「任期付審判官の経験から得られるもの」

林 邦匡

 任期付審判官という未知の仕事に飛び込んで今年で3年目。着任前に感じていた不安もすっかり消えて、今は日々、多くの得難いものを吸収しながら業務に取り組んでいます。このコラムでは「任期付審判官の経験から得られるもの」をテーマに、私が今まさに任期付審判官の仕事を通じて得られているものについてお伝えしていこうと思います。

① 様々な分野のプロフェッショナルと仕事ができる

裁判官、検察官、国税庁キャリア、特定税目専門の国税出身の職員、弁護士、会計士、税理士など、それぞれにとても濃い経歴を持った職員と一緒に仕事ができます。各分野のプロフェッショナルの見地からの指摘や助言は、どれも目から鱗のものばかりで、日々が発見の連続です。

② 法的思考力が鍛えられる

調査・審理において必要な証拠を収集し、そして、それらの証拠をどのように評価して事件の判断に必要な事実を認定していくかなど、生きた法律業務の経験が積めることも魅力です。通常の税理士業務ではできなかった経験ではないでしょうか。特に法曹出身の職員からの指摘や助言により、法的思考力が鍛えられるのを実感しています。

③ 判断が難しい事例の経験を積める

審査請求の調査・審理を通じて、判断が分かれそうな微妙なケースに数多く携われる経験も貴重です。参考になりそうな裁判例や裁決事例はもちろん、そのほかにも考え得るあらゆる情報を収集して詳細に検討します。「そんなところまで?」と思うほど掘り下げていく経験を通じ、税法に対する理解が更に深まり、悩ましい事案に対する判断力を養うことができています。

 以上3つを挙げてみましたが、実はこのほかにも楽しいと感じることがあります。それは、職場での日常会話や業務時間外でのコミュニケーションです。今の職場は様々な経歴の職員が集まっていることもあって意見の多様性が尊重されており、誰かが議論を始めると自然にその周りに人が集まって自由闊達に意見を出し合うなど、とても風通しが良い職場です。それぞれに飛び抜けて濃密なキャリアを積んできた職員と肩の力を抜いて交わす会話は、例えばこれまでのキャリアの経験談など、思わず「へえ〜」と唸るような驚きや発見ばかりです。

 このように得るものが多い任期付審判官ですが、その経験者の数は、その採用が始まった頃から数えても、弁護士、会計士及び税理士などといった士業全体の中でもほんの一握りです。この経験は士業としてこれからも歩む人生において大きな強みとなり、様々な場面で自分を助けてくれるものと確信しています。

 皆さまのこれからの人生にとっても、きっとそれぞれに魅力を見つけていただけるのが任期付審判官の仕事だと思います。ご興味を持たれた方は、是非前向きに検討されてみてはいかがでしょうか。

○ 本コラムは、全てテーマに関する執筆者個人の感想や視点に基づいて書かれたものであることをお断りしておきます。

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