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(平13.10.17裁決、裁決事例集No.62 76頁)

《裁決書(抄)》

1 事実

(1)事案の概要

 本件は、審査請求人(以下「請求人」という。)が、その所得税に係る事業所得の金額の計算に当たり、個人事業を廃止していわゆる法人成りしたことに伴い、従業員退職金(預り金経理)を所得税法第37条《必要経費》第1項の規定によりその個人事業を廃止した年分の必要経費に算入することができるか否かが争われた事案である。

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(2)審査請求に至る経緯

 別表1のとおりである。

(3)基礎事実

 以下の各事実については、請求人及び原処分庁の双方に争いがなく、当審判所の調査によってもそれらの事実が認められる。
イ 請求人及び請求人の弟F(以下、請求人と併せて「請求人ら」という。)は、共同で病院を営む者であったが、平成10年3月20日に医療法人G(以下「G病院」という。)を設立し、同年4月30日に個人としての事業を廃止し、同年5月1日よりG病院として事業を開始した。
ロ 請求人らが原処分庁に提出した平成10年分の青色の確定申告書には、持分が2分の1であるとする損益計算書が添付されており、その必要経費欄には退職金として69,885,470円が記載されている。
ハ 請求人らは、上記ロの退職金69,885,470円のうち63,628,720円(以下「本件退職金」という。)を、平成10年4月30日に相手勘定を請求人らの預り金とした会計処理をしており、同額を職員退職預り金としてG病院に引き継いでいる。
ニ 本件退職金は、計算日を平成10年4月30日として、個人事業の廃業時における就業規則(以下「本件就業規則」という。)に規定された退職金支給規定(以下「本件退職金支給規定」という。)に基づいて従業員別に計算されており、各人の退職金の明細をとりまとめた退職金支払明細書(以下「本件退職金支払明細書」という。)の内訳は、別表2−1及び2−2に記載のとおりである。
ホ 本件就業規則第13条には、「従業員が次の各号のひとつに該当するときは退職するものとする。」と規定され、各号として次のことが規定されている。
(イ)死亡したとき
(ロ)定年に達したとき
(ハ)休職期間の満了したとき
(ニ)自己の都合で退職を申出て院長が承認したとき
ヘ 本件退職金支給規定には、次のことが規定されている。
(イ)正規の手続を経て採用し、勤続3年を経過した者が退職するときに支給する。
(ロ)退職金は、退職時本給に勤続年数を乗じたものを基礎とし、勤続に応じた係数を乗じて算定する。
(ハ)退職時、現金もしくは口座振込とする。
(ニ)昇給後3か月以内の退職は昇給前の本給を用いる。
ト 平成10年5月1日付の、甲をG病院、乙をG病院の従業員代表H及び丙を請求人らとする三者間で交わされた労使協定書(以下「本件労使協定書」という。)には、次のことが規定されている。
(イ)甲は医療法人G法人成りにより丙元職員乙を全員引き受けるものとする。
(ロ)甲は丙元職員乙の職種・地位・身分・給与基準等丙にて受けている権利義務を引き継ぐものとする。
(ハ)甲は、丙元職員乙の丙負担の打切り退職金を乙より預け入れ、乙の甲退職時及び乙個々の事情による引き出しの申し入れある時は速やかに支払うものとする。

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2 主張

(1)原処分庁の主張

 原処分は、次の理由により適法であるから、審査請求を棄却するとの裁決を求める。
イ 更正処分について
 所得税法第37条では、事業所得の金額の計算上必要経費に算入できる費用は、別段の定めのあるものを除き、その年において債務が確定しているものに限られる旨規定されているところ、同条に規定する債務の確定とは、〔1〕債務が成立していること、〔2〕事実が発生していること、〔3〕金額が合理的に算定できることという3つの要件のすべてに該当するものをいうとされている。
 しかしながら、本件退職金については、確かに、個人事業の廃業という事実による退職の事実が発生し、また、退職金の金額が合理的に算定できるところであるが、次のとおり、債務が成立しているとはいえないから、事業所得の計算上、本件退職金の2分の1の額を必要経費に算入することはできない。
(イ)使用者の従業員に対する退職金の支払債務及びこれに対応する従業員の退職金支払請求権は、雇用契約の終了、すなわち退職の事実が生じたことにより当然に認められるというものではなく、労働契約、就業規則等でそれを支給すること及びその支給基準があらかじめ定められているか、あるいは少なくとも明確な支給条件に従った慣行がある場合に発生するものと解すべきであるところ、本件退職金支給規定において、退職金は、勤続3年を経過した者が退職するときに支給し、賞罰規定において懲戒により即時解雇した者にはその全部又は一部を支給しない旨を定めているが、法人成りによる雇用関係が終了し退職した場合について、退職金を支給する旨は定められておらず、また、本件労使協定書において、G病院は、請求人らの個人事業時における従業員の職種、地位、身分、給与基準等請求人らにて受けている権利義務を引き継ぐ旨の記載があり、本件退職金支給規定の内容も変更していない。
 そうすると、請求人ら及び従業員において、法人成りによる雇用関係の終了についての認識があったかどうかはともかくとして、本件退職金支給規定の記載及び本件労使協定書の記載から判断すれば、法人成りによる雇用関係が終了し退職した場合について退職金の支給事由として予定されていないことになり、また、従業員の有する全ての権利義務がG病院へ承継されているのであるから、従業員の有する退職金支払請求権は、G病院に引き継がれた後の退職金支給規定による支給要件、または、支給事由が生じたときに初めて発生すると解するべきであり、個人事業の廃止により請求人らの退職金の支払債務(従業員の退職金支払請求権)が当然に発生したとすることはできない。
(ロ)つぎに、法人成りが本件退職金支給規定の支給事由に該当するかどうかはさておくとしても、本件退職金が、個人事業の廃業時に真に債務が確定しているのであれば、従業員としては退職金支払請求権に基づき、速やかにこれの支払いを求めるであろうし、一方、使用者は従業員にこれを早期に支払うのが通常である。
 しかしながら、G病院が預り金ではなく実質的には未払金として引き継いだ本件退職金のうち、法人成り以降原処分に係る調査時までの約1年6か月もの長期間に実際に支給されたものは、この間に退職した者に対してだけであり、その金額は別表2−1及び2−2に記載された金額ではなく、G病院での勤務期間を加味した期間で計算し支給しており、このことは、継続してG病院に勤務している者が本件退職金の支払請求もせず、G病院もそれを支払わないままであったことになり、個人事業廃業時に本件退職金が支払われていない証左であり、経済的合理性を欠く極めて不自然な状況であるから、そこに合理的理由を見いだすことはできない。
ロ 過少申告加算税の賦課決定処分について
 以上のとおり、更正処分は適法であり、更正処分により納付すべき税額の計算の基礎となった事実が更正処分前の税額の計算の基礎とされていなかったことについて、国税通則法第65条《過少申告加算税》第4項に規定する正当な理由がある場合に該当しないから、同条第1項及び第2項の規定に基づいて行った過少申告加算税の賦課決定処分は適法である。

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(2)請求人の主張

 原処分は、次の理由により違法であるから、その全部の取消しを求める。
イ 更正処分について
 本件退職金の内、請求人持分の金額は、以下のとおり、請求人の事業所得の金額の計算上、必要経費に算入されるべきものである。
(イ)本件退職金に係る債務の確定(所得税法第37条該当性)
 次の事実により、本件退職金は債務が確定しているから、所得税法第37条第1項に規定する必要経費となる。
A 個人事業廃業時において本件退職金の支給対象者に対し、退職金を支払う旨を通知し、当該支給対象者から、それぞれ退職所得の受給に関する申告書(以下「退職所得申告書」という。)の提出を受けている。
B 平成10年4月半ばより、病院の事務担当付の事務長であるKが従業員全員に面談し、各人に退職金額及び計算のメモ書を提示した上、本件退職金支払明細書に従業員の代表者の確認を受けている。
C 新規事業の雇用となると、各種就業規則、退職金支給規定及び労働基準法による有給休暇の累積日数等従業員側には不利となるから、法人成りにより従業員の処遇が不利にならないように、また、退職金を預かる旨などを平成10年4月中ころ請求人ら、G病院及び従業員代表の3者で話合い合意の上、上記1の(3)のトのとおり、本件労使協定書を交した。
(ロ)原処分庁の主張に対する反論
A 次の理由から、本件退職金は、原処分庁が上記(1)のイで主張する債務確定のための3つの要件のすべてを十分かつ完全に満たしている。
(A)法人成りとなる場合はいったん従来の個人事業は廃止されるので、その廃止の時点で雇用主と使用人の雇用関係は消滅する。
 したがって、勤務関係の終了という事実の存在が前提となるため、退職金支出をすべき要件を満たしている。
(B)個人事業時代においては、本件退職金支給規定を有し、請求人らは、長年にわたってこの規定どおりの支払を行ってきている。
 今回の法人成りについても、同様に、この規定どおりの退職金の支払を行う義務を有している。
(C)退職金の金額は本件退職金支給規定により定められており、その算定額は合理的に計算可能である。
B さらに、原処分庁は、退職金は預り金でなく実質的には未払金であり、長期間未払のまま放置することは経済的合理性を欠く極めて不自然な状況であるから、支払債務が発生していたとはいえない旨主張する。
 しかしながら、未払ということが退職金の必要経費性に影響を与えるものではない。
 未払金も預り金も同一範ちゅうに属する負債であるが、各従業員からは、退職金の税務手続である退職所得申告書をそれぞれ提出してもらい、退職金の税務計算を行い、支出の振替処理を行い、従業員個々人から了承を受け退職金を預り金処理したものである。
 また、本件退職金については、従業員が資金的必要があったときは、いつでも現金払とする契約を交わしている。
 したがって、本件退職金を預り金処理したことは経済的合理性を欠くものではなく、また、極めて不自然な状況ともいえない。
ロ 過少申告加算税の賦課決定処分について
 更正処分は、上記イのとおり違法であり全部取り消されるべきであるから、これに基づく過少申告加算税の賦課決定処分も、その全部を取り消すべきである。

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3 判断

 当審判所が、双方の主張に基づいて審理した結果は、以下のとおりである。

(1)更正処分について

イ 認定事実
 原処分関係資料及び当審判所の調査によれば、以下の事実が認められる。
(イ)本件退職金支払明細書に記載されている従業員52名(医師を除く)全員は、退職手当等の支払を受けることとなった日を平成10年4月30日と記載した退職所得申告書を、それぞれ自署、押印の上、請求人らに提出した。
(ロ)法人成り以降に退職したL(平成11年3月31日付退職)、M(平成11年3月31日付退職)、N(平成11年4月27日付退職)及びR(平成11年7月10日付退職)ら4名(以下「Lら」という。)に係るG病院の退職金支給額の計算の基礎となる勤続年数には、個人事業時代の勤務期間も通算されて計算されているが、G病院の仕訳伝票には、Lらに対する退職金支給額のうち本件退職金支払明細書に記載された金額を「退職預り金」、残りの金額を「退職金」として借方に、相手科目を「普通預金」として貸方に記載した会計処理がなされている。
ロ 従業員の当審判所に対する答述の要旨は次のとおりである。
(イ)Kの答述
A 本件退職金を支払うことについては、平成10年3月末の請求人ら、婦長及び責任者による会議(以下「定例会議」という。)で説明した。
B 上記1の(3)のトの(イ)及び(ロ)の内容については、平成10年3月末の定例会議で話をし、本件労使協定書は食堂に1週間から10日間掲示して従業員に周知した。
C 退職所得申告書については、平成10年4月上旬に各人ごとに面接し、退職金額を記入したメモ書きを示し、同月末ころまでに各人から署名、押印を受けた。
(ロ)Hの答述
 本件労使協定書の内容は、定例会議でKから説明があり、各責任者が他の従業員に伝達しており、食堂にも掲示してあった。
ハ 本件退職金を必要経費に算入することの是非について
(イ)本件退職金に係る債務の発生について
A 原処分庁は、本件退職金支給規定には、法人成りによる雇用関係が終了し退職した場合について退職金を支給する旨は定められておらず、また、本件労使協定書により、従業員の有する全ての権利義務がG病院へ承継されているのであるから、従業員の有する退職金支払請求権は、G病院に引き継がれた後の退職金支給規定による支給要件、または、支給事由が生じたときに初めて発生すると解するべきであり、そうすると、本件退職金について支払債務が成立していたとは言えず、債務が確定していないから、所得税法第37条の規定により必要経費に算入できない旨主張する。
B ところで、個人事業主が法人を設立し、法人成りした場合、使用人に対し個人事業の廃止時点でその在職期間分の適正な退職給与を支払い、その個人事業主の最終年分の事業所得の必要経費に算入することは、一般的には何も問題はない。
 しかしながら、従業員に対する退職金の支払債務及びこれに対応する従業員の退職金支払請求権は、雇用契約の終了、すなわち退職の事実が生じたことにより当然に発生するというものではなく、あらかじめ労働協約、就業規則等でそれを支給すること及びその支給基準が定められているか、あるいは少なくとも明確な支給条件に従った支給慣行がある場合に発生すると解するのが相当である。
 けだし、退職金は、過去の継続的な勤務に対する報償ないしその間の労務の対価の一部の後払の性質を有する給与であるところ、その支給金額は、(本件退職金支給規定の記載内容がそうであるように)退職時のいわゆる基本給与月額に、勤続年数に応じた支給倍率を乗じて算出され、しかも、基本給与月額並びに支給倍率は勤続年数の経過につれて上昇することが一般的であることから、結果的に退職金の金額は、勤続年数に応じて弓形曲線状に逓増することとなる。
 仮に、このような一般的な退職給与規定を有する個人事業者が法人成りした場合に、その時点で退職金を支給するとすれば、従業員は、事業主の法人成りという一方的な都合によって、従業員にとっては勤務先や職務内容に実質的な変化がないにもかかわらず、法人成りがなかった場合に比して、全勤続期間を通ずる退職金額につき不利益を被る結果となる。
 このため、本件のように退職金支給規定の支払事由に法人成りが明示されていない場合で、法人成りに伴って退職金を支給するためには、労使における事前の協議が特に強く求められることは論を待たないところであり、また、その旨を従業員へ周知することがその時点における請求人の従業員に対する退職金の支払債務及びそれに対応する従業員の退職金支払請求権の発生のために特に必要なものとなる。
C これを本件についてみると、上記ロの(イ)のA、B及び(ロ)より、定例会議において本件退職金を支給する旨の話があったこと、定例会議には各部門の責任者が出席し、会議の内容を他の従業員に伝達していたこと及び本件労使協定書が食堂に掲示され、従業員がいつでも読める状況であったことが認められ、本件退職金を支給すること及び本件労使協定書の内容について従業員への周知がなされていたと認められる。
 そして、上記イの(イ)及びロの(イ)のCのとおり、従業員52名が請求人らに提出した退職所得申告書に全員が自署、押印している事実が認められ、このことは、通常であれば、何らの説明も受けることなく書類に自署、押印するとは考えられず、法人成りに伴う退職金の支給について、請求人らから何らかの説明があったから自署、押印したものであると認められる。
 そうすると、法人成りに当たり、労使において事前の協議が整い、従業員にその協議内容を周知し、従業員の了解の下に退職所得申告書の提出を受けたと認められることから、平成10年4月30日現在において、請求人の従業員に対する本件退職金の支払債務は成立していると判断するのが相当である。
 なお、本件退職金支給規定の記載及び本件労使協定書の記載から、法人成りは退職金の支給事由に予定されていないことになり、請求人らの退職金支払債務が成立したとすることができない旨の原処分庁の主張については、ことさら本件労使協定書の一部のみを取り上げて債務の成立がないと判断することはできず、請求人らの退職金支払債務の成立については上記の判断のとおりである。
 したがって、この点に関する原処分庁の主張には理由がない。
(ロ)本件退職金が預り金処理されていることについて
A 原処分庁は、本件退職金は預り金処理されているが、実質的には未払金であり、しかも、長期間これを支払わず放置することは経済的に見て不合理であり、このことは本件退職金の債務が確定していないことの証左である旨主張する。
B ところで、法人成りの場合、個人事業主と法人とは別個の独立した法人格を有し、法人成りの前後で、経営主体及び納税主体が法的に異なるものであるから、使用人に対する退職給与が、個人事業主と法人のどちらの収入又は収益を得るために必要な経費であったといえるかという見地から、個人経営時の在職期間に対応する退職給与は、個人事業主の事業所得の必要経費に、法人経営時の在職期間に対応する退職給与は法人の損金とすべきものであり、これは、個人経営時の在職期間に対応する分が未払退職給与として法人に引き継がれているという事情によっても左右されない。
 すなわち、法人成りの際の事業の引き継ぎの法律関係についてみてみると、〔1〕個人事業主の側からすると、個人事業主は法人に対し、今後の営業活動に必要な事業資産及び財産を、金銭、医療未収金等の債権及び現物出資等により出資するのであるが、法人が使用人に対する未払退職給与等個人事業主の業務上の債務も引き継ぐ場合には、その分を差し引いて個人事業主(出資者)に持分が与えられるのであり、この段階で、個人事業主はその債務を支払ったのと同様の経済効果を受けるので、その分個人事業主の事業所得の計算上必要経費とみるべき実質があり、他方、〔2〕法人の側からすると、出資された正の資産及び財産の額から、引き継がれた負の財産(債務)を差し引いた額が、出資者の「持分」に変わっただけであり、出資された資産及び財産の額が収益とされない(したがって、法人の所得としては課税されない。)のと同様、引き継がれた債務を支払ったとしても、法人の損金とはならないものである。
C これを本件についてみると、本件退職金は、上記(イ)で述べたとおり、債務が成立しており、所得税法第37条に規定する確定債務として、従業員各人別に金額が明確にされて、今後の営業活動に必要な事業資産とともにG病院に引き継がれ、法人成り後にG病院を退職したLらに対しては、上記イの(ロ)のとおり、法人成り後の退職金支給規定に基づいて退職金が適正に支払われており、また、G病院の勤務期間に係る退職金部分のみG病院の損金にする経理処理がされているのであるから、原処分庁が主張するような経済取引としての合理性を欠くということまではいえない。
 したがって、この点に関する原処分庁の主張には理由がない。
(ハ)以上のことから、平成10年分の事業所得の金額の計算上、本件退職金の2分の1の額を必要経費として算入できるとする請求人の主張には理由があり、これに反する原処分庁の主張は採用できない。
ニ 事業所得の金額
 そうすると、平成10年分の事業所得の金額は、更正処分に係る事業所得の金額から本件退職金の2分の1の金額31,814,360円を減算した金額で、損失の金額5,233,414円となる。
ホ その他の所得の金額
 平成10年分の不動産所得の金額、配当所得の金額及び給与所得の金額は、請求人及び原処分庁の双方に争いがなく、当審判所の調査によっても相当と認められ、不動産所得の金額は3,815,732円、配当所得の金額は639,262円、給与所得の金額は13,075,152円である。
ヘ 総所得金額
 そうすると、平成10年分の総所得金額は、上記ニの事業所得の金額と上記ホの金額との合計で、12,296,732円となり、確定申告に係る総所得金額を下回るから、更正処分はその全部を取り消すのが相当である。

(2)過少申告加算税の賦課決定処分について

 過少申告加算税の賦課決定処分については、上記(1)により更正処分の全部が取り消されることに伴い、その全部を取り消すのが相当である。

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