(平成24年5月22日裁決)

《裁決書(抄)》

1 事実

(1) 事案の概要

 本件は、審査請求人(以下「請求人」という。)が、抵当権設定の登録免許税の適用税率が誤っていたため過誤納金が生じたとして、登録免許税に係る各還付通知請求をしたところ、原処分庁がいずれも還付通知をすべき理由がない旨の各通知処分をしたことから、請求人が、同各処分の全部の取消しを求めた事案である。

(2) 審査請求に至る経緯

イ 登記申請
 請求人は、平成18年6月○日、C地方法務局D支局登記官Fに対し、別表4の各土地及び工場財団について、別表1ないし3の「登記申請」欄のとおり記載して、同欄の「登録免許税額」欄の金額(以下「本件各登録免許税額」という。)の収入印紙を貼付した各登記申請書を提出した(以下「本件各申請」といい、提出された各登記申請書を「本件各申請書」という。)。
ロ 登記
 C地方法務局D支局登記官Fは、本件各申請を、別表1ないし3の「登記」欄の「受付番号」欄のとおり受理し、平成18年6月○日に本件各申請に係る各登記を完了した(以下「本件各登記」という。)。
ハ 還付通知請求
 請求人は、平成23年12月16日付で原処分庁に対し、本件各登録免許税額の算出過程上適用税率に誤りがあり、別表1ないし3の「還付通知の請求」欄の「過誤納額」欄の各金額(以下「本件請求人主張各過誤納額」という。)が過誤納になっているとして、別表1ないし3の「還付通知の請求」欄のとおり、登録免許税法第31条《過誤納金の還付等》第2項(平成23年法律第114号による改正前のもの。以下同じ。)の還付通知をすべき旨の請求(以下「本件各還付通知請求」という。)をした。
 なお、原処分庁は、平成23年4月1日付でC地方法務局D支局登記官Eとなった。
ニ 還付通知をすべき理由がない旨の各通知処分
 原処分庁は、請求人の本件各還付通知請求について、別表1ないし3の「還付通知すべき理由がない旨の通知」欄のとおり、平成23年12月26日付で還付通知をすべき理由がない旨の各通知処分(以下「本件各通知処分」という。)をした。
ホ 不服申立て
 請求人は、本件各通知処分を不服として、平成24年2月23日に審査請求をした。

(3) 関係法令

イ 国税通則法
 第74条《還付金等の消滅時効》は、還付金等に係る国に対する請求権は、その請求をすることができる日から5年間行使しないことによって、時効により消滅する旨規定している。
ロ 登録免許税法
(イ) 第26条《課税標準及び税額の認定》第1項は、登記機関は、登記等の申請書に記載された当該登記等に係る登録免許税の課税標準の金額若しくは数量又は登録免許税の額が国税に関する法律の規定に従っていなかったとき、その他当該課税標準の金額若しくは数量又は登録免許税の額がその調査したところと異なるときは、その調査したところにより認定した課税標準の金額若しくは数量又は登録免許税の額を当該登記等を受ける者に通知する旨規定している。
(ロ) 第31条《過誤納金の還付等》第1項第3号は、登記機関は、過大に登録免許税を納付して登記等を受けたときに該当する事実があるときは、遅滞なく、当該過大に納付された登録免許税の額その他政令で定める事項を登記等の申請をした者又は登記等を受けた者の当該登録免許税に係る同法第8条《納税地》第2項第3号の規定による所在地を納税地とする所轄税務署長に通知しなければならない旨規定している。
(ハ) 第31条第2項は、登記等を受けた者は、当該登記等の申請書に記載した登録免許税の課税標準又は税額の計算が国税に関する法律の規定に従っていなかったこと又は当該計算に誤りがあったことにより、登録免許税の過誤納があるときは、当該登記を受けた日から1年を経過する日までに、政令で定めるところにより、その旨を登記機関に申し出て、同条第1項の通知をすべき旨の請求をすることができる旨規定している。
(ニ) 第31条第8項第4号は、過大に登録免許税を納付して登記等を受けた場合には、当該登記等を受けた日に納付があったものとみなす旨規定している。

(4) 争点

 本件各還付通知請求に基づき、原処分庁は、税務署長に対して還付通知をすべき理由があるか否か。

トップに戻る

2 主張

(1) 請求人

 本件各申請手続は、C地方法務局D支局の登記官と事前協議をした上で行ったものであるところ、本件各登録免許税額は、同登記官による登録免許税法の明らかな解釈誤りによる指導に従って算出したものであるから、請求人には、過誤納となっている本件請求人主張各過誤納額について、還付を受ける権利がある。また、原処分庁は、登記機関として登録免許税法第26条第1項に基づき、本件各申請書に記載された課税標準の金額等の調査を行うべきであったにも関わらず、これをしていない。したがって、本件各還付通知請求は、認められてしかるべきであり、これを認めない本件各通知処分は違法なものである。

(2) 原処分庁

 過大に登録免許税を納付して登記等を受けた場合の登録免許税の納付日は、登録免許税法第31条第8項第4号の規定のとおり、登記等を受けた日とされており、本件各申請においては、平成18年6月○日であった。一方、還付金等に係る国に対する請求権の消滅時効は、国税通則法第74条の規定のとおり5年である。つまり、本件各還付通知請求は、納付の日から5年6か月が経過してなされたものであり、過大に納付された登録免許税額の還付請求権が時効により消滅した後になされたものである。したがって、本件各通知処分は適法なものである。
 なお、請求人の主張する事前協議及び指導の事実は確認できない。

トップに戻る

3 判断

(1) 登録免許税法第31条第2項の規定は、登記等を受けた者に対し、簡易迅速に還付を受けることができる手続を利用することができる地位を保証しているものと解される(最高裁平成17年4月14日第一小法廷判決(民集59巻3号491頁))。そうだとすれば、同規定に基づく還付通知をすべき旨の請求に対する拒否通知の適否を判断するに当たっては、登記等を受けた者が、登記等を受けた日から1年を経過する日までに簡易迅速に還付を受けることができる手続を利用していることが前提となるものと解するのが相当である。
(2) これを本件についてみると、請求人は、前記1の(2)のイないしハのとおり、平成18年6月○日に本件各登記を受けた後、平成23年12月16日に、登録免許税法第31条第2項の規定による還付通知請求をしたのであるから、本件各還付通知請求は、同項に規定する還付通知をすべき旨の請求をすることができる期間を徒過してなされた不適法なものである。
(3) 請求人は、まる1本件各申請手続時に、登記官と事前協議なるものをした旨及び登記官による指導誤りなるものがあった旨、また、まる2本件各登記に際し、登記官において登録免許税法第26条第1項に規定する調査がなされなかった旨を理由に、本件各通知処分が違法である旨主張するが、仮に、それらの事実があるとしても、同法第31条第2項に規定する還付通知をすべき旨の請求をすることができる期間が伸長する旨の法令上の規定はないから、上記(2)の判断が左右されることはない。したがって、請求人の主張には理由がない。
(4) 以上のとおり、本件各通知処分は、その他の点を判断するまでもなく、適法なものである。

トップに戻る

トップに戻る