく違法なものである旨主張し、その証拠として、本件J店が70分13,000円の料金で営業を行っていたことを示す新聞広告の写しであるとする文書を提出する。
 しかしながら、上記ロの(ニ)のとおり、本件L店においても70分13,000円の割引料金で営業を行っており、さらに、基本的な料金設定について本件J店より低額であったにも関わらず、本件L店における平成21年10月分ないし同年12月分の平均客単価が16,116円であることからすれば、本件J店の客単価は、少なくとも基本料金のうちの最低料金相当額である16,000円を上回ることが容易に推認されるのであり、そうであるとすれば、本件J店の客単価を16,000円であるとしてされた原処分の推計方法は合理性を有すると認められる。
 以上のことから、この点における請求人の主張は採用することができない。

(3) 請求人の本件L店に係る事業所得の帰属及び推計課税の計算方法の合理性について

イ 請求人は、本件L店に係る推計課税の計算の合理性について何ら主張しないところ、上記(2)のロの(ロ)のとおり、原処分庁は、本件L店に係る事業所得の金額を推計する方法として、平成21年分については、まる1本件データ表に記載されている真実の売上金額を基礎とし、反面調査で把握した本件L店に係るバスタオルの使用枚数を用いて、バスタオル1枚当たりの売上金額を算出し、まる2当該バスタオル1枚当たりの売上金額に、バスタオルのレンタル枚数を乗じて年間の収入金額を算定し、まる3当該収入金額から本件データ表及び領収証等に基づき算定した必要経費の金額を控除することにより、事業所得の金額を認定し、平成17年分及び平成18年分については、まる4本件L店が平成19年1月3日以後、プレイ料金を改定していることから、当該料金の改定率を考慮したバスタオル1枚当たりの売上金額を計算し、まる5当該バスタオル1枚当たりの売上金額に平成17年分及び平成18年分(ただし、平成18年分については、同年3月16日までの期間)に係るバスタオルのレンタル枚数を乗じて当該各年分の各収入金額を算出するとともに、まる6平成21年分で算定した本件L店に係る所得率を本人比率として算出し、当該平成17年分及び平成18年分の本件L店の各収入金額に当該所得率を乗じる方法で事業所得の金額を認定している。
 そして、上記(2)のホの(ロ)で説示したとおり、ファッションヘルス業においては、特段の事情がない限り、バスタオルの使用枚数と収入金額との間には相関関係があることが通例であり、さらに、上記(2)のロの(ト)及び(チ)のとおり、本件L店における客1名当たりのバスタオルの使用枚数は8枚前後で一定しており、そのうえ、請求人が営んでいた本件L店に係る事業についても上記特段の事情はうかがわれないこと等からすれば、原処分庁の本件L店に係る推計方法には一応の合理性が認められる。
ロ しかしながら、原処分庁が行った推計方法には、後記のとおり推計の基礎数値であるバスタオルのレンタル枚数の認定について是認できない点がある。そこで、当審判所において、本件各年分の請求人の本件L店に係る事業所得の金額を推計する。
(イ) 請求人のバスタオルのレンタル枚数
 原処分庁は、請求人の本件L店に係る事業所得の金額を推計するに際し、請求人のバスタオルの賃借取引先であるT社に反面調査を行い、バスタオルのレンタル枚数を把握して、推計の基礎数値としているところ、上記イのとおり、当該推計方法には一応の合理性が認められる。
 しかしながら、原処分庁は、平成18年3月17日から平成21年1月31日までの期間に係る本件L店の経営者が当時本件L店の店長であったMであり、当該期間の本件L店に係る事業所得はMに帰属するとして、原処分を行っているところ、上記1の(4)のイ、ハ、ニ及びヌ、上記(2)のロの(ロ)及び(リ)、ハ並びにニの(イ)及び(ロ)並びに当審判所の調査の結果によれば、まる1請求人は、本件L店の毎月の売上金及び客数の報告を店長から受け、さらに、本件L店に係る毎月の利益相当額を店長から手渡しで受領して、店長を含む従業員の給与を当該利益相当額の受領後に支払っていたこと、まる2本件L店のMの後任の店長には、請求人からの指示により、Pが就任していること、まる3ファッションヘルスに係る客へのサービスの用に供するためのマンションの賃貸借契約の締結及び解約は、請求人の判断で行っており、その際、当該マンションの賃貸借契約及び当該マンションに係る水道光熱費の契約名義人については、請求人の指示により、店長又は従業員の名義で行い、経費の支払のための銀行口座も店長又は従業員名義で開設していたこと、まる4請求人の指示により、本件各店舗の当時の店長名義で風営法上の届出をし、また、警察の捜査を受ける前の平成20年分の本件各店舗に係る事業所得についての確定申告をしていたこと、まる5請求人は、警察が捜査していることが分かった後、本件L店の業態を派遣型デリバリーヘルスに変更し、不要となった賃借マンションに係る賃貸借契約を解約させていることの各事実が認められ、加えて、まる6請求人自身が、本件各店舗を平成22年○月までの間経営していた旨及び本件各店舗が風営法上違法な営業を行っており、警察の捜査が請求人に及ばないようにするため、自分の名前が出ることがないように注意し、上記まる3及びまる4のとおり、風営法上の届出名義、本件各店舗に関する取引に係る契約名義や経費の支払用の銀行口座名義を店長又は従業員名義にさせていた旨の答述をしている。これらからすれば、請求人は、本件各年分を通じて本件各店舗の営業を支配管理し、その収益を自己に帰属させていたものと認められるから、本件各年分の本件L店に係る所得は、請求人に帰属すると認めるのが相当である。
 そうすると、請求人の本件L店に係る事業所得の金額を推計するに際しては、本件各年分において本件L店の名義で行ったT社とのバスタオルの賃借取引枚数を把握する必要があるところ、当該バスタオルのレンタル枚数は、別表7−1のとおりである。
(ロ) 請求人の本件L店に係る収入金額
 原処分庁は、本件データ表記載の収入金額からバスタオル1枚当たりの平均売上金額を算定し、これに本件L店のバスタオルのレンタル枚数を乗じて、本件L店の平成21年分の収入金額を算出しているところ、上記イのとおり、当審判所もこれを相当と認める。
 なお、本件データ表の平成21年10月分ないし同年12月分の収入金額は、別表3の「売上金額」の「合計」欄のとおり47,672,400円であり、同期間のバスタオルのレンタル枚数は、別表5の「合計」欄の23,260枚であるから、バスタオル1枚当たりの平均売上金額は、2,049円となる。
 また、上記(2)のロの(ニ)及び(ホ)のとおり、本件L店は、平成19年1月3日からコース料金の改定を行っているところ、本件L店の平成19年分の営業開始日は、同月同日であることから、結局、平成18年分までは旧料金で営業を行い、平成19年分より新料金で営業を行っていたものと認める。
 そして、別表8のとおり、平成19年分以後の新料金に対する平成18年分以前の旧料金の割合は、95.23%(=旧料金の平均16,428円÷新料金の平均17,250円)であると認められるから、平成18年分以前の旧料金におけるバスタオル1枚当たりの平均売上金額は、1,951円(=2,049円×95.23%)であると認める。
 以上のことから、請求人の本件各年分の本件L店の収入金額は、別表9−1のとおり、平成17年分が○○○○円、平成18年分が○○○○円、平成19年分が○○○○円、平成20年分が○○○○円及び平成21年分が○○○○円となる。
(ハ) 請求人の本件L店に係る事業所得の金額
 請求人の平成21年分の本件L店に係る必要経費の金額は、本件書類に係る領収証及び本件データ表記載の必要経費の金額を集計して計算したものであり、別表10の「本件L店」の「必要経費」欄のとおり、○○○○円となり、請求人の平成21年分の本件L店に係る事業所得の金額は、同表の「本件L店」の「事業所得の金額」欄のとおり、○○○○円となる。
 そして、平成21年分の本件L店に係る所得率は、10.70%(=事業所得の金額○○○○円÷収入金額○○○○円)となるので、平成17年分ないし平成20年分の本件L店に係る事業所得の金額は、当該各年分の各収入金額に当該所得率10.70%を本人比率として乗じて算出したものであり、別表11のとおり、平成17年分が○○○○円、平成18年分が○○○○円、平成19年分が○○○○円及び平成20年分が○○○○円となる。

(4) 請求人の本件J店に係る事業所得の金額

 上記(2)のホのとおり、本件J店に係る推計課税の方法については合理性が認められるところ、本件J店に係る収入金額及び事業所得の金額については、次のとおりとなる。
イ 請求人の本件J店に係る収入金額
 平成20年分及び平成21年分の本件J店のT社とのバスタオルのレンタル枚数は、別表7−2のとおり、平成20年分が○○○○枚及び平成21年分が○○○○枚であり、当該バスタオルのレンタル枚数から算出される本件J店の客数は、別表9−2のとおり、平成20年分が○○○○人及び平成21年分が○○○○人となる。
 そして、本件J店に係る収入金額は、客単価16,000円に客数を乗じて計算され、別表9−2のとおり、平成20年分が○○○○円及び平成21年分が○○○○円となる。
ロ 請求人の本件J店に係る事業所得の金額
 請求人の平成21年分の本件J店に係る必要経費の金額は、本件書類に係る領収証の必要経費の金額を集計して計算したものであり、別表10の「本件J店」の「必要経費」欄のとおり、○○○○円となり、請求人の平成21年分の本件J店に係る事業所得の金額は、「本件J店」の「事業所得の金額」欄のとおり、○○○○円となる。
 そして、本件J店に係る所得率は、24.24%(=事業所得の金額○○○○円÷収入金額○○○○円)となるので、平成20年分の本件J店に係る事業所得の金額は、同年分の収入金額に当該所得率24.24%を本人比率として乗じて算出したものであり、別表11のとおり、○○○○円となる。

(5) 本件各年分の所得税及び本件各課税期間の消費税等の税額計算等について

イ 所得税
(イ) 総所得金額について
 上記(2)ないし(4)及び当審判所の調査の結果によれば、請求人の本件各年分の総所得金額は、別表12「総所得金額」の「審判所認定額」の各「総所得金額」欄のとおりとなり、平成18年分ないし平成21年分については、別表1の「決定処分等」の各「総所得金額」欄の額を上回ることになるので、平成18年分ないし平成20年の所得税の各決定処分及び平成21年分の所得税の更正処分はいずれも適法である。
 しかしながら、平成17年分については、別表1の「決定処分等」の「総所得金額」欄の額を下回ることになるので、平成17年分の所得税の決定処分は別紙1のとおり、その一部を取り消すべきである。
(ロ) 重加算税の賦課決定処分について
 上記1の(4)のイ、ハないしヘ及びチ、上記(2)のロの(リ)、ハの(ロ)のF及びニの(イ)ないし(ハ)並びに上記(3)のロの(イ)のとおり、請求人の平成20年分の所得税の確定申告書は提出されておらず、また、請求人は、平成20年分及び平成21年分の本件各店舗に係る正確な収入金額を把握していたにも関わらず、Pらに命じる等して過少な金額が記載された内容虚偽の本件月報を作成し、さらに、平成20年分の本件L店に係る事業所得並びに平成20年分及び平成21年分の本件J店に係る事業所得がいずれも請求人に帰属するにも関わらず、本件各店舗が風営法上違法な営業を行っていたことから、請求人の名前が出ないようにするため、本件各店舗の店長名義でそれぞれ確定申告書を提出させたことは、請求人の平成20年分及び平成21年分の各所得税の課税標準等又は税額等の計算の基礎となるべき事実を隠ぺいし、又は仮装して、平成20年分の確定申告を行わず、また、平成21年分の確定申告を行ったものと認められるから、原処分庁が上記各年分の所得税につき重加算税の賦課決定処分を行ったことは適法である。
(ハ) 無申告加算税の賦課決定処分について
 上記(イ)のとおり、平成18年分ないし平成20年分の所得税の各決定処分はいずれも適法であり、また、本件の全証拠によっても、当該各年分の所得税の確定申告書が当該各年分の各法定申告期限までに提出されなかったことについて、通則法第66条第1項に規定する正当な理由があるとは認められないことから、同条第1項及び第2項の規定に基づき行われた当該各年分の無申告加算税の各賦課決定処分は適法である。
 他方、本件の全証拠によっても、平成17年分の所得税の確定申告書が同年分の法定申告期限までに提出されなかったことについて、通則法第66条第1項に規定する正当な理由があるとは認められないが、上記(イ)のとおり、同年分の所得税の納付すべき税額が一部取り消されたことから、同年分の無申告加算税の賦課決定処分についても、別紙1のとおり、その一部が取り消されるべきである。
ロ 消費税等
(イ) 消費税等の合計税額について
 本件各課税期間の消費税の課税標準額は、別表13の「審判所認定額」の各「課税標準額」欄のとおりであり、本件各課税期間の消費税等の納付すべき税額は、別表14の「審判所認定額」の各「消費税等の合計税額」欄のとおりとなり、原処分庁認定額を上回ることになるので、本件各課税期間の消費税等の各決定処分はいずれも適法である。
(ロ) 重加算税の賦課決定処分について
 上記イの(ロ)のとおり、請求人の平成20年課税期間の消費税等の確定申告書は提出されておらず、また、請求人は、平成20年課税期間の本件各店舗に係る正確な課税資産の譲渡等の対価の額を把握していたにも関わらず、Pらに命じる等して殊更過少な金額が記載された本件月報を作成し、さらに、平成20年課税期間における本件各店舗の事業者が請求人であるにも関わらず、本件各店舗が風営法上違法な営業を行っていたことから、請求人の名前が出ないようにするため、本件各店舗の店長名義でそれぞれ平成20年分の所得税の各確定申告書を提出させ、請求人が平成20年課税期間における消費税法上の事業者に該当しないかのように装ったことは、請求人の平成20年課税期間の消費税等の課税標準等又は税額等の計算の基礎となるべき事実を隠ぺいし、又は仮装して当該課税期間の確定申告を行わなかったものと認められるから、原処分庁が平成20年課税期間の消費税等につき重加算税の賦課決定処分を行ったことは適法である。
(ハ) 無申告加算税の各賦課決定処分について
 上記(イ)のとおり、本件各課税期間の消費税等の各決定処分は、いずれも適法であり、本件の全証拠によっても、本件各課税期間の消費税等の確定申告書が当該各年分の各法定申告期限までに提出されなかったことについて、通則法第66条第1項に規定する正当な理由があるとは認められないことから、同条第1項及び第2項の規定に基づき行われた当該各年分の無申告加算税の各賦課決定処分は適法である。

(6) 原処分のその他の部分については、請求人は争わず、当審判所に提出された証拠書類等によっても、これを不相当とする理由は認められない。

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