審判所での1年を振り返って

ペンネーム:ガネーシャ

 私は、昨年の7月に、国税審判官に就任しました。この機会に、審判所での1年間を振り返ってみたいと思います。

 新任の審判官は、着任後すぐに、埼玉県和光市にある税務大学校において、新任者研修を受けます。新任者研修では、5日間、審判所の使命・役割、審理手続、事実認定や税法の解釈、議決書・裁決書の起案など、審判所における業務の基本を集中して学びます。私は、税務の経験が浅かったこともあり、着任時には不安を感じていた部分もあったのですが、充実した研修制度のお陰で、円滑に審判官の業務を開始することができました。

 とはいえ、1年を振り返ってみると、日々の審判官としての業務は勉強の連続でした。
 支部によって状況が異なるとは思いますが、私が配属された支部では、所得税、法人税、消費税、相続税など幅広い税目の事件を扱いますし、徴収事件なども担当します。担当審判官又は参加審判官として関与する事件ごとに、自身で関係する法令、基本書、判例等を確認するのですが、分からないこともあるため、そのような場合には、その都度、同僚の皆さんに遠慮なく質問をしながら、業務を行っています。また、審査請求手続は、訴訟手続と類似している部分は多いものの、異なる点も数多くあり、特に、職権調査の範囲・深度や証拠の閲覧等の請求におけるマスキングなどについては、裁判手続との違いに戸惑いを感じることもあります。
 まだまだ、学ばなければならないことばかりですが、1年を経過して、大分審判所の組織や業務にも慣れ、肩の力を抜いて業務に当たることができるようになってきたように思います。

 また、業務とは少し離れますが、私の配属されている支部は日本酒がおいしいことで全国的にも有名な地域ですので、懇親会などでは管内各地域のお勧めの日本酒を飲むことができます。美酒を味わいながら、審判所の職員の方々と、業務以外のお話をしている時間(例えば、酒税を担当していた方にお酒の見分け方を教えてもらったり)も、個人的にはとても楽しい時間で、好きなお酒も進みます。でも、ご安心ください。審判所の懇親会は、夜遅くスタートするのが常であった弁護士時代と比べて、開始時間も終了時間も早く、極めて健康的です。

 審判所には、国税職員、裁判官、弁護士、公認会計士、税理士など、様々なバックグラウンドを持つ職員が、それぞれの知識や経験を共有し、異なる視点から意見を交換することができる環境があります。そのような恵まれた環境をフルに活かしながら、2年目もより成長できるように、頑張りたいと思います。

○ 本コラムは、すべて本テーマに関する執筆者個人の感想や視点に基づいて書かれたものであることをお断りしておきます。

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