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(平5.6.16、裁決事例集No.45 53頁)

《裁決書(抄)》

1 事実

 審査請求人(平成3年5月15日商号変更、旧商号A木材株式会社、以下「請求人」という。)は、製材業を営む同族会社であるが、平成元年4月1日から平成2年3月31日までの事業年度(以下「本件事業年度」という。)分の青色の法人確定申告書に、所得金額387,245,705円、納付すべき税額159,770,100円と記載して法定申告期限までに申告し、更に、平成3年5月31日に所得金額418,569,365円、納付すべき税額172,930,800円と記載した修正申告書を提出した。
 原処分庁は、平成3年6月26日付で当該修正申告(以下「本件修正申告」という。)により納付すべき税額を基礎として、重加算税の額を910,000円、過少申告加算税の額を1,055,000円とする賦課決定をした。
 請求人は、これらの処分のうち、重加算税の賦課決定部分を不服として平成3年8月26日に異議申立てをしたところ、異議審理庁は、同年12月6日付で棄却の異議決定を行った。
 請求人は、異議決定を経た後の原処分について、なお不服があるとして、平成4年1月6日に審査請求をした。

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2 主張

(1) 請求人の主張

 原処分庁は、請求人が平成2年3月に従業員に支給した特別賞与(以下「本件賞与」という。)6,131,060円について、実際には支給せず、架空計上したものであるとして損金計上を否認し、それにより増加した法人税額2,600,000円について910,000円の重加算税を賦課決定したが、次のとおり、本件賞与は実際に支給したものであって、架空計上や仮装の事実はないので、原処分のうち、重加算税の賦課決定部分は違法であるから取り消すべきである。
イ 請求人は、昭和62年9月に特定退職金共済制度(以下「本件退職金共済制度」という。)を導入したが、その導入により従業員退職金の支給額について、勤続年数の長い従業員が不利になることから、それらの不公平を精算するために、従業員の代表としてのB男、C男、D男及びE男並びに請求人との間で、過去の勤務年数の違いによる格差分(以下「過去勤務債務分」という。)を特別賞与として支給することで平成2年3月26日に合意し、その旨の覚書(以下「本件覚書」という。)を取り交わし、同月中に本件賞与を従業員に支給した。
 これに対して、原処分庁は、請求人が中途退職した従業員に対して本件賞与を支給していないと主張するが、事実誤認である。
 なお、平成2年3月26日現在、B男は請求人のR工場(所在地 P市R町)の、また、C男はS工場(所在地 S市T町)の各工場長であり、D男は本社工場(所在地 U市W町)の、また、E男はS工場の各従業員である。
ロ 原処分庁は、A木材共済会B男名義及びC男名義で預け入れられた普通預金(以下「本件預金」という。)が請求人に帰属するものであると主張するが、当該預金は、従業員等に支給された本件賞与を、本件覚書の定め及び従業員の総意に基づいて、保管責任者でもある当該預金の名義人両名が従業員の預金として管理していたものであるから、当該預金は、個々の従業員のものであって請求人のものではない。
 また、本件預金に係る通帳や利息管理の帳簿を請求人の経理担当者(以下「経理担当者」という。)が保管していたのは、当該預金をいずれ市場金利連動型預金(通称 MMC)に預け替えるとともに、従業員の退職時等に支給する際に利息を加算することとしていたこと等から、上記保管責任者の依頼によりその経理処理を代行していたものにすぎない。
 なお、本件賞与は、本来、本件覚書の定めにより、市場金利連動型預金の一括団体定期預金として運用する予定であったが、預入れの下限額に満たなかったため、普通預金としたものである。
ハ 原処分庁は、本件賞与について、賞与計算基準に合致していないこと及び当該賞与の支給に係る所得税の源泉徴収の税率を10パーセントとしていることをもって、本件賞与が架空に計上されたものであると主張するが、1賞与の額の算定基準は請求人の自由な裁量の範囲内のことであり、また、2源泉徴収の税率の誤りは単純な計算ミスであって、その誤りも年末調整で適正に処理されている。
ニ 上記のとおり、本件賞与は実際に従業員に支給したものであり、また、本件預金は請求人のものではないのであるが、それにもかかわらず請求人がこの部分についても本件修正申告をしたのは、原処分庁による税務調査において、調査担当者から、本件賞与は、平成2年3月31日の本件事業年度末において、工場ごとの算定基準が異なるなど、支給すべき額が具体的に確定していないと指摘され、事後の確定した時点において損金に計上することができると指導されたこと及び同調査担当者が、請求人の代表取締役○○(以下「請求人代表者」という。)に修正申告を強要したため、余儀なく応じたものである。

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(2) 原処分庁の主張

重加算税の賦課決定は、次のとおり適法である。
イ 請求人は、本件賞与は実際に支給したものであり、したがって、本件預金は請求人のものではないと主張するが、当該賞与は、架空に計上されたものであり、また、当該預金は、それによってねん出された資金を、請求人がA木材共済会B男名義及びC男名義で仮名預金としたものである。
ロ 請求人は、従業員の総意に基づき本件賞与の取扱いを決定した上、本件覚書を作成したと主張するが、原処分に係る調査及び異議審理に係る調査において本件覚書の提示もなく、その存在すら主張してはいない。
 なお、本件覚書において代表責任者とされているB男及びC男は、平成2年3月26日現在、それぞれ請求人のR工場及びS工場の責任者であり、従業員代表として請求人と交渉する立場にはなかったものであると認められる。
 また、本件賞与の支給自体が従業員に対して周知された形跡はなく、請求人を退職した者のうちの数名を調査したところ、本件賞与及び本件預金の存在を知らない旨申述している。
ハ 本件覚書には、「賞与は一括MMC定期として保管する」との記載があるが、実際には本件預金は普通預金であって、定期預金とされた事実はない。
ニ 本件賞与の支給対象者とされる者の中には、既に退職した者も含まれているが、それらの者も含む総意を取り付けたとするのは不自然である。
 一方、本件賞与が請求人の主張するようなものであれば、支給対象者とされる者が退職する際には当然返還されるべきところ、本件事業年度末に至るまで返還された事実はなく、それらの者が預け入れられている賞与の返還を求めた事実もない。
 なお、請求人は、原処分に係る調査着手後、平成3年8月までに一部の者を除いた従業員に本件賞与を支給しているが、これは、当該金員が賞与であるとの請求人の主張を補完するために行ったものと認められる。
ホ 本件賞与については、各工場において支給基準がまちまちであり、かつ、請求人における通常の賞与の算定基準と異なっており、また、当該賞与の支給における所得税の源泉徴収の税率が一律10パーセントであるのは不自然である。
ヘ 上記のとおり、請求人は、支給額未確定の本件賞与を損金に計上し、かつ、架空名義により本件預金を預け入れて、所得金額の計算の基礎となるべき事実を隠ペい又は仮装したものであり、国税通則法第68条《重加算税》第1項に規定する重加算税の賦課要件を満たしているのは明らかであって、同項の規定により重加算税の賦課決定をしたことは正当である。
 なお、原処分庁が請求人に対して修正申告書の提出を強要した事実はない。

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3 判断

 本件審査請求の争点は、重加算税の賦課決定の適否にあるので、以下審理する。

(1) 次の事実については、請求人及び原処分庁の双方に争いがなく、当審判所の調査によってもその事実が認められる。

イ 本件賞与の額は、次のとおり合計6,131,060円であること。

(単位:円)
順号 工場の名称 賞与の額
1 本社工場 148,000
2 R工場 1,340,000
3 S工場 4,643,060

 

ロ 上記イの1の本社工場分と2のR工場分の合計1,488,000円は、平成2年3月30日に△△銀行□□支店のA木材共済会B男名義の普通預金口座に預け入れられていること。
ハ 上記イの3のS工場分は、源泉徴収に係る所得税額を控除した後の額4,178,754円が平成2年3月29日に◎◎銀行××支店のC男名義の普通預金口座に預け入れられていること。
 なお、当該預金は、平成3年4月4日に解約されていること。
ニ 本件賞与に対する源泉徴収に係る所得税は、一律10パーセントの税率で徴収され、平成2年4月10日にそれぞれの工場ごとに納付されていること。
ホ 各従業員の平成2年分の給与等の年末調整の対象には、本件賞与が含まれていること。
(2) 請求人代表者、請求人の経理部長F男(以下「F経理部長」という。)、S工場の従業員であるG男の各答述及び提示書類並びに当審判所がU商工会議所を調査したところによれば、次の事実が認められる。
イ 請求人代表者が主宰するH木材株式会社(所在地 S市T町、以下「H社」という。)が製材業務を廃止したため、請求人は、昭和61年4月にH社の製材工場等を同社から賃借の上、請求人のS工場として当該業務を引き継ぐとともに、同社の従業員を請求人に受け入れたこと。
ロ 請求人は、従前から退職年金制度を導入していたが、S工場の従業員については、昭和63年8月1日から同制度を適用することとしたこと。
 なお、当該退職年金は、○×相互会社の扱いとなっていること。
ハ 請求人は、昭和62年9月にU商工会議所及びS商工会議所が取り扱う本件退職金共済制度に加入したこと。
 なお、個々の従業員によっては、当該制度への加入手続が遅れた者がいること。
 また、請求人の場合は、既設の事業所であるため、本件退職金共済制度については、過去勤務年数の取扱いができないこととされていたこと。
ニ 本件退職金共済制度の加入口数は、当初、本件工場及びR工場は従業員一人当たり4口、S工場は従業員一人当たり10口としていたが、同工場も上記ロのとおり、退職年金制度を導入したことに伴い、平成元年10月1日に本件退職金共済制度の加入口数を従業員1人当たり4口に変更していること。
ホ 昭和43年10月1日に制定された請求人の「退職金規定」(平成3年4月1日改訂前のもの。)の第10条には、退職金の支給額に関し、「別に定める退職年金規程による給付がある場合は、本規定による支給額から退職年金規程による支給額を控除する。ただし退職年金規程による給付が年金の場合は控除する金額は年金現価相当額とし、退職年金規程による支給額が本規定による支給額を超える場合は本規定による給付は行わない。」旨定められていること。
ヘ 請求人は、本件退職金共済制度への加入に伴い、上記ホの退職金規定第10条の「退職年金規程による給付」の部分の運用を「退職年金規程による給付と本件退職金共済制度による給付の合計額」に変更(要旨)していること。
 なお、当該退職金規定は、平成3年4月1日付で、上述の事項等について所要の改訂をしていること。
ト 退職金規定(平成3年4月1日付改訂後のもの。)により計算した退職金の額と、上記ロの退職年金に係る年金一時金の額(年金現価相当額)に本件退職金共済制度による給付金の額を加えた金額とを比較すると、通常は後者の額の方が多くなることから、本件退職金共済制度への加入前から勤務している者の方が不利になるという問題が生じたこと。
チ 当審判所の質問に対して、請求人代表者は、過去勤務債務分について、一時金の支給により精算することとなった旨答述しており、また、従業員のG男は、職長から従業員に対して、退職金不足額の支給について話があった旨答述していること。
(3) 上記(2)の認定事実を総合すれば、請求人が本件賞与を従業員に支給することとした理由は、請求人が昭和62年9月に本件退職金共済制度を導入した結果、従業員間において勤務年数により退職金の支給額に不公平が生じることとなったため、その是正策として、同月以前に入社した従業員に対して、過去勤務債務分に相当する部分を一時金の支給により精算することとしたことによるものと推認することができ、相当の理由があったものと認めることができる。
(4) 次に、請求人の各工場における個々の従業員に係る過去勤務債務の額については、請求人代表者及びF経理部長の答述並びに請求人の提出資料によれば、次のように計算した事実が認められる。
イ 本社工場
 本社工場においては、昭和62年9月に本件退職金共済制度に加入したときに、従業員全員について加入手続をすべきところその手続が遅れた者及びその後に入社した者で入社時に加入手続をすべきところその手続が遅れた者について、各従業員ごとの正当な手続をした場合の掛金と実際に払い込まれた掛金の平成2年3月末の時点における各累計額の差額として計算したこと。
ロ R工場
 R工場は、請求人が昭和62年9月の本件退職金共済制度に加入した時点では、いまだ工場そのものができていなかったので、平成元年10月1日の当該工場の新設時点に入社した者で入社時に加入手続をしていなかった者及び本社工場からR工場に転勤になった者に対して、入社時から本件退職金共済制度への加入手続をした日までの掛金相当額として計算したこと。
ハ S工場
 S工場は、昭和62年9月以前に入社した者に対して過去勤務債務分を支給するとの本社の指示を誤認して、同工場の従業員をH社から請求人に受け入れた昭和61年3月末現在と昭和62年8月末現在の各人ごとの各退職金要支給額の差額として計算したこと。

(5) 以上の(1)から(4)の認定事実等に照らすと、本件賞与を支給するに至った経緯及び過去勤務債務の額の算定基準について、全く架空なものということはできない。
 ところで、原処分庁は、本件賞与の算定基準が各工場ごとにまちまちであること等を理由として、架空計上したものと認定している。
 確かに、上記(4)によれば、本来同一であるべき過去勤務債務の額の算定基準は、各工場ごとに不統一で、いずれの場合も過去勤務債務分を精算するという趣旨に全く合致しておらず、かつ、本件賞与の実際の支給方法をみると、請求人代表者が当審判所に答述したそれとも異なっており、当該事業年度中には従業員に直接支給されなかったのであるから、かかる支給方法によった本件賞与の損金計上が不適法であるとして、否認されたことは当然である。
 しかしながら、それぞれの工場ごとに計算された額については、前記(1)及び(2)の関係者の答述によれば、各工場の従業員の入社等の経緯におおむね見合ったものと認められるのであり、特に、請求人が本件退職金共済制度を導入するに当たり、既設の事業所であったため、過去勤務期間通算の取扱いを受けることができないこととなり、従業員間の勤務期間の違いによる不公平を招いたものと認めることができるのであるから、原処分庁主張のごとく、直ちに架空計上したものとまでいうことはできない。
 そして、請求人は、上記の各工場ごとの算定基準の当否はともかく、各従業員ごとに過去勤務債務の額を具体的に算出していることを併せ考えると、請求人が過去勤務債務の額を基として本件賞与を実際に従業員に対して支給する意図をもっていたものと解するのが相当である。
(6) 次に、原処分庁は、請求人が本件賞与を従業員に実際には支給せず、B男等2つの口座の本件預金に預け入れており、当該預金は請求人に帰属するものであると主張し、一方、請求人は、当該預金は請求人に帰属しないと主張する。
 これについては、原処分関係資料によれば、本件賞与が本件事業年度末において、実際に個々の従業員に支給されていなかったこと及び本件預金の通帳、使用印章等を請求人の経理担当者が管理していたことが認められるのであるから、この点に関する請求人の主張には理由がないのみならず、上記(5)において述べたとおり、各工場ごとに算定した過去勤務債務の額を直ちに本件賞与の額としたのではなく、請求人が当該事業年度末において支給できる範囲内としており、結局、具体的な支給額を確定していなかったのであるから、そのような当該賞与を損金に計上した請求人の経理処理には、全く合理性がないといわざるを得ない。
 ちなみに、本件賞与の額の算出方法についての各工場の経理担当者に対する説明、指示に徹底を欠いたため、上記(4)のとおり各工場の算定方法がまちまちであったこと及び上記の理由により当該賞与の支給すべき額の確定ができなかったことは請求人も自認するところであり、それを原処分庁が指摘したことにより本件修正申告書の提出に至ったものと認めるべきが相当である。
 なお、請求人は、本件修正申告は調査担当者から強要されたため余儀なく応じた旨主張するが、請求人は、当該主張に係る証拠を提示せず、当審判所の調査したところによっても、そのような事実があったとは認められないから、当該主張には理由がない。
(7) 更に、原処分庁は、本件重加算税の賦課決定の理由として、請求人が本件預金の預入れに当たってB男らの名義を用いたことをもって仮装であると主張するので検討する。
イ 請求人は、本件預金の預入れに当たって、上記B男らの名義を用いたことの理由について、本件覚書をもって従業員の総意に基づいて行ったものである等主張するが、当該覚書は、本件審査請求の段階に至って初めて提示されたものであり、かつ、当該覚書に「社員代表」として署名押印しているE男及びD男がどのような経緯により社員代表に選出されたかについて合理的な説明がなされないなど、直ちには信用し難いところである。
ロ しかしながら、当審判所が本件預金について調査したところによれば、当該預金はいずれも原処分に係る調査が開始された後の平成3年4月に解約全額払戻しがなされるまで、請求人の従業員であった■■ら中途退職者への支給及び本件賞与に関する源泉徴収に係る所得税の納付のための払戻しを除き、他の用途に払い戻されたことはないことが認められる。
 そうすると、本件預金口座の設定及び当該口座への本件賞与の預入れは、本件賞与の管理のためのものと認められ、他に請求人が法人税の課税を免れるために架空名義口座を設定したり、仮名預金に預け入れたものであると認定するまでの証拠はないといわざるを得ない。
 また、前記(5)の認定事実等に照らせば、請求人が本件預金を本事業年度の決算上資産に計上しなかったのは、請求人が本件賞与をB男等の名義の預金に預け入れたことにより、当該賞与を従業員に支給したものと誤認し、当該預金は、請求人に帰属しないものと認識したからであると解されるところであって、そのような名義の使用をもって隠ペい又は仮装したとまで認めることはできない。
ハ 更に、S工場の従業員であるG男が当審判所に対し、本件賞与が支給される前に退職金不足相当額の支給について職長から話があったと答述していることに照らせば、請求人が従業員退職金の不公平是正の趣旨で何らかの金員を支給することについて、一般従業員にもおおむね周知されていたことが推認できるところである。
ニ なお、原処分庁は、原処分に係る調査着手後に請求人が本件預金を解約し、従業員に対して本件賞与を支給したことをもって、請求人の行為を正当化しようとしたものと主張する。
 しかしながら、本件預金の払戻し及び従業員への支給が当該調査着手後に行われたとしても、前記(5)において認定したごとく、おおむね各人ごとにあらかじめ算定された額を前提としてなされているのであるから、それをもってして請求人の行為を正当化しようとしたものとまでいうことはできない。
(8) 以上を総合すれば、本件賞与は本件事業年度には支給されておらず、本件預金が請求人に帰属することも明らかであるが、過去勤務債務を精算する必要があることについては相当な理由が認められるところから、本件賞与を損金の額に計上したこと、本件預金をB男らの名義で預け入れたこと等をもってにわかに仮装行為であるとまでいうことはできず、他にこの認定を覆すに足りる証拠はない。
(9) 以上のとおり、本件において、請求人が所得金額の計算の基礎となるべき事実を隠ペいし、又は仮装し、その隠ペい又は仮装したところに基づいて納税申告書を提出したとの事実はないと認めるのが相当である。
(10) そうすると、本件においては、重加算税を賦課決定することは相当でないと認められるところ、本件修正申告により納付すべき税額の計算の基礎となった事実のうちに、当該修正申告前の税額の計算の基礎とされていなかったことについて、国税通則法第65条《過少申告加算税》第4項に規定する正当な理由がある場合に該当しないので、過少申告加算税の賦課要件は満たしていることとなるから、重加算税の賦課決定のうち、過少申告加算税相当額を超える部分の金額はこれを取り消すべきである。
 したがって、重加算税の額は零円となり、かつ、過少申告加算税の基礎となる税額は13,160,000円となるから、それにより算定される過少申告加算税の額は1,316,000円となる。
(11) 原処分のその余の部分について、請求人は争わず、当審判所に提出された証拠資料等によっても、これを不相当とする理由は認められない。

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