審理関係手続以外の業務について

横溝 昇

 他の審判官の方が審理関係手続に関するコラムを多く書かれているので、私からは、審理関係手続以外にどのような業務を行っているのかについて三点お話ししたいと思います(あくまで私が勤務する支部での業務を前提にお話ししますので、支部によって事務の分担が異なるところがあるかもしれません。)。
 一つ目は、裁決書について情報公開法に基づく開示請求があった場合に、開示・不開示の検討、具体的にはマスキングする箇所について検討をしています。裁決書には審査請求人等に関する情報が記載されていることから、審査請求人等の権利利益を害すること等がないよう、情報公開法及び審査基準に基づいてマスキングする箇所を検討していきますので、裁決書の一言一句を確認することとなります。また、情報公開法上、開示請求のあった日から原則30日以内に開示・不開示の決定をしなければならないことから、分量の多い裁決書となるとなかなか大変な作業になります。ですが、逆に自分の担当していない事件の裁決書に目を通す機会にもなりますので、判断や言い回しなど勉強にもなる業務です。
 二つ目は、部内の研修の講師です。私が勤務する支部では、支部全体あるいは所属部内で定期的に審判官等が講師となって研修が行われています。私は、弁護士時代に個人情報保護法を扱っていたこともあり、個人情報保護法・情報公開法・国税通則法97条の3による証拠書類の閲覧等の3つの手続の違いを題材にして研修を行いましたが、同僚の税理士出身の審判官は税制改正を、弁護士出身の審判官は訴訟手続との違いなどを題材に研修をしていました。自分の経験や知見を還元できる機会にもなっています。
 三つ目は、部外での講演です。主に税理士会・公認会計士協会等の関係団体、大学などの教育機関等で行いました。主として、国税不服審査制度や任期付公務員制度の紹介などを目的としていますが、税理士会・公認会計士協会では、審判官は審判所ホームページ上に掲載された公表裁決事例の紹介もしています。自分が全く関与していない裁決事例の説明をするのは簡単ではありませんが、先例性等があるとして公表されている裁決事例を読み、理解する貴重な機会となっています。また、こういった講演には、支部所長又は部長審判官と出向きますので、支部の幹部と一対一でいろいろな話をする中で、貴重な話を聞くことができただけでなく、私の勤務する支部は管内がとても広く、新幹線・特急やローカル線を利用することもあり、遠方の様々な風景、町並みを見ることができ、大いに見聞を広めることができました。もっとも、温泉街のホテルで開かれている会合での講演は、温泉の匂いだけを嗅いで帰ることになりますが・・・。
 任期付公務員の審判官としての業務のイメージが少しでもつかめていただけたら幸いです。

○ 本コラムは、すべて本テーマに関する執筆者個人の感想や視点に基づいて書かれたものであることをお断りしておきます。

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