(平成28年9月28日裁決)

《裁決書(抄)》

1 事実

(1) 事案の概要

本件は、審査請求人(以下「請求人」という。)が、土地の所有権移転登記を受けるに当たり納付した登録免許税額が過大であったとして、登録免許税法第31条《過誤納金の還付等》第2項の規定に基づき、原処分庁に対し、所轄税務署長に対する還付通知をすべき旨の請求をしたところ、原処分庁が、還付通知をすることはできない旨の通知処分をしたことから、請求人が原処分の全部の取消しを求めた事案である。

(2) 関係法令等

別紙1のとおりである。

(3) 審査請求に至る経緯及び基礎事実

次の事実については、請求人と原処分庁との間に争いがなく、当審判所の調査の結果によってもその事実が認められる。

  • イ E社は、平成26年12月頃までに、同社が所有するa市b町g番、同町e番○から○、同町f番○、同町f番○及び同○所在の各土地に宅地造成工事を施した。
  • ロ 上記イの各土地は、平成27年1月9日付で、一筆(a市b町g番)に合筆された上、同町g番○から○に分筆され(なお、合筆前の上記イの各土地のうち、同町e番○所在の土地を、以下「本件合筆前土地」という。また、分筆後の同町g番○所在の土地を、以下「本件土地」という。)、さらに、本件土地の地目を山林から宅地に変更する旨の登記がされた。
     本件土地は、本件合筆前土地とおおむね同位置である。
  • ハ 請求人は、平成27年3月26日、E社から本件土地を代金○○○○円で買い受けた。
  • ニ 請求人及びE社は、上記ハの売買契約に基づく所有権移転登記手続を、F司法書士に委任した。
     F司法書士は、平成27年3月26日、請求人及びE社を代理して、B地方法務局に対し、本件土地について、平成27年3月26日売買を原因とするE社から請求人に対する所有権移転登記を申請した(以下「本件登記申請」といい、同日を「本件登記申請日」という。)。
     本件登記申請に係る申請書には、課税価格○○○○円、登録免許税○○○○円との記載があり、F司法書士は、本件登記申請に際し、請求人を代理して、当該登録免許税額を納付した。
     そして、平成27年3月26日付で、本件土地について、本件登記申請どおりの登記(以下「本件登記」という。)がされた。
  • ホ ところで、本件土地は、施行令附則第3項第1号所定の基準日である本件登記申請日の前年12月31日である平成26年12月31日現在において固定資産課税台帳に登録された価格(以下「登録価格」という。)がなかった。
     そこで、F司法書士は、本件登記申請に当たり、a市長から、別紙2のとおり本件土地の南東方に位置するa市b町f番○所在の土地(地目 宅地、地積 149.71平方メートル。以下「本件隣接地」という。)に係る平成26年度の土地評価証明書(評価額○○○○円)の発行を受け、同土地の1平方メートル当たりの評価額○○○○円(○○○○円 ÷ 149.71平方メートル ≒ ○○○○円。以下「本件隣接地価格」という。)に本件土地の地積を乗じて、本件土地の課税価格を○○○○円と算定した(○○○○円 × 166.13平方メートル = ○○○○円(1,000円未満切捨て))。
     そして、B地方法務局不動産登記部門登記官Gは、施行令附則第3項の規定に基づき、上記○○○○円を本件土地の価額と認定した(以下、当該価額を「本件登記官認定額」という。)。
  • ヘ 請求人は、a市長から発行を受けた本件合筆前土地に係る平成27年度の土地評価証明書(評価地目 雑種地、地積 274.00平方メートル、評価額 ○○○○円。なお、算定の基準日は平成27年1月1日である。)に基づく同土地の1平方メートル当たりの評価額○○○○円(○○○○円÷274.00平方メートル≒○○○○円)に本件土地の地積を乗じて算定した○○○○円(○○○○円 × 166.13平方メートル = ○○○○円(1,000円未満切捨て))が、本件登記の時における本件土地の正当な価額であり(以下「請求人主張額」という。)、これを基礎に計算した登録免許税額○○○○円と、上記ニの登録免許税額○○○○円との差額である○○○○円は過誤納であるとして、登録免許税法第31条第2項の規定に基づき、原処分庁に対し、所轄税務署長に対する還付通知をすべき旨の請求をした。
  • ト 原処分庁は、上記ヘの還付通知をすべき旨の請求に対し、平成27年10月21日付で、還付通知をすべき理由がない旨の通知処分(原処分)をした。
  • チ 請求人は、原処分を不服として、平成27年12月17日に審査請求をした。
  • リ 原処分庁は、平成28年4月1日付の人事異動により、B地方法務局不動産登記部門登記官Gから同Dに変更となった。

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2 争点

本件登記官認定額が本件土地の価額として過大であるか否か。

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3 主張

請求人 原処分庁
本件土地と本件隣接地とでは、その所在する○○の種別が異なっており、また、本件登記官認定額を算定する基礎となった本件隣接地価格は、道路を挟んで本件土地の向かい側にある土地の平成27年度の1平方メートル当たりの評価額と比べても、かなり高いものとなっていることから、本件登記官認定額は、本件土地の価額として過大であるというべきである。
 他方で、本件合筆前土地の平成27年度の登録価格は1平方メートル当たり○○○○円であるところ、平成27年12月に、本件土地の北東方に隣接するa市b町g番○所在の土地の所有権移転登記を受けるに際し、登記官が認定した同土地の1平方メートル当たりの価額が○○○○円であったことに照らせば、本件合筆前土地の平成27年度の価額○○○○円を基礎として算定した○○○○円(請求人主張額)が、本件登記の時における本件土地の正当な価額であるというべきである。
 したがって、請求人主張額に基づき計算した登録免許税額と本件登記官認定額に基づき計算した登録免許税額との差額は、過誤納であり、還付されるべきである。
本件土地は、平成27年1月9日に合筆、分筆及び地目変更の各登記がなされていることから、平成26年12月31日現在、登録価格のない不動産である。そして、本件登記申請日における本件土地の価額は、施行令附則第3項の規定に基づき、本件土地に類似する不動産の平成26年12月31日現在における登録価格を基礎として認定することになる。
 本件隣接地は、本件土地の近隣に位置する上、登記名義人は請求人である。また、本件隣接地は、もともと山林に隣接しており、山林から宅地に造成された本件土地との類似性は極めて高く、本件土地の周囲には、本件隣接地よりも本件土地に類似する土地は認められない。
 したがって、本件隣接地を本件土地に類似する不動産として、本件隣接地価格を基礎とした本件登記官認定額に誤りはなく、本件登記に係る登録免許税額に過誤納はない。
 なお、請求人主張額の基礎とされた本件合筆前土地の課税地目は、本件土地の地目と異なり、山林であることから、請求人主張額を本件土地の価額とすることはできない。

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4 判断

(1) 認定事実

請求人提出資料、原処分関係資料及び当審判所の調査の結果によれば、次の事実が認められる。

  • イ 本件登記申請日における本件土地の現況等は、次のとおりである。
    1. (イ) 本件土地は、間口12.00m、奥行き14.06mの長方形状の宅地である。
    2. (ロ) 本件土地の地積は、166.13平方メートルである。
    3. (ハ) 本件土地は、別紙2のとおり、○○第○条第○項に定める○○第2種地域に所在しており、当該地域の○○はXX%、○○はXX%である。
  • ロ 本件隣接地は、別紙2のとおり、○○第○条第○項に定める○○第3種地域に所在しており、当該地域の○○はXX%、○○はXX%である。
  • ハ 別紙2のとおり本件土地の北西方約50mに位置するa市b町h番○所在の土地(以下「本件近傍地」という。)の本件登記日における現況等は、次のとおりである。
    1. (イ) 本件近傍地は、間口23.72m、奥行き8.53mのほぼ長方形状の宅地である。
    2. (ロ) 本件近傍地の地積は、202.50平方メートルである。
    3. (ハ) 本件近傍地は、別紙2のとおり、○○第○条第○項に定める第2種地域に所在している。
  • ニ 本件土地、本件隣接地及び本件近傍地は、別紙2のとおり、いずれも、d号線に沿接しており、本件土地及び本件近傍地の土地の固定資産評価に適用されるd号線に付された平成24年度(平成26年度の基準年度)の路線価は○○○○円であり、本件隣接地の土地の固定資産評価に適用されるd号線に付された同年度の路線価は○○○○円である。
  • ホ 本件近傍地に係る平成26年度の登録価格は○○○○円である。

(2) 検討

  • イ 登録免許税法第10条第1項は、不動産の登記の場合における登録免許税の課税標準たる不動産の価額は、当該登記の時における不動産の価額である旨規定し、同法附則第7条は、上記課税標準たる不動産の価額は、当分の間、当該不動産の登録価格を基礎として政令で定める価額によることができる旨規定している。
     そして、登録免許税法附則第7条の委任を受けた施行令附則第3項は、上記政令で定める価額は、登録価格のある不動産の場合については、登録価格の100分の100を乗じて計算した金額に相当する価額とし、登録価格のない不動産については、当該不動産の登記の申請の日において当該不動産に類似する不動産の登録価格を基礎として当該登記に係る登記機関が認定した価額(以下「登録機関認定価額」ということがある。)とする旨規定している。
  • ロ 本件土地は、上記1の(3)のホのとおり、施行令附則第3項第1号所定の基準日である本件登記申請日の前年12月31日現在において登録価格がなかったことから、同項の規定により、課税標準たる不動産の価額は、本件登記申請日において本件土地に類似する不動産の登録価格を基礎として登記機関が認定した価額によることとなるが、上記(1)のイ、ロ及びニのとおり、本件隣接地は、土地利用に係る行政上の規制等の内容や固定資産評価に適用される路線価が本件土地とは異なることから、本件土地に類似する不動産とは認め難い。
     したがって、上記1の(3)のホのとおり本件隣接地価格を基礎として算定された本件登記官認定額は、登録機関認定価額として適正なものということはできない。
  • ハ 一方、上記(1)のイ、ハ及びニのとおり、本件近傍地は、土地利用に係る行政上の規制等の内容や固定資産評価に適用される路線価が本件土地と同じであることから、本件土地に類似する不動産であると認めることができる。
     そこで、本件近傍地の登録価格を基礎として本件土地の登録機関認定価額(算定の基準日は、施行令附則第3項第1号の規定により、本件登記申請の日の前年12月31日である平成26年12月31日となる。)を算定すると、別表のとおり、○○○○円となり、これをもって本件登記に係る登録免許税の課税標準たる不動産の価額と認めるのが相当である。
  • ニ 請求人は、上記1の(3)のヘのとおり本件合筆前土地の平成27年度の登録価格を基礎として算定した請求人主張額が、本件土地の正当な価額である旨主張する。
     しかし、上記ハのとおり、本件登記に係る登録機関認定価額の算定の基準日は、本件登記申請の日の前年12月31日である平成26年12月31日となるから、これと異なり、算定の基準日を平成27年1月1日とする本件合筆前土地の平成27年度の登録価格を算定の基礎とする請求人主張額は、施行令附則第3項第1号の規定に反しており、本件登記に係る登録機関認定価額として適正なものとはいえないから、請求人の主張は採用することができない。

(3) 小括

以上によれば、本件登記官認定額のうち、上記(2)のハの審判所認定額を超える部分は、過大であると認められる。

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5 原処分について

上記4のとおり、本件土地に係る登録免許税の課税標準たる不動産の価額は○○○○円となり、これを基に、登録免許税法第9条、同法別表第1第1号の(ニ)のハ及び租税特別措置法第72条の規定により登録免許税の額を算定すると、○○○○円(100円未満切捨て)となるから、これと、上記1の(3)のニのとおり請求人が納付した登録免許税○○○○円との差額である○○○○円については、登録免許税の課税標準等又は税額の計算が国税に関する法令の規定に従っていなかったものと認められ、過誤納と認められる。
 したがって、請求人の還付通知をすべき旨の請求は、上記過誤納の限度で理由があり、原処分のうち、上記過誤納に係る部分は違法であるから、当該部分を取り消すべきである。

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6 その他

原処分のその他の部分については、請求人は争わず、当審判所に提出された証拠資料等によっても、これを不相当とする理由は認められない。

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