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(平4.3.31、裁決事例集No.43 232頁)

《裁決書(抄)》

1 事実

 審査請求人(以下「請求人」という。)は、冷凍設備工事業を営む同族会社であるが、平成元年4月1日から平成2年3月31日までの事業年度(以下「平成2年3月期」という。)の法人税について、次表の「確定申告」欄のとおり記載した青色の確定申告書を法定申告期限までに提出した。
 原処分庁は、平成2年12月17日付で次表の「更正」欄のとおり更正及び「賦課決定」欄のとおり賦課決定をした。
 請求人は、これらの処分を不服として平成3年2月15日に異議申立てをしたところ、異議審理庁は、平成3年5月28日付で次表の「異議決定」欄のとおり一部取消しの異議決定をした。

(単位:円)
区分 項目 金額
確定申告 所得金額 106,377,598
納付すべき税額 130,035,600
更正 所得金額 352,389,787
納付すべき税額 132,479,600
賦課決定 過少申告加算税の額 244,600
異議決定 所得金額 352,368,532
納付すべき税額 132,479,900
過少申告加算税の額 243,000

 

 請求人は、異議決定を経た後の原処分について、なお不服があるとして平成3年6月27日に審査請求をした。

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2 主張

(1) 請求人の主張

 原処分は、次の理由により違法であるから、その一部の取消しを求める。
イ 更正について
(イ) 本件オープンショーケースの取得価額について
 請求人は、消費税の経理処理に関して、平成元年3月1日付直法2ー1国税庁長官通達「消費税の施行に伴う法人税の取扱いについて」に定める期末一括税抜経理方式(以下「期末一括税抜経理方式」という。)を採用しており、平成2年3月に請求人が取得したオープンショーケース(以下「本件オープンショーケース」という。)は、その一台当たりの消費税抜きの取得価額が、200,000円未満であり、法人税法施行令第133条《少額の減価償却資産の取得価額の損金算入》に規定する減価償却資産(以下「少額減価償却資産」という。)に該当するので、その取得価額全額の損金算入が認められるところ、請求人の消費税の経理処理が税込経理方式であるから、本件オープンショーケース一台当たりの消費税込みの取得価額が200,000円を超え、少額減価償却資産に該当しないとして、本件オープンショーケース30台分の減価償却限度額を超える金額5,947,635円を損金の額に算入できないとした原処分は違法である。
 ところで、消費税の経理処理については、消費税の税込価額で記帳した帳簿によって課税期間分の消費税額を計算する事業者は、決算期末において課税期間分の課税売上高及び課税仕入高を集計し、納付すべき消費税額を算出するのであるから、自動的に期末一括税抜経理方式を採用したことになると解すべきであり、総勘定元帳の金額が消費税の税込価額で記帳されていることを理由に税込経理方式であるとする原処分庁の解釈は、税込価額で記帳する帳簿方式を前提とする期末一括税抜経理方式を否定するものである。
 なお、請求人が確定申告書提出後に総勘定元帳及び損益計算書を税抜表示に改めたのは、表示方法によっては少額減価償却資産の取得価額から消費税額を控除できないとの指摘を受けたので、課税上の不利益を排除するために、事実に基づき正しい表示方法(税抜処理)に改めたものである。
 また、請求人は、固定資産の取得価額に係る消費税は諸税公課として損金経理しており、本件オープンショーケースの取得価額についても、税抜価額により判定の上、法人税法施行令第133条の規定を適用し、消耗品費として損金経理したものである。
(ロ) 本件花輪代について
 請求人が平成2年3月期において工事を行った店舗の開店祝いとして工事の施主に対して贈答した花輪(以下「本件花輪」という。)の代金493,472円は、次の理由から、広告宣伝費に当たるので、これを交際費とした原処分は違法である。
A 本件花輪は、開店時に来店する不特定多数の来場者を対象に、請求人の社名を大書きして掲示するものであるので、請求人が放映しているテレビ・コマーシャルとの相乗効果と新規の受注先を獲得するのが目的であり、開店した施主との今後の取引等を考慮して贈答したものではないこと。
B 本件花輪を贈答した店舗数は、平成2年3月期に施工、開店した270件のうちの40件で、開店時に多数の来場者が予想される店舗及び新店舗の建設が見込まれる地域において開店する店舗を選定したものであり、営業担当者のみの要求や取引高に応じて、贈答するものではないこと。
C 本件花輪は、請求人の社名を宣伝することが目的であり、花輪そのものは添え物にすぎないので、特注品でなく安価で一般的な花輪であること。
ロ 過少申告加算税の賦課決定について
 前記イのとおり、更正は違法であるから、その一部の取消しに伴い、過少申告加算税の賦課決定もその一部を取り消すべきである。

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(2) 原処分庁の主張

 原処分は、次の理由により適法である。
イ 更正について
(イ) 本件オープンショーケースの取得価額について
 請求人の会計処理には、次の事実が認められる。
A 請求人が平成2年5月31日に原処分庁に提出した平成2年3月期の法人税確定申告書並びに同申告書に添付されている貸借対照表、損益計算書及び剰余金処分計算書の第25期営業成績報告書は、消費税の経理処理について、税込経理方式を採用した総勘定元帳の金額に基づいて作成されていること。
B 請求人が平成2年5月31日に原処分庁に提出した平成2年3月期の消費税確定申告書における消費税の計算についても、税込経理方式に基づく総勘定元帳の金額から消費税額を算出していること。
C 原処分庁の請求人に対する法人税の調査(以下「本件調査」という。)において、請求人が平成2年10月15日及び同月16日に提出した総勘定元帳には、消費税の経理処理について、期末一括税抜経理方式を採用している事実は認められないこと。
D 請求人は、平成2年5月31日に提出した前記Aの営業成績報告書との差し替えを主張して、新たに同年11月2日に期末一括税抜経理方式による営業成績報告書を原処分庁に提出していること。
E その後、平成2年11月15日の本件調査において請求人が提出した総勘定元帳は、期末一括税抜経理方式によるものであったが、当該総勘定元帳は、前記Cの総勘定元帳を書き換えたものであること。
 以上の事実から、請求人の消費税の経理処理は、期末一括税抜経理方式を採用していたとは認められず、税込経理方式である。
 したがって、本件オープンショーケースの取得価額は、税込経理方式によれば消費税の額を含んだ価額で算定することとなり、一台当たりの取得価額が200,000円以上と認められるので、少額減価償却資産に該当せず、法人税法施行令第133条の適用はない。
(ロ) 本件花輪代について
本件花輪について、次の事実が認められる。
A 本件花輪は、請求人が施工した店舗の開店に際して贈答した開店祝いの花輪であること。
B 本件花輪は、請求人が施工した取引のうち、請求人の営業担当者等から要求のあった店舗についてのみ贈答していること。
C 本件花輪は、花屋等で開店祝い用として一般的に販売されているものであり、広告宣伝を目的とした特注品ではないこと。
D 本件花輪は、施主との取引額等を基準として贈答しているものではないこと。
 以上の事実を総合して判断すると、本件花輪は、開店した取引先に対して、今後の付き合い等を考慮して行われている一般的な贈答行為によるものと認められる。
 したがって、本件花輪は特に宣伝効果を期待して贈答したものとは認められないので、その支出金額は広告宣伝費ではなく、接待交際費に該当する。
ロ 過少申告加算税の賦課決定について
 前記イのとおり、更正は違法であり、かつ、請求人が過少申告をしたことについて、国税通則法第65条《過少申告加算税》第4項に規定する正当な理由があるとは認められないから、過少申告加算税の賦課決定も適法である。

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3 判断

(1) 更正について

イ 本件オープンショーケースの取得価額について
 本件オープンショーケースが少額減価償却資産に該当するか否かに争いがあるので調査・審理したところ、次のとおりである。
(イ) 次のことについては、当事者間に争いはなく、当審判所の調査によっても、その事実が認められる。
A 請求人が平成2年5月31日に原処分庁に提出した平成2年3月期の法人税確定申告書に添付された「第25期営業成績報告書」における損益計算書は、消費税を含んだ金額によって作成されたものであること。
B 請求人は、平成2年11月2日に税抜表示に改めた営業成績報告書を原処分庁に提出し、同年5月31日に提出した営業成績報告書との差し替えを申し出たこと。
C 請求人が本件調査において当初提示した総勘定元帳は、消費税を含んだ金額によって記帳されたものであったが、平成2年11月15日の調査時に提示した総勘定元帳は、税抜表示に改めたものであること。
D 本件オープンショーケース一台当たりの消費税の税抜価額は、Aー123型が197,523円及びBー123型が197,844円であり、また、本件オープンショーケースの一台当たりの消費税の税込価額は、Aー123型が203,448円及びBー123型が203,779円であること。
(ロ) 請求人の提示資料、原処分関係資料等及び当審判所の調査によれば、次のとおりである。
A 請求人の平成2年3月期の消費税確定申告に係る消費税額は、課税売上げ及び課税仕入れの金額を集計し、それぞれの消費税額を算出して差引きを行い、納付税額を計算したものであること。
B 請求人は、固定資産の取得価額については消費税を含まない税抜価額によって経理処理を行いその消費税額は諸税公課として損金経理し、また、少額減価償却資産に該当するものについては消耗品費として損金の額に計上していること。
C 平成2年10月22日に開催された取締役会の議事録によれば、平成2年3月期の損益計算書を税抜経理方式に修正する旨記録されていること。
(ハ) 請求人の経理係長は、当審判所に対し、次のとおり答述している。
A 請求人の平成2年3月期の会計処理は、1売上げについては、請求書控えを基に消費税込みで振替伝票及び未収金一覧表を作成したこと、2材料費及び経費については、請求書から振替伝票及び工事未払金一覧表を作成したので消費税込みとなっていること及び3固定資産についても、請求書から振替伝票を作成し、これらの振替伝票等を基に関与税理士が総勘定元帳を作成したこと。
 なお、固定資産及び繰延資産の取得に係る消費税については、諸税公課として、損金の額に算入したこと。
B 平成2年3月期の営業成績報告書は、前記Aの総勘定元帳を基に関与税理士が作成したこと。
C 前記Aのとおり、固定資産等の取得に係る消費税を諸税公課として処理していたこと及び売上げに係る請求書には工事代金と消費税を別に記載していたことから、消費税の経理処理は税抜処理であると認識していたところ、本件調査において経理処理に誤りがあると指摘されたので、平成2年10月23日に関与税理士が総勘定元帳及び損益計算書の表示を消費税抜きに修正し、当初の総勘定元帳は紛らわしいので処分したこと。
(ニ) ところで、消費税の経理処理については、一般に公正妥当と認められる会計処理の基準に従って処理されることとなるが、その経理処理方法には、1売上げ等の収益に係る取引につき税抜方式を適用している場合に限り適用することができる税抜経理方式(消費税の額を仮勘定として処理する方法)並びに2税込経理方式(消費税の額を取引金額に含めて処理する方法)がある。
 そこで、法人がいずれの経理方式を選択するかは、法人の判断に任されているが、法人の選択した経理方式は、当該法人の行うすべての取引に適用するものとされているところ、法人が売上げ等の収益に係る取引につき税抜経理方式を適用している場合には、固定資産等の取得に係る取引又は経費等の支出に係る取引のいずれかの取引について税込経理方式を選択適用できるほか、固定資産等のうちたな卸資産の取得に係る取引については、継続適用を条件として固定資産及び繰延資産と異なる方式を選択適用することができるとされている。
 そして、いずれの方法を選択しても消費税そのものの納付税額が異なることはないが、企業の利益ひいては課税所得金額については、税込処理方式の場合と税抜経理方式の場合とでは、減価償却資産に係る取得価額及び期首・期末のたな卸高等について差違が生じることになり、経理方式によっては、課税所得金額に影響が生じることもあるので、法人税の課税所得金額の計算における消費税の取扱いについては、税抜経理方式と税込経理方式の損益額の一致を図るため、税抜経理を事業年度終了の時において一括して行う期末一括税抜経理方式も認められている。
 以上のことから、請求人は、期末一括税抜経理方式を採用しており請求人の消費税の経理方式は税抜経理方式である旨主張するが、請求人は、前記(ハ)のAのとおり、売上げ等の収益に係る取引につき税込経理方式により処理していたと認められること、また、前記(イ)のAのとおり、期末一括税抜経理を行うことなく平成2年3月期の決算を確定していることが認められ、請求人が消費税の経理処理について税抜経理方式を適用していたとは認められず、更に売上げ等の収益に係る取引につき税込経理している以上、他の科目について税抜経理を行うことは認められないから、固定資産に係る消費税については税抜経理しているので、本件オープンショーケースは税抜価額により判定し、消耗品費としていた旨の請求人の主張は採用できない。
 そうすると、法人税法施行令第133条を適用する場合において、取得価額又は支出する金額が200,000円未満であるかどうかは、税込経理方式によって算定した取得価額又は支出金額により判断することとなる。
 なお、請求人は、消費税の課税売上金額及び課税仕入金額を集計し、納付すべき消費税額を算出することにより自動的に期末一括税抜経理方式を採用していた旨主張するが、期末一括税抜経理方式とは、法人税の課税所得金額を計算する際、事業年度終了の時に期中において税込処理した消費税の額を一括して税抜処理する方式をいうのであって、納付すべき消費税額を算出したからといって直ちに法人の消費税の経理処理が税抜経理方式となるものではなく、この点に関する請求人の主張には理由がない。
 また、請求人は、消費税の経理方式を変えるために総勘定元帳及び損益計算書を改めたものではない旨主張するが、請求人の総勘定元帳及び損益計算書は税込経理処理方式により経理処理されていたものであり、前記(ハ)のCのとおり、平成2年3月期の確定申告書を提出した後に期末一括税抜経理方式に改めたことが明らかである以上、この点に関する請求人の主張にも理由がない。
 したがって、本件オープンショーケース一台当たりの取得価額は、Aー123型が203,448円及びBー123型が203,779円であり、本件オープンショーケースは少額減価償却資産に該当しないとして、本件オープンショーケースの取得価額6,110,060円のうち平成2年3月期におけるその償却限度額162,425円を超える金額5,947,635円を損金の額に算入できないとした原処分は適法である。
ロ 本件花輪代について
 本件花輪代が交際費等に当たるか否かに争いがあるので、調査・審理したところ、次のとおりである。
(イ) 次のことについては、当事者間に争いはなく、当審判所の調査によっても、その事実が認められる。
A 本件花輪は、請求人が施工した店舗の開店に際して、施主に対し贈答した開店祝いの花輪であること。
B 本件花輪は、花屋等で一般に開店祝い用として販売されているものであること。
(ロ) 請求人の提示資料、原処分関係資料等及び当審判所の調査によれば、次のとおりである。
A 本件花輪の贈答先は、平成2年3月期において施工、開店した店舗270件のうちの40件であること。
B 贈答先の選定は、営業担当者の意見を参考にして請求人の役員及び幹部が判断して決定しているが、りん議書等その経緯を確認できるものは作成していないこと。
(ハ) ところで、交際費等については、租税特別措置法第62条《交際費等の損金不算入》第3項で交際費、接待費、機密費その他の費用で、法人がその得意先、仕入先その他事業に関係のある者に対する接待、供応、慰安、贈答その他これらに類する行為のために支出するものをいうと規定されており、そのうち「交際費、接待費、機密費その他の費用」という部分は、要するに相手方との親ぼくを図り、その度合いを密にすることを主要な目的とする費用の支出を意味し、したがって、名目は異なるものであっても、相手方との親ぼくの度合いを密にすることを目的とする費用であれば「その他の費用」に含めると解すべきである。
 また、「得意先、仕入先その他事業に関係のある者」とは、法人の内外を問わず、すべての関係者が含まれるかなり広い概念ということになる。
 そして、交際費等から除かれる費用は、同法施行令第38条の2《交際費等の範囲》に例示されており、また、交際費と広告宣伝費との区分については、不特定多数の者に対する宣伝的効果を意図する費用で、1一般消費者に対し金品を交付するため又は一般消費者を旅行、観劇等に招待するための費用、2一般の工場見学者等に製品の試飲、飲食をさせる費用、3得意先等に対する見本品、試用品の供与に通常要する費用及び4消費動向調査等に協力した一般消費者に対しその謝礼として金品を交付するために通常要する費用等は交際費に含まれず広告宣伝費に該当すると解される。
 以上のことから、交際費等と広告宣伝費との区分は、主として、1支出の目的が交際目的(親ぼくの度合いを密にして取引関係の円滑な推進を図ること)か広告宣伝目的(購買意欲の刺激)か、2支出先が特定か不特定かによって区別すべきところ、本件花輪は、前記(イ)のA及び(ロ)のAのとおり、店舗の開店に際し祝い品として贈られたものであり、その贈答先は、請求人が施工した店舗に限られ、一般消費者に贈られたものではないから、たとえ本件花輪に社名を記載した看板が取り付けられていても、不特定多数の者に対する宣伝的効果を意図して贈られたものとは認められないので、本件花輪の購入費用は、交際費等の額に該当する。
 また、租税特別措置法施行令第38条の2に規定するカレンダー、手帳等に類する少額の物品とも認められないため、交際費等から除かれる費用には該当しない。
 したがって、原処分庁が本件花輪の代金493,472円は交際費等に該当するとして、租税特別措置法第62条により計算した損金算入限度超過額を損金の額に算入しなかった原処分は適法である。

(2) 過少申告加算税の賦課決定について

 前記(1)のとおり、更正は適法であり、かつ、更正により納付すべき税額の計算の基礎となった事実が更正前の税額の計算の基礎とされていなかったことについて、国税通則法第65条第4項に規定する正当な理由があるとは認められないから、同条第1項の規定に基づいてされた過少申告加算税の賦課決定も適法である。
(3) 原処分のその余の部分については、請求人は争わず、当審判所おいて調査・審理したところによってもこれを不相当とする理由は認められない。

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