(平成30年9月27日裁決)

《裁決書(抄)》

1 事実

(1) 事案の概要

本件は、共同審査請求人E(以下「請求人E」という。)及びG(以下「請求人G」といい、請求人Eと併せて「請求人ら」という。)が、3棟の建物の敷地の用に供されていた請求人ら共有の土地を更地にして譲渡したことによる譲渡所得について、居住用財産の譲渡所得の特別控除の特例を適用して所得税等の確定申告をしたのに対し、原処分庁が、2棟の建物は請求人らが居住の用に供していなかったからその敷地部分については当該特例を適用できず、また、請求人Eが虚偽答弁をしたなどとして所得税等の更正処分及び重加算税の賦課決定処分等をしたところ、請求人らが、3棟の建物は併せて一構えの家屋で全てが請求人らの居住の用に供していた家屋に該当するから敷地の全てに当該特例を適用でき、また、請求人Eが虚偽答弁をした事実はないなどとして、原処分の全部の取消しを求めた事案である。

(2) 関係法令等

関係法令等は、別紙4のとおりである。
 なお、別紙4で定義した略語については、以下、本文及び別表においても使用する。

(3) 基礎事実

当審判所の調査及び審理の結果によれば、以下の事実が認められる。

  • イ 請求人らの概要
     請求人Eは、社会保険労務士で、平成11年12月27日から平成27年3月31日までの間、また、請求人Gは、年金受給者で、昭和49年9月28日から平成27年3月31日までの間、それぞれd市e町○−○を住民票上の住所としていた。
  • ロ 譲渡した土地の取得状況
    • (イ) 請求人らは、平成6年11月○日に相続により、d市e町○−○の土地を取得した。
    • (ロ) 請求人らは、平成12年9月7日付で、上記(イ)の土地を、d市e町○番○及び同番○に分筆した。
    • (ハ) 請求人らは、平成26年12月22日付で、請求人らが共有する上記(ロ)のd市e町○番○の土地を、Hが所有する同○番○の土地と交換した(以下、上記(ロ)の分筆後の同○番○の土地と同○番○の土地を併せて「本件土地」という。)。
       なお、本件土地の共有持分は、請求人Eが5分の3、請求人Gが5分の2であった。
  • ハ 本件土地上に所在した建物
    • (イ) 本件土地上には、請求人らが平成6年11月○日に相続により取得した住居表示がd市e町○−○の建物(以下「本件母屋」という。)、同番○号の建物(以下「本件別棟A」という。)及び同番○号の建物(以下「本件別棟B」といい、本件別棟Aと併せて「本件各別棟」という。)の3棟の建物があった(以下、本件母屋及び本件各別棟を併せて「本件各建物」という。)。
    • (ロ) 本件母屋は、昭和37年12月3日に建築された木造瓦葺2階建ての家屋であったが、昭和55年の増改築により2階部分が除去され、平成27年7月10日の解体時点では木造瓦葺平家建ての家屋であった。
       なお、本件母屋の共有持分は、請求人Eが5分の3、請求人Gが5分の2であり、昭和55年の増改築については、未登記であった。
    • (ハ) 本件各別棟は、いずれも昭和39年に賃貸の用に供する目的で建築された木造瓦葺平屋建ての共同住宅であり、構造上中央で2等分されて、独立した二つの区画に仕切られていた(以下、本件別棟Aにある区画を「本件居宅A」及び「本件居宅B」といい、本件別棟Bにある区画を「本件居宅C」及び「本件居宅D」といい、本件居宅Aないし本件居宅Dを併せて「本件各居宅」という。)。
       なお、本件各別棟は、未登記であった。
  • ニ 本件土地及び本件各建物の譲渡
    • (イ) 請求人らは、平成27年6月18日付で、J社に対して本件土地の一部を○○○○円及び本件各建物を○○○○円で譲渡する不動産売買契約を締結し、同日付で、K社に対して本件土地の残りの部分を○○○○円及び本件各建物を○○○○円で譲渡する不動産売買契約を締結した(以下、これらの売買契約を併せて「本件各譲渡契約」といい、その契約書を「本件各譲渡契約書」という。)。
       なお、本件各譲渡契約書には、請求人らが本件各建物を解体し、本件土地を更地にして引き渡す旨が定められていた。
    • (ロ) 請求人らは、L社(以下「本件解体業者」という。)に依頼して、本件各建物を平成27年7月10日に取り壊し、本件土地を更地にした(以下、本件解体業者が行った本件各建物の取壊工事を「本件解体工事」という。)。
    • (ハ) 請求人らは、平成27年8月11日付で、d市e町○−○の土地を、○番○及び同番○に分筆した。
    • (ニ) 請求人らは、平成27年8月31日に、上記(ハ)の分筆後のd市e町○番○の土地及び同○番○の土地をJ社へ、また上記(ハ)の同○番○の土地をK社へ、それぞれ引き渡した。

(4) 審査請求に至る経緯

  • イ 請求人Eは、平成27年分の所得税及び復興特別所得税(以下「所得税等」という。)について、分離長期譲渡所得の金額の計算上、措置法第35条第1項の規定による居住用財産の譲渡所得の特別控除の特例(以下「本件特例」という。)を適用して、確定申告書に別表1の「確定申告」欄のとおり記載して、法定申告期限までに申告した(以下、請求人Eが申告した平成27年分の所得税等の確定申告書を「本件申告書A」という。)。
     なお、本件申告書Aの「税理士署名押印」欄に、署名及び押印はない。
  • ロ 請求人Gは、平成27年分の所得税等について、分離長期譲渡所得の金額の計算上、本件特例を適用して、確定申告書に別表2の「確定申告」欄のとおり記載して、法定申告期限後の平成28年4月7日に申告した(以下、請求人Gが申告した平成27年分の所得税等の確定申告書を「本件申告書B」といい、本件申告書Aと併せて「本件各申告書」という。)。
     なお、本件申告書Bの「税理士署名押印」欄に、署名及び押印はない。
  • ハ 原処分庁は、原処分庁所属の調査担当職員(以下「本件調査担当職員」という。)の調査(以下「本件調査」という。)に基づき、上記イの請求人Eの申告に対し、平成29年7月14日付で、別表1の「更正処分等」欄のとおり平成27年分の所得税等の更正処分並びに過少申告加算税及び重加算税の各賦課決定処分をし、また、上記ロの請求人Gの申告に対し、同日付で、別表2の「更正処分等」欄のとおり平成27年分の所得税等の更正処分及び重加算税の賦課決定処分をした。
  • ニ 請求人らは、平成29年10月10日に原処分に不服があるとして審査請求をした。
  • ホ 請求人らは、請求人Eを総代として選任し、その旨を平成29年12月26日に当審判所に届け出た。

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2 争点

  • (1) 争点1(本件土地のうち本件特例を適用できる範囲は、全てか一部か。)について
  • (2) 争点2(請求人らの行為は、通則法第68条第1項及び第2項の各賦課要件をそれぞれ満たすか否か。)について

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3 争点についての主張

(1) 争点1(本件土地のうち本件特例を適用できる範囲は、全てか一部か。)について

原処分庁 請求人ら
本件土地のうち本件特例を適用できる範囲は、次の理由から、株式会社ゼンリンが発行した住宅地図(以下「本件住宅地図」という。)上の本件母屋と本件別棟Aの間の「かき」の表示によって区分された本件母屋の敷地部分のみである。
  • イ 本件母屋は、風呂、トイレ、台所及び複数の居室を有する居住用家屋であり、請求人らが日常生活を営んでいた家屋は、本件母屋であると認められる。
     本件各別棟は、賃貸目的で建てられた家屋で、請求人らが居住の用に供したという実態を客観的に認めることはできない。本件各別棟を本件母屋と一体とみなして居住用家屋と判断できる事情が存在したとは認められないから、本件各別棟を請求人らの居住の用に供していた家屋と認めることはできない。
  • ロ 本件各建物は、それぞれが独立した居住用家屋としての機能を有していたと認めるのが相当であって、本件各建物は併せて一構えの家屋とは認められない。
  • ハ 仮に、本件各居宅4戸のうちの3戸が請求人らの居住の用に供されていたとしても、その場合は請求人らが二以上の自己の居住用の家屋を有する場合に該当し、措置法施行令第20条の3第2項の規定により、本件特例の適用の前提となる家屋は、請求人らが主として居住の用に供していたと認められる本件母屋のみとなる。
  • ニ 本件各譲渡契約の締結前5年間に当たる平成22年ないし平成26年に発行された各本件住宅地図によれば、本件母屋と本件別棟Aとの間には一貫して「かき」が記載されており、本件土地に「かき」又は「かき」に相当する状態が存在したと認められるから、本件土地のうち本件特例を適用できる範囲は、本件住宅地図上の「かき」によって区分された本件母屋の敷地部分であると判断するのが合理的である。
本件各居宅のうち貸家の実態があったのは、本件居宅Cのみで、本件各建物全体の10%にも満たない部分であることに加え、次の理由から、本件土地の全てに本件特例を適用できる。
  • イ 本件各譲渡契約の締結時点で本件各居宅に入居者はいなかった。また、本件居宅A、本件居宅B及び本件居宅Dの3戸の居宅を賃貸の用に供していたのは20年以上前であって、貸家の実態はなく、その後は請求人らが物置として長く使っていた。
  • ロ 数十年使っていない本件各居宅の設備を復旧するには相当額の金銭負担及び工事期間が必要であり、すぐに人が住める状態ではなかった。
     また、物置として利用するために水道・電気・ガスの設備を完全に取り外すことは経済的合理性に欠ける。
     よって、上記イと併せ考えると、少なくとも上記イの3戸の居宅は、本件母屋と一体とみなされる居住用財産と判断されるべきである。
  • ハ 本件住宅地図上「かき」の表示は、発行年分によって一貫性がなく、本件住宅地図の作成者が、本件母屋と本件別棟Aとの間に大きな樹木が茂っていたものを「かき」と表示したにすぎないと推測され、本件母屋と本件別棟Aとの間に境界は存在しなかった。

(2) 争点2(請求人らの行為は、通則法第68条第1項及び第2項の各賦課要件をそれぞれ満たすか否か。)について

原処分庁 請求人ら
次のイないしチのとおり、請求人Eの行為は、同人が当初から本件土地の非居住用部分に本件特例を適用して所得を過少に申告することを意図し、その意図を外部からもうかがい得る特段の行動をしたと認められるので、通則法第68条第1項に規定する重加算税の賦課要件を満たす。
 また、請求人Gは、請求人Eに本件各譲渡契約に係る譲渡所得の申告及び本件調査への対応等を委任していることなどにより、請求人Eの行為は請求人Gの行為と同視し得るから、請求人Gについても通則法第68条第2項に規定する重加算税の賦課要件を満たす。
  • イ 請求人らは、本件母屋の敷地部分のみが本件特例の対象になることを認識していたにもかかわらず、本件土地の全てが自己の居住用家屋の敷地である旨記載した本件各申告書を原処分庁に提出した。
  • ロ 請求人Eは、本件各申告書を提出する前に、税理士法人N会計(以下「本件税理士法人」という。)所属のP税理士(以下「本件税理士」という。)に本件特例の相談をした際、本件各別棟の存在及び本件居宅Cを賃貸していた事実を伝えず、かつ、本件土地及び本件各建物に係る具体的な資料を提示しなかった。
  • ハ 請求人Eは、同人の妻及び請求人Gが賃借人から家賃を受領していたことを知っていたにもかかわらず、本件調査の際、本件調査担当職員から指摘されるまで、本件居宅Cに平成26年12月まで賃借人がいたことを一切言わず、指摘されても家賃を受領していないとか、受領していたことを知らなかったなど真実と異なる答述をした。
  • ニ 請求人Eは、本件各居宅の利用状況について、答弁を変遷させ、本件各居宅が居住用家屋であったかのように装った。
  • ホ 本件調査の際、請求人Eは、本件各譲渡契約の直前において、本件各居宅にガス設備、電気設備、トイレ及び風呂があったことを認識していたにもかかわらず、本件調査の際には本件各居宅が既に取り壊され、事実の立証が困難である状況を利用して、それらの設備が存在しなかったとか、本件居宅Aを、トイレ及び風呂を取り除き全てをフローリングにしたとか、本件居宅B及び本件居宅Dの風呂桶を取り除いたなどの虚偽の答述をした。
  • ヘ 本件調査の際、請求人Eは、自ら答述した内容が事実と異なることが判明した都度、答弁及び原処分庁宛ての提出文書によって主張を変遷させており、当該文書は請求人Eによる主張の変遷を裏付ける重要な証拠である。
  • ト 請求人Eは、本件特例の適否に係る立証責任が原処分庁にある旨の主張を繰り返したり、本件各譲渡契約直前の本件各居宅の利用状況とは関係ない過去の状況を説明して本件調査を困難にさせた。
  • チ たとえ隠蔽・仮装の発現とみられる行動が納税申告書提出後又は法定申告期限経過後にしかなかったとしても、その発現行為自体から、納税申告書提出時又は法定申告期限経過時における過少申告の意図が推認されるときは、特段の事情が認められない限り、当該発現行為は当初からの内心の意図又は計画に基づくものと推認され、重加算税の賦課要件を充足すると解すべきである。
次のイないしニのとおり、請求人らに隠蔽又は仮装に該当する行為はないから、通則法第68条第1項及び第2項に規定する重加算税の各賦課要件は満たさない。
  • イ 請求人らが主張を変遷させたり転換した事実はなく、虚偽の答弁を行う意図もない。
     本件調査担当職員による事実認定は余りに乱雑で内容確認が不十分であり、また、本件調査担当職員がそのことを認めようとしなかったため、請求人らは、わざわざ書面で主張を原処分庁へ提出した。
     提出した書面に変遷の痕跡はなく、請求人Eによる答弁の変遷や転換の有無については、当該書面の内容に基づき判断されるべきである。
  • ロ 物置として使っていた本件各居宅に電気設備等があるため、本件各別棟の敷地に本件特例の適用を受けられないことなど、税務知識のない請求人らが当初から予見することは不可能である。
  • ハ 請求人らは、本件各譲渡契約の締結時点で本件各居宅に誰も居住しておらず、本件各居宅のうち3戸は貸家としていたのが相当以前であること、その後物置として使用していたことから、本件特例を適用できると判断して申告した。
     請求人らが本件各居宅を物置と認識し、売却時点で誰も住んでいなかったことは事実であるから、本件各別棟の敷地に本件特例の適用が認められないとしても、飽くまでも見解の相違にすぎない。
  • ニ 以上のとおり、重加算税の賦課要件をそもそも充足せず、本件調査の過程で明らかに調査を妨害するような行動は一切していない。

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4 当審判所の判断

(1) 争点1(本件土地のうち本件特例を適用できる範囲は、全てか一部か。)について

  • イ 法令解釈等
    • (イ) 措置法第35条第1項は別紙4の1のとおり規定するところ、本件特例は、個人がその居住の用に供している家屋又は当該家屋の敷地の用に供されている土地等を譲渡するような場合には、これに代わる新たな居住用財産を取得するのが通常であるなど、一般の資産の譲渡に比して特殊な事情があり、担税力も高くない例が多いことなどを考慮して設けられた特例措置であると解される。
       また、措置法施行令第23条第1項において準用する同令第20条の3第2項は、別紙4の2のとおり、個人がその居住の用に供している家屋を二以上有する場合には、本件特例の適用対象となる家屋は、これらの家屋のうち、その者が主として居住の用に供していると認められる一の家屋に限るものとする旨規定している。これは、租税負担公平の原則から本件特例の適用を政令で定めるものの譲渡に限定し、本件特例の濫用による不公平の拡大を防止しようとするもので、特則、例外規定である同条項の解釈に当たっては、狭義性、厳格性が要請されているものと解される。
       そして、本件特例の適用対象となる家屋の判定に当たり、二以上の家屋が併せて一構えの家屋であるといえるか否かについては、まず、それぞれの家屋の規模、構造、間取り、設備、各家屋間の距離等の客観的状況によって判断すべきであり、個人及びその家族の使用状況等の主観的事情は二次的に参酌すべき要素にすぎないものと解するのが相当である。したがって、二以上の家屋が併せて一構えの家屋と認められるためには、単にこれらの家屋がその者及びその者と同居することが通常である親族等によって、機能的に一体として居住の用に供されているのみでは不十分であり、家屋の規模、構造、設備等の客観的状況から判断していずれか又はそれぞれが独立の居住用家屋としては機能できないものでなければならない。そうすると、二以上の家屋がそれぞれ独立の家屋として機能を有する場合には、これらの家屋を併せて一構えの家屋であるとは認められず、その者が主として居住の用に供していると認められる一の家屋に限り、本件特例の適用対象となるというべきである。
    • (ロ) 措置法通達35−5において準用する同通達31の3−12は、別紙4の4のとおり、譲渡した土地等が措置法第31条の3第2項(準用において同法第35条第1項)に規定する居住の用に供している家屋の「敷地」に該当するかどうかは、社会通念に従い、当該土地等が当該家屋と一体として利用されている土地等であったかどうかにより判定する旨定めているところ、この取扱いは、上記(イ)の本件特例の趣旨に合致するものであり、当審判所においても相当であると認められる。
  • ロ 認定事実
     請求人ら提出資料、原処分関係資料並びに当審判所の調査及び審理の結果によれば、以下の事実が認められる。
    • (イ) 本件各建物の規模、構造等
      • A 本件各建物の配置の略図、登記記録に記載されている事項及び平成27年度土地・家屋名寄帳(以下「本件名寄帳」という。)に記載されている事項は、別紙5のとおりである。
      • B 本件母屋は、複数の居室と物置、風呂場、トイレ、台所及び玄関を有していた。
      • C 本件各別棟は、課税床面積が各59.50平方メートルであるところ、上記1の(3)のハの(ハ)のとおり、中央で2等分されて独立した二つの区画に仕切られていたから、本件各居宅の面積はいずれも約29平方メートル程度であり、それぞれが2部屋の居室、風呂場、トイレ、台所及び玄関を有していた。
    • (ロ) 本件各建物の設備
      • A 本件解体業者が請求人らに交付した本件解体工事に係る平成27年6月11日付の木造住宅解体工事見積書(以下「本件工事見積書」という。)には、共通仮設工事費の明細として「電気、NTT等引込線撤去工事費(3棟)」、「ガス管切断、プラグ止工事費(3棟)」及び「仮設給水設備設置(水道使用料金共)」が記載されていた。なお、「仮設給水設備設置(水道使用料金共)」には、水道設備の撤去費用が含まれる。
      • B 本件居宅Cの賃借人であったQ(以下「本件賃借人」という。)は、昭和63年10月頃から平成26年12月までの間、本件居宅Cに入居し、d市のR社からプロパンガスの供給を受けていた。
    • (ハ) 本件母屋と本件各別棟との距離等
       別紙5の1(略図)のとおり、本件各建物は独立した建物で互いに接合されておらず、d市が平成26年に撮影した航空写真によれば、本件母屋と本件別棟Aとは軒先間の最短距離で3.7m程度離れていた。
    • (ニ) 本件母屋及び本件各居宅の本件各譲渡契約以前の利用状況
      • A 請求人らは、請求人Eの妻子とともに本件母屋で日常生活を営んでいた。
      • B 本件各居宅のうち、本件居宅Cには本件賃借人が平成26年12月まで入居していたがそれ以降は空き家であり、また、本件居宅A、本件居宅B及び本件居宅Dは、平成21年3月から平成27年1月まで水道の使用量はないことから遅くとも平成21年3月以降は空き家であった。
      • C 本件居宅Aには、本件解体工事の直前まで本棚、座卓、複数の額縁、紐でくくった複数の書籍の束が置かれていた。
      • D 本件解体業者が請求人らに交付した平成27年6月11日付の本件解体工事に伴う生活ごみ撤去工事に係る見積書には、工事場所として本件各建物の住居表示が記載され、また、明細として「生活ごみ(可燃・不燃)4t車2台」及び「生活ごみ(廃家電)4t車1台」と記載されていた。
    • (ホ) 本件母屋と本件別棟Aの間の「かき」について
      • A d市が平成26年に撮影した航空写真によれば、本件母屋と本件別棟Aの間には、樹木が密生していることは認められるものの、垣根、柵又は本件土地を区分するような構築物は認められない。
      • B 本件住宅地図については、凡例に「かき」を表す線が示されているとともに、「境界等は実状と異なる場合もあります」とも記載されているところ、平成14年、平成16年、平成22年ないし平成26年発行の各本件住宅地図を比較すると、平成14年及び平成16年発行の各本件住宅地図と、平成22年以降譲渡直前の平成26年までに発行された各本件住宅地図とでは、本件土地上の「かき」を表す線の有無又は形状が異なっている。
      • C 本件工事見積書には、高さ約80cm、長さ約26mの竹製の柵の撤去費用が記載されていた。なお、本件工事見積書からは、当該柵が本件土地上のどの位置に設置されていたかは明らかではない。
  • ハ 当てはめ
    • (イ) 本件特例の適用の前提となる家屋について
       本件特例を適用できる土地は、個人がその居住の用に供している家屋の敷地の用に供されていた土地であるところ、本件土地上には本件各建物が存在していたことから、本件各建物が請求人らの居住の用に供されていた家屋であったか否かについて検討する。
       本件母屋は、上記ロの(イ)のBのとおり、居住用家屋としての機能を有し、同(ニ)のAのとおり、請求人らがそこで日常生活を営んでいた。
       本件各別棟は、上記1の(3)のハの(ハ)のとおり、木造瓦葺平屋建てで、当初は賃貸用家屋として建築され、上記ロの(イ)のCのとおり、本件各居宅の面積はいずれも約29平方メートル程度で、それぞれが2部屋の居室、風呂場、トイレ、台所及び玄関を有し、同(ロ)のA及びBによれば、電気、水道及び固定電話回線等の各設備が備わっていたこと並びにプロパンガスの供給を受けることができたことが推認される。
       また、本件各建物は、上記ロの(ハ)のとおり、それぞれ独立した建物であり、本件母屋と本件各別棟のうち本件母屋に最も近い本件別棟Aとは軒先間の最短距離で3.7m程度離れていた。
       これらの本件各建物の規模、構造、間取り、設備、本件母屋と本件各別棟との距離並びに通常考えられる用法及び機能等を考慮すれば、本件各建物はそれぞれ独立して居住の用に供し得る機能を有する居住用家屋であることが認められる。
       そして、上記イの(イ)のとおり、二以上の家屋がそれぞれ独立の家屋として機能する場合には、これらの家屋を併せて一構えの家屋であるとは認められないことから、本件各建物を併せて一構えの家屋であると認めることはできない。
       したがって、本件特例の適用の前提となる家屋は、請求人らが日常生活を営んでおり、主として居住の用に供していた本件母屋に限られる。
    • (ロ) 本件特例の適用対象となる土地の範囲について
       譲渡した土地等が居住の用に供している家屋の敷地に該当するかどうかは、上記イの(ロ)のとおり、社会通念に従い、当該土地等が当該家屋と一体として利用されている土地等であったかどうかにより判定することとなるところ、上記(イ)のとおり、本件特例の適用の前提となる家屋は本件母屋に限られることから、本件特例の適用対象となる土地は、本件土地の全てではなく、本件土地のうち本件母屋の敷地の用に供されていた部分に限られる。
       そして、本件各譲渡契約においては、本件母屋の敷地の用に供されていた部分と本件各別棟の敷地の用に供されていた部分からなる本件土地の全てが譲渡されたことから、以下では、本件土地のうち、本件母屋の敷地の用に供されていた部分の範囲を、塀や障壁等によって特定できるか、また、塀や障壁等によってその範囲を特定できない場合は、本件特例が適用される本件土地の面積をどのように算定することが合理的かについて検討する。
      • A 本件母屋の敷地の用に供されていた部分の範囲を塀や障壁等によって特定することの可否
         この点、原処分庁は本件住宅地図上の「かき」を表す線に基づき本件土地を区分していることから、ここではその合理性について検討する。
         上記ロの(ホ)のAのとおり、d市が平成26年に撮影した航空写真において、本件母屋と本件別棟Aの間には、垣根、柵又は本件土地を区分するような構築物は認めらない。また、同Bのとおり、発行された年が異なる複数の本件住宅地図を比較すると、平成14年及び平成16年発行の各本件住宅地図と平成22年以降譲渡直前の平成26年までに発行された各本件住宅地図とでは「かき」を表す線の有無及び形状が異なることに加え、本件住宅地図の凡例には「境界等は実状と異なる場合もあります」と記載されている。
         そして、上記ロの(ホ)のCによれば、平成27年7月10日の本件解体工事の時点において、本件土地に高さ約80cm、長さ約26mの竹製の柵が存在したことは推認されるが、当該柵がどの位置に設置されていたかは明らかではなく、原処分庁の主張する位置に当該柵が設置されていたことを示す証拠は見当たらない。
         以上を併せ考えると、本件土地に本件各譲渡契約の直前において竹製の柵が存在したことは推認できるとしても、平成22年ないし平成26年発行の本件住宅地図上の「かき」を表す線の位置に本件母屋の敷地と本件各別棟の敷地とを区分するような「かき」が存在したとまで認めることはできないことから、原処分庁が行った「かき」を表す線に基づく本件土地の区分に合理性は認められない。
         また、当審判所の調査によっても、本件土地に本件各建物の敷地が特定できるような塀や障壁等が存在したことを示す証拠は見当たらないから、本件母屋の敷地の用に供されていた部分の範囲を、塀や障壁等によって特定することはできない。
      • B 本件特例が適用される本件土地の面積の算定
         上記Aのとおり、本件土地については、本件母屋の敷地の用に供されていた部分の範囲を、塀や障壁等によっては特定することができないところ、一団の土地上に、本件特例の適用の前提となる家屋とそれ以外の建物が混在し、両者の間に塀や障壁等が存在しないため、土地の具体的利用状況が不明確な場合には、経験則上、建物の敷地の用に供されている部分の利用割合は、特段の事情が存しない限り、建物の建築面積の比率に近似すると考えられることから、本件特例の適用の前提となる家屋とそれ以外の建物の建築面積の合計に占める本件特例の適用の前提となる家屋の建築面積の割合により、本件特例が適用される土地の面積を算定するのが相当である。したがって、本件においては、本件各建物の建築面積の合計に占める本件母屋の建築面積の割合により、本件特例が適用される土地の面積を計算するのが合理的である。
         そして、本件各建物の建築面積を把握するに当たっては、それらが既に取り壊されている上、上記1の(3)のハの(ロ)及び(ハ)のとおり、本件各建物は解体直前の時点においていずれも平屋建てで、本件母屋に係る昭和55年の増改築は登記されておらず、本件各別棟も未登記の建物であることから、別紙5の2の登記記録上の床面積を用いることはできないが、別紙5の3のとおり、本件名寄帳によって本件各建物の課税床面積を把握することは可能であるから、当該課税床面積を用いて計算することが合理的である。
         そうすると、本件土地のうち本件特例が適用される部分の占める割合(以下「本件特例適用割合」という。)は、別紙5の3のとおり、本件母屋の課税床面積195.06平方メートル(141.72平方メートル+53.34平方メートル)が、本件母屋の課税床面積195.06平方メートルと本件各別棟の課税床面積119.00平方メートル(59.50平方メートル×2棟)の合計すなわち本件各建物の総課税床面積314.06平方メートル(195.06平方メートル+119.00平方メートル)に占める割合(195.06÷314.06)となる。
         したがって、本件土地のうち、本件特例が適用される範囲は、本件母屋の敷地に相当する部分であり、その面積は、本件土地の面積に本件特例適用割合を乗じた面積である。
  • ニ 請求人らの主張について
    • (イ) 請求人らは、上記3の(1)の「請求人ら」欄のとおり、本件居宅C以外は貸家ではなく、本件居宅Cの面積は本件各建物全体の10%に満たないから、本件土地の全てに本件特例を適用できる旨主張する。
       しかしながら、上記ハの(イ)のとおり、本件特例の適用の前提となる家屋は、本件母屋のみであって、本件居宅C以外が、本件特例の適用の前提となる家屋となるものではなく、本件土地のうち本件特例を適用できる面積は、同(ロ)のとおり、本件土地の面積に本件特例適用割合を乗じた面積である。
       したがって、この点に関する請求人らの主張には理由がない。
    • (ロ) 請求人らは、上記3の(1)の「請求人ら」欄のイ及びロのとおり、要旨、本件居宅C以外は物置として長く使っていたこと及びすぐに人が住める状態ではなかったのであるから、少なくとも本件居宅C以外は本件母屋と一体とみなされる居住用財産と判断されるべきである旨主張する。
       しかしながら、一構えの家屋の判断については、上記イの(イ)のとおり解されるところ、物置等の用途で使用されていたとしても、当該事情は請求人らの主観的事情であって、それらは二次的に参酌すべき要素にすぎず、上記ハの(イ)に示したとおり、本件各建物はそれぞれ独立して居住の用に供し得る機能を有する居住用家屋であるから、すぐに人が住める状態でなかったとしても、本件居宅C以外の3戸を本件母屋と一体とみなして本件特例の適用の前提となる家屋と判断することはできない。
       したがって、この点に関する請求人らの主張には理由がない。
  • ホ 本件各譲渡契約に係る分離長期譲渡所得の金額
     以上により、本件特例適用割合を用いて請求人らの本件各譲渡契約に係る譲渡所得の金額を計算すると、別表3及び4の各「特別控除後の分離長期譲渡所得の金額」欄のとおり、請求人Eの分離長期譲渡所得の金額は○○○○円、請求人Gの分離長期譲渡所得の金額は○○○○円となる。

(2) 争点2(請求人らの行為は、通則法第68条第1項及び第2項の各賦課要件をそれぞれ満たすか否か。)について

  • イ 法令解釈
     通則法第68条第1項及び第2項に規定する重加算税の制度は、納税者が過少申告をするについて隠蔽又は仮装という不正手段を用いていた場合、又は、隠蔽又は仮装という不正手段を用いて期限内申告書を提出しなかった場合に、過少申告加算税又は無申告加算税よりも重い行政上の制裁を科することによって、悪質な納税義務違反の発生を防止し、もって申告納税制度による適正な徴税の実現を確保しようとするものである。
     したがって、重加算税を課するためには、過少申告行為又は無申告行為そのものとは別に、隠蔽又は仮装と評価すべき行為が存在することを要するが、上記の重加算税制度の趣旨に鑑みれば、架空名義の利用や資料の隠匿等の積極的な行為が存在したことまで必要であると解するのは相当でなく、納税者が、当初から所得を過少に申告すること、又は法定申告期限までに申告しないことを意図し、その意図を外部からもうかがい得る特段の行動をした上、その意図に基づき、過少申告をし、又は法定申告期限までに申告しなかったような場合には、重加算税の賦課要件が満たされるものと解するのが相当である。
  • ロ 認定事実
     請求人ら提出資料、原処分関係資料並びに当審判所の調査及び審理の結果によれば、以下の事実が認められる。
    • (イ) 本件調査担当職員が、平成28年7月29日に、請求人Eに対して、電話で本件調査に係る事前通知を行ったところ、請求人Eから請求人Gが高齢のため、同人に係る調査についても、自分が母に代わって対応する旨申し出があった。
    • (ロ) 本件調査担当職員は、平成28年8月5日、同年9月13日、同年12月5日、平成29年1月10日の合計4回にわたり、請求人Eの事務所に臨場して本件調査を行い、さらに、平成29年2月14日、同月23日、同年3月21日の合計3回にわたり、原処分庁の庁舎内での面接により本件調査を行った。
    • (ハ) 請求人らは、平成28年8月5日に本件調査が開始された後、本件税理士法人に関与を依頼し、本件税理士法人は、平成28年8月31日に原処分庁に対して、税務代理権限証書を提出した。
  • ハ 本件各居宅の譲渡直前の利用状況及び本件特例の適用要件に関する請求人Eの認識
    • (イ) 本件各居宅の譲渡直前の利用状況
       請求人Eは、原処分庁に対し、平成28年9月29日、平成29年2月7日及び同年3月17日付で、本件各居宅の利用状況や設備の状況等について記載した文書(以下、総称して「本件提出文書」といい、その主な内容は別表5のとおりである。)を提出しており、そのうち、平成28年9月29日付で提出した文書において、要旨「本件各居宅は、譲渡直前において物置として利用していた」旨を述べている(別表5の順号3)。
    • (ロ) 本件特例の適用要件に関する請求人Eの認識
       本件調査担当職員は、上記ロの(ロ)の本件調査における質問調査に基づく請求人E及び本件税理士の応答内容及び発言内容を、それぞれ調査報告書(以下、総称して「本件調査報告書」といい、その主な内容は別表5のとおりである。)に記録していた。そのうち、本件特例の適用要件に関する請求人Eの認識に関しては、平成28年9月13日に行われた本件調査において、請求人Eは、本件調査担当職員から「本件各別棟は、独立した家屋と判断され、本件特例の適用外である」旨の指摘を受けた際に、「(本件各別棟が)蔵だったらよかったのか、近所の家は、昔から農家が多く、家の横に蔵がある家は多い。蔵だったらどうなるのか。」と発言している(別表5の順号2)。
  • ニ 当てはめ
    • (イ) 上記3の(2)からすると、原処分庁と請求人らの間において、請求人らの行為には、いわゆる積極的な隠蔽又は仮装の行為がない点については争いがない。
       したがって、まず、請求人らが、当初から所得を過少に申告すること、又は法定申告期限までに申告しないことを意図していたか否か(上記イの後段)について、本件に当てはめれば、本件特例の適用要件(上記(1)のイの(イ))のうち、本件特例の適用対象となる家屋を判定するに当たり、請求人らが「本件母屋及び本件各別棟は併せて一構えの家屋ではないから本件特例の適用要件を満たさない」ということを当初から認識しながら過少に申告をした、あるいは法定申告期限までに申告をしなかったか否かについて、以下のとおり検討する。
    • (ロ) まず、上記ハの(イ)からすると、請求人Eは、原処分庁に対して平成28年9月29日付で提出した文書において本件各居宅は、譲渡直前において物置として利用していた旨を述べており、それ以降、本件調査報告書及び本件提出文書に記録又は記載されている内容からしても、一貫して同旨を述べている。そして、本件居宅Aには平成27年7月に行われた本件解体工事の直前まで本棚、座卓、額縁及び書籍の束が置かれていたこと(上記(1)のロの(ニ)のC)や、本件解体業者は、本件各建物から4t(トン)車で合わせて3台分にも及ぶ大量の「生活ごみ」を撤去したことが認められる(上記(1)のロの(ニ)のD)。これらの状況からすれば、本件居宅B、本件居宅C及び本件居宅Dにも、本件解体工事以前に、本件居宅Aと同様、請求人らの荷物や不用品が保管されていた可能性が高いというべきであって、そうすると、請求人Eが本件各居宅を物置として利用していた旨述べている平成28年9月29日付の当該提出文書の内容には信用性があり、請求人らが、本件各居宅を物置として利用していたものと認めるべきであって、審判所の調査を踏まえても、この事実を覆すに足りる証拠は見当たらない。
    • (ハ) 次に、請求人Eは、社会保険労務士であるものの、税の専門家ではなく、上記ロの(イ)及び(ハ)のとおり、本件申告書Aを原処分庁に提出した時点では本件税理士法人に関与の依頼をしておらず、その助言等を受ける機会がなかったのであるから、請求人Eが本件申告書Aを原処分庁に提出した時点で本件特例の対象となり得る「居住の用に供している家屋」の範囲を正しく理解していたのかという点については疑問を持たざるを得ない。現に、上記ハの(ロ)のとおり、請求人Eは、本件調査担当者に対し、本件各別棟が蔵だったらその敷地に本件特例を適用できたのかなどと述べていたことからしても、本件特例の適用に当たって、「居住の用に供している家屋」の範囲が、上記(1)のイの(イ)のように解されると正しく理解していたとは認められないというべきである。
    • (ニ) 以上によると、請求人Eは、本件各居宅を物置として利用していれば、本件各建物が一体として自己の居住の用に供する家屋に該当すると誤解し、本件土地の全体に本件特例を適用して申告をした可能性があるといわざるを得ない。
       したがって、請求人Eが、当初から所得を過少に申告することを意図していた、具体的には、本件特例の適用対象となる家屋を判定するに当たり、「本件母屋及び本件各別棟は併せて一構えの家屋ではないから本件特例の適用要件を満たさない」ということを当初から認識しながら過少に申告をしたとまでは認めることはできず、その他に、請求人Eの当該意図を認めるに足りる証拠はない。
       さらに、上記ロの(イ)のとおり、請求人Gは、本件調査への対応を請求人Eに委任していたところ、当審判所の調査によっても、請求人Gについて請求人Eと格別に判断すべき事情は認められないことから、請求人Eに上記意図が認められない以上、請求人Gについても上記意図があったとは認められない。
  • ホ 原処分庁の主張について
    • (イ) 原処分庁は、上記3の(2)の「原処分庁」欄のハないしホのとおり、要旨、本件調査の際、請求人Eが原処分庁に対し、本件各居宅が自己の居住用家屋であったなどと真実と異なる虚偽の答弁をした旨主張する。
       しかしながら、本件調査報告書によると、1請求人Eは、本件調査の初日に本件居宅Cは請求人E自身が居住の用に供していなかったという事実は認めていること(別表5の順号1)、2本件調査報告書に記録された請求人Eの答弁及び本件提出文書の記載内容を通してみると(別表5の順号3ないし5)、前後の内容に多少の食い違いが認められるとしても、それは、記憶の曖昧さや質問に関する認識の相違として説明できる程度であり、本件調査担当職員が請求人Eに対して、どの程度具体的に質問し、それに対し請求人Eがどのような回答をしたのかが明確でなく、両者の認識が相違していた可能性も否定できないことから、請求人Eが原処分庁に対し、真実と異なる虚偽の答弁をしたとまでは認められないし、本件調査報告書における請求人Eの答弁が虚偽であると認めるに足る証拠もない。
       したがって、原処分庁の主張には理由がない。
    • (ロ) 原処分庁は、上記3の(2)の「原処分庁」欄のヘ及びトのとおり、要旨、本件調査における請求人Eの原処分庁に対する答弁の内容や本件提出文書によって、主張を変遷させるなどして本件調査を困難にさせた旨主張する。
       しかしながら、請求人Eが使用した言葉や説明の仕方に一貫性がないとしても、請求人Eが本件調査担当者に対して、どの時点のことを質問されたのか分からなかったからそのような回答をした旨も述べられており(別表5の順号6)、その他、本件調査報告書及び本件提出文書における一連のやり取りを見比べても、答弁の内容を変遷させたとまで認められるような記載は見当たらない。
       また、上記(イ)で述べたとおり、本件調査担当職員が請求人Eに対して、どの程度具体的に質問し、それに対し請求人Eがどのような回答をしたのかが明確でない以上、請求人Eが本件調査を混乱させる目的で関係ない過去の状況を説明したと認めることはできないから、以上を併せ考えると、請求人Eが本件調査を困難にさせたとまで認めるのは相当でない。
       したがって、原処分庁の主張には理由がない。
    • (ハ) 原処分庁は、上記3の(2)の「原処分庁」欄のチのとおり、たとえ隠蔽又は仮装の発現とみられる行動が納税申告書提出後又は法定申告期限経過後にしかなかったとしても、その発現行為自体から、納税申告書提出時又は法定申告期限経過時における過少申告の意図が推認されるときは、特段の事情が認められない限り、当該発現行為は当初からの内心の意図に基づくものと推認され、重加算税の賦課要件を充足すると解すべきである旨主張する。
       しかしながら、上記(イ)及び(ロ)で述べたとおり、請求人Eの本件申告書A提出後の言動及び本件提出文書の記載に、過少申告の意図を外部からもうかがい得る特段の行動と評価すべき事実があったとは認められないことから、納税申告書提出後又は法定申告期限経過後に隠蔽又は仮装の発現とみられる行動があったとは認められない。
       したがって、原処分庁の主張には理由がない。
  • ヘ 小括
     以上のとおり、請求人Eが当初から所得を過少に申告することを意図し、その意図を外部からもうかがい得る特段の行動をした上、その意図に基づき過少申告をしたものとは認められないから、通則法第68条第1項に規定する重加算税の賦課要件を満たさない。
     さらに、上記ロの(イ)のとおり、請求人Gは、本件調査への対応を請求人Eに委任していたところ、当審判所の調査によっても、請求人Gについて請求人Eと格別に判断すべき事情は認められないことから、請求人Eの行為が通則法第68条第1項の賦課要件を満たさない以上、請求人Gについても同条第2項の賦課要件を満たすとは認められない。

(3) 請求人Eに対する原処分の適法性について

  • イ 平成27年分の所得税等の更正処分について
     当審判所が認定した請求人Eの平成27年分の分離長期譲渡所得の金額は、上記(1)のホのとおり○○○○円(別表3参照)で原処分の金額○○○○円(別表1の「更正処分等」欄の「分離長期譲渡所得の金額」欄)を下回り、また、これに基づき計算した請求人Eの平成27年分の還付金の額に相当する税額は○○○○円で原処分の金額○○○○円(いずれも別紙2の「取消額等計算書」の4参照)を上回るから、原処分は、その一部を別紙2の「取消額等計算書」のとおり取り消すべきである。
     なお、請求人Eの平成27年分の所得税等の更正処分のその他の部分については、請求人Eは争わず、当審判所に提出された証拠資料等によっても、これを不相当とする理由は認められない。
  • ロ 平成27年分の所得税等に係る重加算税の賦課決定処分について
     上記(2)のとおり、請求人Eの行為は、通則法第68条第1項に規定する重加算税の賦課要件を満たさないところ、他方、請求人Eの平成27年分の所得税等の更正処分により納付すべき税額の計算の基礎となった事実のうち、当該更正前の税額の計算の基礎とされていなかったことについて、同法第65条第4項に規定する正当な理由があるとは認められない。
     そして、当審判所において、請求人Eが納付すべき平成27年分の所得税等に係る過少申告加算税の額を計算すると○○○○円(別紙2の「取消額等計算書」の4参照)となる。
     したがって、請求人Eの平成27年分の所得税等に係る重加算税の賦課決定処分のうち過少申告加算税相当額を超える部分は違法である。

(4) 請求人Gに対する原処分の適法性について

  • イ 平成27年分の所得税等の更正処分について
     当審判所が認定した請求人Gの平成27年分の分離長期譲渡所得の金額は、上記(1)のホのとおり、○○○○円(別表4参照)で原処分の金額○○○○円(別表2の「更正処分等」欄の「分離長期譲渡所得の金額」欄)を下回り、また、これに基づき計算した請求人Gの平成27年分の納付すべき税額は○○○○円で原処分の金額○○○○円(いずれも別紙3の「取消額等計算書」の4参照)を下回るから、原処分は、その一部を別紙3の「取消額等計算書」のとおり取り消すべきである。
     なお、請求人Gの平成27年分の所得税等の更正処分のその他の部分については、請求人Gは争わず、当審判所に提出された証拠資料等によっても、これを不相当とする理由は認められない。
  • ロ 平成27年分の所得税等に係る重加算税の賦課決定処分について
     上記(2)のとおり、請求人Gの行為は、通則法第68条第2項に規定する重加算税の賦課要件を満たさないところ、他方、請求人Gの平成27年分の所得税等の更正処分により納付すべき税額の計算の基礎となった事実のうち、当該更正前の税額の計算の基礎とされていなかったことについて、同法第66条第1項ただし書に規定する正当な理由があるとは認められない。
     そして、当審判所において、請求人Gが納付すべき平成27年分の所得税等に係る無申告加算税の額を計算すると○○○○円(別紙3の「取消額等計算書」の4参照)となる。
     したがって、請求人Gの平成27年分の所得税等に係る重加算税の賦課決定処分のうち無申告加算税相当額を超える部分は違法である。

(5) 結論

以上によれば、審査請求には理由があるから、請求人E及び請求人Gに係る原処分の一部を取り消すこととする。

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