審判所における勤務で印象に残っていること

秋葉 一行

 弁護士から任期付審判官に就任して大過なく3年弱が経過し、予定では今年の7月で任期が満了します。そこで、この機会に、審判所における勤務で印象に残っていることをいくつかご紹介したいと思います。なお、私が在籍する支部以外の支部では異なる部分もあるかもしれませんので、その点はご了承ください。

1 多様なバックグラウンドを持った職員と様々な話ができたこと

私が在籍する支部には、国税庁出身の職員、裁判官や裁判所書記官出身の職員、同じ任期付審判官である弁護士、公認会計士、税理士出身の職員といった、多様なバックグラウンドを持った職員がおり、そのような職員と幅広く様々な話ができたことが、審判所における勤務で一番印象に残っています。
 特に、国税庁出身の職員から、実務における現場の話や経験値からくる相場観といった、一般に弁護士業務をしているだけではなかなか聞くことができない色々な話に触れることができたことは、今後、租税案件に携わっていきたいと考えている私には貴重な経験になりましたし、裁判官出身の職員と事件についてざっくばらんに意見交換できたことは、裁判官のものの見方や考え方についての理解を深める良い機会になりました。

2 1年以内処理を目指して事件の進行管理に気を配ったこと

審判所は、審査請求から1年以内に裁決すること(1年以内処理)を目標としているのですが、私に配付される事件は、私が元来の引きの良さを発揮した結果、複雑かつ困難なものが多く、調査審理及び議決書の質を確保しつつ1年以内処理を行うために、事件の進行管理にはかなり気を遣いました。しかし、緻密なスケジューリングが上手くいき、無事1年以内処理が達成できたときには、大きな達成感と満足感を得ることができましたので、議決書作成もさることながら事件の進行管理に大いに悩んだ日々も、今となっては良い思い出です。

3 支部一丸となって議決書を作成したこと

審判所では、担当審判官の起案した議決書案がそのまま議決書となることはなく、これをたたき台に合議体メンバーが様々な意見を出し合い、必要に応じ法規・審査部門の担当者から助言をもらい更に検討を加えるなどして、議決書案はどんどん形を変えていきます。
 時には、当初の議決書案と最終的な議決書が別物のようになってしまうこともあるのですが、このように支部全体で知恵を出し合うことで、自分一人では思い至らなかった視点や見落としていた部分に気付かされることもありますし、今後、より多面的なものの見方ができるようになるというメリットもあると思います。

4 ワークライフバランスが素晴らしいこと

既に多くの任期付審判官の方がコラムで書かれていることですが、審判所のワークライフバランスは、素晴らしい!の一言に尽きます。
 私自身についてみても、上記のとおり、計画的な進行管理を確実に行った結果、@記憶の限り一度も残業をしたことがない、A会計士試験合格者に係る補習所研修を受講するための有休を気兼ねなく取得できる、B子供の看病が必要になった時、基本的には子の看護休暇を取得してすぐに帰れるといった、仕事と家庭を両立できる環境で勤務させていただいています。

 以上、審判所における勤務で印象に残っていることをいくつか紹介させていただきました。このコラムを読まれた方に、国税審判官の業務に少しでも興味や関心を持っていただけたとしたら、執筆者としてうれしい限りです。

○ 本コラムは、すべて本テーマに関する執筆者個人の感想や視点に基づいて書かれたものであることをお断りしておきます。

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