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仕入税額控除の調整
- 仕入税額控除
- 貸倒れの場合の税額控除(1件)
- 仕入税額控除の調整(1件)
金地金が消費税法第36条第5項に規定する「棚卸資産」に該当するとした事例(令和3年3月1日から令和4年2月28日までの課税期間の消費税及び地方消費税の更正処分並びに過少申告加算税の賦課決定処分・棄却)
《ポイント》
本事例は、金地金の売買が請求人の事業目的から離れたところで行われたものとはいえず、請求人が当該金地金を取得した時点においてこれを売却する方針を有していたことから、当該金地金は消費税法第36条第5項に規定する「棚卸資産」に該当すると判断したものである。
《要旨》
請求人は、金地金の売買を反復継続して行うものではないから、金地金の売買が請求人の営業に当たることはなく、請求人が消費税を納める義務が免除されることとなった課税期間の初日の前日において保有していた金地金(本件金地金)は消費税法第36条《納税義務の免除を受けないこととなった場合等の棚卸資産に係る消費税額の調整》第5項に規定する「棚卸資産」に該当しない旨主張する。
しかしながら、消費税法第36条第5項に規定する「棚卸資産」に該当するか否かについては、会計処理のみにより形式的に判断するのではなく、判断の対象とされている資産と事業者の属性及び事業目的との関係、当該資産の取得時の使用・収益・処分に係る方針等といった客観的な事実に基づき、事業者が、通常の営業過程、すなわち、その事業目的に係る業務の過程において売却することを目的として保有する資産に当たるといえるかどうかにより実質的に判断するのが相当である。そして、請求人が行う金地金の売買に係る取引額が、いずれも、請求人の事業規模に照らして大きなものである等、請求人の事業に及ぼす影響が大きいことからすると、請求人における金地金の売買は、補助ないし付随的な活動とはいえず、定款に明示的に掲げられた事業目的そのものではないとしても、事業目的から離れたところで行われているものとはいえないから、本件金地金は、請求人の事業目的に係る取引の客体にほかならないと認められる。また、本件金地金の取得から売却に至る経緯及び本件金地金を取得するための借入金を返済するためには本件金地金を売却する必要があったこと等からすると、請求人は、本件金地金を取得した時点において、将来、これを売却する方針を有していたと認められる。これらの事実に基づけば、請求人は、その事業目的に係る業務の過程において売却することを目的として本件金地金を保有していたものと認められるから、本件金地金は消費税法第36条第5項に規定する「棚卸資産」に該当する。
《参照条文等》
消費税法第2条第1項第15号、第36条第5項
消費税法施行令第4条