ホーム >> 国税審判官(特定任期付職員)に関する情報 >> 国税審判官(特定任期付職員)のコラム >> 第43回(令和6年11月掲載)
「審判所における合議について」
垣内 大河
本コラムでは、審判所で行われている合議について職場の雰囲気を交えてお話したいと思います。というのも、着任する前から合議体で一つの議決書を作成することは理解していたものの、様々なバックグラウンドを持つ職員とどのように合議を進めていくのか不安に感じていました。もし応募を検討されている方で同じような不安を持っておられましたら、本コラムでその不安が少しでも解消されれば幸いです。
さて、合議と言ってもその内容は簡単な相談レベルのものから事件処理の方向性、議決書案の具体的な記載内容など多岐に渡ります。また、合議の参加者も合議体だけでなく、複雑困難な事件では裁判所から出向されている裁判官出身の職員など、様々な職員がオブザーバーとして参加することもあり、その態様は様々です。ただ、今回は、職場の雰囲気も含めてお伝えしたいので、審理において中心となる合議体や審判部(合議体の構成員らが所属している部署)で行われる広い意味での合議についてお話させていただこうと思います。
まず、私が所属している審判部の雰囲気について、これは審判所全体を通してだと思いますが、合議に当たり、議論の前提として、他者の意見を聞こうという素地があります。また、議論は乗り降り自由であり、意見はいつ、どのような内容に変えてもよいとされています。そのため、年齢や立場に関係なく誰のどのような意見であっても検討の対象とする雰囲気が醸成されています。また、審判部の部屋にはパーテーション等はありませんので、周りの職員がどういった話をしているかは聞こえてきますから、合議体のメンバーでなくても興味や意見のある職員が集まってきて自然発生的に議論が始まることもあります。このように私が所属する審判部では誰でも意見を言いやすく議論がしやすい環境作りがされています。
では、実際の合議ですが、私が所属している支部は、各税目出身の国税職員に加え、公認会計士や税理士出身の任期付審判官がいる比較的大きな支部ですので、各人の得意分野に基づき多角的な視点から意見が交わされます。的確な意見をもらえることは他のコラムでも書かれているとおりですが、国税や公認会計士、税理士出身の職員は特に数字に強く、会計的な視点からの事実認定についての意見など非常に参考になります。他方、弁護士は、私法の知識のほか実務経験から主張や証拠を法的に整理し法律文書として表現することに長けていますから、議決書の作成に向けて意見を述べるとともに、意見を求められる場面が多くあります。
また、当然、議決書の作成に当たっては意見が対立する場合もあります。その場合には、議決書案への修文や口頭によりお互い議論を尽くして結論を出すことになりますが、その議論の過程で議決書がブラッシュアップされていくことは合議の醍醐味といえます。また、全員が納得する結論が出なくとも合議体として一つの結論を出さなければならないのは合議の難しいところです。
ここまでとりとめもなくお話してきましたが、審判所は多様な知識や経験を持つ職員と気軽に議論ができる環境であり、弁護士として培った能力も議論を通じて大いに発揮できる職場ですので、任期付審判官として合議を大いに楽しんでいただければと思います。
○ 本コラムは、全てテーマに関する執筆者個人の感想や視点に基づいて書かれたものであることをお断りしておきます。