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(平8.7.5裁決、裁決事例集No.52 79頁)

《裁決書(抄)》

1 事実

 審査請求人(以下「請求人」という。)は、社団法人であるが、平成4年4月1日から平成5年3月31日までの事業年度(以下「平成5年3月期」という。)の法人税について、青色の確定申告書に所得金額を227,644,754円及び納付すべき税額を61,463,800円と記載して、平成5年6月30日に申告し、また、平成5年4月1日から平成6年3月31日までの事業年度(以下「平成6年3月期」といい、平成5年3月期と併せて「本件各事業年度」という。)の法人税について、青色の確定申告書に所得金額を211,192,722円及び納付すべき税額を53,658,900円と記載して、平成6年6月16日に申告した。
 その後、請求人は、平成6年6月24日に平成5年3月期の法人税について、所得金額を102,901,266円及び納付すべき税額を27,783,270円とすべき旨の更正の請求(以下「平成5年3月期に係る更正の請求」という。)をしたところ、原処分庁は、平成7年6月30日付で更正をすべき理由がない旨の通知処分(以下「平成5年3月期に係る通知処分」という。)をした。
 請求人は、平成5年3月期に係る通知処分を不服として、平成7年8月10日に審査請求をした。
 また、請求人は、平成7年6月30日に平成6年3月期の法人税について、欠損金額を12,502,164円及び納付すべき税額を零円とすべき旨の更正の請求(以下、平成5年3月期に係る更正の請求と併せて「本件各更正の請求」という。)をしたところ、原処分庁は、同年12月26日付で更正をすべき理由がない旨の通知処分(以下「平成6年3月期に係る通知処分」といい、平成5年3月期に係る通知処分と併せて「本件各通知処分」という。)をした。
 請求人は、平成6年3月期に係る通知処分を不服として、平成8年1月8日に審査請求をした。
 そこで、これらの審査請求について併合審理をする。

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2 主張

(1)請求人の主張

 原処分は、次の理由により違法又は不当であるから、その全部の取消しを求める。
イ 請求人は、本件各事業年度に行われた別表1及び別表2に掲げる展示会(以下「本件展示会」という。)において、別表1及び別表2に掲げる「展示会場」(以下「展示会場」という。)を賃借し、その賃借した展示会場を小間割りした小間(以下「出展小間」という。)を本件展示会に出展を希望する企業等に使用させ、その出展小間を使用させることの対価たる別表1及び別表2に掲げる「出展小間代収入金額」(以下「出展小間代」という。)及びその付随収入たる別表1及び別表2に掲げる「付随収入金額」(以下「本件事業付随収入」という。)を収入する事業(以下「本件事業」という。)を行っているところ、この本件事業を法人税法第2条《定義》に規定する収益事業(以下「収益事業」という。)に該当するとして、本件各事業年度の法人税の申告をしていた。
 その後、請求人は、本件事業は収益事業以外の事業(以下「非収益事業」という。)であるとした本件各更正の請求をしたところ、原処分庁は、本件事業は収益事業とされる法人税法施行令第5条《収益事業の範囲》第1項第14号に規定する席貸業に該当し、かつ、本件展示会が継続して開催されていることは明らかであることから、収益事業に該当するとして、更正すべき理由はないとした本件各通知処分をした。
ロ しかしながら、次の理由により、本件事業は、法人税法施行令第5条第1項第14号に規定する席貸業には該当しない。
(イ)法人税法施行令第5条第1項第14号に規定する席貸業は、不動産の所有者が席貸しをしたものと解すべきであるところ、請求人は不動産たる展示会場を所有していない。
(ロ)請求人は、本件事業は展示会事業として行っているのであり、席貸業として行っているのではない。
 すなわち、本件展示会の開催の手順等は次のとおりとなっており、これらのことは、請求人が展示会事業のために本件事業を行っていることを示すものであり、展示会事業とは全く別の事業である席貸業のために本件事業を行っているものではないことを示すものである。
A 請求人は、展示会場の賃貸借の予約に当たって、その使用目的を展示会の開催のためとしており、貸席を又貸しするためとはしていないこと。
B 本件展示会を成功させるため、本件展示会のそれぞれに係る主催者協議会、企画委員会及び事務局が活動しているが、これらの主催者協議会等において、本件展示会が席貸業に該当するという認識は全くないこと。
C 本件展示会における電気、ガス、水道、臨時電話、送迎バス及びガードマンの手配等並びに警察、消防、保健所等への諸申請は、請求人が行っているのであり、本件展示会事業が貸席の又貸しであれば、その又貸しで賃借した本件展示会における出展者(以下「出展者」という。)が行うのが普通であること。
D 本件展示会の広告を新聞、雑誌等で行っているが、席貸しに関する広告は行っていないこと。
E 本件展示会では、開会式、レセプション等を行っており、本件展示会の終了後には本件展示会の結果報告書を作成しているところ、席貸業であれば、これらのことは不要であること。
F 本件展示会のシンポジウムを開催しているが、席貸しをテーマにすることはないこと。
G 本件展示会の付帯事業としてガイドブックを刊行しており、席貸業であれば、ガイドブックの刊行は不要であること。
H 通産省、運輸省等の官公庁が本件展示会を後援しているところ、このことは、これらの官公庁が本件展示会の社会的意義を認めた上で後援者になっているものと思われること。
(ハ)請求人は、本件事業において出展者との間で出展小間の賃貸借契約を締結しておらず、出展者から出展小間代を本件展示会の諸費用の回収手段として受領しているが、これは、席貸しの対価としてではなく、本件展示会を開催する対価として受領しているのであり、これらのことは、歌舞伎、音楽会、相撲等の興行を行う者が歌舞伎等の興行を観覧させる対価として入場料を受領する興行業と同様である。
 そして、これらの歌舞伎等の興行を席貸業であるとはいえないのと同様に、出展小間代の対価は展示会の開催であるから、本件事業は席貸業ではなく、展示会事業である。
ハ 他の公益法人等の行っている展示会事業は、非収益事業とみなされているにもかかわらず、本件展示会を収益事業に該当するというのは、課税の公平という観点から不当である。
二 原処分庁が請求人に対し、昭和59年以前に行われた過去の税務調査(以下「過去の税務調査」という。)において本件事業に類似する事業(以下「本件類似事業」という。)について、収益事業である席貸業に該当するという指摘を受けたことは一度もなく、非収益事業として認められてきたにもかかわらず、本件事業が席貸業に該当するというなら、過去の税務調査において本件類似事業を非収益事業として認めた理由を明らかにすべきである。
ホ 以上のとおり、本件事業は法人税法施行令第5条第1項第14号に規定する席貸業に該当するものではなく、同項に規定するどの事業にも該当しない非収益事業であり、また、他の公益法人等との課税の公平上及び過去の税務調査における状況から本件各通知処分は違法又は不当である。

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(2)原処分庁の主張

 原処分は、次の理由により適法であるから、審査請求を棄却するとの裁決を求める。
イ 原処分庁の調査によれば、本件事業について次の事実が認められる。
(イ)本件展示会は、関係団体及び企業等の協力を得て、産業界の振興、技術の開発、啓蒙及び普及並びに異業種間の交流の場を提供することを目的とし、請求人はその自主企画に基づき出展の申込みの勧誘を行い、応募した出展者は、新製品等の展示を自らが演出、陳列等を行い、これを本件展示会の入場者(以下「入場者」という。)の観覧に供していること。
(ロ)請求人は、本件展示会の開催期間中に出展者に対し、他から有償で賃借した展示会場を小間割りした出展小間の貸付けを行い、その対価たる出展小間代を受領していること。
ロ ところで、公益法人等又は人格のない社団等が行う収益事業に対する課税は、公益法人等又は人格のない社団等が行う特定の事業を収益事業としてとらえ課税するものであり、席貸業に関しては、席貸しが事業として行われ、かつ、その席貸しが法人税法施行令第5条第1項第14号ロ(1)ないし(4)に規定する席貸業に該当しなければ、収益事業とされる席貸業に該当し、課税されることとなる。
 ここでいう席貸しとは、有償で座席や会場等の一定のスペースをその用途、用法に従って他の者に貸し付ける行為をいう。
 また、展示会等は不特定又は多数の者の観覧の用に供する催し物に含まれる。
ハ 上記イの認定事実及び上記ロのことから、本件事業は、請求人が本件展示会の期間中を通じて、出展小間の席貸しを事業として行った席貸業であることは明らかである。
 そして、本件事業は、収益事業である席貸業の範囲から除かれる法人税法施行令第5条第1項第14号ロ(1)ないし(4)に規定する席貸業には該当せず、同号イに規定する「不特定又は多数の者の娯楽、遊興又は慰安の用に供するための席貸業」に該当することから、収益事業である。
二 請求人は、法人税法施行令第5条第1項第14号に規定する席貸業は不動産の所有者が席貸しをした場合に限られると解すべきである旨主張するが、同号の規定には、席貸業は不動産の所有者が席貸しした場合に限られるとの定めはなく、また、他から不動産を賃借して席貸しする事業をことさら席貸業から除外するようにもなっていないことから、この点に関する請求人の主張は相当でない。
ホ 請求人は、本件事業は展示会事業であり席貸業ではない旨主張するが、本件展示会における出展者は、次の(a)ないし(e)の利用目的のために出展小間を賃借し、利用することの対価として、出展小間代を請求人に支払っているものと考えられ、当該小間代は席貸しの対価であるから、この点に関する請求人の主張は相当でない。
(a)新規顧客の開拓
(b)企業及び取扱商品、サービス等の宣伝
(c)新製品、新サービス等の発表
(d)市場動向の把握と情報収集
(e)商談、直接販売
ヘ 請求人は、本件展示会の開催の手順等が上記(1)のロの(ロ)のAないしHとなっていることから、請求人は展示会事業のために本件事業を行っているのであり、席貸業のために本件事業を行っているのではない旨主張するが、それらの本件展示会の開催の手順等をもって、本件事業が席貸業に該当しない理由とはならないから、この点に関する請求人の主張には理由がない。
ト 請求人は、出展者との間で出展小間の賃貸借契約を締結しておらず、本件展示会に要した諸費用の回収手段として、出展者から出展小間代を受領しているのであり、このことは、歌舞伎等の興行業と同様であるから、本件事業を席貸業とみるのは不当である旨主張するが、賃貸借とは、当事者の一方が相手方にある物を使用させ、相手側が賃料を支払う契約をいうものであるが、本件事業において、請求人が出展規定(出展の申込みに関する出展申込書の裏面に記載されている出展規定をいう。以下同じ。)等の存在の下に出展者に出展小間を使用させ、出展小間代を受領している事実が認められる以上、契約の名目はともかくとして、賃貸借を包含した出展規定等の存在の下に出展小間代の授受が行われているものといわざるを得ない。
 また、歌舞伎等の興行業の場合は、歌舞伎を見聞きさせる対価を受領しているものであり、小間を貸し付けてその対価を受領している本件事業とは、自らその内容及び性格を異にするものであって、同様に論ずることはできない。
 したがって、この点に関する請求人の主張には理由がない。
チ 請求人は、他の公益法人等が行っている展示会事業が非収益事業であるとみなされているにもかかわらず、本件事業が収益事業に該当するというのは、課税の公平という点からみて不当である旨主張するが、他の公益法人等が行っている展示会事業に係る主張は、本件各通知処分の適法性又は正当性に影響を与えるものではなく、また、他の公益法人等の行う展示会の内容が本件展示会の内容とあらゆる点で同一か否かが定かでない以上、外観のみを捕らえて、課税の公平、不公平を論じることはできないから、この点に関する請求人の主張には理由がない。
リ 請求人は、過去の税務調査において本件類似事業が席貸業に該当するという指摘を受けたことは一度もなく、本件事業が席貸業に該当するというなら、過去の税務調査において本件類似事業を非収益事業として認めてきた理由を明らかにすべきである旨主張するが、仮に原処分庁から本件類似事業が席貸業に該当する旨の指摘がなかったとしても、本件事業が席貸業に該当するとの判断及び本件各通知処分の適法性又は正当性の有無に影響を与えるものではないから、この点に関する請求人の主張は相当でない。
ヌ 以上のことから、本件事業は収益事業に該当する。

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3 判断

 本件審査請求の争点は、本件事業が収益事業に該当するか否か及び本件各通知処分が不当であるか否かであるので、以下審理する。
(1)次のことについては、請求人及び原処分庁の双方に争いはなく、当審判所の調査によってもその事実を不相当とする事由は認められない。
イ 本件各事業年度内における本件展示会のそれぞれの展示会名、展示会場、開催期間、出展小間代収入金額、付随収入金額、出展者数、入場者数及び展示会場賃借料は、別表1及び別表2のとおりであること。
ロ 請求人は、本件展示会において、展示会場を賃借し、その賃借した展示会場を小間割りし、その小間割りした出展小間を本件展示会に出展を希望する企業等に使用させ、その対価たる出展小間代を受領するという本件事業を行っていること。
ハ 本件展示会では、開会式、レセプション及びシンポジウムが行われていること。
ニ 請求人は、平成5年3月期及び平成6年3月期の法人税について、本件事業が収益事業に該当するとした申告をしていること。
(2)当審判所が請求人の提出した資料及び原処分関係資料を調査したところ、次の事実が認められる。
イ 請求人は、民法第34条の規定により設立された社団法人であり、法人税法第2条第6号及び同法別表第2の規定により、公益法人等に該当すること。
ロ 請求人の商業登記簿謄本の「目的」欄によれば、請求人は、マネジメントに関する調査及び研究、情報の収集及び提供、人材の育成及び指導等を行うことにより、企業、団体等の経営革新を図り、もって我が国経済の発展、国民生活の向上及び国際社会への貢献に寄与することを目的とし、次の事業を行うとされていること。
(イ)マネジメントに関する調査及び研究
(ロ)マネジメントに関する情報の収集及び提供
(ハ)マネジメントに関する人材の育成及び指導
(ニ)マネジメント及びマネジメントに関連する技術に関する会議、展示会の開催
(ホ)マネジメントに関する内外関係機関との交流及び協力
(ヘ)上記(イ)ないし(ホ)に掲げるほか、請求人の目的を達成するために必要な事業
ハ 請求人の「1993年度事業報告書」によれば、請求人は、産業振興部門事業のうちのコンベンション振興本部事業として、産業界の新たな課題に対応するとともに、グローバルな規模での技術、情報交流を推進するため、各種専門展示会を積極的に開催したとしており、その各種専門展示会に当たるものが本件展示会であること。
ニ 本件展示会に係るガイドブックによれば、本件展示会の主催者は、請求人単独か若しくは請求人を含めた複数の社団法人であり、また、本件展示会のうちには通商産業省等の官庁が後援となっているものがあること。
ホ 企業等が本件展示会に出展を申し込む際、請求人に提出する出展申込書(以下「出展申込書」という。)には、出展者は出展申込書の裏面に記載されている出展規定を遵守し出展を申し込む旨の記載がされており、一方、出展申込書に定められている出展小間代は、本件展示会の主催団体の会員であるか否かにより単価が異なり、その単価を使用する出展小間の面積に乗じたものとされていること。
 また、出展規定には、出展物及び出展契約に関する事項等が定められているところ、本件展示会の剰余金及び損失金に係る規定はないこと。
ヘ 請求人が作成した本件展示会に係る結果報告書によれば、出展者の出展目的は、主に新規顧客の開拓のため及び新製品の発表、ピーアールのためとなっており、また、出展した効果は、主に会社・製品のピーアール効果があったこと及び新規顧客が開拓できたこととなっていること。
ト 本件事業付随収入の内容については、本件展示会に係る招待状及び入場券の売上げ等であること。
チ 請求人が作成した本件各事業年度の「プロジェクト収支計算書」によれば、本件展示会の個々の展示会における収支については、それぞれ損失金又は剰余金の計上があり、本件展示会全体の収支としては大幅な黒字となっていること。
(3)ところで、法人税法第4条《納税義務者》第1項及び同法第5条《内国法人の課税所得の範囲》並びに同法第7条《内国公益法人等の非収益事業所得等の非課税》は、内国法人である公益法人等については、収益事業を営む場合に限り、その収益事業から生じた所得について法人税を課する旨が規定されているところ、これらの規定は、元来公益法人等は公益を目的として設立されたものであり、営利を目的とするものではないが、公益法人等が一般私企業が行う事業と競合するような事業を行う場合には、公正な経済競争の確保を図るため、一般私企業に対する課税との均衡又は課税の公平等を考慮したものと解される。
 したがって、公益法人等の営む事業が法人税法上の収益事業に該当するときは、たとえその営む事業が当該公益法人等の本来の目的とされるものであっても、当該事業から生ずる所得については法人税が課されることになるが、収益事業の範囲は専ら税法固有の目的に従って法定されているものであるから、公益法人等の本来の事業が法人税法上の収益事業に該当したとしても、当該事業の公益性を否定するものではないと解するのが相当である。
 そして、法人税法第2条第13号は、収益事業を「販売業、製造業その他の政令で定める事業で、継続して事業場を設けて営まれるものをいう。」と規定し、この規定を受けて、法人税法施行令第5条において物品販売業をはじめとする収益事業とされる事業の範囲について個別に規定している。
 その収益事業の一つとして法人税法施行令第5条第1項第14号に席貸業が規定されているが、席貸業とは、一般にいわゆる席料や利用料を受領して座席、集会場等一定の場所を随時、時間や期間等を区切って利用させるために賃貸する事業をいうものと解されるところ、同号は、不特定又は多数の者の娯楽、遊興又は慰安の用に供するための席貸業及びそれ以外の席貸業で同号ロ(1)ないし(4)に規定する席貸業以外のものは、収益事業に該当する旨規定している。すなわち、不特定又は多数の者の娯楽、遊興又は慰安の用に供するための席貸業であるか否かにかかわらず、同号ロ(1)ないし(4)に規定する席貸業以外の席貸業は収益事業に該当することとなる。
 一方、法人税法第2条第13号に規定する、収益事業の要件である「継続して事業場を設けて営まれるもの」については、上述した収益事業課税の趣旨からすれば、「継続して営まれる」ものには、事業年度の全期間を通じて行われるもののほか、たとえ事業年度の全期間を通じて行われるものではなくとも、通常一の事業計画に基づく事業の遂行に相当期間を要するもの及び通常相当期間にわたって継続して行われるもの又は定期的に若しくは不定期的に反復して行われるものなど、その事業の性質上、全体として継続性があると認められるものも含まれると解するのが相当であり、また、「事業場を設けて営まれる」ものには、常時、店舗、事務所等事業活動の拠点となる一定の場所を設けてその事業を営むもののほか、必要に応じて随時その事業活動のための場所を設け、又は既存の施設を利用してその事業活動を行うものも含まれると解するのが相当である。
 なお、法人税法施行令第5条第1項は、収益事業とされる事業にはその性質上その事業に附随して行われる行為を含む旨規定しているところ、これは、収益事業には通常、当該収益事業に係る事業活動の一環として、又はこれに関連して行われる行為を含むと解するのが相当である。
(4)請求人は、本件事業は収益事業には該当しない旨主張するので審理したところ、次のとおりである。
イ 上記(1)及び(2)の認定事実並びに別表1及び別表2から、本件展示会及び本件事業等については、次のことが認められる。
(イ)本件展示会は、本件各事業年度において反復継続して行われている各産業界の各種専門展示会であり、不特定又は多数の者が入場していることが認められ、また、出展者は、主に新規顧客の開拓、企業及び新製品の宣伝等を目的として、賃借した出展小間において新製品等を自ら演出の上展示し、入場者の観覧の用に供し、入場者との間で商談等が行われていること。
 また、各種専門展示会である本件展示会の企画、運営等は、各種専門展示会の開催等を担当する請求人のコンベンション振興本部が行っていること。
(ロ)本件事業は、請求人のコンベンション振興本部が本件展示会に当たっての企画、運営等を行っており、その中に出展小間の賃貸が含まれているところ、本件事業に係る収入についてみると、本件事業の収入の大半が出展小間代であり、そのほかに招待状及び入場券の売上げ等の本件事業付随収入があること。
 また、請求人が受領する出展小間代は、請求人が支払う展示会場賃借料に比較し、かなり高額であることが認められ、これは、請求人が本件展示会の主催者となって、本件展示会の開会式、レセプション及びシンポジウムを含めた企画・立案及び実施、本件展示会における諸手続等の事務運営並びに本件展示会への官庁の後援依頼及び本件展示会終了後における結果報告書の作成等を行うことにより、本件展示会への出展の有効性及び有意義性が生じることによるものと考えられるが、本件展示会全体の収支は大幅な黒字となっていること及び出展規定には本件展示会の剰余金の処分又は損失金の負担についての規定がなく、仮に剰余金が生じても出展者に返還されないことから、出展小間代は請求人の実費の範囲を超えていると認められること。
ロ そこで、本件事業が収益事業に該当するか否かについて判断すると、次のとおりである。
(イ)まず、本件事業は、その収入の大半が出展小間代であり、出展小間代を受領して出展小間を本件展示会の開催期間の前後を通じて利用させるために賃貸するものであるから、上記(3)で述べた席料ないし利用料を受領して座席、集会場等一定の場所を随時、時間や期間等を区切って利用させるために賃貸する事業、すなわち席貸業に該当すると認められ、また、本件事業付随収入に係る事業については、席貸業と認められる本件事業と一体不可分のものであり、これに関連して行われるものであるから、席貸業に含まれると認められる。
 したがって、本件事業は、本件事業付随収入に係る事業も含め、席貸業に該当するというのが相当である。
(ロ)つぎに、上記(3)で述べたとおり、法人税法施行令第5条第1項第14号ロ(1)ないし(4)に規定する席貸業に該当する席貸業は、収益事業の範囲から除かれているところ、本件事業がこれらの収益事業の範囲から除かれる席貸業に該当するか否かについて判断すると、次のとおりである。すなわち、法人税法施行令第5条第1項第14号ロ(1)ないし(3)に規定する席貸業は、国又は地方公共団体の用に供するための席貸業、社会福祉事業として行われる席貸業及び学校法人等がその主たる目的とする業務に関連して行う席貸業であるところ、本件事業がこれに当たらないことは明らかであり、また、同号ロ(4)に規定する席貸業は、法人がその主たる目的とする業務に関連して行う席貸業で、当該法人の会員その他これに準ずる者の用に供されるもののうち、その利用の対価の額が実費の範囲を超えないものとされているところ、上記イの(ロ)のとおり、出展小間代は実費の範囲を超えていると認められるから、同号ロ(4)に規定する席貸業にも該当しないとするのが相当である。
(ハ)さらに、本件事業が継続して事業場を設けて営まれるものに該当するか否かについては、本件事業は、本件各事業年度において、別表1及び別表2のとおり、18ないし17の展示会が次々に開催されており、これは反復継続して事業が行われているといえること及び請求人はP市R町に事務所を有し、各種専門展示会である本件展示会の開催等を担当するコンベンション振興本部なる部門を設けていることが認められることから、本件事業は「継続して事業場を設けて営まれるもの」に該当するというのが相当である。
(ニ)以上のことから、本件事業は、法人税法施行令第5条第1項第14号ロ(1)ないし(4)に規定する席貸業に該当しない席貸業であるので収益事業となる席貸業であり、かつ、継続して事業場を設けて営まれるものであるから、収益事業に該当するというのが相当である。
ハ 請求人は、法人税法施行令第5条第1項第14号に規定する席貸業は不動産の所有者が席貸しをしたものに限られると解すべきである旨主張する。
 しかしながら、法人税法施行令第5条第1項第14号には、不動産の所有者が席貸しをしたものに限定する旨の規定はないから、この点に関する請求人の主張は採用できない。
ニ 請求人は、本件展示会の開催の手順等は本件展示会を成功させるという展示会事業のために行われており、展示会事業とは別の事業である席貸業のために行われているのではないから、本件事業は展示会事業である旨主張する。
 しかしながら、公益法人等の営む事業が収益事業に該当するかどうかは、その事業の内容、方法等の実質に応じて判定すべきであるから、仮に本件事業が請求人の主張するような意味での展示会事業であるとしても、税法の観点からみて本件事業が席貸業に該当すれば、収益事業となるのであり、本件事業は、上記ロのとおり、席貸業に該当することが認められるから、この点に関する請求人の主張には理由がない。
ホ 請求人は、出展者との間で出展小間の賃貸借契約を締結しておらず、また、本件事業において、出展小間代は席貸しの対価ではなく、本件展示会を開催することの対価として受領しているのであり、これは、歌舞伎、音楽会、相撲等の興行を行う者が歌舞伎等の観覧等の対価として入場料を受領するのと同様であるから、これら歌舞伎等を席貸業であるといえないのと同様に、本件事業を席貸業とはいえず、本件事業は展示会事業である旨主張する。
 しかしながら、請求人と出展者との間では、出展規定に基づいた出展契約が締結されており、これは、その実質が出展小間の賃貸借契約をも含めたものであることが認められ、また、歌舞伎、相撲、音楽会等の興行を行う者が受領している入場料は、歌舞伎、相撲、音楽等を観覧させ又は聴かせること等の対価であり、席貸業ではなく興行業に該当するというのが相当であるところ、本件事業の収入の大半は出展小間の面積等に応じた出展小間代であることが認められる以上、本件事業は席貸業に該当するというのが相当であるから、歌舞伎等の興行を行う場合と同列に論じることは適当でない。
 したがって、この点に関する請求人の主張には理由がない。
ヘ 以上のとおり、本件事業が席貸業には該当しないとする旨の請求人の主張はいずれも理由がなく、本件事業は、上記ロのとおり、収益事業に該当するというのが相当である。
(5)請求人は、他の公益法人等の行っている展示会事業は非収益事業とみなされているにもかかわらず、同じ展示会事業である本件事業を収益事業に該当するというのは、課税の公平という観点からみて不当である旨主張する。
 しかしながら、請求人以外の他の公益法人等の行っている展示会事業が非収益事業とみなされ、かつ、その非収益事業とみなされている展示会事業が本件事業と同様であると認めるに足る証拠はなく、また、収益事業に該当するかどうかは、それぞれの事業ごとに判定すべきであるから、この点に関する請求人の主張が本件各通知処分の適法性に影響を与えるものとは認められない。
 したがって、この点に関する請求人の主張には理由がない。
(6)請求人は、過去の税務調査において、本件類似事業を非収益事業に該当するとした会計処理をしていた請求人に対し、原処分庁からは本件類似事業が収益事業とされる席貸業に該当するというような指摘を受けたことは一度もなく、非収益事業として認められてきたのであるから、本件事業を収益事業に該当するというのであれば、過去の税務調査において、本件類似事業を非収益事業に該当すると認めてきた理由を明らかにすべきである旨主張する。
 しかしながら、過去の税務調査において是正すべき等の指摘がなかったからといって、請求人における会計処理について、誤りであることが明らかになった段階で是正を求めることは何ら不当であるとはいえないこと、過去の税務調査における本件類似事業が収益事業であるか否かの原処分庁における判断は、本件事業が収益事業であるか否かの判断に影響を与えるものではないこと及び当審判所の調査によれば、原処分庁の請求人に対する過去の税務調査において、本件類似事業に係る請求人の会計処理について積極的に認めてきた事実は認められないことから、この点に関する請求人の主張は採用することができない。
(7)以上の結果、本件各通知処分は違法又は不当であるとの請求人の主張には、いずれも理由がなく、当審判所の調査によっても、本件事業が収益事業に該当しないとする格別の事情があるとは認められず、本件事業は収益事業に該当するというのが相当であることから、原処分庁が本件事業は収益事業に該当するとして行った本件各通知処分は適法である。
(8)その他
 原処分のその他の部分については、請求人は争わず、当審判所に提出された資料等によっても、これを不相当とする理由は認められない。

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