(平成27年10月30日裁決)

《裁決書(抄)》

1 事実

(1)事案の概要

本件は、Uに日本国内の企業において研修及び技能実習を行わせる事業に係る業務の遂行ないし労務の提供を行っていた審査請求人(以下「請求人」という。)の所得税並びに消費税及び地方消費税(以下「消費税等」という。)について、請求人が原処分庁の調査を受けて、所得税については法定申告期限後に確定申告書を提出するなどし、消費税等については確定申告書を提出していなかったところ、原処分庁が、その後の調査により、請求人は所得区分や収入金額に係る事実を隠ぺい又は仮装し、その隠ぺい又は仮装したところに基づき確定申告書を提出し又は提出していなかったとして、所得税の更正処分並びに消費税等の決定処分を行うとともに、重加算税等の賦課決定処分を行ったのに対し、これを不服とする請求人が、その処分の全部の取消しを求めた事案である。

(2)審査請求に係る経緯

イ 所得税について

審査請求(平成26年8月1日請求)に至る経緯は、別表1のとおりである。
 なお、平成18年分、平成19年分、平成20年分、平成21年分、平成22年分、平成23年分及び平成24年分を併せて「本件各年分」といい、本件各年分の所得税の各更正処分及び重加算税の各賦課決定処分(平成22年分、平成23年分及び平成24年分については、平成26年7月1日付でされた異議決定によりいずれもその一部が取り消された後のもの)をそれぞれ「本件所得税各更正処分」及び「本件所得税重加算税各賦課決定処分」という。

ロ 消費税等について

審査請求(平成26年8月1日請求)に至る経緯は、別表2のとおりである。
 なお、平成20年1月1日から平成20年12月31日まで、平成21年1月1日から平成21年12月31日まで、平成22年1月1日から平成22年12月31日まで、平成23年1月1日から平成23年12月31日まで及び平成24年1月1日から平成24年12月31日までの各課税期間を順次、「平成20年課税期間」、「平成21年課税期間」、「平成22年課税期間」、「平成23年課税期間」及び「平成24年課税期間」といい、これらの各課税期間を併せて「本件各課税期間」という。
 また、本件各課税期間の消費税等の各決定処分を「本件消費税等各決定処分」、平成20年課税期間、平成21年課税期間及び平成22年課税期間の消費税等に係る無申告加算税の各賦課決定処分を「本件消費税等無申告加算税各賦課決定処分」、平成23年課税期間及び平成24年課税期間の消費税等に係る重加算税の各賦課決定処分を「本件消費税等重加算税各賦課決定処分」という。

(3) 関係法令等

関係法令等の要旨は、別紙4のとおりである。

(4)基礎事実

以下の事実は、請求人と原処分庁との間に争いがなく、当審判所の調査の結果によってもその事実が認められる。

イ Uの研修及び技能実習に係る事業の概要

(イ) Uの研修及び技能実習(以下「実習等」という。)に係る事業(以下「実習等事業」という。)は、外国人研修・技能実習制度に基づき、Uの研修生又は技能実習生(以下「実習生等」という。)に、最長3年の期間において、実習等を実施する日本国内の企業等(以下「受入企業」という。)との雇用関係の下で、日本の産業が有する技能、技術又は知識を修得させることにより、V国に技能、技術又は知識の移転を図ることなどを目的として実施されている。

(ロ) 実習生等は、V国の機関(以下「送出し機関」という。)によりV国から日本に送り出され、これを受け入れる日本の団体(以下「監理団体」という。)において一定の講習などを受けた後に、受入企業に派遣される。

ロ 本件における送出し機関及び監理団体

本件における送出し機関は、K社(代表者はbである。)であり、監理団体は、L協同組合(以下「L」という。)及び協同組合M(以下、「M」といい、Lと併せて「本件各組合」という。)である。

ハ 実習等事業に関するK社と本件各組合との協定

(イ) 実習等事業に関して、K社とLとの間では、平成24年○月○日付の「外国人技能実習事業に関する協定書」(以下「L協定書」という。)が作成され、また、K社とMとの間では、平成23年○月○日付の「外国人技能実習事業に関する協定書」(以下、「M協定書」といい、「L協定書」と併せて「本件各協定書」という。)が作成された。
 なお、K社と本件各組合との間では、取引が開始された平成○年に本件各協定書と同様の内容の協定書が作成されて以降、本件各組合の代表理事の変更の都度更新され、本件各協定書に至っている。

(ロ) 本件各協定書には、K社及び本件各組合の業務並びにK社において発生する費用(以下「送出し管理費」という。)について、要旨次のとおり記載されている。

A K社は、実習生等の候補者の募集、受付及び選抜、当該候補者への実習等事業の説明及び相談への対応、日本滞在等に関するV国での法的手続、事前健康診断、日本語学習などの事前講習等のほか、実習等事業の円滑な推進に必要な業務などの役割と義務を負う。

B 本件各組合は、受入企業の募集及び受付、受入企業への実習等事業の説明及び相談への対応、実習生等の日本在留等に関する法的手続、実習等計画の策定、実習等実施の管理・指導等のほか、実習等事業の円滑な推進に必要な業務などの義務を負う。

C 送出し管理費の負担については、K社及び本件各組合間で協議し、本件各組合が負担することとした場合には、双方で相当と認めた金額を本件各組合からK社に送金する。なお、本件各組合が負担する送出し管理費は、その内訳をK社から本件各組合へ別途通知することとし、専用口座を設置して取り扱う。

ニ 請求人の業務等

請求人は、実習等事業に関して、本件各組合がK社に支払うこととされている送出し管理費の請求及び受領並びに実習生等の通訳、悩み相談及びトラブル対応等のほか、実習生等の選定のための面談等の業務の遂行ないし労務の提供(以下「本件業務等」という。)を行っていた。
 また、請求人は、請求人が所有する貸家を実習生等の宿舎用として受入企業に貸し付けていた。

ホ 送出し管理費の請求及び受領等

(イ) 請求人は、本件各年分を通じて毎月、K社名義で請求人の押印のある請求書(以下「本件各請求書」という。)を作成・発行する方法により、本件各組合がK社に支払うこととされている送出し管理費を本件各組合に請求していた(以下、本件各請求書による送出し管理費の請求額を「本件請求額」という。)。

(ロ) 請求人は、本件請求額を、x1信用金庫(旧x2信用金庫)○○支店の「K社a(請求人)」名義の預金口座(以下「本件K社肩書口座」という。)及びx1信用金庫○○支店の「P社a(請求人)」名義の預金口座(以下、「本件P社肩書口座」といい、本件K社肩書口座と併せて「本件各口座」という。)に振込入金させる方法により受領していた。
 なお、本件P社肩書口座の口座名義に肩書として付されたP社は、本件各組合がK社と取引する以前に実習等事業に係る取引をしていた送出し機関であり、請求人は、P社と本件各組合との取引においても、本件業務等と同様の業務を行っていたことから、その際の送出し管理費の入金口座として使用していた本件P社肩書口座を引き続き使用していたものである。

(ハ) 本件K社肩書口座には、本件請求額の振込入金のほかに受入企業からの家賃収入も振込入金されていた。

(ニ) 請求人は、本件各口座に振込入金された本件請求額及び家賃収入について、端数を除いたほぼ全額を、おおむね入金の同月中に現金で引き出していた。
 なお、上記の請求人が本件各口座から引き出した現金については、僅かに別の請求人名義の口座(請求人の自宅や貸家に係る公共料金等が引き落とされている口座)への入金が認められるものの、それ以外の大部分については保管先や使途先を確認できる資料は存在しない。

ヘ 請求人が原処分庁に提出した証明書等

請求人は、本件業務等に係る所得は給与であること及びその収入金額を証するものとして、平成23年9月から平成24年1月までの間に行われた原処分庁の請求人に対する調査(以下「前回調査」という。)の際に、又は、所得税の確定申告書に添付して、次の各書面(以下「本件各K社証明書」という。)を原処分庁に提出した。

(イ) 前回調査の際に提出された書面

A 平成23年9月30日に提出された平成23年9月14日付の「○○証明書」と題する書面(以下「本件証明書」という。)
 本件証明書には、要旨次のとおり記載され、K社の記名押印がある。

(A) K社は、実習等事業に関し、K社のスタッフである請求人に、日本での実習生等の全面管理を一任する。

(B) K社は、監理団体と提携し、円滑に実習等事業に関する業務を行う。

(C) K社は、請求人に対し、在日管理資金及び給料として、毎月一人当たり○○○○円を支払うことを証明する。

B 平成23年11月21日に提出された平成23年10月20日付の「○○説明書」と題する書面(以下「本件説明書」という。)
 本件説明書には、「K社の従業員である請求人について、平成○年5月から日本滞在中に発生した管理費は、基本的に毎月一人○○○○円、給与は毎月一人○○○○円、合計○○○○円であることを証明する。」旨記載され、K社の記名押印がある。

(ロ) 確定申告書に添付して提出された書面

A 平成23年分の所得税の確定申告書に添付された平成24年2月24日付の「○○表」と題する書面(以下「本件○○表」という。)
 本件○○表には、要旨次表のとおり記載され、K社の記名押印がある。
 また、本件○○表の末尾には、「平成23年8月から、K社の社員である請求人は毎月固定給料○○○○円となることを証明する。」旨記載されている。

年月日 L M 給与合計
(円)
人数
(人)
毎月給与
(円)
人数
(人)
毎月給与
(円)
平成23年1月20日 ○○ ○○○○ ○○ ○○○○ ○○○○
平成23年2月20日 ○○ ○○○○ ○○ ○○○○ ○○○○
平成23年3月20日 ○○ ○○○○ ○○ ○○○○ ○○○○
平成23年4月20日 ○○ ○○○○ ○○ ○○○○ ○○○○
平成23年5月20日 ○○ ○○○○ ○○ ○○○○ ○○○○
平成23年6月20日 ○○ ○○○○ ○○ ○○○○ ○○○○
平成23年7月20日 ○○ ○○○○ ○○ ○○○○ ○○○○

B 平成24年分の所得税の確定申告書に添付された平成24年2月20日付の「○○給料証明書」と題する書面(以下「本件○○給料証明書」という。)
 本件○○給料証明書には、「平成24年1月から、K社の社員である請求人は毎月固定給料○○○○円となることを証明する。」旨記載され、K社の記名押印がある。

ト V国の○○から原処分庁に提供された情報

本件業務等に関して、「所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国政府とV国との間の協定」に基づき、V国の○○から原処分庁に対して、前回調査後の平成25年3月に、次の各書面が提供された(以下、提供された各書面を併せて「本件情報」という。)。

(イ) 「メモランダム」と題する書面

「メモランダム」と題する書面(以下「本件メモランダム」という。)には、要旨次のとおり記載されている。

A 請求人は、平成19年に、請求人とK社との代理契約書に署名しており、K社の従業員及び駐在員に代わる日本における代理人であった。

B K社は、請求人に給与を支払ったことはなく、請求人は、請求人が日本において調査を受けている事実を隠し、K社に虚偽の本件証明書及び本件説明書を発行させた。

C K社は、本件各組合から受け取ることになっている派遣管理費用を一切受け取っておらず、それは業界の一般的慣習であるとの請求人の主張を理由としている。

D 請求人は、K社に対し、平成○年から平成24年までの間にK社から送り出された○○名の実習生等に係る代理手数料として、合計○○○○V国通貨を支払った。

(ロ) 「説明」と題する書面

K社が作成した平成25年1月10日付の「説明」と題する書面には、要旨次のとおり記載されている。

A 平成23年10月頃、請求人から、日本側の管理費の金額及び請求人が日本駐在の代表者である旨記載された書面をファックスにより受信した。

B 上記Aの書面の内容に沿った資料をパソコンで作成し、当該資料にK社の押印をした上で、請求人に速達で送った。

C その後、日本側の管理費の金額に関する内容が変更された際にも、上記A及びBと同様の手順でK社の押印のある資料を作成して請求人に送った。

(ハ) 「代理契約書」と題する書面

平成19年8月25日付の「代理契約書」と題する書面(以下「本件代理契約書」という。)には、要旨次のとおり記載され、請求人名及びK社の代表者であるb名の署名がある。

A K社は、請求人が日本においてK社の名義により実習等事業の商談及び交流を展開することに同意する。

B K社は、派遣を予定する実習生等の審査承認、査証申請、既に取得した査証の受領などの各種業務に責任を持つ。

C K社は、請求人の業務全てに対して意見、管理する権利を有し、実習生等派遣拠点の開拓業務に責任を持つ。

D 請求人は、実習生等の選考及び訓練を厳格化し、既に派遣した実習生等の日本での管理に責任を持ち、日本における全ての突発事故について、適切に処理しなければならない。

E 請求人は、K社に対し、実習生等の準備金(又は前払金)として、○○○○V国通貨を納める。これは、実習生等又は日本の受入機関に紛争が生じた時、請求人の責任による損失の賠償金とする。

F 請求人は、K社に対し、代行費用として実習生等一人当たり○○○○V国通貨を支払う。

G 本件代理契約書の効力は署名した日から発生し、有効期間は5年とする。

(ニ) 「請求人がK社に委託したL/M組合への派遣累計明細」と題する表

K社が作成した「請求人がK社に委託したL/M組合への派遣累計明細」と題する表(以下「本件派遣累計明細書」という。)には、要旨次表のとおり記載されている。

年別 人数 金額
平成○年 ○○ ○○○○V国通貨
平成○年 ○○ ○○○○V国通貨
平成○年 ○○ ○○○○V国通貨
平成○年 ○○ ○○○○V国通貨
平成○年 ○○ ○○○○V国通貨
平成○年 ○○ ○○○○V国通貨
平成○年 ○○ ○○○○V国通貨
平成○年 ○○ ○○○○V国通貨
合  計 ○○ ○○○○V国通貨

チ 請求人が提出したK社の領収書

請求人が当審判所に提出した平成○年7月21日付のK社を発行人とする領収書には、K社が請求人から、予備金として○○○○V国通貨(当時の為替レートで約○○○○円)を受領した旨記載されている。

リ 請求人の申告及び本件所得税各更正処分の内容

請求人は、本件業務等について、本件各K社証明書に記載された金額により算定した金額を給与所得の収入金額として、また、上記ホの(ハ)の家賃収入を不動産所得として、平成18年分ないし平成22年分の所得税については法定申告期限後に、また、平成23年分及び平成24年分の所得税については法定申告期限内に、それぞれ確定申告書を提出したのに対し、原処分庁は、平成25年11月から平成26年3月までの間に行った請求人に対する調査(以下「今回調査」という。)に基づき、上記各確定申告書に記載された本件業務等に係る所得の所得区分及び収入金額は偽りであったとして、本件請求額を事業所得の総収入金額とする本件所得税各更正処分を行った。

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2 争点

(1)本件業務等から生じた所得(以下「本件所得」という。)は事業所得又は給与所得のいずれに該当するか。また、本件所得の金額の計算上、収入金額とすべき金額又は総収入金額に算入すべき金額(以下「本件収入金額」という。)はいくらか(争点1)。

(2)本件所得が事業所得に該当するとした場合、請求人がV国に渡航した費用等は、本件所得の金額の計算上必要経費に算入することができるか否か(争点2)。

(3)本件業務等に係る所得税及び消費税等の課税標準等又は税額等の計算の基礎となるべき事実について、隠ぺい又は仮装があったか否か(争点3)。

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3 主張及び判断

(1)争点1(本件所得は事業所得又は給与所得のいずれに該当するか。また、本件収入金額はいくらか。)について

イ 主 張

原処分庁 請求人

次のとおり、本件所得は事業所得であり、本件収入金額は本件請求額である。

次のとおり、本件所得は給与所得であり、本件収入金額は本件各K社証明書に記載された金額である

(イ) 本件情報及び本件各K社証明書の信用性について
A 本件情報は、次の理由により、信用性が高い。
(A) 本件情報は、日本政府とV国政府が締結した租税条約に基づき、権限あるV国の○○が把握した事実に基づくものである。
(イ) 本件情報及び本件各K社証明書の信用性について
A 本件情報は、次の理由により、信用性を有さない。
(A) 本件情報は、その内容を裏付ける証拠がなく、内容自体も意味の分からない文章で書かれており、特に本件メモランダムはメモの類にすぎない。
(B) 本件代理契約書の請求人名の署名は、調査により把握した請求人の署名からすれば、請求人自身によるものである。
(B) 本件代理契約書の請求人名の署名は請求人自身によるものではなく、また、通常されることのない請求人名の署名の上にK社の印が押されていることから、本件代理契約書は偽造されたものである。
B 本件各K社証明書は、次の理由から、内容虚偽のものである。
(A) 本件情報によれば、本件証明書及び本件説明書は、請求人がK社を欺いて作成されたものである。
(B) 本件情報及び本件各年分を通じて本件業務等の取引形態に変更がないことから、本件○○表及び本件○○給料証明書についても、請求人がK社を欺いて作成させていたことが推認できる。
B 本件各K社証明書は、次の理由から、真正な証明書である。
(A) 本件各証明書に押されているK社の印は無二のものであり、請求人が押印することは不可能である。
(B) 本件証明書及び本件説明書は、請求人がV国に行ってK社のbに作成を依頼して受領し、また、本件○○表もbから受領した。
(C) 本件○○給料証明書は、請求人が作成した上で、V国に行ってK社の印を押してもらった。
(ロ)本件業務等について

請求人は、次の事実から、K社の代理人として、本件代理契約書に基づき、実習等事業について、日本国内において、自己の計算と危険において独立して営み、営利性・継続性を持って本件業務等を遂行していた。

(ロ)本件業務等について

請求人は、次の事実から、K社の従業員として本件業務等を行っていた。

A 請求人は、本件各組合に対して請求した送出し管理費が請求人名義の本件各口座に振り込まれており、送出し管理費を収入として得ている主体は請求人である。
 また、本件情報によれば、K社は、送出し管理費は一切受け取っておらず、この点について、請求人は、K社に対し、業界の一般的慣習である旨説明している。
 なお、本件各協定書は、実習生等の入国在留諸申請を行う際に入国管理局に実習等事業に係る協定書の写しを提出しなければならないことから、その形式を整えるために作成したものにすぎない。
A 本件各協定書に、本件各組合はK社に対し送出し管理費を支払う旨定められている以上、送出し管理費が帰属する主体はK社であり、請求人ではない。
 また、本件各組合から送出し管理費の振込みを本件各口座としていたのは、日本からの国外送金には高い手数料が掛かるため、本件各組合とK社との取決めによるものであり、請求人は、本件各口座から出金した送出し管理費を、K社の代表者のbに現金で渡していた。
 なお、本件各協定書は、本件各組合の代表理事が変更になる都度更新手続がされていることからすれば、当然に実体のあるものである。
B 本件情報によれば、1請求人はK社の従業員及び駐在員に代わる日本における代理人であること、2K社が請求人に給与を支払った事実はないこと、3本件代理契約書のとおり、請求人はK社との間で代理契約を締結していること、4請求人は実習生等の管理に責任を持つこと、5請求人はK社に対し実習生等1名につき○○○○V国通貨の代行費用を支払うこととされており、平成○年から平成24年までの間に、実習生等○○人分の代行費用○○○○V国通貨を支払ったことが認められる。
B 本件各K社証明書によれば、請求人は、K社から本件各K社証明書に記載された給与の支払を受けていたことは明らかである。

ロ 判 断

(イ)法令解釈

業務の遂行ないし労務の提供から生ずる所得が所得税法上の事業所得と給与所得のいずれかを判断するに当たっては、租税負担の公平を図るため、所得を分類し、その種類に応じた課税を定めている所得税法の趣旨、目的に照らし、当該業務ないし労務及び所得の態様等を考察しなければならず、判断の一応の基準として、両者を次のように区分するのが相当である。
 すなわち、事業所得とは、自己の計算と危険において独立して営まれ、営利性、有償性を有し、かつ、反復継続して遂行する意思と社会的地位とが客観的に認められる業務から生ずる所得をいい、これに対し、給与所得とは、雇用契約又はこれに類する原因に基づき使用者の指揮命令に服して提供した労務の対価として使用者から受ける給付をいう。
 なお、給与所得に当たるかどうかを判断するに当たっては、給付の支給者との関係において何らかの空間的、時間的な拘束を受け、継続的ないし断続的に労務又は役務の提供があり、その対価として支給されるものであるかどうかが重要な要素になると解されている。

(ロ) 証拠関係

A 請求人の答述又は申述の内容

請求人の当審判所又は原処分庁に対する答述又は申述の内容の要旨は、次のとおりである。

(A) 請求人は、K社の従業員であり、その身分を証明するものはないが、名刺を持っている。

(B) 請求人は、K社に勤務することとなった際に、K社との間で契約などはなく、勤務時間や休暇などの勤務に関する取決めもなかった。

(C) 請求人は、本件業務等に関して、本件各組合又は実習生等との間における契約等の締結はなかった。

(D) 請求人は、日本においては実習生等の通訳、悩み相談及びトラブル対応を行い、V国においては実習生等の募集及び面談を行っていた。

(E) 請求人は、自宅のパソコンで本件各請求書を作成した上で、本件各組合に毎月送出し管理費を請求して、本件各口座に本件請求額の振込みを受けており、本件各口座の通帳と印鑑は自宅で保管していた。

(F) 請求人は、本件各口座に振り込まれた本件請求額のほとんどを毎月現金出金し、自己の取り分を除いたものを現金でV国のK社事務所に持参して、K社の代表者であるbに渡しており、その一回当たりの額は多いときで○○○○円くらいであったが、そのことを証明できる資料はない。

(G) 請求人は、K社に持って行くことになっている送出し管理費を持って行かなかった場合の保証金として、K社に○○○○V国通貨を支払った。

(H) 請求人は、本件各請求書を作成するために使っているパソコンや消耗品、実習生等のトラブルの際に駆け付けるためのガソリン代などの費用をK社との取決めにより負担していた。

B kの答述

Lの代表理事であるkは、要旨以下の答述をしている。

(A) Lは、代表理事が変更になる都度、K社との間で協定書を作成した。

(B) LがK社に支払う送出し管理費については、請求人の依頼により本件各口座に振り込んでいたが、K社からのクレームを受けたことはない。

C eの答述

Mの設立時から平成24年5月までMの代表理事を務め、その後はMの事務局長であるeは、要旨以下の答述をしている。

(A) Mは、K社と実習等事業に係る取引を行っており、当該取引を開始するに当たり、K社との間で協定書を作成した。

(B) MがK社に支払う送出し管理費については、請求人の依頼により本件各口座に振り込んでいたが、K社からのクレームを受けたことはない。

(ハ) 検討

A 本件情報及び本件各K社証明書の信用性について

本件所得の所得区分及び本件収入金額を判断するに当たり、その内容が相反する本件情報及び本件各K社証明書の各証拠が存在し、請求人と原処分庁との間に、当該各証拠の信用性について争いがあるので、まずこの点について検討する。

(A) 上記1の(4)のトのとおり、本件情報の内容は、K社と請求人との間に本件代理契約書による契約が成立しており、請求人はK社の名義により実習等事業の商談及び交流を展開することにK社が同意すること、K社は派遣管理費用を一切受け取っておらず、K社から請求人への給与の支払はないこと、本件各K社証明書は、請求人がK社に発行させた内容虚偽のものであることなどを内容としている。
 これに対し、上記1の(4)のヘのとおり、本件各K社証明書の内容は、請求人はK社の従業員であること、K社は請求人に給与を支給していること及びその支給額等を内容としている。

(B) そこで、本件代理契約書をみると、上記1の(4)のトの(ハ)のとおり、本件代理契約書には、請求人名の署名があるところ、請求人は自身が署名したものではない旨主張するものの、当該請求人名の筆跡は、請求人が当審判所及び原処分庁に答述等をした際に作成された質問調書の請求人の署名の筆跡と酷似している。

(C) 次に、上記1の(4)のトの(ハ)のEのとおり、本件代理契約書には、請求人は、K社に準備金として○○○○V国通貨(約○○○○円)を納め、請求人の責任による損失の賠償金とする旨の記載があるところ、上記(ロ)のAの(G)のとおり、請求人は同金額の支払事実を認めており、上記1の(4)のチのとおり、これに沿う領収書もあることから、請求人がK社に対し○○○○V国通貨を支払った事実が認められる。

この点、上記(ロ)のAの(G)のとおり、請求人はK社に持って行くことになっている送出し管理費を持って行かなかった場合の保証金である旨答述するが、会社の従業員が、その業務を行うに当たり会社に対し高額な保証金を支払うことは一般的に考えられない。

他方で、請求人がK社の従業員ではなく独立した事業主体であったとすると、将来発生し得る損害の担保としてまとまった金銭を差し入れることは不自然ではない。

以上から、請求人からK社への○○○○V国通貨の支払事実は、請求人がK社の従業員であったことと矛盾する反面、請求人が独立した事業主体であったことと符合する事実であると評価することができる。

(D) さらに、請求人は、請求人がK社の収入であると主張する送出し管理費の本件請求額について、上記1の(4)のホの(ロ)及び(ニ)並びに上記(ロ)のBの(B)及びCの(B)のとおり、K社又はP社の肩書を付した請求人名義の本件各口座に振り込むように依頼し、本件各口座に振り込まれた本件請求額については、おおむね同月中に端数を除いてほぼ全額を現金で引き出しているところ、上記(ロ)のAの(F)のとおり、請求人は、本件請求額のうち請求人の取り分を除いたものを現金でV国のK社に持って行き、K社の代表者であるbに渡しており、その一回当たりの額は多いときで○○○○円くらいであった旨答述する。
 しかしながら、多額の現金を保管・運搬するのは盗難や紛失のリスクを伴うのであって、会社の従業員があえてそのような危険な手段で売上金を保管・運搬するのは極めて不自然である。なお、100万円を超える現金を携帯して出国する場合には事前に税関への申告が必要であるが、請求人からそのような申告がされた事実は認められない。
 さらに、上記(C)のとおり、請求人は、○○○○V国通貨の保証金についてはK社から領収書を受領しているのに、請求人がK社に持って行ったとする上記金員については領収書を受領していないばかりか、その記録さえ全く残していない。
 以上から、請求人の答述は明らかに不自然であり、本件各口座から入金額のほとんど全てを毎月引き出していたのは、その保管先や使途先をあえて不明にするためであったと認めるのが相当である。

(E) 以上を総合すると、本件代理契約書を中心とする証拠関係には信用性が認められる。他方で、請求人は本件各K社証明書を自己の主張の根拠とするが、本件各K社証明書は、作成名義人であるK社が作成の事実を認めつつ、その内容が虚偽である旨認めているのであるから、信用性は乏しく、更にこれに沿った請求人の答述等にも、不自然な点が多く内容も合理性を欠くことから信用できない。

B 本件業務等の内容等について

(A) 上記1の(4)のハの(イ)のとおり、K社と本件各組合との間で本件各協定書が作成され、また、上記(ロ)のBの(A)及びCの(A)のとおり、本件各組合のk及びeが本件各協定書を作成した旨答述していることからすれば、本件各協定書に記載された契約がK社と本件各組合との間で有効に成立しているものと認められ、上記1の(4)のハの(ロ)のとおり、本件各協定書によれば、K社は、送出し機関として、実習生等の候補者の募集、受付及び選抜、当該候補者への実習等事業の説明及び相談への対応、日本滞在等に関するV国での法的手続、事前健康診断、日本語学習などの事前講習等のほか、実習等事業の円滑な推進に必要な業務などの役割と義務を負っていたものと認められる。

(B) そして、上記1の(4)のトの(ハ)のとおり、本件代理契約書によれば、K社は、請求人が日本においてK社の名義により実習等事業の商談及び交流を展開することに同意するとともに、派遣を予定する実習生等の審査承認、査証申請、既に取得した査証の受領などのV国における各種業務を行うこととされており、一方、請求人は、実習生等の選考及び訓練、日本での実習生等の管理や突発事故の処理など、主として日本国内における業務を行うこととされていたと認められ、この点、上記(ロ)のAの(D)の請求人の答述等とも合致する。

(C) また、上記(ロ)のAの(C)のとおり、請求人は、本件業務等に関して、本件各組合又は実習生等との間において何らかの契約をした事実はない旨答述し、他に契約があったとする事実を確認できる証拠資料もない。

(D) 以上のことから、請求人は、本件各協定書による契約によりK社が行うべき業務の一部を、本件代理契約書による契約に基づき行っていたと認められ、その契約名称には「代理」という用語が使用されているものの、その契約内容及び本件業務等の実態からみると、請求人は、K社から日本における実習生等の管理等の委託を受けて本件業務等を行っていたと認められる。
 なお、上記1の(4)のトの(ハ)のとおり、本件代理契約書は、平成19年8月25日付で作成されているものの、本件代理契約書の作成の前後を通じて、本件業務等の実態に変動があった事実は認められないことからすると、平成○年の本件業務等に係る取引の開始時から、請求人とK社との間において、本件代理契約書に記載された内容の合意があったと認めるのが相当である。

C 本件業務等の対価等について

(A) 上記1の(4)のホの(ロ)のとおり、本件請求額は、本件各組合から本件各口座に振り込まれているところ、上記(ロ)のAの(E)、Bの(B)及びCの(B)のとおり、請求人、k及びeの各答述によれば、請求人が本件各組合へ依頼して本件請求額を本件各口座へ振り込ませていたものであり、この点について、K社からのクレームはなかったことが認められることから、本件請求額は、本件各口座へ振り込まれているものの、その実質は、本件各協定書による契約に基づき、本件各組合からK社へ支払われるべきものと認めるのが相当である。

(B) また、上記Bのとおり、請求人は、本件代理契約書による契約に基づき、K社から委託を受けて本件業務等を行っていると認められるところ、上記1の(4)のトの(ハ)のE及びFのとおり、本件代理契約書によれば、請求人は、紛争時の損害賠償金として準備金○○○○V国通貨をK社へ納付すること、また、K社に対し、代行費用として実習生等一人当たり○○○○V国通貨を支払うこととされており、準備金○○○○V国通貨の支払については請求人の答述及び領収書の内容と合致し、代行費用実習生等一人当たり○○○○V国通貨の支払については本件情報及び本件明細書の内容と合致するが、一方で、本件代理契約書にはK社から請求人に対して本件業務等の対価を支払う旨の定めはなく、また、実際にK社から請求人に対して本件業務等の対価を支払ったとする事実も確認できない。

(C) そうすると、K社と請求人との間においては、本件各組合からK社に支払われるべき本件請求額について、上記1の(4)のトの(イ)のCのとおり、K社が受け取らないことが業界の一般的慣習であるとの請求人の主張にK社が応諾することにより、本件業務等の対価として請求人が取得する旨の合意が形成されていたと認めるのが相当である。

D 本件所得の所得区分について

上記B及びCで述べたとおり、請求人は、本件業務等の事業主体であり、本件業務等は、請求人の計算と危険において独立して営まれ、営利性、有償性を有し、かつ、反復継続して遂行する意思と社会的地位とが客観的に認められるといえることから、本件所得は、事業所得に該当する。

E 本件収入金額について

上記Cで述べたとおり、本件業務等の対価は本件請求額と認められるから、本件請求額が本件収入金額であり、本件各年分の本件収入金額は、次表の「合計金額」欄記載の金額となる。

区分

年別

1Lに対する請求額 2Mに対する請求額 合計金額
(1+2)
平成18年 ○○○○円 ○○○○円 ○○○○円
平成19年 ○○○○円 ○○○○円 ○○○○円
平成20年 ○○○○円 ○○○○円 ○○○○円
平成21年 ○○○○円 ○○○○円 ○○○○円
平成22年 ○○○○円 ○○○○円 ○○○○円
平成23年 ○○○○円 ○○○○円 ○○○○円
平成24年 ○○○○円 ○○○○円 ○○○○円

(2) 争点2(本件所得が事業所得に該当するとした場合、請求人がV国に渡航した費用等は、本件所得の金額の計算上必要経費に算入することができるか否か。)について

イ 主 張

請求人 原処分庁
本件所得が事業所得に当たるのであれば、パスポートによる渡航記録から請求人が業務目的で頻繁に渡航していることは明らかであることから、最低限、V国への渡航に係る費用を必要経費に算入するべきである。 請求人は、必要経費について、具体的な申立てやそれを証する資料を提示しておらず、また、請求人の親族がV国に居住しており家事費と明確に区分されていないことから、請求人の主張するV国への渡航費用等については、必要経費に算入できない。

ロ 判 断

(イ) 法令解釈等

A 所得税法第37条第1項に規定する「販売費、一般管理費その他これらの所得を生ずべき業務について生じた費用」とは、当該支出が所得を生ずべき業務と直接関係し、かつ、業務の遂行上必要なものに限られると解するのが相当である。そして、かかる費用に該当するか否かの判断は、単に業務を行う者の主観的な動機・判断によるのではなく、当該業務の内容や、当該支出の趣旨・目的等の諸般の事情を総合的に考慮し、社会通念に照らして客観的に行われなければならないと解される。

B また、所得税法第45条第1項第1号及び所得税法施行令第96条第1号の各規定によれば、家事関連費については、当該費用の主たる部分が事業所得を生ずべき業務の遂行上必要なものであり、かつ、その必要である部分を明らかに区分することができる場合に、その部分に相当する経費に限って必要経費に算入される。

C さらに、所得税基本通達37−21は、事業を営む者が海外渡航をした場合において、その海外渡航の旅行期間にわたり当該事業の遂行上直接必要と認められる旅行と認められない旅行とを併せて行ったものであるときは、その海外渡航に際して支出した費用を、当該事業の遂行上直接必要と認められる旅行の期間と認められない旅行の期間との比等によってあん分し、当該事業の遂行上直接必要と認められる旅行に係る部分の金額は、旅費として必要経費に算入する。
 ただし、海外渡航の直接の動機が特定の取引先との商談、契約の締結等当該事業の遂行のためであった場合は、その往復の旅費は当該事業の遂行上直接必要と認められる旅費として必要経費に算入すると定めており、当審判所においても当該通達に定める取扱いは相当と認められる。

(ロ)認定事実

請求人提出資料、原処分関係資料及び当審判所の調査の結果によれば、次の事実が認められる。

A 請求人から提出された資料

請求人は、V国への渡航に係る費用の支払の事実及びV国における業務の内容を証するものとして、次の資料を当審判所に提出した。

(A) 往復の旅費に係る領収書

V国への渡航に係る往復の旅費の支払に係る領収書5通であり、当該各領収書に記載された発行日、発行者及び領収金額は、次表のとおりである。
 なお、上記各領収書の宛名は、いずれもK社となっている。

発行日 発行者 領収金額
平成24年4月28日 Q社 ○○○○円
平成24年5月31日 R社 ○○○○円
平成24年7月6日 R社 ○○○○円
平成24年8月9日 R社 ○○○○円
平成24年12月7日 R社 ○○○○円

(B) 宿泊費に係る領収書

V国での宿泊費の支払に係る領収書1通であり、当該領収書には、発行日が平成24年8月23日、発行者がS、宛名が請求人及び領収金額が○○○○V国通貨と記載されている。

(C) 請求人の日記の写し

平成18年3月から平成24年9月までの間の請求人の日記の写しの一部であり、そのうち、上記(A)及び(B)の請求人から往復の旅費及び宿泊費の支払に係る領収書の提出があった旅行期間に係るものは、平成24年6月5日及び同月6日の二日であり、それぞれ要旨次のとおり記載されている。

年月日 記載内容
平成24年6月5日 今日の午前、会社で○○研修生の2名を面接しました。fとgが会社に来て、一緒に昼食を食べました。hは昼に来ました。夜、hの紹介で、彼の○○のレストランで食事をして、彼の○○と商売について意見交換しました。
平成24年6月6日 昼にホテルのカフェでiとhと会い、iが紹介した「T社」業務のjマネージャーに会いました。夜、iの家で食事をしました。

B 請求人のV国への渡航の状況

入国管理局の出入国記録によれば、請求人は、本件各年分において、合計49回(平成18年が7回、平成19年が6回、平成20年が5回、平成21年が4回、平成22年が8回、平成23年が9回及び平成24年が10回)にわたり、日本からV国へ渡航し、その一 回当たりの旅行期間は平均約17日間であった。
 また、上記の請求人のV国への渡航のうち、請求人から上記Aの(A)及び(B)の往復の旅費及び宿泊費に係る領収書の提出があったのは、次表記載の5回の渡航である。

出国日 入国日 旅行日数
平成○年○月○日 平成○年○月○日 7日間
平成○年○月○日 平成○年○月○日 13日間
平成○年○月○日 平成○年○月○日 13日間
平成○年○月○日 平成○年○月○日 15日間
平成○年○月○日 平成○年○月○日 15日間

C 当審判所の調査によっても、上記A以外に、請求人が、V国への渡航に係る費用を負担した事実及びV国において業務等を行った事実を確認できる証拠は認められない。

D 請求人の国籍はV国であり、V国には、請求人の両親が居住している。

(ハ) 検討

A 領収書の提出がない渡航に係る費用について

上記(ロ)のBのとおり、請求人は、本件各年分において、日本からV国へ49回渡航している事実は認められるものの、そのうち、請求人から往復の旅費又は宿泊費に係る領収書の提出があったのは5回の渡航のみであり、それ以外の領収書の提出がないV国への渡航に係る費用については、上記(ロ)のCのとおり、当審判所の調査によっても、請求人が負担した事実が確認できず、その額も不明であることから、本件所得の金額の計算上、必要経費に算入することはできない。

B 領収書の提出のある渡航に係る費用について

(A) 上記(ロ)のAの(A)のとおり、V国への渡航のための往復の旅費に係る各領収書の宛名は、いずれもK社となっているものの、上記(1)で述べたとおり、請求人は、本件代理契約書による契約に基づき、K社からK社の名義により本件業務等を行うことの同意を受けた上で、K社から委託を受けた事業主体として本件業務等を行っていたと認められることから、請求人が負担した費用の領収書の宛名がK社となっていたとしても不自然なことではなく、当該各領収書は請求人が所持していたことからすると、当該各領収書に記載されたV国への旅費の負担者は、いずれも請求人であると認めるのが相当である。
 また、上記(ロ)のAの(B)のとおり、平成24年8月23日付でSが発行した領収書に記載されたV国での宿泊費○○○○V国通貨の負担者は請求人であると認められる。

(B) しかしながら、上記(ロ)のCのとおり、請求人のV国への渡航の目的、V国における業務の状況等について確認できる証拠は認められず、上記(ロ)のAの(C)のとおり、僅かに請求人の日記に請求人の行動等の一部の記載があるものの、上記(A)の請求人の費用負担が認められる旅行期間のうち、請求人から提出された同日記の写しに行動記録が記載されているのは、平成24年6月5日及び同月6日の二日のみである。
 そうすると、請求人のV国への渡航に係る費用の支出が、本件所得を生ずべき本件業務等と直接関係し、かつ、本件業務等の遂行上必要なものか否かが不明であり、また、上記(ロ)のBのとおり、一回当たりの旅行期間の平均が約17日間と長期であることや、上記(ロ)のDのとおり、V国には請求人の両親が居住していることなどから、請求人が負担した当該費用は家事関連費に該当するとも考えられるところ、当該費用の主たる部分が本件所得を生ずべき本件業務等の遂行上必要なものであり、かつ、その必要である部分が明らかに区分することができる場合にも当たらない。
 また、請求人から日記の写しの提出があった平成24年6月5日及び同月6日を含む同月2日から14日までの13日間の渡航については、仮に、同日記に記載された○○研修生2名との面接及びT社業務のjマネージャーとの面会の事実があったとしても、その内容や程度などの詳細は不明であり、それ以外の11日間の旅行期間の状況も不明であることから、当該渡航の直接の動機が本件業務等の遂行のためであったと認めることはできず、また、本件業務等の遂行上直接必要と認められる旅行の期間と認められない旅行の期間との比等によってあん分するなどの方法により合理的に区分することもできない。
 したがって、請求人がV国への渡航に関して負担した往復の旅費及び宿泊費は、いずれも本件所得の金額の計算上必要経費に算入することはできない。

(ニ) 請求人の主張について

請求人は、パスポートによる渡航記録から請求人が業務目的で頻繁にV国へ渡航していることは明らかであるから、V国への渡航に係る費用を必要経費に算入すべきである旨主張する。
 しかしながら、請求人が頻繁にV国へ渡航していることをもって、当該渡航に係る費用が業務と直接関係するとも、業務の遂行上必要であるともいうことはできず、請求人の主張には理由がない。

(3) 争点3(本件業務等に係る所得税及び消費税等の課税標準等又は税額等の計算の基礎となるべき事実について、隠ぺい又は仮装があったか否か。)について

イ 主 張

原処分庁 請求人
次のとおり、本件業務等に係る所得等の計算の基礎となるべき事実について、隠ぺい又は仮装があった。 次のとおり、本件業務等に係る所得等の計算の基礎となるべき事実について、隠ぺい又は仮装はなかった。
(イ) 本件各K社証明書について
本件情報によれば、請求人はK社の従業員や駐在員ではなく、日本におけるK社の代理人であり、本件証明書及び本件説明書は、請求人がK社を欺いて作成させたものである。
 また、本件各組合との取引開始以降現在に至るまで本件業務等の内容に変更はなく、平成23年分及び平成24年分の本件所得も事業所得であると認められることから、本件○○表及び本件○○給料証明書も、請求人がK社を欺いて作成させたものであることが推認できる。
(イ) 本件各K社証明書について
本件各K社証明書は、次の理由から、真正な証明書である。
A 本件各証明書に押印されているK社の印は無二のものであり、請求人が押印することは不可能である。
B 本件証明書及び本件説明書は、原処分庁から指示された文案により、請求人がV国に行ってK社のbに作成を依頼して受領した。
 また、本件○○表についても、請求人がV国に行ってbから受領した。
C 本件○○給料証明書は、請求人が作成した上で、V国に行ってK社の印を押してもらった。
(ロ) 所得税について
請求人は、K社を欺いて本件証明書及び本件説明書を作成させていたことから、平成18年分ないし平成22年分については、当初から本件業務等の事実関係を隠ぺいする意図を有していたことが推認される。
 そして、請求人は、K社を欺いて作成させた本件各K社証明書により、K社の従業員であると仮装し、送出し管理費が事業所得であるにもかかわらず給与所得としての確定申告書を提出した。
(ロ) 所得税について
平成18年分ないし平成22年分については、請求人の税務の知識の不足から税務申告を失念していたが、前回調査の際の原処分庁の指摘事項を受け入れて、本件証明書及び本件説明書に基づき給与所得と不動産所得の納税申告を行った。
 また、平成23年分及び平成24年分についても、本件○○表及び本件○○給料証明書に基づき納税申告を行った。
(ハ) 消費税について
請求人は、K社を欺いて作成させた本件○○表及び本件○○給料証明書に基づき、本件所得を給与所得とする平成23年分及び平成24年分所得税の確定申告書を提出し、消費税の課税売上げを不課税売上げに仮装して消費税等の確定申告書を提出しなかった。
(ハ) 消費税について
本件各K社証明書で証明されているとおり、請求人はK社の従業員であり、K社からの収入は給与である。

ロ 判 断

(イ) 法令解釈

A 通則法第68条第1項及び同条第2項に規定する重加算税の制度は、納税者が過少申告をすること又は申告をしないことについて隠ぺい、仮装という不正手段を用いていた場合に、過少申告加算税又は無申告加算税よりも重い行政上の制裁を科することによって、悪質な納税義務違反の発生を防止し、もって申告納税制度による適正な徴税の実現を確保しようとするものである。

B したがって、重加算税を課するためには、納税者のした過少申告行為又は無申告行為そのものとは別に、隠ぺい、仮装と評価すべき行為が存在し、これに合わせた過少申告行為又は無申告行為を要するものである。

C しかし、上記の重加算税制度の趣旨に鑑みれば、架空名義の利用や資料の隠匿等の積極的な行為が存在したことまで必要であると解するのは相当でなく、納税者が、当初から課税標準等及び税額等を過少に申告すること又は申告しないことを意図し、その意図を外部からうかがい得る特段の行動をした上、その意図に基づき過少申告をし又は申告をしなかった場合には、重加算税の賦課要件が満たされるものと解するのが相当である。

(ロ) 認定事実

原処分関係資料及び当審判所の調査の結果によれば、次の事実が認められる。

A 本件各口座の入出金の状況

上記1の(4)のホの(ニ)のとおり、請求人は、本件各口座に振り込まれた各月の本件請求額について、同口座に振込まれていた家賃収入とともにおおむね同月中に端数を除いて全額を現金で引き出していたところ、各年間の現金出金の額は、平成18年が○○○○円、平成19年が○○○○円、平成20年が○○○○円、平成21年が○○○○円及び平成22年が○○○○円であり、年間の現金出金の額が最も少ない平成19年でみても月平均の現金出金額は約○○○○円と多額であったにもかかわらず、当該現金出金の額の大部分について、日本国内の請求人名義口座への入金や、海外送金の事実を確認できず、その後の保管先や使途先は不明な状態となっている。

B 請求人の本件業務等に係る申告の状況

(A) 請求人は、原処分庁の前回調査が行われるまで、確定申告をしていなかった。そして、原処分庁から前回調査を受けるや、K社に働きかけて本件各K社証明書の交付を受け、本件各K社証明書に記載された金額に基づき算定した金額を本件業務等の係る収入金額として、平成18年分ないし平成22年分の所得税については法定申告期限後に、平成23年分及び平成24年分の所得税については法定申告期限内に、それぞれ確定申告書を提出しているところ、請求人が当該確定申告書で申告した本件業務等に係る平成18年分ないし平成22年分の収入金額は、平成18年分が○○○○円、平成19年分が○○○○円、平成20年分が○○○○円、平成21年分が○○○○円及び平成22年分が○○○○円であり、上記(1)のロの(ハ)のEの各年分の本件収入金額の17%ないし28%であった。

(B) 請求人の申述によれば、請求人は、本件各年分において、本件業務等に係る収入について、V国で納税申告をしていないと認められる。

C 原処分庁の調査の際の請求人の答弁の状況

請求人は、前回調査の際に、原処分庁の調査担当職員に対し、請求人はK社の従業員であり、自身の取り分は、本件証明書及び本件説明書に記載されたとおり、実習生等一人当たり毎月○○○○円ないし○○○○円の送出し管理費のうち○○○○円である旨の答弁を行い、さらに、今回調査の際にも、同趣旨の答弁を行っている。

(ハ) 検討

A 平成18年分ないし平成22年分の所得税について

(A) 法定申告期限までの状況

上記(1)のロの(ハ)のAの(D)で述べたとおり、請求人は、請求人の本件業務等の対価である本件請求額について、K社名の本件各請求書により本件各組合に請求するとともに、K社又はP社の肩書の付された請求人名義の本件各口座に振り込むように本件各組合に依頼しており、同口座に振込みを受けることにより、本件請求額は本件各組合からK社に支払われたものであるとの外形を整えたものと認められる。
 そして、上記(ロ)のAのとおり、本件各口座に振り込まれた各月の本件請求額については、同口座に振り込まれていた家賃収入とともにおおむね同月中に端数を除いて全額を現金で引き出しているところ、各年間の現金出金の額は約○○○○円から約○○○○円であり、年間の現金出金額が最も少ない平成19年でさえ月平均の現金出金額は約○○○○円と多額であった。
 また、現金出金された金員の大部分について、国内の金融機関の請求人名義の口座に入金された痕跡や請求人が帳簿を作成して記録していた事実は認められず、その後の保管先や使途先は不明である。
 そうすると、請求人は、上記の本件各口座から出金した多額の現金をそのまま現金で保管していたか又はV国に持ち出していたことが考えられるが、現金での保管には盗難や紛失のリスクが伴い、また、100万円を超える現金を携帯して出国する場合には事前に税関への申告が必要なところ当該申告がされた事実は認められず、請求人が何らの目的もなく、このようなリスク等を負ってまで現金出金していたとは考えられず、請求人には、その後の金員の流れを不明にするという目的があったと認めるのが相当である。

(B) 法定申告期限経過時の状況

請求人は、本件各請求書による本件請求額の請求及び本件各口座への本件請求額の入金により、上記(1)のロの(ハ)のEのとおり、平成18年以降、年間○○○○円を超える本件業務等に係る事業収入があることを十分に認識しており、納税義務が生じることは十分に理解していたと認められる。
 しかしながら、上記1の(2)のイのとおり、請求人は、平成18年分から平成22年分までの所得税について、5年間にわたり、その法定申告期限までに、家賃収入も含めて確定申告書を一切提出せず、また、その申告・納税の方法について、税務署の職員や税理士に相談することもなく無申告の状態を続けていたものであり、請求人に納税申告の意思があったとは認められない。
 なお、上記(ロ)のBの(B)とおり、請求人は、V国においても納税申告をしていないので、納税申告すべき国を間違えて無申告となったものではない。

(C) 法定申告期限経過後の状況

上記 (ロ)のCのとおり、請求人は、前回調査を受けた際に、原処分庁の調査担当職員に対して、請求人はK社の従業員であり、実際の収入金額の5分の1ないし3分の1程度の給与を支給されている旨の答弁をし、上記1の(4)のトの(ロ)及び上記(1)のロの(ハ)のAの(E)のとおり、自らこの答弁の内容に見合った証明書の下書を作成した上で、K社から同下書に沿った内容虚偽の本件証明書及び本件説明書の交付を受けて同証明書等を原処分庁に提出し、その後、同証明書等に基づいて作成した確定申告書を法定申告期限後に原処分庁に提出しており、上記 (ロ)のBの(A)のとおり、同確定申告書により申告された本件業務等に係る収入金額は、各年分の本件収入金額の17%ないし28%にすぎない。
 また、請求人は、今回調査の際にも、本件各K社証明書により証明されている内容が真実である旨の答弁を行っていることが認められ、本件業務等に係る事業主体が請求人であることや同事業に係る真実の所得金額を隠ぺいする態度、行動をできる限り貫こうとしていたものと認められる。

(D) 小括

上記(A)ないし(C)の各事実を総合すると、請求人は、本件請求額の振込口座として本件各口座を指定し、本件各口座に入金された金員を毎月ほぼ全額引き出して当該金員の流れを容易に把握できないようにすることによって、当該金員が請求人ではなくK社に帰属するものであると装い、請求人の真実の所得を隠ぺいして容易に把握されないような状況とした上で、多額の事業所得があったにもかかわらず5年間にわたり無申告を続けていたのであるから、請求人が、法定申告期限の前から、事業所得を得ていた事実を隠ぺいして課税を免れるとともに、もし税務調査が行われる場合には、内容虚偽の証明書をK社に作成させて提出させるなどの工作を行って飽くまでも事業主体はK社であり、自己はK社から給与を得ていたにすぎないよう装って過少に申告をすることを予定していたものと認められる。

(E) 結論

以上から、請求人は、単に、申告義務があることを認識しながら法定申告期限までに申告しなかったというにとどまらず、本件業務等に係る実習等事業が日本とV国とにまたがる事業であり、本件業務等の実態や所得額の調査解明に困難が伴う状況を利用し、請求人が事業所得を得ていることを隠ぺいしようという確定的な意図の下に、必要に応じて事後においても工作を行い、請求人が所得を得ていることを隠しきれない場合には、事業所得であることについては隠した上で、真実の所得金額の一部について給与所得として申告して本来の納税額の大半を免れることを想定しつつ、あえて法定申告期限までに確定申告書を提出しなかったものと認められる。
 したがって、本件は、請求人が当初から課税標準等又は税額等を申告しないことを意図し、その意図が外部からうかがい得る特段の行動をした上、その意図に基づき期限内申告書を提出しなかった場合に当たり、本件所得の金額等の計算の基礎となるべき事実について、隠ぺい又は仮装があったと認められる。

B 平成23年分及び平成24年分の所得税について

上記(1)で述べたとおり、本件業務等の事業主体は請求人であり、本件収入金額は本件請求額と同額であると認められるところ、上記(ロ)のBのとおり、請求人は、K社に働きかけて、請求人はK社の従業員であり、本件収入金額よりはるかに少額な給与収入を得ていたことを内容とする本件○○表及び本件○○給料証明書の交付を受け、上記1の(4)のヘの(ロ)のとおり、当該交付を受けた各書面を当該各年分の確定申告書に添付して原処分庁に提出していたのであり、請求人は、これにより、本件業務等の事業主体がK社であるかのように装って請求人に事業所得があることを隠し、その収入金額の一部を隠ぺいしていたといえるから、本件所得の金額等の計算の基礎となるべき事実について、隠ぺい又は仮装があったと認められる。

C 消費税等について

上記(1)で述べたとおり、本件業務等の事業主体は請求人であるところ、上記(ロ)のBの(A)のとおり、請求人は、K社に働きかけて、請求人はK社の従業員でありK社から給与の支給を受けていたことを内容とする本件○○表及び本件○○給料証明書の交付を受け、上記1の(4)のヘの(ロ)のとおり、当該交付を受けた各書面を所得税の確定申告書に添付して原処分庁に提出していたのであり、請求人は、これにより、消費税等の課税売上げとなる事業者としての役務の提供の対価を不課税売上げとなる従業員としての労務の提供の対価に仮装していたといえることから、本件業務等に係る消費税等の課税標準等又は税額等の金額等の計算の基礎となるべき事実について、隠ぺい又は仮装があったと認められる。

(ニ) 請求人の主張について

請求人は、1本件各K社証明書に押印しているK社の法人印は無二の印章であること、2本件証明書及び本件説明書は、請求人がV国に赴いてbに作成を依頼したものであり、その文案は原処分庁の指示によるものであること、3本件○○表についても、請求人がV国に赴いてbから受領したものであること、4本件○○給料証明書については、請求人自身が作成した上で、V国に赴き、K社の法人印を押してもらったものであることから、本件各K社証明書はいずれも真正な証明書である旨主張する。
 しかしながら、本件証明書及び本件説明書の文案について原処分庁が指示した事実は認められず、既に述べたとおり、請求人がK社に働きかけて、真実と異なる内容の本件各K社証明書を発行させたと認められることから、請求人の主張には理由がない。

(4) 平成18年分及び平成19年分の所得税の更正決定等の期間制限について

平成18年分及び平成19年分の所得税の各更正処分及び重加算税の各賦課決定処分は、通則法第70条第1項に規定する更正決定等の期間制限(法定申告期限から5年)を超えて行われているが、同条第4項は、「偽りその他不正の行為」によって国税の税額の全部又は一部を免れた納税者がある場合に、これに対して適正な課税を行うことができるよう、それ以外の場合よりも長期の除斥期間(法定申告期限から7年)を定めており、ここにいう「偽りその他不正の行為」とは、税額を免れる意図の下に、税の賦課徴収を不能又は著しく困難にするような何らかの偽計その他の工作を伴う不正な行為を行うことをいうものと解するのが相当であるところ、上記(3)のとおり、請求人は、請求人自らが事実と異なる文書を作成し、当該文書に基づいた本件証明書及び本件説明書をK社に作成及び証明させた上で、当該証明書等に基づき事実と異なる過少な金額等によって平成18年分及び平成19年分の所得税の確定申告書を提出しており、このような請求人の行為は、税額を免れる意図の下に、税の賦課徴収を不能又は著しく困難にするような何らかの偽計その他の工作を伴う不正な行為に該当する。
 したがって、請求人は、「偽りその他不正の行為」によって国税の税額の全部又は一部を免れたと認められることから、平成18年分及び平成19年分の所得税の各更正処分及び重加算税の各賦課決定処分は、通則法第70条第4項の規定により法定申告期限から7年を経過する日まですることができ、同各処分は、いずれも当該期限内に行われている。

(5) 本件所得税各更正処分について

以上から、請求人の平成18年分ないし平成24年分の所得税の納付すべき税額等を計算すると、いずれも原処分の納付すべき税額(平成22年分、平成23年分及び平成24年分については、平成26年7月1日付でされた異議決定によりいずれもその一部が取り消された後のもの)と同額となるので本件所得税各更正処分はいずれも適法である。

(6) 本件所得税重加算税各賦課決定処分及び平成22年分の所得税に係る無申告加算税の賦課決定処分について

イ 平成18年分ないし平成22年分の所得税に係る重加算税の各賦課決定処分

上記(5)のとおり、平成18年分ないし平成22年分の所得税の各更正処分は適法であり、上記(3)のロの(ハ)のAのとおり、本件所得の金額等の計算の基礎となるべき事実について隠ぺい又は仮装があったと認められ、請求人は、その隠ぺい又は仮装したところに基づき、法定申告期限までに確定申告書を提出せず、法定申告期限後に確定申告書を提出していたのであるから、通則法第68条第2項に規定する重加算税の賦課要件を満たしている。
 しかし、平成18年分ないし平成22年分の所得税に係る重加算税の各賦課決定処分は、平成23年12月21日の期限後申告に係る重加算税の額と平成26年3月12日付の更正処分に係る重加算税の額とを各別に計算すべきところ、これらを併せて計算されている。
 また、上記各賦課決定処分のうち平成22年分については、平成26年7月1日付の異議決定において、所得控除の是正に伴いその処分の一部が取り消されたものであるが、同異議決定において、平成26年3月12日付の更正処分に係る重加算税の賦課決定処分の一部を取り消すべきところ、同更正処分に係る重加算税及び平成23年12月21日の期限後申告に係る無申告加算税について、その一部が取り消されている。
 以上から、重加算税又は無申告加算税の額を正しく計算すると、平成18年分、平成20年分及び平成22年分の所得税に係る重加算税又は無申告加算税の額は、それぞれ別紙1、別紙2及び別紙3の「取消額等計算書」の「4課税標準等及び税額等の計算」欄のとおりとなり、いずれも原処分の額を下回るので、原処分は、いずれもその一部を取り消すべきである。
 また、平成19年分及び平成21年分の所得税に係る重加算税の額は、いずれも原処分の額と同額となるので、平成19年分及び平成21年分の所得税に係る重加算税の各賦課決定処分はいずれも適法である。

ロ 平成23年分及び平成24年分の所得税に係る重加算税の各賦課決定処分

上記(5)のとおり、平成23年分及び平成24年分の所得税の各更正処分は適法であり、上記(3)のロの(ハ)のBのとおり、本件所得の金額等の計算の基礎となるべき事実について隠ぺい又は仮装があったと認められ、請求人は、その隠ぺい又は仮装したところに基づき確定申告書を提出していたのであるから、通則法第68条第1項に規定する重加算税の賦課要件を満たしており、平成23年分及び平成24年分の所得税に係る重加算税の額は、原処分の額(平成26年7月1日付でされた異議決定によりその一部が取り消された後のもの)と同額となるので平成23年分及び平成24年分の所得税に係る重加算税の各賦課決定処分は適法である。

(7) 本件消費税等各決定処分について

本件業務等は、次のとおり、消費税法第4条第1項に規定する国内において事業者が行った課税資産の譲渡等(役務の提供)に該当し、同法第7条第1項に規定する輸出免税の適用もないことから、本件各課税期間の消費税等の額は、いずれも原処分の額と同額となるので、本件消費税等各決定処分は適法である。

イ 上記(1)で述べたとおり、本件業務等の事業主体は請求人であり、請求人は、実習生等の選考及び訓練、日本での実習生等の管理や突発事故の処理など、主として日本国内における業務を行っていたと認められ、本件各請求書を自宅で作成していること、自宅以外に本件業務等を行う拠点は認められないことからすると、請求人が本件業務等の役務の提供を行う事務所等の所在地は、国内にある請求人の自宅であると認められる。
 したがって、請求人が国内及び国内以外の地域にわたって役務の提供を行っていたとしても、本件業務等が行われた場所は請求人の自宅がある国内となることから、本件業務等は、消費税法第4条第1項に規定する国内において事業者が行った課税資産の譲渡等(役務の提供)に該当する。

ロ また、上記(1)で述べたとおり、本件業務等は、非居住者であるK社に対する役務の提供と認められ、本件業務等の対価の額には、国内において直接便益を享受するものとして課税対象となるものと輸出取引等に該当するものとが混在していることも考えられるが、仮に、輸出取引等に該当するものが含まれていたとしても、請求人は、本件業務等に関して、輸出取引等に該当する部分の対価の額を証明する相手方との契約書その他の書類の保存をしていないことから、消費税法第7条第1項に規定する輸出免税等の適用はない。

(8) 本件消費税等無申告加算税各賦課決定処分について

上記(7)のとおり、平成20年課税期間ないし平成22年課税期間の消費税等の各決定処分はいずれも適法であり、平成20年課税期間ないし平成22年課税期間の消費税等の各決定処分により納付すべき税額の基礎になった事実が各決定処分前の税額の基礎とされていなかったことについて通則法第66条第1項ただし書に規定する正当な理由があるとは認められないことから、同法第66条第1項及び第2項並びに地方税法附則第9条の4《譲渡割の賦課徴収の特例等》及び第9条の9《譲渡割に係る延滞税等の計算の特例》第1項の規定に基づいてされた本件消費税等無申告加算税各賦課決定処分は適法である。

(9) 本件消費税等重加算税各賦課決定処分について

上記(7)のとおり、平成23年課税期間及び平成24年課税期間の消費税等の各決定処分はいずれも適法であり、上記(3)のロの(ハ)のCのとおり、平成23年課税期間及び平成24年課税期間の消費税の課税標準等又は税額等の計算の基礎となるべき事実について隠ぺい又は仮装があったと認められ、その隠ぺい又は仮装したところに基づき確定申告書を提出していなかったのであるから、通則法第68条第2項に規定する重加算税の賦課要件を満たしており、平成23年課税期間及び平成24年課税期間の消費税等に係る重加算税の額は、原処分の額と同額となるので、同項並びに地方税法附則第9条の4及び第9条の9第1項の規定に基づいてされた本件消費税等重加算税賦課決定処分は適法である。

(10) その他

原処分のその他の部分については、請求人は争わず、当審判所の調査の結果によっても、これを不相当とする理由は認められない。

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