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(平11.2.19裁決、裁決事例集No.57 429頁)

《裁決書(抄)》

1 事実

 審査請求人(以下「請求人」という。)は、平成6年2月4日に死亡したE(以下「被相続人」という。)の共同相続人の1人であるが、この相続(以下「本件相続」という。)に係る相続税について、被相続人の配偶者のF(以下、請求人と併せて「相続人ら」という。)と共同して、次表の「申告」欄のとおり記載した申告書を法定申告期限までに原処分庁に提出した。
 原処分庁は、これに対し、平成9年3月5日付で次表の「原処分」欄のとおり、更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分をした。

 請求人は、これらの処分を不服として平成9年5月6日に異議申立てをしたところ、異議審理庁は、同年8月11日付でいずれも棄却の異議決定をした。
 請求人は、異議決定を経た後の原処分に不服があるとして、平成9年9月8日に審査請求をした。

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2 主張

(1)請求人の主張

 原処分は、次の理由により違法であるから、その全部の取消しを求める。
イ 更正処分について
(イ)原処分庁は、本件相続により相続人らが取得した相続財産のうち、次表に掲げる土地(以下、同表の上欄から順に「本件第一土地」、「本件第二土地」及び「本件第三土地」といい、これらを併せて「本件各土地」という。)の評価に当たり、財産評価基本通達(昭和39年4月25日付直資56ほか。ただし、平成7年6月27日付課評2―6による改正前のもの。以下、財産の評価に関する他の通達と併せ「評価通達」という。)25《貸宅地の評価》の定めを適用した上、立退料94,000,000円(以下「本件立退料」といい、これに係る債務を「本件立退料支払債務」という。)については、相続税法第14条《控除すべき債務》第1項に規定する確実な債務とは認められないから、同法第13条《債務控除》第1項の規定の適用は認められないとして更正処分をした。
(ロ)しかしながら、被相続人は、本件各土地について、生前、次表に掲げる各借地人(以下、同義の上欄の借地人から順に「K」、「Lら」及び「Mら」といい、これらを併せて「本件各借地人」という。)との間で立退き交渉を行っており、これがほぼ合意に達していたことから、本件立退料支払債務は、次のとおり、相続税法第14条第1項に規定する確実と認められる債務に当たるので、同法第13条第1項第1号に規定する債務控除を認めるべきである。

A 相続税法基本通達14―1《確実な債務》は、債務の金額が確定していなくても当該債務の存在が確実と認められるものについては、相続開始当時の現況によって確実と認められる範囲の金額だけを控除するものとする旨定めているところ、本件立退料支払債務は、次のことから、被相続人が実行しようとしていたマンション建設事業を請求人が引き継いだための債務として、確実と認められる範囲に該当する。
(A)被相続人は、生前、自己の所有する自宅敷地及び隣接する本件各土地上にマンションを建設する計画を立てて、本件相続の1年前からその設計を株式会社Hに依頼しており、本件相続の直前には既に基本設計プランもでき、また、建設施工業者もJ株式会社を指名していたこと。これらの事業の進ちょく状況を裏付けるものとして、被相続人が生前に書き残したマンション建設に関する直筆メモ及び請求人の夫であるGが記載した現況説明が存在すること。
(B)被相続人は、上記(A)の計画を実行するため、次のとおり、本件各借地人と立退き交渉を行っていたこと。
a Kとは、被相続人直筆の「11月6日(土)」と記載されたメモによれば、本件第一土地からの立退きについて話合いが続けられていた。
b Lらとは、同人がT市に住む子と同居するための増築資金として、本件第二土地からの立退料を10,000,000円くらいとする旨の口約束があった。
c Mらとは、本件第三土地について、平成5年12月5日付で被相続人とMとの間で立退料を20,000,000円、明渡期限を平成6年3月31日とする旨の合意契約(以下、この契約を「本件旧合意契約」といい、これにより作成された合意書を「本件旧合意書」という。)を締結していた。
B 広島高等裁判所昭和57年9月30日判決(昭和56年(行コ)第9号相続税賦課決定処分取消請求事件)によれば、確実な債務とは、債務者においてその履行が法律的に強制される場合に限らず、社会生活関係上、債権債務成立に至る経緯等に照らして事実的、道義的に履行が義務付けられ、履行の確実と認められる債務を意味するところ、相続人らは、本件相続開始後、被相続人の意思を引き継ぎ、マンションの建設及び本件各借地人との立退き交渉を進め、本件立退料について、Kとは平成6年10月7日付で50,000,000円とする旨、Lらとは同年8月6日付で16,000,000円とする旨及びMらとは同月9日付で28,000,000円とする旨の各合意契約(以下、これらの契約を併せて「本件各合意契約」といい、これらにより作成された合意書を「本件各合意書」という。)を締結したのであるから、本件立退料支払債務は、同契約により履行の確実と認められる債務であることが明らかである。
C その後、未払の本件立退料支払債務を相続した相続人らは、本件各合意契約を履行するための資金調達ができなかったことから、同契約の第9条の定めに基づき、平成7年1月27日付で本件各借地人との間で、それぞれ、同契約に係る権利義務を相続人らがW株式会社(以下「W社」という。)に承継したことを同借地人は承諾した旨の覚書(以下「本件各覚書」という。)を交わし、これによって同契約の内容を履行したものである。また、W社との等価交換事業の清算において、本件立退料の額と同額が相続人らの譲渡価額から差し引かれていることからも相続人らが、本件立退料支払債務を確実な債務として負担していたということがいえるのである。
ロ 過少申告加算税の賦課決定処分について
 上記イのとおり、更正処分はその全部を取り消すべきであるから、これに伴い、過少申告加算税の賦課決定処分もその全部を取り消すべきである。

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(2)原処分庁の主張

 原処分は、次の理由により適法であるから、審査請求を棄却するとの裁決を求める。
イ 更正処分について
(イ)原処分調査及び異議申立てに係る調査によれば次の事実が認められる。
A 相続人らは、本件客土地上に被相続人がマンションを建設する予定であったことから、本件各借地人と立退き交渉を行い、次のとおり、本件各合意契約を締結したこと。
(A)本件第一土地については、平成6年10月7日付で、Kとの間で同土地に係る賃貸借契約を合意解除し、立退料等として相続人らからKに50,000,000円を支払うことを内容とする合意契約を締結した。
(B)本件第二土地については、平成6年8月6日付で、Lらとの間で同土地に係る賃貸借契約を合意解除し、立退料として相続人らからLらに16,000,000円を支払うことを内容とする合意契約を締結した。
(C)本件第三土地については、平成5年12月5日付で、被相続人とMとの間で本件旧合意契約を締結したものの、被相続人は、Mから平成6年1月18日付内容証明郵便により同契約を撤回する旨の申し入れを受けたことから、改めて、平成6年8月9日付で、相続人らとMらとの間で、本件第三土地に係る賃貸借契約を合意解除し、立退料として相続人らからMらに28,000,000円を支払うことを内容とする合意契約を締結した。
B 相続人らは、本件各借地人との間で、平成7年1月27日付の本件各覚書により、次の事項について合意した上で、本件各合意契約の第9条の定めに基づき、同契約の内容をW社に承継したこと。
(A)本件各合意契約を、それぞれの締結日にさかのぼって撤回し、本件各借地人は、本件立退料のうち既に受領済の金員を、平成7年1月27日に相続人らに返還する。
(B)本件各土地には、本件各借地人の借地権が従前のとおり存在していることとする。
(C)相続人らは、本件各借地人が上記(B)の借地権をW社に譲渡することを承諾する。
(ロ)ところで、相続税法第13条第1項第1号は、相続税の納税義務者が相続により取得した財産について課税価格に算入すべき価額は、当該財産の価額から被相続人の債務で相続開始の際現存するものの金額のうちその者の負担に属する部分の金額を控除した金額による旨、同法第14条第1項は、控除すべき債務は確実と認められるものに限る旨それぞれ規定している。
 そして、確実と認められる債務といい得るためには、相続開始の時点までに当該債務が成立しており、かつ、当該債務に基づいて具体的な給付をすべき原因となる事実が発生していることが必要であると解されている。
(ハ)請求人は、本件立退料は、本件相続開始の際現存し、かつ、確実と認められる債務である旨主張するが、上記(イ)のAの各事実によれば、本件各合意契約の締結は、いずれも、本件相続開始の日後に行われており、被相続人が、本件相続開始の時点で本件各借地人に対して本件立退料支払債務を負っていたとはいえないから、請求人の主張には理由がない。
 また、上記(イ)のAの(C)及びBのとおり、本件旧合意契約は、本件相続開始前に締結されているが、その後、〔1〕相続人らとMらとの間で、平成6年8月9日付で、新たな合意契約が締結されたこと、〔2〕本件旧合意契約に基づく合意事項が履行されていないこと及び〔3〕平成7年1月27日付の本件各覚書により相続人らとMらとの問で本件第三土地に同人らの借地権(以下「本件借地権」という。)が従前のとおり存在していることを確認し、相続人らは、MらがW社に同借地権を譲渡することを承諾したことからすれば、本件相続開始の時点において本件旧合意契約による立退料20,000,000円が存在していたという事実は認められない。
(ニ)さらに、請求人は、上記(1)のイの(ロ)のCのとおり主張するが、本件立退料支払債務がW社に対して承継されても、相続人らがそれを支払ったことにはならないし、上記(イ)のBの(A)のとおり、相続人らが支払った立退料は全額返還されており、相続人らが実際に負担した立退料は一切ないことから、請求人の主張はその前提を欠くものと判断せざるを得ない。
(ホ)以上述べたとおり、本件立退料支払債務の成立が本件相続開始後であり、また、請求人が、本件立退料などを負担していないことなどの事実から判断して、本件立退料支払債務を相続税法第14条の規定に該当する債務と認めることはできない。
ロ 納付すべき税額について
 請求人の本件相続に係る納付すべき税額は、次表の「〔8〕」欄記載のとおりとなり、更正処分の金額と同額となる。

(イ)「〔2〕」欄から「〔4〕」欄は、評価通達14《財産評価》から15《奥行価格補正》及び25の(1)の各定めを適用して次表のとおり算定した。

(ロ)「〔5〕」欄及び「〔6〕」欄は、請求人の申告額と同額である。
(ハ)「〔7〕」欄は、「〔1〕」欄の金額から「〔6〕」欄の金額を控除し、1,000円未満の端数を切り捨てた金額である。
(ニ)「〔8〕」欄は、相続税法第16条《相続税の総額》及び同法第17条《各相続人等の相続税額》の規定に従い算定し、100円未満の端数を切り捨てた金額である。
ハ 過少申告加算税の賦課決定処分について
 上記イ及びロのとおり、更正処分は適法であり、かつ、申告額が過少であったことについて、国税通則法第65条《過少申告加算税》第4項に規定する正当な理由があるとは認められないので、過少申告加算税の賦課決定処分は適法である。

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3 判断

(1)更正処分について

 本件の争点は、本件立退料支払債務が、相続により取得した財産の価額から控除できる債務であるか否かであるので、以下審理する。
イ 請求人提出資料、原処分関係資料及び当審判所の調査によれば、次の事実が認められる。
(イ)本件各借地人は、本件相続開始の時点で本件各土地に居住しており、同土地は、賃貸の用に供されていたこと。
(ロ)被相続人は、生前、本件各土地にマンションを建設する計画を立て、本件各借地人との間で立退きの交渉を行っていたこと。
(ハ)被相続人とMは、平成5年12月5日付で本件旧合意書を交わして、本件旧合意契約を締結したこと。
 本件旧合意書には、平成5年12月5日、本件第三土地についての賃貸借契約を合意解除し、被相続人はMに対し、立退料として20,000,000円を支払う旨及び被相続人はMに対し、平成6年1月17日に立退料の内金5,000,000円を支払い、同年3月31日の同土地の明渡しと引き換えに、その残金15,000,000円を支払う旨それぞれ定められていたこと。
(ニ)被相続人は、Mに対し、平成6年1月17日に上記(ハ)の内金5,000,000円を提示したところ、同人は、その受領を拒絶した上で、被相続人に対し、同月18日付の内容証明郵便により、本件旧合意契約は、本件第三土地について借地権を有しない自己が締結したもので無効であるから、同契約を撤回する旨の意思表示をしたこと。
 また、これに対し、被相続人は、平成6年2月2日付の内容証明郵便により、Mが本件第三土地の借地権を有している者から本件旧合意契約に至るまでの交渉及び同契約の締結の委任を受けたことをそれぞれ確認していることから、同契約は有効である旨主張して、Mにその履行を求めたが、同月4日に被相続人は死亡したこと。
(ホ)相続人らは、本件相続開始後、本件各借地人に対する立退き交渉を進め、それぞれ、平成6年8月6日付でLら(本件第二土地)と、同月9日付でMら(本件第三土地)と、同年10月7日付でK(本件第一土地)と本件各合意書を交わして、本件各合意契約を締結したこと。
 本件各合意書には、概ね次のことが定められていたこと。
〔1〕本件各土地についての賃貸借契約を、本件各合意契約の締結日において合意解除する。
〔2〕相続人らは、本件各借地人に対し、立退料として、それぞれ、Lらに対しては16,000,000円、Mらに対しては28,000,000円、Kに対しては50,000,000円を、2ないし4回に分けて支払う。
〔3〕本件各借地人は、平成7年2月末日限り、上記立退料の残金の支払と引換えに本件各土地を明け渡す。
 なお、請求人が本件審査請求において、本件相続に係る相続税の金額の計算上、相続人らが同相続により取得した財産の価額から控除すべき債務に当たると主張する本件立退料支払債務とは、本件各合意契約書に定められた本件各借地人に対する上記各立退料の支払債務の合計94,000,000円を指すものである。
(ヘ)相続人らは、本件相続に係る相続税の申告に当たり、本件第三土地を評価通達の定めに従って自用地として評価し、同土地に係る本件立退料支払債務28,000,000円を債務控除していること。
ロ ところで、相続税法第13条第1項第1号は、相続税の納税義務者が相続により取得した財産について、課税価格に算入すべき価額は、当該財産の価額から被相続人の債務で相続開始の際現存するものの金額のうち、その者の負担に属する部分の金額を控除した金額による旨、また、同法第14条第1項は、控除すべき債務は、確実と認められる債務に限る旨それぞれ規定している。
 そして、確実と認められる債務といい得るためには、相続開始の時点までに当該債務が成立しており、かつ、当該債務に基づいて具体的な給付をすべき原因となる事実が発生していることが必要であると解するのが相当である。
ハ これを本件についてみると、次のとおりである。
(イ)上記ロのとおり、本件立退料支払債務が、本件相続に係る相続税の金額の計算上、相続人らが同相続により取得した財産の価額から控除すべき債務であるというためには、本件相続開始の時点において本件立退料支払債務が成立し、被相続人の債務として現存しており、かつ、同債務に基づいて具体的な給付をすべき原因となる事実が発生し、よって、確実と認められる債務でなければならない。
 そこで、まず、本件立退料支払債務の性質についてみると、上記イの(ハ)及び(ホ)のとおり、被相続人及び相続人らと本件各借地人との間においては、立退料というものを、本件各土地についての賃貸借契約の終了及びそれに伴うこれらの土地に設定されていた借地権の買戻しという事実に結びつけて考えていたことが明らかであり、そうすると、これら当事者間における本件立退料支払債務は、そもそも、当該借地権の買戻しの対価たる性質を有するものであると解することができる。
 そして、これを、上記のとおり、本件立退料支払債務が相続人らが本件相続により取得した財産の価額から控除すべき債務であるところの確実な債務と認められるかどうかということに引き直して考えてみると、本件立退料支払債務が確実と認められる債務というためには、本件相続開始の時点で、被相続人と本件各借地人との間において、本件各土地についての賃貸借契約を解除し、同債務が成立し、同債務が被相続人の債務として現存しており、かつ、それにより本件各土地に設定されていた借地権の買戻しが確実であったことを要するものと解するのが相当である。
(ロ)このような観点から本件についてみると、まず、本件第一土地及び本件第二土地については、上記イの(ホ)のとおり、これらの土地についての賃貸借契約を解除し、これらの土地に設定されていた借地権を買い戻すことが合意されたのは本件相続開始後であることが明らかであるから、これらの土地に係る本件立退料支払債務は、本件相続開始の時点において被相続人の債務として現存していた、確実と認められる債務ということはできない。
(ハ)次に、本件第三土地については、上記イの(ハ)及び(ニ)のとおり、本件旧合意契約により同土地についての賃貸借契約を解除し、本件借地権を買い戻すことが合意されたのは本件相続開始より前であること及び被相続人は、本件相続開始の時点において、本件旧合意契約による立退料20,000,000円の全額が未払であったことがそれぞれ認められる。
 そして、上記イの(ニ)のとおり、被相続人とMとの間において、本件旧合意契約の有効性を巡って争いがあったことは認められるものの、本件全資料及び当審判所の調査によっても、同契約が無効であったとか、本件相続開始の時点までに取り消されたとかいう事実を認めるに足りる証拠はない。
 そうすると、上記(イ)のとおり、本件旧合意契約による本件借地権の買戻しの対価としての性格を有するところの立退料20,000,000円は、本件相続開始の時点までに成立し、それが未払であり、かつ、当該債務について具体的な給付をすべき原因となる事実が発生していたというべきであるから、確実と認められる債務に該当するといえる。
(ニ)ところで、上記イの(ハ)のとおり、被相続人とMは、本件旧合意契約において、本件第三土地の明渡期限を本件相続開始後の平成6年3月31日とする旨合意しており、また、同(ニ)のとおり、被相続人は、本件相続開始より前において立退料20,000,000円の内金5,000,000円を提示していたにすぎないのであるから、同人は、本件相続開始の時点までに本件借地権を買い戻したということはできず、単に本件旧合意契約に基づく本件借地権の引渡請求権(以下「本件引渡請求権」という。)を有していたにすぎない。
 そうすると、請求人は、本件第三土地について、本件借地権が設定されている同土地(以下「本件底地」という。)及び本件借地権を相続したのではなく、本件底地及び本件引渡請求権を相続したものといわなければならない。
 そして、本件引渡請求権の時価に相当する価額は、本件旧合意契約において定められた代価である20,000,000円とするのが相当である。
(ホ)したがって、上記(ハ)のとおり、本件旧合意契約による立退料支払債務20,000,000円が債務控除されたとしても、同(ニ)のとおり、本件引渡請求権20,000,000円が相続財産となるので、本件相続に係る課税価格は減額されない。
 なお、請求人は、本件第三土地に係る本件立退料支払債務28,000,000円をもって債務控除すべき旨主張するが、上記イの(ホ)のとおり、それが合意されたのは本件相続開始後であることが明らかであるから、この点に関する請求人の主張には理由がない。
ニ 以上審理したところによれば、請求人の相続税の課税価格及び納付すべき税額は、いずれも更正処分に係る課税価格及び納付すべき税額と同額になるから、更正処分は適法である。

(2)過少申告加算税の賦課決定処分について

 上記(1)のとおり、更正処分は適法であり、かつ、同更正処分により納付すべき税額の計算の基礎となった事実が更正前の税額の計算の基礎とされていなかったことについて、国税通則法第65条第4項に規定する正当な理由があるとは認められないから、同条第1項の規定に基づいてされた過少申告加算税の賦課決定処分は適法である。

(3)その他

 原処分のその他の部分については、請求人は争わず、当審判所に提出された証拠資料等によっても、これを不相当とする理由は認められない。

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