別紙3

1 本件各更正通知書に付記された更正の理由に不備があるか否か(争点1)。

原処分庁 請求人
 本件各更正通知書に付記された更正の理由は、次のとおり、原処分庁においては、当該通知書から自己の判断過程を逐一検証できるものであり、その判断の慎重、合理性を確保するという点について欠けるところはなく、また、請求人に対しての不服申立ての便宜という面からの要請についても、必要となる材料を提供しているものであるから、更正の理由付記に求められる要件を満たしている。  本件各更正通知書に付記された更正の理由は、次のとおり、青色申告法人に対する更正の理由付記の趣旨である不服申立てに対する便宜を与えているとはいえないのであるから、理由付記には不備がある。
(1) 「減価償却費の損金不算入額」に係る付記理由について
 本件各事業年度の減価償却費を損金の額に算入することができないとした理由には、本件各建物附属設備を特定した上で、請求人が架空の本件各建物附属設備に係る減価償却費を計上していた事実を記載し、架空の資産に係る減価償却費は損金の額に算入されないとして、損金の額の範囲を示すという法的評価に対する見解を示している。
 なお、本件各建物附属設備が架空の資産であることについては、請求人の帳簿書類の記載内容及び請求人の管理部長の本件調査における申述からして架空の資産であることが明らかであり、当該更正の理由により当該資産を特定することで請求人においても当然に架空のものであることが認識されるものであるところ、本件は帳簿書類の記載を無視してなされた更正処分ではないから、架空であることの理由を記載する必要があるとは認められない。
(1) 「減価償却費の損金不算入額」に係る付記理由について
 本件各更正通知書には、本件各事業年度の減価償却費を損金の額に算入することができない理由として、「本件各建物附属設備は架空の資産である」旨記載されているが、「架空の資産」とは実在しない、存在しないという意味であって、そのような認定をする以上、立証や論証によって、平成15年1月1日から同年12月31日までの事業年度(以下「平成15年12月期」という。)において資産計上した本件各建物附属設備が「架空の資産」であると判断した具体的理由を示すべきであるところ、当該通知書にはこれらの記載がない。
(2) 「国保収入の計上もれ」に係る付記理由について
 平成17年12月期の国保収入の計上漏れの理由には、平成14年1月1日から同年12月31日までの事業年度(以下「平成14年12月期」という。)に過大に計上した医療未収入金を修正するために平成17年12月期の国保収入から減算していた事実を記載し、平成17年12月期において国保収入から減算すべきものとは認められないとして、平成17年12月期に帰属する益金の額から減算すべきものではないという法的評価に対する見解を示している。
(2) 「国保収入の計上もれ」に係る付記理由について
 平成17年12月期の国保収入の計上漏れについて、更正の通知書には、更正の理由として、「当該事業年度において、国保収入科目の残高から○○○○円を減算すべきものとは認められない」旨記載されているが、これは原処分庁の判断(結論)を示したものにすぎず、法人税法の何条によって認められないのか、また、なぜ認められないのかが明らかにされていない。

2 本件各建物附属設備に係る減価償却費を損金の額に算入することができるか否か(争点2)。

原処分庁 請求人
 本件各建物附属設備は、請求人が仮装経理により計上した実体のない架空の資産であり、架空の資産に対する減価償却は認められない。
 したがって、本件各事業年度に計上した本件各建物附属設備に係る架空の減価償却費を損金の額に算入することは認められない。
 なお、請求人は、本件各建物附属設備は資本的支出として会計処理したものであり、架空の資産ではない旨主張しているが、本件各建物附属設備は架空の資産であり資本的支出ではないため、この点に関する請求人の主張には理由がない。
 請求人が平成15年12月期において資産計上した本件各建物附属設備は、H病院についてはJ社に発注した防水工事であり、また、G病院については小口工事と医療機器の修理等に係るものである。
 これらは、平成15年12月期を黒字決算とするために、請求人が実体のある修繕費62,250,104円の中から、資本的支出に相当する○○○○円を抽出して資産計上したものであり、いずれも実際に行われた修繕であって、架空のものではない。
 ところで、中小企業における修繕費の会計処理については、好況時は法の許す限り修繕費として処理をし、業績不振時には極力資産に該当するものを償却資産として資産計上をする実態にあり、このような会計処理は一般に公正妥当と認められる会計処理の範囲に含まれると解されている。
 また、法人税法上も、法人が支出した修繕費については、修繕費として処理しなければならないという規定ではなく、法人税法施行令第132条《資本的支出》、同第133条《少額の減価償却資産の取得価額の損金算入》及び法人税基本通達7−8−4《形式基準による修繕費の判定》等からも明らかなとおり、修繕費として損金の額に算入を認めるかどうかとの規定となっている。
 そうすると、修繕費の中から資本的支出相当額を抽出し減価償却資産とした請求人の会計処理は、一般に公正妥当と認められる会計処理の範囲内にあるものであり、本件各建物附属設備に係る減価償却費は損金の額に算入すべきである。

3 過去の事業年度において過大に申告したとする国保収入相当額を、その後の事業年度の国保収入から減算して課税所得の金額を計算することが認められるか否か(争点3)。

原処分庁 請求人
 法人税の課税所得は、法人の期間計算を対象としており、益金の額及び損金の額は、それぞれ事実の生じた事業年度に帰属するものとしてその事業年度の課税所得の金額を計算するところ、請求人が平成17年12月期の国保収入から減算した○○○○円は、平成14年12月期に仮装経理により架空資産として計上した医療未収入金を消却するために行った会計処理であるため、その事実が生じた平成14年12月期に帰属するものとして課税所得の金額を計算すべきものであるから、平成17年12月期の国保収入から○○○○円を減算すべきものとは認められない。  法人の所得の計算については、当期において生じた損失は、その発生事由を問わず、当期において生じた益金と対応させて当期において処理すべきものであって、その発生事由が既往の事業年度の益金に対応するものであっても、その事業年度に遡って損金として処理はしないものであり、これは法人税法が採用する権利確定主義の考え方からも導き出される。
 したがって、過大に計上していた当該国保収入について、平成14年12月期に遡って訂正し、法人税の還付を受けることはできないのであるから、平成17年12月期の損失として減算することは認められる。
 なお、平成17年12月期において減算した当該国保収入については、平成14年12月期の所得として既に法人税相当額を納付していることからすれば、当該国保収入の減算が認められないことによって、既に平成14年12月期で課税の対象とされた当該国保収入が平成17年12月期の所得として再び生じるようなことはない他、法人税法においては訂正処理(減算)が時期的制約を受ける旨の別段の定めもなく、その時期の判断は請求人の裁量に委ねられているのであるから、これらの点からも、平成17年12月期の損失として当該国保収入を減算することは認められる。

 

 

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