(平成24年11月1日裁決)

《裁決書(抄)》

1 事実

(1) 事案の概要

 本件は、原処分庁が、審査請求人(以下「請求人」という。)の支払った事務手数料等の額は関連会社に対する寄附金の額に当たり、車両の購入対価等の額は代表者に対する役員給与の額に当たるなどとして行った法人税及び消費税等の各更正処分等、並びに、ホステス等に支払った金員は給与に該当するとして行った源泉徴収に係る所得税(以下「源泉所得税」という。)の各納税告知処分等に対し、請求人が、当該事務手数料等及び車両の購入対価等はいずれも請求人の事業経費等であり、当該金員はホステスの業務に関する報酬料金に当たるなどとして、これらの処分の一部の取消しを求めた事案である。

(2) 審査請求に至る経緯

イ 法人税について
(イ) 請求人は、平成19年7月1日から平成20年6月30日まで、平成20年7月1日から平成21年6月30日まで及び平成21年7月1日から平成22年6月30日までの各事業年度(以下、順次「平成20年6月期」、「平成21年6月期」及び「平成22年6月期」といい、これらを併せて「本件各事業年度」という。)の法人税について、確定申告書に別表1の「確定申告」欄のとおり記載して法定申告期限までにそれぞれ申告した。
(ロ) 原処分庁は、平成23年6月7日付で、別表1の「更正処分等」欄記載のとおり、本件各事業年度の法人税の各更正処分(以下「本件法人税各更正処分」という。)及び重加算税の各賦課決定処分(以下「本件法人税重加算税各賦課決定処分」という。)並びに平成20年6月期の法人税に係る過少申告加算税の賦課決定処分(以下、本件法人税各更正処分及び本件法人税重加算税各賦課決定処分と併せて「本件法人税各更正処分等」という。)をした。
(ハ) 請求人は、本件法人税各更正処分等を不服として、平成23年8月2日に異議申立てをしたところ、異議審理庁は、平成23年11月2日付で、別表1の「異議決定」欄記載のとおり、棄却の異議決定をした。
(ニ) 請求人は、異議決定を経た後の本件法人税各更正処分及び本件法人税重加算税各賦課決定処分に不服があるとして、平成23年12月1日に審査請求をした。
ロ 消費税及び地方消費税について
(イ) 請求人は、平成20年7月1日から平成21年6月30日まで及び平成21年7月1日から平成22年6月30日までの各課税期間(以下、順次「平成21年6月課税期間」及び「平成22年6月課税期間」といい、これらを併せて「本件各課税期間」という。)の消費税及び地方消費税(以下「消費税等」という。)について、別表2の「確定申告」欄のとおり記載して法定申告期限までにそれぞれ申告した。なお、平成18年7月○日から平成19年6月30日まで及び平成19年7月1日から平成20年6月30日までの各課税期間は、いずれも消費税法第9条《小規模事業者に係る納税義務の免除》第1項の規定が適用され、消費税等を納める義務が免除されている。
(ロ) 原処分庁は、平成23年6月7日付で、別表2の「更正処分等」欄記載のとおり、本件各課税期間の消費税等の各更正処分(以下「本件消費税等各更正処分」という。)並びに過少申告加算税及び重加算税の各賦課決定処分(以下、それぞれ「本件消費税等過少申告加算税各賦課決定処分」、「本件消費税等重加算税各賦課決定処分」といい、本件消費税等各更正処分と併せて「本件消費税等各更正処分等」という。)をした。
(ハ) 請求人は、本件消費税等各更正処分等を不服として、平成23年8月2日に異議申立てをしたところ、異議審理庁は、平成23年11月2日付で、別表2の「異議決定」欄記載のとおり、棄却の異議決定をした。
(ニ) 請求人は、異議決定を経た後の本件消費税等各更正処分等に不服があるとして、平成23年12月1日に審査請求をした。
ハ 源泉所得税について
(イ) 原処分庁は、平成23年6月7日付で、別表3の「納税告知処分等」欄記載のとおり、給与所得に係る源泉所得税の各納税告知処分(以下「本件各納税告知処分」という。)並びに不納付加算税の各賦課決定処分(以下「本件不納付加算税各賦課決定処分」という。)及び重加算税の賦課決定処分(以下「本件源泉所得税重加算税賦課決定処分」といい、本件各納税告知処分及び本件不納付加算税各賦課決定処分と併せて「本件各納税告知処分等」という。)をした。
(ロ) 請求人は、本件各納税告知処分等を不服として、平成23年8月2日に異議申立てをしたところ、異議審理庁は、平成23年11月2日付で、別表3の「異議決定」欄記載のとおり、棄却の異議決定をした。
(ハ) 請求人は、異議決定を経た後の本件各納税告知処分等に不服があるとして、平成23年12月1日に審査請求をした。

(3) 関係法令等

 別紙5のとおりである。

(4) 基礎事実

 以下の事実は、請求人と原処分庁との間に争いがなく、当審判所の調査の結果によってもその事実が認められる。
イ 請求人は、平成18年7月○日に飲食店の経営等を目的として設立された法人であり、a市b町において「J」の屋号で接客を伴う飲食店(以下「本件店舗」という。)を営んでいた(以下、本件店舗においてホステスとして働く女性を「本件ホステス」という。)。
ロ 請求人は、G(以下「G代表」という。)を代表取締役とするK社ほか3法人の関連法人である(以下、請求人を含む関連5法人を併せて「本件各法人」という。)。
ハ 請求人の代表取締役には、平成18年7月○日にL(以下「前代表者」という。)が就任し、その後、平成23年8月1日に前代表者に代わりG代表が就任した。なお、請求人は、G代表が発行済株式総数の100%を保有する同族会社である。
ニ 請求人は、設立当初、M社(以下「本件家主」という。)から本件店舗を直接賃借していたが、平成20年1月からは、K社を通じて賃借し、本件各事業年度においてK社に対する家賃を店舗管理料勘定に計上し、損金の額に算入していた(以下、平成20年1月分から平成22年6月分までの各月に請求人が計上した店舗管理料の額を「本件店舗管理料」という。)。
 なお、本件各事業年度における本件店舗管理料は、別表4「まる1本件店舗管理料」欄記載のとおりである。
ホ 請求人は、本件ホステスに係る源泉所得税の計算などをK社に委託していたとして、平成20年6月期及び平成21年6月期において、別表5記載のとおり、K社に対する事務手数料の額(以下「本件事務手数料」という。)を計上し、その全額を損金の額に算入した。
ヘ 請求人は、平成20年2月に取得した車両(以下「本件車両」という。)及び本件車両に係るリサイクル預託金の額を、平成20年6月期の貸借対照表の資産の部にそれぞれ計上するとともに、本件各事業年度において本件車両に係る租税公課、保険料、支払利息及び雑費(別表6の「原処分の額」の「支払金額」の「租税公課」欄以下の各欄記載の金額をいい、以下、これらを併せて「本件車両関連費用」という。)並びに減価償却費の額をそれぞれ損金の額に算入した。
ト 原処分について
(イ) 法人税について
 原処分庁は、次の内容により本件法人税各更正処分等を行った。
A 請求人が二重帳簿を作成する方法により売上げの一部を申告していなかったことから、当該金額を請求人の申告に係る所得金額に加算した。
B 本件店舗管理料とK社が本件家主に支払った家賃の額(別表4の「まる2K社支払額」欄記載の金額をいう。)との差額(別表4の「差額」欄記載の金額をいい、以下「本件賃料差額」という。)は、事実を隠ぺい又は仮装してK社に対し支払った寄附金の額に該当する。
C 本件事務手数料は、事実を隠ぺい又は仮装してK社に対し支払った寄附金の額に該当する。
D 本件車両は、購入当初からG代表の妻であるN(以下「G代表の妻」という。)が使用しており、本件車両の取得費(別表6の「原処分の額」の「支払金額」の「車両」欄記載の金額をいい、以下、本件車両に係るリサイクル預託金の額と併せて「本件車両取得費」という。)及び本件車両関連費用(以下、本件車両取得費と併せて「本件車両取得費等」という。)に相当する金額はいずれもG代表に支払った役員給与に当たる。なお、別表6の「原処分の額」の「支払金額」欄の各金額が、事実を隠ぺい又は仮装して支払った役員給与の額とされた。
(ロ) 源泉所得税について
A 請求人は、本件ホステスに支払った金員が報酬等に当たるとして、源泉所得税を徴収していたが、平成20年7月から平成22年8月までの各月分、これを納付していなかった。このため、原処分庁は、平成22年12月13日付で、未納となっていた税額につき納税の告知処分をした。
B その後、原処分庁は、本件に係る調査に基づき、本件車両取得費等がG代表に支払った役員給与の額に当たり、本件ホステスへ支払った金員が給与等に当たるとして、別表6の「原処分の額」の「源泉所得税額」欄記載の金額及び別表7の「原処分の額」欄記載の金額のとおり、本件各納税告知処分を行った。なお、本件各納税告知処分の税額は、所得税法第185条の規定に基づき月額表乙欄を適用して計算した税額から、上記Aの請求人が徴収していた税額を控除して計算されていた。
(ハ) 消費税等について
A 請求人は、本件各課税期間において、本件店舗管理料及び本件事務手数料を、いずれも仕入れに係る消費税額の控除(以下「仕入税額控除」という。)の対象として申告した。
B 原処分庁は、次の内容により本件消費税等各更正処分等を行った。
(A) 請求人が二重帳簿を作成する方法により課税資産の譲渡等の対価の額の一部を申告していなかったことから、その金額を請求人の課税資産の譲渡等の対価の額に加算した。
(B) 本件賃料差額及び本件事務手数料は、いずれも事実を隠ぺい又は仮装して計上した架空の経費であり、本件ホステスに支払った金員は、給与等に該当するから、いずれも仕入税額控除の対象にならない(以下、原処分において仕入税額控除の対象とならないとされたこれらの金額を併せて「本件賃料差額等」という。)。

(5) 争点

イ 本件賃料差額は、寄附金の額に当たるか否か。
ロ 本件事務手数料は、寄附金の額に当たるか否か。
ハ 本件車両取得費等は、事実を隠ぺい又は仮装してG代表に対し支払った役員給与の額に当たるか否か。
ニ 本件ホステスへの支払は、給与等に当たるか否か。
ホ 本件賃料差額等は、消費税の仕入税額控除の対象となるか否か。

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2 主張

(1) 争点イについて

イ 原処分庁
 請求人とK社との間で本件店舗管理料に係る契約が締結されていない上、本件店舗管理料に係るK社からの請求書等が存在しないこと、請求人が属する本件各法人の各店舗ごとに作成され、売上げ等の金額が記載された一覧表(以下「店舗別月次決算表」という。)には本件賃料差額が反映されていないこと、及びK社の事務員(以下「K社事務員」という。)が、本件賃料差額について、請求人の決算に当たりG代表の指示により実際の現金残高と帳簿上の現金残高との差額を埋めるために行った架空経費の計上である旨の申述をしていることなどからすると、本件賃料差額は、K社に対する寄附金の額に当たる。
ロ 請求人
 本件店舗は営業店舗であり、請求人には営業以外の業務を行う部門がないことから、本件店舗の賃借を含め不動産管理等の業務をK社に委託している。
 したがって、本件家主に支払う家賃の他に、管理事務などの手数料を含めてK社に支払うことは通常の経済取引であるから、本件賃料差額は寄附金の額に当たらない。
 なお、本件各法人間の取引をどこまで使用人に明らかにするかは、経営者の任意であるから、店長会議等の資料として使用する店舗別月次決算表に本件店舗管理料の記載がないことをもって本件賃料差額が架空であるとはいえない。

(2) 争点ロについて

イ 原処分庁
 請求人とK社との間で本件事務手数料に係る契約が締結されていない上、店舗別月次決算表には本件事務手数料が反映されていないこと、及びK社事務員が、本件事務手数料について、請求人の決算に当たりG代表の指示により実際の現金残高と帳簿上の現金残高の差額を埋めるために行った架空経費の計上である旨の申述をしていることなどからすると、本件事務手数料は、K社に対する寄附金の額に当たる。
ロ 請求人
 本件店舗は営業店舗であり、総務、経理、人事業務等の事務処理を行う部門がないことから、これらの業務をK社に委託している。
 したがって、本件事務手数料をK社に支払うことは通常の経済取引であるから、本件事務手数料は寄附金の額に当たらない。
 なお、本件各法人間の取引をどこまで使用人に明らかにするかは、経営者の任意であるから、店長会議等の資料として使用する店舗別月次決算表に本件事務手数料の記載がないことをもって本件事務手数料が架空であるとはいえない。

(3) 争点ハについて

イ 原処分庁
 請求人は、G代表の妻が個人使用のために取得した本件車両に係る本件車両関連費用について、G代表の指示により本件各事業年度の損金の額に算入していること、G代表の妻は請求人の役員又は従業員ではなく、請求人の業務には従事していないこと、G代表が請求人の100%株主であることなどからすると、本件車両取得費等は、請求人からG代表に対し支払われた役員給与の額であると認められる。
 また、かかる行為は、事実の仮装、隠ぺいに当たると認められるため、当該役員給与の額は法人税法第34条第3項に規定する役員給与の額に当たる。
ロ 請求人
 G代表の妻が本件車両を個人的に使用しており、その間の事業年度における使用、保管、減価償却費及び請求人が負担した費用に関し、その部分の利益は当然受けていることから個人の使用料相当額として損金性を否認されることはやむを得ないものの、本件車両は請求人名義であるので、請求人が取得したというべきであり、本件車両については役員給与ではなく、請求人の資産として処理されるべきである。

(4) 争点ニについて

イ 原処分庁
 本件ホステスは、基本給(時間給)や支払日、控除額などが定められ、勤務時間、勤務場所などの業務の条件に係る契約を締結し、タイムカード等により請求人から勤務管理がされている。
 これらの事実からすれば、本件ホステスは、請求人の指揮命令に服し、空間的、時間的な拘束を受けて継続的ないし断続的に労務又は役務を提供してその対価を受けていると認められるから、請求人が本件ホステスに対して支払った金員は、給与等に当たる。
ロ 請求人
 本件ホステスに支払った金員は、本件ホステスが本件店舗において接客又は客に飲食させた業務の対価であり、その対価の額は、客からの指名本数や飲食の数に応じて変動するもので、正に自己の責任において行われているものといえる。
 また、請求人及び本件ホステスの収益の源泉である顧客の情報とその管理は本件ホステスが独占していて、請求人は全く関与しておらず、本件ホステスは顧客を抱えて他店に移ることも容易に可能であることや、本件ホステスは顧客から金銭や物品等を個人的に受けることがあるが、このような店を介在しない営業等に請求人が関与していないことなどからすれば、本件ホステスは請求人の指揮命令下に置かれておらず、請求人から独立して事業を営んでいるというべきである。
 なお、事業を行う場合、一般的に、給与所得者に限らず事業者に対してもある程度の規則を設けて管理することは必要であるから、タイムカード等により管理されているからといって、支給した金員が給与等であるとはいえない。
 したがって、本件ホステスに支払った金員は、報酬等に当たり、給与等には当たらない。

(5) 争点ホについて

イ 原処分庁
 本件賃料差額等は、いずれも役務提供の対価等として支払われた金額ではなく、消費税法第2条第1項第12号に規定する課税仕入れに当たらないから、仕入税額控除の対象とならない。
ロ 請求人
 本件賃料差額等は、いずれも役務提供の対価として支払った金額であり、消費税法第2条第1項第12号に規定する課税仕入れに当たるから、仕入税額控除の対象となる。

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3 判断

(1) 争点イ(本件賃料差額は寄附金の額に当たるか否か)について

イ 法令解釈
 法人税法第37条第7項に規定する寄附金とは、民法上の贈与に限らず、経済的にみて贈与と同視し得る金銭その他の資産の譲渡又は経済的利益の供与をいうものと解され、ここにいう「経済的にみて贈与と同視し得る金銭その他の資産の譲渡又は経済的利益の供与」とは、金銭その他の資産又は経済的利益を対価なく他に移転させる場合であって、その行為について通常の経済取引として是認できる合理的理由が存在しないものを指すと解するのが相当である。
ロ 認定事実
 原処分関係資料及び当審判所の調査の結果によれば、次の事実が認められる。
(イ) 請求人は、本件家主からa市b町○−○所在の本件店舗を借り受けていたが、平成20年1月1日付の店舗賃貸借契約(以下「本件変更契約」という。)により、本件店舗の借主が、請求人からK社に変更された。その際、本件変更契約の内容を確認するために作成された「店舗賃貸借契約書原案」と題する書面によれば、本件変更契約において、まる1平成20年1月1日前の本件店舗の店舗賃貸借契約(以下「本件変更前契約」という。)における賃貸借期間及び請求人が支払った敷金は、いずれも本件変更契約にそのまま引き継がれる旨、まる2本件家主は、K社が本件店舗を請求人へ転貸することを認める旨の定めがあり、上記まる1及びまる2の内容以外は、本件変更前契約と本件変更契約の内容に特段の変更点はなかった。
(ロ) G代表は、請求人の設立の時から、請求人の実質的な経営者として請求人の経営に関与していた。
(ハ) 請求人は、本件店舗管理料及び本件事務手数料について、支出した際においては仮払金勘定に計上し、それぞれ支出した月の末日付で当該仮払金勘定から、それぞれ店舗管理料勘定及び事務手数料勘定に振り替えていた。
(ニ) 本件店舗の店長(以下「本件店長」という。)は、日々の売上げについて「日計表&粗利益確認表」と題する書面(以下「本件日計表」という。)を作成し、本件日計表をK社の事務所宛にファックスにより送信し、売上金額から本件店舗の費用として支出した金額を差し引いた残金を前代表者名義の○○銀行の普通預金口座に入金していた。
(ホ) K社事務員は、請求人の事務処理等も行っており、本件日計表を基に試算表を作成し、さらに、当該試算表を基に店舗別月次決算表を作成していた。なお、店舗別月次決算表には、家賃欄にK社支払額が記載されており、本件店舗管理料は記載されておらず、また、本件事務手数料の項目及び金額の記載はなかった。
ハ 関係者の答述等
(イ) G代表は、当審判所に対して次のとおり答述した。
A K社が請求人から受領する家賃には、ホームページを管理する等のインターネット業務、スタッフの手配など一部人員のサポートの業務、店舗の修繕(以下、これらの業務を併せて「本件各業務」という。)及び賃貸借契約更新時に家主に支払う更新料の負担などが含まれており、K社支払額と請求人から受領する店舗管理料との差額が本件賃料差額である。
B K社は、本件各業務のほか、本件ホステスに対する支払金額の計算などの対価として本件事務手数料を受領しているが、これらの業務の区分は曖昧で、本件事務手数料の中に、本件各業務の対価が混在しており、本件事務手数料の金額の算定に明確な基準があったわけではない。
C K社は、他の関連法人に対して店舗を転貸し、本件各業務及び上記Bの業務を行い、当該業務の対価として、店舗の家賃及び事務手数料を受領していた。
D K社では、申告をしない店舗等があるなどの状況の中で、帳尻が合うよう帳簿へ記載するように、私がK社事務員に指示していた。
(ロ) K社事務員に対して行われた質問調査に基づき作成された調査報告書には、要旨次のとおりの記載がある。
A G代表の指示だったと思うが、K社は、運転資金が不足すると、本件店舗や他の関連法人が経営する店舗のうち、ある程度売上げのある店舗の資金を、仮受金として受け入れていた。
B これもG代表の指示だったと思うが、K社は、上記Aで受け入れた仮受金のうち、毎月定額をK社の収入としていた。
ニ 判断
(イ) 上記ロ(イ)のとおり、K社と本件家主との契約は、賃貸借期間、敷金がそのまま引き継がれ、請求人に対して転貸する部分のみが変更されただけで、当該変更に伴う賃貸借の状況に特段の変更の事実が認められず、また、請求人の営業実態にも何ら変更がないことからすれば、別表4の「まる1本件店舗管理料」欄記載のとおり、本件変更契約の後において、本件店舗の賃料が約2倍近くに増額される合理的理由があるとは認められない。
(ロ) また、上記ロ(ロ)のとおり、G代表は請求人の実質的な経営者であるが、G代表の本件賃料差額及び本件事務手数料に関する上記ハ(イ)AからCまでの答述は、本件各業務などが行われたことを裏付ける具体的な証拠の提示がなく、当審判所の調査の結果によっても上記答述に沿う事実が認められない以上、採用することができない。他方、請求人の経理処理に関する上記ハ(イ)DのG代表の答述と上記ハ(ロ)の調査報告書の記載内容は、相互に矛盾がない上、上記ロ(ハ)の請求人の経理処理にも符合することから、これらの答述及び調査報告書の記載内容どおりの事実があったものと認めるのが相当である。
(ハ) そうすると、本件賃料差額の支出に関しては、その金額の算定根拠が不明確である上、本件各業務などが具体的に行われたことを示す証拠もないことから、本件賃料差額は、上記ハ(イ)Aの本件各業務などの役務提供の対価であると認めることはできない。
(ニ) 他方、上記ロ(ニ)及び(ホ)のとおり、本件日計表は、日々の取引をG代表に報告するために本件店長が作成している資料といえ、本件店舗の真実の売上金額や支出された費用が記載されていると認めるのが相当であり、当該店舗別月次決算表は請求人の売上金額等、取引の実態が記載されているといえる。そうすると、店舗別月次決算表にK社支払額が記載され、本件賃料差額が反映されていないことから、請求人においては、家主への支払金額を地代家賃と認識した上で、K社に対し本件店舗管理料相当額を支出していたものと認められる。また、その経理処理は、K社の運転資金を確保するために賃料収入を得ることにしたとする上記ハ(ロ)の調査報告書の記載内容に符合するといえ、本件賃料差額は、K社への資金提供により生じた帳簿上の現金不足を調整するために、名目上、店舗管理料という科目を用いて損金の額に算入していたと認めることができる。
 以上によれば、本件賃料差額は、請求人からK社に対する資金提供として対価なく支出されたものであると認められるから、法人税法第37条第7項の寄附金の額に当たるというべきである。
(ホ) これに対し、請求人は、本件店舗の家主に支払う家賃の他に、管理事務などの手数料を含めてK社に支払うことは経済合理性のある取引である旨主張するが、上記(ハ)で述べたとおり、本件賃料差額の具体的な役務提供の内容や支出の根拠が不明確である状況において支出された金員についてまで、経済合理性があると認めることはできないから、請求人の主張には理由がない。また、店舗別月次決算表に本件店舗管理料の計上がないことをもって本件賃料差額が架空であるとはいえない旨主張するが、本件賃料差額が寄附金の額に当たると認められることは上記(ニ)で述べたとおりであって、この点に関する請求人の主張には理由がない。

(2) 争点ロ(本件事務手数料は寄附金の額に当たるか否か)について

イ G代表の上記(1)ハ(イ)の答述及び上記(1)ハ(ロ)の調査報告書の記載内容に関する信用性については、上記(1)ニ(ロ)のとおりである。
 また、上記(1)ハ(イ)B及びCによれば、本件事務手数料の支出に関しても、その金額の算定根拠が不明確である上、その役務提供が具体的に行われたことを示す証拠もないことから、本件事務手数料は、本件ホステスに対する支払金額の計算事務等の役務提供の対価であると認めることはできない。
 他方、別表5記載のとおり、請求人が本件事務手数料をK社に支払っていたのは平成19年12月から平成20年8月までの期間であるが、当該期間とそれ以外の期間において、請求人とK社との関係に特段の事情の変更があったことを裏付ける具体的な証拠はないこと、上記(1)ロ(ホ)のとおり、請求人の売上金額等、取引の実態が記載されていると認められる店舗別月次決算表に本件事務手数料の記載がないこと、及び、これらの事実に上記(1)ハ(イ)DのG代表の答述と上記(1)ハ(ロ)の調査報告書の記載内容を併せ考えると、本件事務手数料は、請求人が行ったK社への資金提供を、名目上、事務手数料という科目を用いて損金の額に算入していたものと認めることができる。
 以上によれば、本件事務手数料として支出した額は、直接的な対価を伴わない支出と認められ、法人税法第37条第7項の寄附金の額に当たるというべきである。
ロ これに対し、請求人は、本件事務手数料の支出は通常の経済取引である旨主張するが、本件事務手数料が直接的な対価を伴わない支出であると認められることは上記イで述べたとおりであるから、請求人の主張には理由がない。

(3) 争点ハ(本件車両取得費等は、事実を隠ぺい又は仮装してG代表に対し支払った役員給与の額に当たるか否か)について

イ 法令解釈
(イ) 法人税法第34条第3項は、事実を隠ぺいし、又は仮装して経理をすることにより役員に支給する給与の額は、損金の額に算入しない旨規定しているところ、ここにいう「事実を隠ぺいし」とは、特定の事実を隠匿しあるいは脱漏することをいい、「仮装して」とは、特定の所得、財産あるいは取引上の名義を装う等事実をわい曲することをいうものと解される。
(ロ) 法人税法第34条第4項は、同条第1項から第3項までに規定する給与には債務の免除による利益その他の経済的利益が含まれる旨規定しているところ、同条第4項に規定する「債務の免除による利益その他の経済的な利益」とは、役員に対して物品その他の資産を贈与した場合におけるその資産の価額に相当する金額や、役員等のために個人的費用を負担した場合における費用の額に相当する金額等の法人が一定の行為をしたことにより実質的にその役員等に対して給与を支給したのと同様の経済的効果をもたらすものをいうと解される。
ロ 認定事実
 請求人提出資料、原処分関係資料及び当審判所の調査の結果によれば、次の事実が認められる。
(イ) 本件車両の購入に関する事項
A G代表の妻は、本件車両の購入に関し、P社f店(以下「本件ディーラー」という。)との間で、平成20年1月16日付の新車注文書(以下「本件注文書」という。)を取り交わした。本件注文書の買主注文者の欄には、請求人の名称、住所及び電話番号等が記載され、代表取締役の印章の印影がある。
B 請求人は、平成20年2月14日、Q社(以下「本件信販会社」という)との間で、前代表者及びG代表の妻を連帯保証人として本件車両に係るオートローン兼保証委託契約(以下「本件ローン契約」という。)を締結した。
C 請求人が本件車両を購入した際の支払総額は、5,598,240円である。このうち本件ディーラーに対して、平成20年3月3日に本件信販会社から5,579,580円(ほか振込手数料420円)が支払われ、平成20年3月7日に請求人から残額17,715円(ほか振込手数料525円)が支払われた。
D 請求人は、本件ローン契約に基づき、平成20年3月から本件信販会社に対し借入金の返済を行っており、別表6の「原処分の額」の「支払金額」の各「支払利息」欄記載の金額は、その返済と併せて支払われた利息の額である。なお、本件各事業年度の支払利息の総額は、平成20年6月期が70,204円、平成21年6月期及び平成22年6月期がそれぞれ210,612円であり、請求人はその全額を損金の額に算入した。
E 平成23年2月15日付の本件車両の自動車検査証には、「所有者の氏名又は名称」欄に本件信販会社の名称が、「所有者の住所」欄に本件信販会社の所在地がそれぞれ記載され、また、「使用者の氏名又は名称」欄に請求人の名称が、「使用者の住所」欄に請求人の所在地がそれぞれ記載されている。
(ロ) 本件車両の保有に関する事項
A 本件車両の納車先は、d市e町○−○(G代表及びG代表の妻の住宅)であり、納車後の本件車両の保管場所も同地であった。
B 本件車両の車検や法定点検の際の連絡先として本件ディーラーに登録されていたのは、G代表の妻の携帯電話番号であった。
(ハ) 本件車両の取得価額等
 本件各事業年度の法人税の確定申告書に添付された「固定資産減価償却内訳明細書」及び本件注文書によれば、本件車両の供用年月は平成20年2月、本件車両の取得価額は5,165,295円であった。
ハ 判断
(イ) 上記(1)ロ(ロ)のとおり、G代表は、請求人の設立時から請求人の実質的な経営者として請求人の経営に関与していたのであるから、本件各事業年度において、G代表は、法人税法施行令第7条《役員の範囲》第1号に規定する法人の使用人以外の者で当該法人の経営に従事している者に該当し、法人税法第2条《定義》第15号に規定する役員に該当すると認められる。
(ロ) 本件車両取得費について
 上記ロ(イ)のとおり、請求人が、まる1本件車両の購入に関する注文の当事者であり、まる2本件信販会社を通じて本件車両の売買代金を支払い、まる3自動車検査証に使用者として記載されているところ、これらの各事実からすると、本件車両の取得者は、請求人であると認められる。
 この点に関し、原処分庁は、本件車両はG代表の妻の個人使用の目的で購入したものであるから、本件車両取得費がG代表に対する給与であると主張しているところ、確かに、上記ロ(ロ)Aのとおり、本件車両の納車場所や保管場所がG代表の妻の居宅であったことや、上記ロ(ロ)Bのとおり、本件ディーラーからの連絡先がG代表の妻であったことなどからすると、本件車両をG代表の妻が個人的に利用していることが認められる。
 しかしながら、上記ロ(ロ)の各事実からは、G代表の妻が本件車両を個人的に利用しているといえるに留まるのであって、上記イ(ロ)に示すような請求人からG代表に対して本件車両の贈与があった等、請求人が一定の行為をしたことにより実質的にG代表に対して給与を支給したのと同様の経済的効果をもたらしたとまでは認めることができない。したがって、本件車両取得費が役員給与に当たるとはいえないから、原処分庁の主張には理由がない。
(ハ) 本件車両関連費用等について
 上記(ロ)のとおり、本件車両はG代表の妻が専属的に利用していたと認められるところ、それは、G代表が実質的経営者としての権限を利用して請求人が所有する本件車両をG代表の妻に使用させていたと認めるのが相当である。そして、G代表は、請求人に対し、本件車両関連費用に相当する金員の支払をしていないのであるから、本件車両は、請求人からG代表に対して無償で貸与されていたと認められる。したがって、G代表はこれにより通常支払うべき対価の額相当の利益、すなわち本件車両について所得税法第36条《収入金額》第1項でいう金銭以外の物又は権利その他経済的な利益(以下「経済的利益等」という。)を享受しているということができる。また、G代表は、上記(イ)のとおり役員に該当するところ、法人税法第34条第4項は、役員給与には経済的な利益を含む旨規定しているから、本件車両の利用により享受する経済的利益等も役員給与に当たる。
 この場合において、所得税法施行令第84条の2《法人等の資産の専属的利用による経済的利益の額》は、法人又は個人の事業の用に供する資産を専属的に利用することにより個人が受ける経済的利益等の額は、その資産の利用につき通常支払うべき使用料その他その利用の対価に相当する額(以下「資産利用対価額」という。)である旨規定している。
 これを本件についてみると、本件車両を専属的に利用する場合の資産利用対価額を客観的に算定することは困難であるから、当該資産の取得時の価値を基礎に算出するのが合理的であり、本件車両の取得価額を基礎として、その使用可能期間に占める貸与期間に相当する額を算出した上、それを当該貸与期間の月数で均等にあん分して算出される金額(以下「あん分取得価額」という。)及び1か月当たりの本件車両関連費用の合計額を1か月当たりの資産利用対価額とするのが相当である。
 その場合、本件車両の使用可能期間については、資産の使用又は時の経過による当該資産の価値の減少分を算定する減価償却費の計算における法定耐用年数を採用するのが相当である。また、貸与期間については、その定めがないことから、法定耐用年数と同一とするのが合理的である。そうすると、あん分取得価額は、本件車両の取得価額を基礎として、減価償却資産の耐用年数に関する省令別表第一に定められている年数(「車両及び運搬具」の「自動車」欄の「その他のもの」)である6年の期間により、均等にあん分計算するのが相当である。
 また、本件車両関連費用のうち、自動車保険料の額及び本件ローン契約に基づく支払利息の額は、いずれも一定の契約に基づき継続的に役務の提供を受けるために支出されるものであり、請求人がこれらの費用を負担したことによりG代表が受ける経済的利益等も継続的に供与を受ける利益であるといえる。他方、本件車両関連費用のうち、自動車税、自動車取得税、自動車重量税及び本件ディーラーに対する手数料等(以下、これらを併せて「本件自動車税等」という。)の額は、継続的に役務の提供を受けるための支出金ではないから、G代表は、請求人がその支払をしたときに経済的利益等を享受したといえる。
 以上を前提に、当審判所において、G代表の役員給与に当たる経済的利益等の額(資産利用対価額)を算定したところ、別表6の「審判所認定額」の「支払金額」欄記載のとおりとなる。
 ところで、原処分庁は、本件車両関連費用について、事実を隠ぺい又は仮装してG代表に支払った役員給与に当たる旨主張するが、本件車両関連費用については、それぞれ租税公課、保険料又は支払利息等の勘定科目をもってその帳簿に記載されており、事実を隠ぺい又は仮装していたと認めるに足る証拠はないから、原処分庁の主張には理由がない。

(4) 争点ニ(本件ホステスへの支払は給与等に当たるか否か)について

イ 法令解釈
 所得税法第28条第1項に規定する給与所得とは、雇用契約又はこれに類する原因に基づき使用者の指揮命令に服して提供した労務の対価として使用者から受ける給付をいうが、とりわけ、給与支給者との関係において何らかの空間的、時間的な拘束を受け、継続的ないし断続的に労務又は役務の提供があり、その対価として支給されるものであるかどうかが重視されなければならないと解される。一方、所得税法第27条第1項に規定する事業所得とは、自己の計算と危険において独立して営まれ、営利性、有償性を有し、かつ反復継続して遂行する意志と社会的地位とが客観的に認められる業務から生ずる所得をいうものと解される。
ロ 認定事実
 原処分関係資料及び当審判所の調査の結果によれば、次の事実が認められる。
(イ) 本件ホステスの採用
 本件ホステスの採用は、本件店長が行っていた。本件店長は、応募者と面接し、給与体系、勤務時間、店舗規則などの勤務条件が記載された「給料システム」と題する書面(以下「給料システム」という。)に基づき説明し、勤務条件に合意した者を採用していた。
(ロ) 本件ホステスの勤務管理
A 本件ホステスは、上記(イ)の合意に基づいて勤務し、本件店長に出勤予定表を提出するなどしていた。なお、欠勤する場合には事前に申出をすることとされ、遅刻や無断欠勤した場合は罰金が課されることが給料システムに定められていた。
B 本件店長は、本件ホステスに対して、出勤日及び入退店時刻の指示をして出勤のシフトを組み、本件ホステスの出勤日及び出勤時間を管理した上、タイムカードにより本件ホステスの出退勤を管理していた。
(ハ) 本件ホステスに支払われた金額
A 支払金額については、客からの指名の実績に応じて算出される時間給に勤務時間を乗じた上、当該時間給に上乗せされる手当及び欠勤又は遅刻等の有無等が勘案され、毎月月末に本件ホステスに支給されていた。
B 本件ホステスの時間給は、給料システムにその細目が定められており、採用後1か月は指名本数が少ない場合でも一定の時間給が保証され、その後は指名の実績により時間給の金額が変動することとされていた。
(ニ) 売掛金の回収
 客の飲食料金等は本件店舗に対して支払われており、売掛金については、本件店長がその責任において回収し、未回収分があっても、本件ホステスはその責任を負わないこととされていた。
ハ 判断
(イ) 上記ロ(イ)及び(ロ)のとおり、本件ホステスの採用に際して、請求人と本件ホステスとの間において、給与体系、勤務時間などの勤務条件について口頭により合意がなされており、当該合意に基づき、本件店長が、本件ホステスの勤務時間などを管理していたことが認められる。
 そして、上記ロ(ハ)のとおり、本件ホステスに対して支払われる金員は、本件ホステスの勤務時間や遅刻等の有無等を勘案して算出されていた。
 以上の各事実を総合的に考慮すると、本件ホステスは、請求人及びその委任を受けた者との関係において、空間的、時間的な拘束を受け、継続的ないし断続的に労務を提供して、その対価として、金員を支給されていたということができる。
 したがって、本件ホステスに支払われた金員は、本件ホステスと請求人との雇用契約又はこれに類する原因に基づき請求人の指揮命令に服して提供した労務の対価、すなわち給与等と認められる。
(ロ) 請求人は、本件ホステスに支払われる金員は、本件ホステスが本件店舗において接客等をした対価であり、その対価の額は、客からの指名本数や飲食の数に応じて変動し、自己の責任において行われていることから報酬等である旨、タイムカード等により管理されていることをもって支給された金員が給与であるとはいえない旨主張する。
 しかしながら、上記ロ(ハ)のとおり、本件ホステスへの支払金額は、時間給が基本であって、時間給に上乗せされる金額は、請求人の売上げに対する貢献度により加算される給与等であると認められる。給与所得者が、その貢献度により給与等の収入金額が異なることは、一般の給与制度にも見受けられることであって、客からの指名本数や客の飲食数に応じて支払額が変動することをもって、本件ホステスに支払った金員が報酬等に当たるということはできない。また、上記ロ(ニ)のとおり、本件ホステスは、売掛金の未回収分があっても、その責任を負っていなかったことからすると、自己の計算と危険において独立して経済活動を営んでいたものとは認められない。さらに、支給された金員が給与等に当たるとの判断は、タイムカードでの管理のみをもって判断したのではなく、上記(イ)のとおり、金員の支給状況等の各事実を総合的に考慮して給与等に当たると判断したのであるから、請求人の主張にはいずれも理由がない。
 また、請求人は、本件ホステスが客の情報を管理していること、客からの金銭等の授受に請求人が関与していないことをもって、本件ホステスは事業を営んでいる旨主張するが、本件ホステスに支給された金員が給与等に当たると認められることは、上記(イ)のとおりであって、請求人の主張する事実をもってしても、上記判断を左右するものではないから、請求人の主張には理由がない。

(5) 争点ホ(本件賃料差額等が仕入税額控除の対象となるか否か)について

 消費税法第30条第6項は、課税仕入れに係る支払対価の額とは、課税仕入れの対価として支払い、又は支払うべき一切の金銭等の額をいう旨規定し、消費税法第2条第1項第12号は、課税仕入れの意義につき、他の者から資産を譲り受け、若しくは借り受け、又は役務の提供(給与等を対価とする役務の提供を除く。)を受けることをいう旨規定しているところ、本件賃料差額及び本件事務手数料は、上記(1)ニ及び(2)のとおり、いずれも直接的な対価を伴わない支出金であり、本件ホステスに支払われた金員は、上記(4)ハのとおり給与等に当たる。
 したがって、本件賃料差額等は、いずれも課税仕入れに係る支払対価の額に当たらないから、消費税の仕入税額控除の対象とならない。

(6) 原処分について

イ 本件法人税各更正処分について
 本件賃料差額及び本件事務手数料は、上記(1)ニ及び(2)のとおりいずれも請求人が支出した寄附金の額に当たる。また、上記(3)ハ(ハ)のとおり、本件車両に係る資産利用対価額はG代表に対する役員給与に当たるところ、このうち、あん分取得価額、自動車保険料及び本件ローン契約に基づく支払利息に相当する金額は、いずれも継続的に供与される経済的な利益であるため、法人税法施行令第69条《定期同額給与の範囲等》第1項第2号の規定により、法人税法第34条第1項に規定する定期同額給与とされ、本件各事業年度の所得の金額の計算上、その全額が損金の額に算入される。他方、本件自動車税等の額は、継続的に供与される経済的な利益ではないため、法人税法第34条第1項に規定する定期同額給与に当たらないから、その全額が損金の額に算入されない。
 以上により本件各事業年度の課税所得金額を計算すると、別表8−1から別表8−3まで記載のとおり、審判所認定額は原処分の金額をいずれも下回る。
 したがって、本件法人税各更正処分は、別紙1から別紙3までの「取消額等計算書」のとおり、いずれもその一部を取り消すべきである。
ロ 本件法人税重加算税各賦課決定処分について
 請求人が、本件賃料差額及び本件事務手数料の支出により生じた帳簿上の現金不足を調整するために、名目上、店舗管理料や事務手数料という科目を用いてこれらの金額を損金の額に算入していた事実は、通則法第68条第1項に規定する「事実の隠ぺい又は仮装」に該当する。他方、本件車両取得費は役員給与に該当せず、また、本件車両関連費用については、上記(3)ハ(ハ)のとおり、「事実の隠ぺい又は仮装」に該当しない。したがって、本件法人税重加算税各賦課決定処分については、別紙1から別紙3までの「取消額等計算書」のとおり、いずれもその一部を取り消すべきである。また、その場合、本件法人税各更正処分により納付すべき税額の計算の基礎となった事実のうちに、本件法人税各更正処分前の税額の計算の基礎とされなかったことについて、通則法第65条《過少申告加算税》第4項に規定する正当な理由があるとは認められないから過少申告加算税の賦課決定要件は満たしているというのが相当であり、本件法人税重加算税各賦課決定処分の中で本件車両関連費用に係るもののうち過少申告加算税に相当する額を超える部分については、その一部を取り消すのが相当である。
ハ 本件各納税告知処分について
 上記(3)ハ(ハ)のとおり、当審判所が認定した、G代表に対する役員給与に係る源泉所得税の額は、別表6の「審判所認定額」の「源泉所得税額」欄記載のとおりとなる。また、上記(4)ハのとおり、本件ホステスへ支払われた金員は給与等に該当するから、所得税法第185条の規定に基づき当該金員に係る源泉所得税の額を算出すると、別表7の「審判所認定額」欄記載のとおりとなる。そうすると、本件各納税告知処分に係る源泉所得税の額は、別表9の「審判所認定額」欄記載のとおりとなり、平成20年2月分の源泉所得税の額は原処分の額を下回り、また、その他の月分の源泉所得税の額はいずれも原処分の額を上回る。
 したがって、平成20年2月分の源泉所得税の納税告知処分は、別紙4の「取消額等計算書」のとおり、その一部を取り消すべきである。
ニ 本件不納付加算税各賦課決定処分及び本件源泉所得税重加算税賦課決定処分について
 本件ホステスへの支払を給与等として算出した源泉所得税を法定納付期限までに納付しなかったことについて、通則法第67条第1項ただし書に規定する正当な理由があるとは認められないから、本件ホステスへの支払に係る源泉所得税の不納付加算税各賦課決定処分は、いずれも適法である。
 そして、上記ハのとおり、本件各納税告知処分の一部の取消しに伴い、平成20年2月分の不納付加算税の賦課決定処分及び本件源泉所得税重加算税賦課決定処分は、別紙4の「取消額等計算書」のとおり、いずれもその全部を取り消すべきである。
ホ 本件消費税等各更正処分について
 上記(5)のとおり、本件賃料差額等について消費税の仕入税額控除を適用することはできず、また、その場合の納付すべき税額は原処分の額と同額となるから、本件消費税等各更正処分はいずれも適法である。
ヘ 本件消費税等重加算税各賦課決定処分について
 本件消費税等各更正処分は、上記ホのとおり、いずれも適法であるところ、請求人は当該支出により生じた帳簿上の現金不足を調整するために、店舗管理料や事務手数料という科目を用いてこれらの金額を消費税の仕入税額控除の対象としていたと認めるのが相当であり、当該事実は、通則法第68条第1項に規定する事実を隠ぺいし又は仮装することにより、その隠ぺい又は仮装したところに基づき納税申告書を提出していたときに該当するから、本件消費税等重加算税各賦課決定処分はいずれも適法である。
ト 本件消費税等過少申告加算税各賦課決定処分について
 本件消費税等各更正処分は、上記ホのとおり、いずれも適法であり、これにより納付すべき税額の計算の基礎となった事実が、本件消費税等各更正処分前の税額の計算の基礎とされていなかったことについて、通則法第65条第4項に規定する正当な理由があるとは認められず、同条第1項及び第2項並びに地方税法附則第9条の9《譲渡割に係る延滞税等の計算の特例》第1項の規定に基づいてされた本件消費税等過少申告加算税各賦課決定処分は、いずれも適法である。

(7) 原処分のその他の部分については、請求人は争わず、当審判所に提出された証拠資料等によっても、これを不相当とする理由は認められない。

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