ホーム >> 公表裁決事例集等の紹介 >> 公表裁決事例 >> 平成25年10月〜12月分 >> (平成25年10月15日裁決)>>別紙2
別紙2
当事者の主張
1 争点1 請求人は、人格のない社団等に該当するか否か。原処分庁 | 請求人 |
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請求人は、本件団地建物所有者全員によって構成された団体であるところ、本件規約によれば、請求人の役員は、請求人の総会において、本件団地建物所有者の中から選出された理事で構成され、当該理事の中から請求人の代表者である理事長が1名選任される旨定められている。また、請求人は、管理組合法人として登記されていない。 したがって、請求人は、法人税法第2条第8号に規定する法人として登記されていない代表者の定めのある人格のない社団等に該当する。 |
請求人は、ボランティア団体として本件団地の維持管理を行っているにすぎない。「人格のない社団等」という言葉は一般的に知られている言葉ではなく、原処分庁は周知や指導をしていないのであるから、請求人には、人格のない社団等に該当するか否かの認識がない。 |
原処分庁 | 請求人 |
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次の各理由により、団地共用部分から生ずる収入は、請求人に帰属する。 | 次の各理由により、団地共用部分から生ずる収入は、本件団地建物所有者に帰属する。 |
(1) 請求人は、![]() ![]() ![]() なお、団地共用部分から生ずる利益については、区分所有法第19条にあるように、区分所有者に帰属はするものの、団体的拘束から自由ではなく、区分所有者集会の決議等により団体内においてこれを区分所有者に分配すること並びにその金額及び時期が決定されて初めて、区分所有者に具体的に行使可能な、収益分配請求権が発生すると解するのが相当であると判示されている(東京地方裁判所平成3年5月29日判決)ところ、本件賃貸収入については、本件規約や総会等において、本件団地建物所有者に対する分配方法、分配金額及び分配時期等について何ら定められていない。 |
(1) 本件規約第○条により、共用部分は区分所有者の共有とされているところ、本件規約に別段の定めはないので、区分所有法第19条により、共用部分から生ずる利益は各区分所有者がその持分に応じて収取することになる。 |
(2) 区分所有法第47条第1項は、区分所有者の団体は登記することにより管理組合法人となることができる旨規定しており、当該法人は法人税法上の公益法人等とみなされる(同条第13項)ところ、当該法人はその事務に関し区分所有者を代理する(同条第6項)旨、同法第26条第2項と同様の規定が置かれている。 したがって、同法第26条第2項が、管理者はその職務に関し、区分所有者を代理する旨規定していることをもって、法人税法のらち外と捕らえることには理由がない。 |
(2) 本件においては、全○○戸の本件団地建物所有者が携帯電話会社と個々に契約を行うことは困難であるとの理由により、請求人が代理人として契約を行っているところ、区分所有法第26条第2項により、管理者は、その職務に関し、区分所有者を代理するとされていることから、請求人の行為は本件団地建物所有者の商行為を代理するものとなり、民法第99条《代理行為の要件及び効果》により、代理人たる請求人が行った行為の効果は、直接、本人である本件団地建物所有者に帰属する。 |
(3) 本件賃貸収入は、![]() ![]() |
(3) 本件賃貸収入を本件団地建物所有者に分配し、修繕積立金の上乗せとして徴収する事務手続が煩雑かつ実現不可能であるため、![]() ![]() また、本件規約第31条第5項により、修繕積立金及びその利息は理由のいかんを問わず払い戻さないと定められていること、入退去者が発生するたびに本件賃貸収入に係る修繕積立金会計から退去者への払戻しを行い、新たな入居者にマンションの購入代金の他に修繕積立金を支払わせるなどということは実際には不可能であることから、本件団地建物所有者が資格を喪失したときに、修繕積立金会計を取り崩して本件賃貸収入を返還していない。 さらに、請求人は、独自の判断においてその費用配分を決定することができないことから、本件賃貸収入を修繕積立金会計に積み立てているのであって、本件賃貸収入に係る金員は請求人の資産・資金ではない。 |
原処分庁 | 請求人 |
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(1) 請求人は、携帯電話会社と契約を締結し、携帯電話会社に対して自己の責任と負担において管理している団地共用部分を賃貸して対価を得ていることから、当該行為は収益事業(不動産貸付業)に該当する。 |
(1) 本件規約第○条は、請求人は、次の各号に掲げる業務を行うとして、請求人が管理する土地及び共用部分等の保安、保全保守、清掃、消毒、ごみ処理等(第○号)、請求人管理部分の修繕(第○号)、土地及び共用部分等の変更及び運営(第○号)等を定めているところ、請求人が自己の責任と負担において管理する業務とはこれらをいうのであって、請求人は、事業場を設け、業として不動産貸付を行っているわけではない。 |
(2) 法人税基本通達15−2−5は、収益事業について直接要した費用又は直接生じた損失の額は、収益事業に係る費用又は損失の額として経理し、収益事業と収益事業以外の事業とに共通する費用又は損失の額は、継続的に、資産の使用割合、従業員の従事割合、資産の帳簿価額の比、収入金額の比その他当該費用又は損失の性質に応ずる合理的な基準により収益事業と収益事業以外の事業とに配賦し、これに基づいて経理する旨定めているところ、請求人は、費用又は損失について経理を区分して行っていないこと、また、請求人が収益事業と収益事業以外の事業に共通する費用として主張する修繕費は、本件団地の塔屋を賃貸するか否かにかかわらず要する費用であり、携帯電話会社に対して塔屋の一部を賃貸したことにより発生した修繕費とは認められないことから、収益事業に要する費用とは認められない。 |
(2) 仮に、本件団地の共用部分の賃貸が収益事業に該当し、本件賃貸収入に法人税が課されるとしても、その収入は団地共用部分の修理・修復に充てることを総会において決定しているので、修繕積立金会計から支出した修繕費の一部の損金算入を認めるべきである。すなわち、修繕積立金会計から支出した修繕費は、団地共用部分の維持管理のために必要な費用であるから、その全額が収益事業と収益事業以外の事業に共通する費用であり、本件各事業年度において修繕費として支出した金額に、修繕積立金収入のうち本件賃貸収入の占める割合を乗じて算出した金額が、損金の額に算入される金額となる。 このように、本件賃貸収入を修繕積立金会計に積み立て、団地共用部分の修理・修復に充てたことにより、本件団地建物所有者が納入すべき修繕積立金の増額を回避することができたというべきである。 |