ホーム >> 国税審判官(特定任期付職員)に関する情報 >> 国税審判官(特定任期付職員)のコラム >> 第50回(令和7年10月掲載)
「国税審判官経験の強みとは―任期中に感じること―」
濱ア 高
私が国税審判官(特定任期付職員)の募集を知り、興味を持って応募を検討し始めたのは数年前のことですが、当時の気持ちはよく覚えています。税理士としての実務経験を経て、現在は国税不服審判所において審判官業務に従事しています。
本コラムでは、国税審判官としての経験が、将来再び税理士業務に携わる際にどのような強みや付加価値として活かされるのかを、任期中の今、実感していることを踏まえてご紹介します。
<各事案に対する丁寧な向き合い方>
税理士業務においては、毎月の巡回監査や決算業務、年末調整や確定申告といった一連の業務が一定のサイクルで進み、関与先対応も比較的ルーティン化されがちでした。これに対して、審判所における審理業務では、事案ごとに綿密に事実関係を調査・整理し、法的論点を精査したうえで結論を導きます。
このような審理業務の丁寧な向き合い方は、将来的に税理士として業務に復帰した際にも、より高い質のサービスを提供するうえでの基盤になると感じています。
このような審理業務の丁寧な向き合い方は、将来的に税理士として業務に復帰した際にも、より高い質のサービスを提供するうえでの基盤になると感じています。
<合議による多角的な視点の習得>
審判所における審理の過程は、3名からなる合議体が中心ですが、合議体に捉われず、国税・司法・他士業(弁護士、公認会計士など)といった多様なバックグラウンドを持つ職員と日常的に議論を重ねながら進めるプロセスは、極めて実りの多い経験です。
一見些細に思える点でも率直に議論できる環境は、独りよがりな考えに陥ることを防ぎ、物事を多面的に捉える力を養ってくれます。このような議論を通じて培われた視野は、今後の実務においても大いに役立つものと実感しています。
一見些細に思える点でも率直に議論できる環境は、独りよがりな考えに陥ることを防ぎ、物事を多面的に捉える力を養ってくれます。このような議論を通じて培われた視野は、今後の実務においても大いに役立つものと実感しています。
<文書作成能力の向上>
審判所では、議決書という重要な公文書を作成します。そこでは、基礎事実や認定事実を的確に把握・整理し、明快かつ説得力のある論理構成をもって判断を示す必要があります。文章構成や記述の分かりやすさを日々意識しながら業務に取り組むことで、自然と文書作成能力が磨かれていることを感じます。
加えて、他者が作成した文書に対するフィードバックや校正を行う機会も多く、論理性と表現力の両面で成長できる環境です。
加えて、他者が作成した文書に対するフィードバックや校正を行う機会も多く、論理性と表現力の両面で成長できる環境です。
<研修講師としての発信経験>
在任中、過去の税理士業務で得た知見をもとに、国税不服審判所の職員向けに研修講師を務める機会がありました。日々の業務で当たり前のように取り組んできた内容を、改めて整理して説明する際に、自分自身の理解も深まりました。
研修後に寄せられたアンケートでは、「有益な講義であった」「非常に参考になった」との感想をいただき、私自身にとっても大きな励みになりました。自らの経験や知識が誰かの役に立つことを実感でき、今後の業務への意欲にもつながっています。
研修後に寄せられたアンケートでは、「有益な講義であった」「非常に参考になった」との感想をいただき、私自身にとっても大きな励みになりました。自らの経験や知識が誰かの役に立つことを実感でき、今後の業務への意欲にもつながっています。
<おわりに>
これまで私は、税務申告や税務調査の対応など、納税者側の代理人としての立場で業務に携わってきました。現在は、公正中立な立場から課税処分の当否を判断する審判官として業務を行う中で、原処分庁(国税局・税務署など)の考え方や内部の判断過程にも理解を深める貴重な機会となっています。
このような経験は、税理士としての視野を一段と広げ、将来の業務における説得力と信頼性を高める大きな財産になると感じています。国税審判官の職務は、専門家としてのステップアップを目指す方にとって、極めて有意義な経験になると信じています。本コラムが、応募を検討される皆様にとって少しでもお役に立てれば幸いです。
このような経験は、税理士としての視野を一段と広げ、将来の業務における説得力と信頼性を高める大きな財産になると感じています。国税審判官の職務は、専門家としてのステップアップを目指す方にとって、極めて有意義な経験になると信じています。本コラムが、応募を検討される皆様にとって少しでもお役に立てれば幸いです。
○ 本コラムは、全てテーマに関する執筆者個人の感想や視点に基づいて書かれたものであることをお断りしておきます。