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(平4.1.28、裁決事例集No.43 127頁)

《裁決書(抄)》

1 事実

 (1) 審査請求人(以下「請求人」という。)は、主として司法書士業を営み、兼ねて土地家屋調査士業、行政書士業を営む者であるが、昭和61年分、昭和62年分及び昭和63年分(以下「各年分」という。)の所得税について、みなし法人課税(租税特別措置法第25条の2による課税の特例)を選択し、各年分の事業所得の金額を昭和61年分19,108,878円、昭和62年分32,012,696円、昭和63年分26,968,538円と計算した上で、各年分の青色の確定申告書(みなし法人課税用)に、別表の「確定申告」欄のとおり記載して、それぞれ法定申告期限までに申告をした。
 また、請求人は、上記のうち昭和62年分及び昭和63年分の所得税の確定申告書に記載した税額の計算に誤りがあったとして、昭和62年分について昭和63年12月28日に、昭和63年分について平成元年4月24日に、それらの年分の修正申告書に別表の「修正申告」欄のとおり記載して、それぞれ修正申告をした。
 なお、原処分庁は、昭和62年分については平成元年2月13日付で、昭和63年分については同年5月12日付で、上記修正申告による納付すべき税額を基礎として、別表の「賦課決定」欄のとおりの過少申告加算税の各賦課決定をした。
(2) 上記(1)の各申告に対し、原処分庁は、請求人の各年分の事業所得の金額は、昭和61年分22,378,582円、昭和62年分38,520,540円、昭和63年分33,772,803円であるとして、平成元年7月7日付で、別表の「更正等」欄のとおりの各更正及び過少申告加算税の各賦課決定をした。
(3) 請求人は、上記(2)の各処分を不服として、平成元年8月1日にそれぞれ異議申立てをしたところ、異議審理庁は、平成元年11月1日付でいずれについても棄却の異議決定をした。
 請求人は、異議決定を経た後のこれら原処分のすべてについて、なお不服があるとして平成元年11月24日に審査請求をした。

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2 主張

(1) 請求人の主張

 原処分は、次の理由により、いずれも違法であるから、それぞれその全部の取消しを求める。
イ 各年分の更正について
(イ) 行政指導等について
A 請求人の妻○○(以下「請求人の妻」という。)は、請求人の事業に従事する者であり、所得税法第57条《事業に専従する親族がある場合の必要経費の特例等》第1項に規定する青色事業専従者(以下「青色専従者」という。)に該当している。
 請求人は、この規定の適用を受けるため、同条第2項及び第8項の規定により、次表のとおり、各年分の請求人の妻に係る青色事業専従者給与(以下「専従者給与」という。)の変更届出書をそれぞれ提出した(以下、この年間支給予定額を「請求人の届出額」という。)。

 

1 届出年月日 昭60.12.24 昭61.12.24 昭63.1.4
2 変更時期 昭61年1月以降 昭62年1月以降 昭63年1月以降
3 年間支給予定額 10,000,000円 15,000,000円 18,000,000円

 

B 原処分庁は、上記の各届出のうち、昭和60年12月及び昭和61年12月に行ったものについては、そのころに、請求人に対し、請求人の届出額が不相当である旨の通知・連絡を一切しなかった。
 このため、請求人は、請求人の妻に対し、昭和61年中に10,000,000円、昭和62年中に15,000,000円を、それぞれ給与又は賞与として支給し、この支給額を必要経費に算入して、それぞれの年分の事業所得を申告した。
C また、原処分庁は、前記Aの各届出のうち昭和63年1月に行ったものについては、そのころに、請求人に対し、その届出額は不相当に高額である旨を電話で通知してきたが、相当とする金額については、これを具体的に示さなかった。また、この時に、他の年分の届出額については何ら触れられなかった。
 このため、請求人は、昭和63年中に請求人の妻に支給すべき専従者給与の額をその前年の支給額と同額とすることにして、昭和63年中に、届出額を下回る15,000,000円を実際に支給し、この支給額を必要経費に算入して、同年分の事業所得を申告した。
D しかるに、原処分庁は、昭和63年12月以降になされた請求人に対する税務調査において、初めて請求人の妻に対する支給額は、各年分いずれも不相当に高額である旨を述べた。
 なお、この際には、請求人の妻に対する専従者給与として相当と認められる金額を示されたが、その根拠が不明で到底納得できない金額であったため、修正申告に応じなかったところ、原処分庁は一方的に更正を行った。
E ところで、税務署長は、納税者から専従者給与に関する届出書が提出された場合において、その届出額を相当でないと判断したときは、速やかに納税者にその旨を通知するなど、青色申告制度の趣旨に照らして適切な指導を行うべきである。
 各年分の更正は、前記B及びCのとおり、適切な行政指導を怠ったままなされたものであり、この点において違法、不当なものである。
(ロ) 専従者給与について
A 請求人が請求人の妻に支給した専従者給与の額(必要経費に算入した金額)は、以下の理由により、各年分とも、同人の労務の対価として相当な額である。
(A) 所得税法第57条第1項によると、専従者給与として必要経費に算入できる金額は、1その者が労務に従事した期間、2その者の労務の性質及びその提供の程度、3その事業の種類及び規模及び4その事業と同種の事業でその規模が類似するもの(以下「同業者」という。)が支給する給与の状況等すべてを考慮して、その労務の対価として相当であると認められる金額となっている。
(B) ところで、請求人の妻の労務従事の状況等は、次のとおりである。
a 労務に従事した期間
 各年分とも、その全期間(12か月)であった。
b 労務の性質及びその提供の程度
(a) 請求人が昭和54年1月に司法書士業を開業して以来、継続してその事業に専ら従事してきた。
(b) 主として、登記手続を依頼された物件に関する調査、依頼者が取引の相手方と交渉等をする際の立会い及び法務局等へ提出する書類の作成・審査等の重要な業務を行うほか、他の使用人に対する仕事の指示、依頼者との応対及び電話の応答等の業務に従事していた。
(c) 長年の経験と請求人の指導によって得た優れた業務処理能力を業務全般にわたって発揮していた。
(d) 請求人はPTA及びライオンズクラブの活動等、本来の業務以外の用務で多忙であったし、また、他の使用人は定時の出勤、退社を常態としていたため、請求人の妻だけが慢性的な時間外勤務を余儀なくされていた。
(e) 請求人の事業収入が歴年上昇していたにもかかわらず、請求人が従業員を増員しなかったため、その負担する業務の量が増加していたことなど、請求人と同等又はそれ以上に請求人の事業に貢献してきた。
c 事業の種類及び規模
(a) 請求人の事業は、司法書士業を主体として、土地家屋調査士業、行政書士業を兼ねるものであった。
(b) これらの事業には、請求人及び請求人の妻のほか、請求人の母と使用人2名が従事していた。
(c) 売上げ(報酬)の状況は、次表のとおりであった。

 

年分 昭和61年分 昭和62年分 昭和63年分
売上げ 43,685,280円 69,553,236円 71,486,907円
前年比 125.2% 159.2% 102.7%

 

d 他の使用人等に対する給与
 請求人の母及び使用人2名に対する給与は、次表のとおりであった。

 

(単位:円)
年分
使用人等
昭和61年分 昭和62年分 昭和63年分
母(専従者) 2,400,000 3,000,000 2,000,000
使用人(男) 3,314,600 4,000,000 5,592,000
同上(女) 680,000 1,950,000 2,947,000

 

 なお、使用人(男)は、昭和61年当時で経験4年、年齢29歳であり、使用人(女)は、昭和61年7月に雇い入れた未経験者である。
B 原処分庁は、請求人の妻に係る専従者給与の額のうち、必要経費に算入できる金額として、請求人の所得金額(ただし、青色申告に係る特典控除額を控除する前の所得金額。以下「特前所得金額」という。)に、同業者の妻に係る専従者給与の額(ただし、必要経費に算入された金額)がその同業者の特前所得金額に占める割合の平均値(以下「同業者の専従者給与率」という。)を乗じて計算した金額によっている。
 このように、請求人の妻の労務従事の実態を正しく評価せず、単に同業者の妻が支払を受けた給与の状況だけをもって相当な額を認定すること自体、公正、妥当な処分とはいえず、所得税法第57条第1項に違背するというべきである。
 仮に、このような方法によることがやむを得ないとしても、このような方法によった場合には、同業者の類似性を実質的に比較検討するため、その同業者の事業規模及びその者の妻の労務従事の状況等を明示すべきである。しかるに、原処分庁は、同業者の妻の労務従事の状況等を明示しないから、この点においても違法、不当である。
ロ 各年分の過少申告加算税の賦課決定について
 以上のとおり、各年分の更正は違法であるから、各年分の過少申告加算税の賦課決定も違法である。

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(2) 原処分庁の主張

 原処分は、次の理由によりいずれも適法である。
イ 各年分の更正について
(イ) 行政指導等について
 税務署長は、納税者から専従者給与に関する変更届出書の提出があった際に、その都度その内容の適否を納税者に通知又は連絡する旨を定めた法令の規定はないので、このような通知等がなかったことを違法ということはできず、また、その届出額でもって専従者給与の額が直ちに承認されたものということもできない。
 また、この届出額は、納税者が専従者に支給する金額の上限を示すものであって、その範囲内で支給される専従者給与が、直ちに相当な労務の対価とみなされるわけではない。
 なお、請求人は、原処分庁から、昭和63年分についてはその届出のころその届出額が高額である旨の連絡を受けたが、昭和61年分及び昭和62年分については何らの連絡もなかった旨主張しているが、原処分庁の担当職員は、昭和62年分について、その届出のころ請求人に対してその届出額が高額である旨の連絡をしたが、昭和63年分について、その届出のころ請求人にそのような連絡をしたことはなかった。
(ロ) 専従者給与について
 請求人の妻に係る専従者給与(ただし、支給額)のうち、事業所得の金額の計算上、必要経費に算入できる金額は、次の理由により、昭和61年分は6,232,456円、昭和62年分は8,172,075円、昭和63年分は7,905,544円となる。
A 所得税法第57条第1項の規定によれば、必要経費に算入できる専従者給与の金額は、1その専従者が労務に従事した期間、2労務の性質及びその提供の程度、3その事業の種類及び規模及び4同業者が支給する給与の状況等に照らしその労務の対価として相当であると認められる金額とされている。
B ところで、請求人の妻の労務従事の状況等は、次のとおりである。
(A) 請求人の妻は、司法書士等の資格を有しておらず、また、その経験年数は8年ないし10年である。
(B) 労務の内容は他の使用人と同様、事務一般である。
(C) 他の使用人に支給した給与の額は、最高額の者でも5,592,000円である。
C 請求人の妻の上記のような労務従事の状況等に照らすと、請求人の妻に限って、同業者の妻とは異なる格別の事情があったとはいえない。
 したがって、次の方法により、必要経費に算入できる専従者給与の金額を計算したことは合理的である。
 P国税局管内の青色申告者で司法書士業を営む者のうちから、請求人と業態及び事業規模等が類似し、かつ、その者の妻に専従者給与が支給されているもの7件について、同業者の専従者給与率を計算したところ、昭和61年分については、19.78パーセント、昭和62年分については、16.34パーセント、昭和63年分については、17.98パーセントとなる。
 請求人の特前所得金額に同業者の専従者給与率を乗じた金額を求めると、次表のとおりである。

 

年分
区分
昭和61年分 昭和62年分 昭和63年分
特前所得金額 31,508,878円 50,012,696円 43,968,538円
専従者給与率 19.78% 16.34% 17.98%
算出金額 6,232,456円 8,172,075円 7,905,544円

 

 なお、各年分の更正においては、いずれも上記の算出金額を上回る金額を請求人の妻に係る専従者給与の額として必要経費に算入しているが、このような相違の生じた理由は、それぞれにおいて選定した同業者を異にしているためであり、この審査請求手続においては、原処分庁は上記の金額をもって、請求人の妻に係る専従者給与の額として相当な額であることを主張する。
D 原処分庁が採用した同業者の事業規模、専従者の労務従事の状況等については、国家公務員法第100条《秘密を守る義務》及び所得税法第243条の規定により、これを明らかにすることはできない。
ロ 各年分の過少申告加算税の賦課決定について
 以上のとおり、各年分の更正は適法であり、また、国税通則法第65条《過少申告加算税》第4項に規定する正当な理由がある場合に該当しないので、各年分の過少申告加算税の賦課決定は適法である。

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3 判断

(1) 各年分の更正について

イ 行政指導等について
(イ) 申告納税制度の下では、税法に適合した納税義務の実現は、原則として納税者自らの責任で行うべきであり、税法に特段の定めがある場合は別にして、そうでない場合には、行政指導の有無又は適否が、その者の納税義務に影響を及ぼすと解することはできない。
(ロ) ところで、所得税法第57条は、その第1項において、青色申告書を提出できる者は、同項に規定する諸状況に照らして相当と認める専従者給与の金額を判断すべきこと及びその第2項において、その判断した金額をその年の3月15日までに所轄税務署長に届け出るべきことを定めているが、この届出に対して、税務署長が直ちにその届出に係る金額の適否を判断して、その結果を届出者に通知すべきことまでを定めた規定はない。
(ハ) もっとも、同条第2項の規定には、後日の無用のトラブルを避けるという趣旨が含まれるということができるとしても、それは事実上の問題と考えるのが相当であって、これをもってその者の納税義務に影響を及ぼすというような解釈は、到底採用することができない。
(ニ) そうすると、この点に関する請求人の主張は、その基礎とされている事実の有無について検討するまでもなく、各年分の更正の取消しを求める理由としては、不相当というべきである。
ロ 専従者給与について
(イ) 請求人の妻に係る専従者給与に関して、所得税法第57条の規定する各要件のうち、同条第1項にいう「労務の対価として相当であると認められる」金額(すなわち、必要経費に算入できる金額)について争いがあるが、その余の部分については、当事者双方に格別の争いがない。
(ロ) 上記争いがある部分について、以下、所得税法第57条第1項及び同法施行令第164条第1項に規定する基準ごとに検討する。
A 請求人の妻の労務従事の状況等について
(A) 労務に従事した期間
 請求人の妻が、各年分ともその全期間を通じて、請求人の事業に従事していたことについては、当事者間に争いがなく、これを否定すべき格別の資料はない。
(B) 労務の性質
a 請求人は、請求人の妻の労務の性質に関して、1請求人が昭和54年1月に司法書士業を開業して以来、継続してその事業に専ら従事してきたこと(したがって、この経験年数に相応する水準の労務を提供していたこと。)並びに2主として、登記手続を依頼された物件に関する調査、依頼者が取引の相手方と交渉する際の立会い及び法務局等へ提出する書類の作成・審査等の重要な業務を行うほか、他の使用人に対する仕事の指示、依頼者との応対及び電話の応答等の業務に従事していたことを主張しているが、この主張に係る事実については、原処分庁においてこれを格別争わず、また、当審判所においてこれを否定すべき資料もない。
 そこで、原処分庁が主張している同業者の専従者給与率は、上記請求人の主張に照らして相当といえるかどうかについて検討する。
b 当審判所の調査の結果によれば、上記同業者の専従者給与率の計算の基礎として採用された同業者(以下「採用同業者」という。)は、P国税局管内で主として司法書士業を営む者で、各年分ともその収入金額及び特前所得金額並びに従業員数がおおむね請求人と類似している青色申告者であることが認められ、また、採用同業者の妻(以下「採用専従者」という。)は、いずれも経験豊かな者(平均14.5年〜16.5年)であり、かつ、他の従業員のだれよりも高い給与を受けている者であることが認められる。
 したがって、採用専従者は、いずれもその事業に係る従業員のだれよりも能力的に優れ、かつ、事業主を除けば事業の中心的、指導的役割を果たしている者であると推認するのが相当である。
 そうすると、請求人の妻の上記のような労務の性質は、原処分庁が主張する同業者の専従者給与率に十分に反映されているというべきである。
(C) 労務の提供の程度
a 請求人は、請求人がPTA、ライオンズクラブ等の用務で多忙であったこと、他の従業員が超過勤務をしなかったこと及びその事業収入に比べ従業員数が少なかったことから、請求人の妻は、時間外勤務が特別に多く、多大の労務を提供していた旨主張し、その証拠として、請求人及び従業員全員の時間外勤務の状況を記入したカレンダーを提出したので、この点について検討する。
b 一般に、司法書士業(土地家屋調査士業、行政書士業を含む。)のような事業にあっては、その業務の量と収入金額との間には密接な相関関係があることは明らかであり、収入金額と従業員数が類似している場合には、その事業主又は各従業員が提供した労務の量も類似しているものと推認するのが相当である。
 ところで、請求人は、請求人がPTA、ライオンズクラブ等の用務で多忙であったことを挙げるが、このような社会的な用務は請求人に固有のものということはできず、また、親族以外の従業員が時間外勤務に応じる状況になかったことを挙げるが、今日の労働状況(特に若い世代の労働意識)に照らして、これも請求人に固有の事情と目することはできない。
 なお、一般に、その従業員がその個人事業主の妻であるような場合においては、その従業員の勤務時間の自由度は極めて高いのが通常であるから、請求人の妻の場合も、そのすべての勤務時間を証明するには、請求人が提出したカレンダーに記載の内容のみでは不十分というべきである。
 そうすると、請求人の妻の労務の提供の程度についても、客観的に相当と認められる範囲においては、原処分庁が主張する同業者の専従者給与率に反映されているということができる。
B その他の基準
 以上に検討したところのほか、所得税法第57条第1項及び同法施行令第164条第1項は、1事業の種類及び規模並びにその収益の状況、2他の使用人に係る給与の状況及び3同業者が支給する給与の状況等に照らして判断すべき旨を規定しているところ、このうち1並びに3については、既に同業者の専従者給与率に包摂されているところである。
 また、2については、次表記載のとおりであることについて、当事者間に争いがないところ、これによれば、請求人の妻に係る給与の額(ただし、原処分庁主張額)は、他の従業員に係る給与の額より格段に高いことが明らかであり、これをもって原処分庁主張額を不当というに由ないものである。

年分
使用人等
昭和61年分 昭和62年分 昭和63年分
支給金額 従事期間 支給金額 従事期間 支給金額 従事期間
母(専従者)
2,400,000

12

3,000,000

12

2,000,000

12
使用人(男) 3,314,600 12 4,000,000 12 5,592,000 12
同上(女) 680,000 5 1,950,000 12 2,947,000 12

 

C 以上のとおり、原処分庁が主張する請求人の妻に係る「労務の対価として相当であると認められる」専従者給与の額は、前記所得税法等所定の基準に従って算定されたものというべきであり、請求人の主張には理由がないこととなる。
(ハ) その他の部分について
 各年分の更正のその他の部分(同業者の専従者給与率の計算を含む。)について審査したが、格別違法、不当と目すべき点がなかった。
(ニ) そうすると、請求人の各年分の総所得金額及び昭和62年分における分離短期譲渡所得並びにこれらについての納付すべき税額は、次表記載のとおりとなり、各年分の更正は、いずれもこの金額を下回っており、これを取り消すべき部分はない。

(単位:円)
年分
区分
昭和61年分 昭和62年分 昭和63年分
総所得金額 17,343,810 28,423,800 27,068,340
分離短期譲渡所得 1,097,600
納付すべき税額 3,865,800 11,236,250 8,240,000

 

(2)過少申告加算税の賦課決定について

 以上のとおり、各年分の更正は適法であり、また、更正により納付すべき税額の計算の基礎となった事実が、更正前の税額の計算の基礎とされていなかったことについて、国税通則法第65条第4項に規定する正当な理由がある場合に該当すると認めるに足る資料はないので、各年分の過少申告加算税の賦課決定は適法である。

(3) そうすると、本件審査請求は、いずれも理由がないものとして、棄却すべきである。

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