「支所での勤務について」

堀田 善之

 私は、弁護士として7年半の間、法律事務所に勤務した後、国税審判官として採用されました。現在は、関西の支所で勤務して2年目になります。
 これまでの国税審判官(特定任期付職員)のコラムの中で、審判所における調査・審理やワークライフバランスについては、多くの方が触れられているので、今回は支所での勤務についてお話したいと思います。なお、「支所」というのは、東京(霞が関)に国税不服審判所の本部があり、各主要都市に支部(全国12か所)、その支部の中に支所(全国7か所)があるという位置付けになります。

 私が勤務する支所は、古くからの港町のある地域で、早くから西洋文化が取り入れられてきたことから、異国情緒あふれる街にあります。また、北は山に面し、南は海に面しており、山から海を見下ろす風景がとても美しい地域です。
 昔は劇場がたくさんあったようですが、今では数が少なくなってしまったようです。私が着任したての頃、落語の寄席が復活したとのことで、審判所の同僚の方々と一緒に行きました。勤務時間終了後、寄席の開演までには時間があったので、支所の近くの居酒屋で1杯やってから準備万端で臨みました。私は、今まで落語の寄席を見たことがなかったので、間近で落語家さんの演目を見ることができて、腹がよじれるほど笑い、オチには「なるほど!」と思いました。
 ほぼ落語の感想のようになってしまいましたが、毎年、レクリエーションが企画されているので、楽しみにしています。支所では、本所(支所から見た支部のこと)に比べて人数が少ないので、職員同士の距離が近く、和気藹々と日々仕事をしています。

 また、私が勤務する支所で扱う事件としては、主に個人の所得税や相続税が問題となることが多く、法人税に関する事件はどちらかというと少ない印象です。なお、地方だから事件数が少ないかというと、意外とそのようなこともなく、事件数も一定数あり、この一年間で所得税、相続税については、とても勉強になりました。
 支所に特徴的な事件としては、港町があることから、海外との取引が問題となることもあり、普段では使わないような消費税法の条文や関税法が問題となることもあり、支所ならではだと思います。

 以上、簡潔ではありますが、地方の支所で勤務する魅力が少しでも伝われば幸いです。弁護士にとって、国税審判官の業務は、日々の事件処理の中で税法に詳しくなれるという意味で大変魅力あるものだと思います。弁護士の幅を広げるチャンスだと思いますので、興味を持たれた方は応募されてみてはいかがでしょうか。その際には、是非、今まで行かれたことのない支部・支所での勤務もご検討ください。

○ 本コラムは、すべてテーマに関る執筆者個人の感想や視点に基づいて書かれたものであることをお断りしておきます。
 なお、本コラムは令和元年8月に執筆されたものです。

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