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(平15.6.13裁決、裁決事例集No.65 920頁)

《裁決書(抄)》

1 事実

(1)事案の概要

 本件は、不動産貸付業を営む同族会社である審査請求人(以下「請求人」という。)が、地下道設置に伴いF市に納入した金員が消費税法第2条《定義》第1項第12号に規定する課税仕入れに該当するか否かを争点とする事案である。

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(2)審査請求に至る経緯

 請求人の平成9年4月1日から平成10年3月31日までの課税期間(以下「本件課税期間」という。)に係る消費税及び地方消費税(以下「消費税等」という。)について、審査請求に至る経緯等は別表1のとおりである。

(3)関係法令等

イ 消費税法第30条《仕入れに係る消費税額の控除》第1項は、事業者が国内において課税仕入れを行った場合には、当該課税仕入れを行った日の属する課税期間の課税標準額に対する消費税額から、当該課税期間中に国内において行った課税仕入れに係る消費税額につき課された又は課されるべき消費税額の合計額を控除する旨規定している。
 また、同法第2条《定義》第1項第12号は、「課税仕入れ」とは、事業者が、事業として他の者から資産を譲り受け、若しくは借り受け、又は役務の提供を受けること(当該他の者が事業として当該資産を譲り渡し、若しくは貸し付け、又は当該役務の提供をしたとした場合に課税資産の譲渡等に該当することとなるものに限る。)をいう旨定義している。
ロ 消費税法基本通達(以下「基本通達」という。)5−5−1《役務の提供の意義》は、消費税法第2条第1項第8号《資産の譲渡等の意義》に規定する「役務の提供」とは、例えば、土木工事、修繕、運送、保管、印刷、広告、仲介、興行、宿泊、飲食、技術援助、情報の提供、便益、出演、著述その他のサービスを提供することをいう旨定めている。
ハ 国税通則法(以下「通則法」という。)第65条《過少申告加算税》第1項は、期限内申告書が提出された場合において、修正申告書の提出又は更正があったときは、当該納税者に対し、その修正申告又は更正に基づき納付すべき税額に一定の割合を乗じて計算した金額に相当する過少申告加算税を課する旨規定している。また、同条第4項は、修正申告又は更正に基づき納付すべき税額の計算の基礎となった事実のうちに、その修正申告又は更正前の税額の計算の基礎とされていなかったことについて「正当な理由があると認められるものがある場合」には、納付すべき税額からその正当な理由があると認められる事実に基づく税額として政令で定めるところにより計算した金額を控除して、過少申告加算税を課する旨規定している。

(4)基礎事実

 以下の事実は、請求人及び原処分庁の双方に争いがなく、当審判所の調査によってもその事実が認められる。
イ 請求人は、株式会社G(以下「G社」という。)が株式の100%を出資して設立された法人であり、不動産賃貸を主な業務目的としている。また、G社は、一般国道(以下「国道」という。)に隣接して大規模小売店舗「H」(以下「H店」という。)の出店を決め、予定地であるP市Q町の土地取得並びに開発行為を請求人に委ねた。
ロ 請求人は、賃貸用のH店を建設するに当たり、国道からの取り付け道路を、顧客の利便性を考慮し、また、付近の交通渋滞が生じないようにとの警察署の指導を受けたことから、国道直下の地下道方式の立体交差によって設置する必要があった。
ハ 取り付け道路は、P市Q町地内に設置され、地下道の名称はE横断地下道(以下「本件横断地下道」という。)という。
ニ 請求人のほか、同区域内に建物を建設予定の「J病院」及び「K組合」(以下、順次「J病院」、「K組合」といい、請求人とこれらを併せて「請求人ほか2者」という。)の3者は、取り付け道路の設置の関係機関となる建設省L建設局(現国土交通省L地方整備局)M工事事務所(以下「M工事事務所」という。)及びF市と再三協議を重ねている。
ホ F市が請求人ほか2者からの「調定書」による納入金の合計額は、別表2のとおり511,772,060円である。また、各調定書には、次のとおり記載されている。
(イ)会計は「一般会計」、款は「諸収入」、項は「雑入」、目は「雑入」、節は「国道横断地下道建設負担金」
(ロ)調定内容は、「国道E横断地下道建設負担金」
(ハ)納入義務者は、「J病院 院長N外2者」
ヘ 本件横断地下道の「F市道」としての認定については、平成9年12月16日開催のF市議会において議決されている。

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2 主張

(1)請求人の主張

 原処分は、次の理由により違法であるから、その一部の取消しを求める。
イ 更正処分について
 請求人が本件横断地下道の設置に伴いF市に対して納入した工事代金(以下「本件工事代金」という。)は、次のとおり、消費税法上、役務の提供を受けることによる課税仕入れに係る支払対価(以下「課税仕入れに係る支払対価」という。)に該当することから、本件工事代金に係る消費税等22,288,486円は、仕入れに係る消費税額として控除できる。
(イ)請求人は、国道に隣接してH店を建設するために、取り付け道路として本件横断地下道を設置することが必要となり、F市からの求めに応じて、本件横断地下道の工事の事業費として、F市に対して、別表3のとおり、本件工事代金483,236,000円、消費税等24,036,060円及びF市事務費4,500,000円の合計額511,772,060円を支払っている。
 なお、支払った消費税等24,036,060円の内1,747,574円は、長期前払費用に該当することから、この長期前払費用を差し引いた22,288,486円が仕入れに係る消費税額として控除の対象となる。
 また、本件工事代金の支払の名宛先が、F市、M工事事務所、工事業者のいずれであろうとも、また、本件工事代金の名称が建設負担金、事業協力金とかであろうとも、請求人が事業費の全額を負担している事実により、実質的には、請求人が本件工事代金を工事業者に支払っているものである。
 すなわち、請求人は、本件工事代金の支払については、F市を窓口として納入しているものの、実質的には、工事代金そのものであり、消費税等の納入は、紛れもなく消費税等そのものである。
(ロ)請求人は、本件工事代金のF市への納入に際して、F市から「本件工事代金を建設負担金という名称で処理されても、本件工事代金は課税仕入れに該当する。」という行政指導を受けて、消費税等の負担を強要され納入したものであり、このこと自体が、本件工事代金が課税仕入れに係る支払対価に該当することを証明している。
(ハ)本件横断地下道は、主としてH店への出入りの支障に配慮して設置されたものであり、請求人が主に便宜を受けるとの判断により請求人だけがF市から本件工事代金を徴収されたものであることから、本件工事代金の納入と本件横断地下道の設置とには明白な対価関係がある。
(ニ)本件工事代金は、基本通達5−5−6《公共施設の負担金等》の注書2に定める資産の譲渡等の対価に該当するかどうかの判定が困難な場合に該当し、請求人は、F市からは「課税仕入れに該当しない」旨の通知もされていない。
(ホ)基本通達11−2−8《公共的施設の負担金等》の取扱いを基に、反対解釈をすることによっても、本件工事代金は課税仕入れに係る支払対価に該当する。
ロ 過少申告加算税の賦課決定処分について
 上記イのとおり、F市に対して、本件工事代金の納入と同時に支払った消費税等の額は、消費税等そのものであり、当然に仕入税額控除の対象となり、原処分庁が行った消費税等の更正処分は、その一部を取り消されるべきであるから、これに伴い、過少申告加算税の賦課決定処分(以下「本件賦課決定処分」という。)もその一部を取り消すべきである。
 また、仮に、本件工事代金が課税仕入れに係る支払対価に該当しないとして、F市に対して納入した消費税等が、仕入れに係る消費税額として控除できないこととなったとしても、本件工事代金が消費税の課税仕入に係る支払対価に該当するかどうかは疑わしいばかりか、本件工事代金に係る消費税等が仕入れに係る消費税額として控除できるかどうかも大変紛らわしい問題であり、通則法第65条第4項にいう「正当な理由」が、「納税者に加算税を賦課することが不当若しくは酷になる場合」を指すと解されていることからも、本件はこの「正当な理由」に該当するものであり、本件賦課決定処分は、その一部を取り消すべきである。
ハ 原処分のその他の部分については争わない。

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(2)原処分庁の主張

 原処分は、次の理由により適法であるから、審査請求を棄却するとの裁決を求める。
イ 更正処分について
 請求人がF市に対して納入した金員は、本件横断地下道の工事に係る工事負担金(以下「本件工事負担金」という。)であり、本件工事負担金は、次のとおり、消費税法上、課税仕入れに係る支払対価には該当しないことから、本件工事負担金の中に含まれている消費税等相当額である22,288,486円は、仕入れに係る消費税額として控除することはできない。
(イ)請求人がF市へ納入した本件工事負担金が消費税法上、課税仕入れに係る支払対価に該当するか否かは、請求人が本件横断地下道を工事するために、直接、建設業者にその対価を支払い、本件横断地下道の引渡しを受けた後に、本件横断地下道を国等に寄付したのであればともかく、請求人は、本件横断地下道に係る建設負担に相当する金員の本件工事負担金をF市に対して納入していることから、本件工事負担金は課税仕入れに係る支払対価には該当しない。
(ロ)本件横断地下道は、請求人ほか2者の要請により、また、その建設費用を請求人が全額負担することを条件に、F市がM工事事務所に建設を委託し、M工事事務所がこれを受託して、M工事事務所自らが建設したものであることから、本件横断地下道の所有権は、F市道となるまでは国に帰属する。
(ハ)本件横断地下道は、その建設工事について、請求人のように負担金を支払った者のみが負担金を支払っていない者に比して有利な条件で利用できるものではなく、また、請求人の強い要請により建設が実行されたものであったとしても、請求人にその利用権等が設定されたものとも認められない。
 そうすると、本件横断地下道は、負担金を支払っていない者であっても、請求人と同様の条件で利用できるものであり、負担金を支払った者の便益のみが支払っていない者に比して著しく増大することに起因して徴収されたものではなく、また、本件工事負担金は専用利用権等の権利の設定の対価でもない。
(ニ)請求人は、本件工事負担金は、基本通達5−5−6の注書2における課税仕入れに係る支払対価に該当するかどうか判定が困難な場合に該当すると主張するが、上記(ロ)及び(ハ)のとおり、国に所有権があり、対価関係が認められないことは明白であり、判定が困難とはいえない。
(ホ)基本通達11−2−8は、公共的施設の負担金等について、国、地方公共団体又は同業者団体等が課税資産の譲渡等に係る対価に該当しないとしているときは、当該負担金、賦課金等を支払う事業者においても、課税仕入れに係る支払対価に該当しないことを念のために明らかにしたものにすぎず、このことをもって、本件負担金が課税仕入れに係る支払対価に該当することの理由にはならない。
ロ 過少申告加算税の賦課決定処分について
 請求人は、自己の誤った見解により、本件工事負担金が消費税法に規定する課税仕入れに係る支払対価に該当するものとして確定申告をしたものである。このことは、明らかに請求人の税法の誤解等に基づくものであるから、通則法第65条第4項に規定する正当な理由がある場合には該当しない。

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3 判断

 本件審査請求の争点は、請求人が本件横断地下道の設置に伴いF市に納入した金員が、消費税法第2条第1項第12号に規定する課税仕入れに係る支払対価に該当するか否かにあるので、以下審理する。

(1)更正処分について

イ 認定事実
 当審判所が原処分庁関係資料、関係人等を調査したところによれば、次の事実が認められる。
 なお、請求人は、当審判所が審査請求に係る証拠資料等の提出を求めたにもかかわらず、何ら提出していない。
(イ)M工事事務所は、請求人ほか2者に対して、平成7年7月31日付で、要旨次のとおり記載されている「本件横断地下道の計画について(通知)」の文書を送付している。
A 本件横断地下道は、民間の占用通路としては認め難く、道路管理者となるF市が管理する公共の道路(市道)とすることが適当である。
B 現地は交通量も多く、安全で円滑な交通処理を要する工事であることから、本計画の実施に当たっては、本件横断地下道の管理者(道路管理者)として予定されているF市からの委託により、M工事事務所が自ら施工することとする。
(ロ)請求人ほか2者は、F市長に対して、平成7年10月9日ころ、要旨次のとおり記載されている「本件横断地下道の計画について(依頼)」の文書を送付している。
A 本件横断地下道は、請求人ほか2者の事業として行いたくM工事事務所と協議を重ねてきたが、M工事事務所としては、道路管理予定者であるF市からの受託工事として、M工事事務所自らが行うことが適当である旨の回答であった。
B このため、請求人ほか2者は、本件横断地下道の工事に係る全費用を請求人ほか2者において負担するが、本件横断地下道の工事の委託者とはなり得ない状態である。ついては、F市の御協力の下、本件横断地下道が完成できるようお願いする。
(ハ)請求人ほか2者は、M工事事務所並びにF市と平成7年12月1日付で、要旨次のとおり記載された「本件横断地下道の建設及び維持管理並びに費用負担に関する覚書」を交わしている。
A 本件横断地下道の建設工事(以下「受託工事」という。)は、将来本件横断地下道の管理者となるF市が請求人ほか2者の委託を受け、更にM工事事務所はF市の委託を受けた上で、M工事事務所において施工する。
B F市は、本件横断地下道の完成後速やかに市道として引継ぎ、M工事事務所との管理協定に基づき維持管理を行う。
C 受託工事に関する一切の費用は、請求人ほか2者が負担するものとする。
(ニ)請求人ほか2者は、平成7年9月15日付で、「本件横断地下道の工事費用については、請求人がすべての費用を負担するものとし、J病院及びK組合には一切負担はないものとする。」旨記載した「国道地下道に関する三事業者協定書」を交わしている。
(ホ)F市が平成8年3月18日付で請求人ほか2者に対して発行した「開発行為の許可証」には、開発区域外に所在する本件横断地下道を含む取り付け道路の工事施工が条件とされている。
(ヘ)請求人ほか2者とF市との間で、平成8年8月1日(平成10年3月6日付で最終変更契約)付で交わされた「協定書」には、要旨次のとおり記載されている。
A 事業費は511,772,060円とし、事業費の内訳は別表3のとおりである。
B F市は、請求人ほか2者の依頼を受け、工事施工をM工事事務所に委託する。
C 事業費は、全額請求人ほか2者が負担する。
(ト)M工事事務所とF市との間で、平成8年8月1日(平成10年3月6日付で最終変更契約)付で交わされている「基本協定書」には、要旨次のとおり記載されている。
A M工事事務所は、本件横断地下道の工事を設計図に基づいて施工し、工事期間は平成8年度から平成9年度までとする。
B 事業費は概算総額507,272,060円で、うち取引に係る消費税等は24,036,060円とし、F市が全額負担する。
 なお、M工事事務所が基本協定書に基づいてF市から受領した事業費の内訳は、別表4のとおりである。
(チ)F市は、上記(ヘ)の「協定書」に基づく請求人からの事業費の受領及び上記(ト)の「基本協定書」に基づくM工事事務所への事業費の支払に関して、資産の譲渡等の対価又は課税仕入れに該当する旨の消費税等の経理処理は行っていない。
(リ)M工事事務所は、本件横断地下道の工事について、工事業者と別表5のとおり工事契約を交わし、工事業者に対して工事代金450,298,000円及び消費税等22,514,900円の合計額472,812,900円を支払っている。
ロ そこで、上記1の(4)の基礎事実及び上記イの認定事実を、上記1の(3)の関係法令等に照らして判断すると、次のとおりである。
(イ)請求人は、本件工事代金の支払の名宛先が、F市、M工事事務所、工事業者のいずれであろうとも、また、本件工事代金の名称が建設負担金、事業協力金とかであろうとも、請求人が事業費の全額を負担している事実により、実質的には、請求人が本件工事代金を工事業者に支払っているものであるから、本件工事代金は課税仕入れに係る支払対価に該当する旨主張する。
 確かに、請求人ほか2者は、F市との協定書に基づき、本件工事費を含む事業費として511,772,060円を納入し、F市は、「一般会計の雑収」として受け入れていることが認められる。また、事業費を納入するに至った経緯をみると、上記イの認定事実に記載のとおり、国道の道路管理者であるM工事事務所から、「本件横断地下道は、民間の占用通路として設置することは認められず、設置後の道路管理者に予定されるF市からの委託によりM工事事務所自ら施工する。」旨の決定通知を受け、請求人ほか2者は、本件横断地下道の工事の主体者とも工事委託者ともなり得ないこととなったために、F市に対して、「請求人ほか2者による事業費の全額負担」を条件としてM工事事務所への工事委託を要請し、さらに、F市はM工事事務所に対し、「F市による事業費の全額負担」を条件として本件横断地下道の工事の施工を委託したことから、事業費の全額を負担したことが認められる。
 しかしながら、本件横断地下道は、工事完成後はF市道として認定され、F市が占用道路として管理していくものであるから、請求人ほか2者に所有権が帰属するものとは認められない。
 さらに、F市は、請求人ほか2者から国道横断地下道建設負担金として、511,772,060円(以下「本件負担金」という。)を一般会計・諸収入・雑入として受け入れた後、自己の事務費として4,500,000円を差し引いた残額507,272,060円をM工事事務所に納入し、M工事事務所は、自己の事務費として29,874,800円及び自己が実施する工事費用として4,584,360円を控除した残額472,812,900円をもって工事業者に発注していることから、負担金の全額が工事代金(事業費)に充てられたとは認められない。
 したがって、請求人がF市に対して消費税等相当額を含めて納入した金員は、名目的にも実質的にも本件横断地下道の設置に係る「工事負担金」と認められ、本件横断地下道の設置に係る「工事代金」とする請求人の主張には理由がない。
(ロ)請求人は、F市から、「本件工事代金を建設負担金という名称で処理されていても、本件工事代金は課税仕入れに該当する。」という行政指導を受けて、現実に消費税の負担を強要され支払ったものであり、このこと自体が課税仕入れに係る支払対価に該当する旨主張する。
 しかしながら、F市は、本件負担金の受け入れについて、「一般会計の雑入」としての会計処理をしているものの、上記イの(チ)のとおり資産の譲渡等の対価に該当する旨の消費税法上の経理処理は一切行っていないことが認められ、また、請求人は、課税仕入れに該当する旨の行政指導を受けたとする証拠資料等も提出しないことから、F市から本件工事代金が課税仕入れに該当する旨の指導を受けたとする請求人の主張には理由がない。
 仮に、F市の担当者等が本件工事代金は請求人の課税仕入れに該当する旨の回答をしていたとしても、上記(イ)で述べたとおり、本件工事代金は工事負担金になると認められ、課税仕入れには該当しないことは明らかである。
 また、本件横断地下道の設置に関して、請求人ほか2者が警察等の関係機関から、国道との平面交差を避け地下道方式によるべきである旨の行政指導を受けたことは認められるものの、F市への工事代金の負担に当たっては、請求人ほか2者自らが本件事業費の全額を負担することを条件として、F市との間で協定書を締結したものであり、これら一連の流れからは、何ら、F市から強要されたものとは認められず、消費税の負担を強要されたとする請求人の主張には理由がない。
(ハ)請求人は、本件横断地下道は、請求人が建築するH店へ主に出入りするために設置されたものであり、本件工事代金は、請求人が主に便益を受けることに起因して請求人だけがF市から徴収されたものであることから、明白な対価関係がある旨主張する。
 しかしながら、本件地域に係る開発事業は、請求人ほか2者の3者共同によって申請され、許可されたものであり、本件横断地下道は、本件開発区域内への進入道路であることから、本件横断地下道の設置により供される便益は、請求人の事業地域内の所有地及び建物上のみならず、本件開発区域の全域に及ぶものと認められる。
 そうすると、本件工事負担金は、覚書及び協定書に掲げられているとおり、J病院及びK組合の2者にもそれぞれ同様の受益者として負担すべき立場にあり、金額の多寡はあるとしても、その負担の対象者となるところ、請求人が負担金の全額を支払ったことは、請求人、J病院及びK組合による三事業者協定書に基づいて実行されているに過ぎず、請求人のみに係る便益に対してF市が徴収したものでないことは明らかである。
 さらに、本件横断地下道は、設置完了後、直ちにF市道となって一般に供用されていることからも、請求人のように負担金を支払った者のみが負担金を支払っていない者に比して有利な条件で利用できるものともなっておらず、本件横断地下道が費用分担者らの要請等により設置されたものであるとしても、当該分担者らに対してその専用側線利用権等の権利が設定されたものとも認められない。
 したがって、請求人が本件横断地下道から便益を受けていることは認められるものの、本件横断地下道は、負担金を支出していない者であっても、請求人と同様の条件で利用できるものであり、負担金を支払った者の便宜のみが支払っていない者に比して著しく増大することに起因して徴収されたものではないことは明らかであり、また、専用側線利用権等の権利の設定の対価でもないことから、本件工事負担金と明白な対価関係があるとは認められず、この点に関する請求人の主張には理由がない。
(ニ)請求人は、本件工事代金は、基本通達5−5−6の注書2に定める資産の譲渡等の対価に該当するかどうかの判定が困難な場合に該当し、F市からは「課税仕入れに該当しない旨の通知」もされていない旨主張する。
 しかしながら、基本通達5−5−6の趣旨は、国又は地方公共団体等(以下「国等」という。)が、道路、堤防、護岸その他の施設又は工作物等の公共的施設の設置又は改良により提供することとなる役務の提供(便益)は、一般的には、不特定多数のものを対象としてなされるものであることから、当該負担金又は徴収金等と当該役務提供との間に明白な対価関係がある(反対給付といえる)と認められる場合に限り、当該金員は課税仕入れに係る支払対価の額に当たるとともに、当該当事者双方において、それを課税仕入れに該当しないとしている場合にあっては、国等は負担金を支払う者に対して通知することを条件にその処理を認めることとしているものの、この通知は必須要件ではないと解され、この取扱いは相当と認められる。
 そうすると、本件工事負担金については、上記(ハ)で述べたとおり、当該役務の提供(便益)との間に明白な対価関係があるとは認められず、F市からの通知がないことをもって、本件工事負担金が課税仕入れに該当するとする請求人の主張には理由がない。
(ホ)請求人は、基本通達11−2−8を反対解釈することによっても、本件工事代金は課税仕入れに係る支払対価に該当する旨主張する。
 しかしながら、基本通達11−2−8の趣旨は、上記(ニ)の基本通達5−5−6と同様の趣旨と解され、「公共的施設の負担金等について、国等が資産の譲渡等に係る対価に該当しないとしているときは、当該負担金、賦課金等を支払う事業者においても、課税仕入れに係る支払対価に該当しないこととなる。」ことを、基本通達5−5−6との関連で、念のために明らかにする趣旨で設けられているものであると解されるところ、本件工事負担金が課税仕入れに該当しないことについては上記(ハ)で述べたとおりであり、この点に関する請求人の主張には理由がない。
ハ 審理の結果
 以上のことから、請求人が支払った本件工事負担金は、課税仕入れに係る支払対価とは認められないことから、原処分庁が本件工事負担金の中に含まれている消費税等相当額22,288,486円について、消費税法第 30条に規定する仕入れに係る消費税額として控除することはできないとしてなされた本件更正処分は適法である。

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(2)過少申告加算税の賦課決定処分について

 請求人は、本件工事代金は課税仕入れに係る支払対価に該当するかどうかは疑わしいばかりか、本件工事代金に係る消費税等が仕入れに係る消費税額として控除できるかどうか大変紛らわしい問題であり、通則法第65条4項に規定する「正当な理由がある場合」に該当する旨主張する。
 ところで、通則法第65条第4項に規定する、「正当な理由があると認められるものがある場合」とは、申告当時適法とみられた申告がその後の事情の変更により、納税者の故意過失に基づかずして過少申告となった場合のように、当該申告が真にやむを得ない理由によるものである場合をいうものであり、かかる納税者に、過少申告加算税を課すことが不当若しくは酷になる場合をいうものであって、過少申告が納税者の税法の不知や法令解釈の誤りに基づく場合には、ここにいう正当な理由があると認められる場合に当たらないと解されている。
 これを本件についてみると、請求人が、本件工事代金が課税仕入れに係る支払対価に該当するとして、本件工事代金に係る消費税等を、仕入れに係る消費税額として控除して申告したことは、法令解釈の誤りに基づき過少申告を行ったものであり、このことは、通則法第65条第4項に規定する正当な理由がある場合には当たらないと認められることから、本件賦課決定処分は適法である。
(3)原処分のその他の部分については、請求人は争わず、当審判所に提出された証拠資料によっても、これを不相当とする理由は認められない。

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