ホーム >> 国税審判官(特定任期付職員)に関する情報 >> 国税審判官(特定任期付職員)のコラム >> 第45回(令和7年8月掲載)
「退官後に活かせるスキル」
永原 明
本コラムでは、退官後に活かせるスキルについて、私自身の経験や他の任期付審判官の声も踏まえながら整理してみたいと思います。このテーマを選んだきっかけは、自らの退官が近づく中で今後の進路や働き方を考える機会が増えてきたこと、また、周囲の任期付審判官からも退官後の進路に関する不安の声を聞くことがあったことです。本コラムが、今後応募を検討されている方に少しでも関心を持っていただくきっかけになればと思い、筆を執った次第です。
なお、私は弁護士出身であるため、本コラムは特に弁護士の方を想定して作成していますが、他の職種の方にも参考となる部分があれば幸いです。また、私が所属する支部での経験を基にしているため、必ずしも他支部で勤務する場合に当てはまるわけではないことをご承知おきください。
以下では、@租税に関する知見、Aその他の周辺分野に関する知見、Bソフトスキルの3つに分けてご紹介します。
@租税に関する知見
租税法や租税実務に関する知見は、審判所での業務に不可欠です。仮に、応募時点では税務の実務経験がなかったとしても、審判所では、国税職員や他の任期付審判官、裁判所等からの出向者といった豊富な経験を持つメンバーと議論を重ねる中で、着実に知見を深めることができます。そして、何よりも、自分の担当事件について「誰よりも詳しくなる」という気概を持って取り組むことで、税務に関する理解が一層深まり、大きな成長につながります。
Aその他の周辺分野に関する知見
審査請求には、会計、金融、知的財産、不動産、ITなど多様な分野が関わるものや、ときには外国法が関係するものもあります。
実際の事件を通して、こうした背景知識を身につけることができるのはもちろんですが、時間外にそれぞれの専門分野や語学の自己学習に取り組むことができるのも、ワークライフバランスに優れた審判所の良さだと思います。
Bソフトスキル
審判官の職務には、合議体での議論を主導し、メンバーの意見をまとめた上で、他部門とも調整するなど、リーダーシップを発揮する機会が多くあります。その前提には、円滑なコミュニケーション力と適切に状況を伝えるためのプレゼンテーション能力が不可欠です。このような業務を適切かつ迅速に進めることで、自然とプロジェクトマネジメント能力も身についていきます。
文字数の関係上、ここまでとさせていただきますが、このように、任期付審判官として勤務することで、多様なスキルの習得につながります。
これまでの任期付審判官の進路をみても、退官後に独立開業されたり、大手ファームで勤務するなど、目覚ましい活躍をされている方が数多くいらっしゃいます。長いキャリアのうちの一時期を任期付審判官として過ごすことが、ご自身のキャリアに新たな視点や強みをもたらすきっかけになるかもしれません。ぜひその可能性を前向きに捉えて、ご自身の将来を考える材料としていただければ幸いです。
○ 本コラムは、全てテーマに関する執筆者個人の感想や視点に基づいて書かれたものであることをお断りしておきます。