「地方都市と都市部の審判所について」

奥田 晋介

 私は地方都市の審判所で2年間、都市部の審判所で2年間、国税審判官として業務を行ってきましたので、地方都市と都市部の審判所の違いについて自分が感じた点を述べていきたいと思います。審判所の仕事に興味を持っておられる方の今後の参考にしてもらえればと思います。
 まず、地方都市の審判所についてですが、法人税や所得税、相続税など、一通りの税目の審査請求事件を経験できるという点や小規模かつ少人数のため、みんなで協力して1つの審査請求事件について、結論を導いていくという点、請求人面談などで宿泊を伴う出張の機会がある点などが仕事をする上での特色だと思います。また、仕事以外の面においては、自転車や徒歩で通勤することができるなど、通勤に伴う負担は少なく、小規模・少人数ということもあり、職員同士の距離が近く、自宅で収穫した野菜や果物をもらったり、休みの日に職員同士で観光名所へ行ったりすることなどもありました。
 一方、都市部の審判所についてですが、一度は名前を聞いたことのある大企業関係の審査請求事件があり、そういった事件に関わることができる可能性もあるという点は都市部の審判所の大きな特色だと思います。また、都市部の審判所では国際課税の担当など、ある程度、審査請求事件の内容に応じて担当分けされているので、専門的な分野について複数の審査請求事件を経験できるという点も仕事をする上での特色だと思います。その他に、任期付審判官も複数名いるので、任期付審判官同士のつながりができることや任期付審判官の勉強会などもあるので、自己研鑽の機会は多く、自らの専門能力をしっかりと向上させることができると思います。
 これらの点を踏まえると、将来的に個人で事務所を開業してやっていきたいと考えている人や出張が苦にならない人、都会に疲れたといった人にとっては、地方都市の審判所で業務経験を積んでいく方が適しているのではないかと思います。一方、都市部の審判所でしか経験できないことを経験してみたいと考えている人や専門的な分野を究めていきたいと考えている人にとっては、都市部の審判所で業務経験を積んでいく方がメリットがあるのではないかと思います。
 本コラムにより、地方都市と都市部の審判所それぞれの特色が少しでも伝わり、審判所の仕事に興味をお持ちの方の参考になれば幸いです。

○ 本コラムは、全てテーマに関する執筆者個人の感想や視点に基づいて書かれたものであることをお断りしておきます。

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