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(平16.2.27裁決、裁決事例集No.67 264頁)

《裁決書(抄)》

1 事実

(1)事案の概要

 本件は、不動産貸付業を営む審査請求人(以下「請求人」という。)が、土地の賃貸借契約の終了に伴い賃借人から受け取った金員は、平成13年分の不動産所得に係る収入すべき金額となるか、あるいは預り金として処理すべきかを争点とする事案である。

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(2)審査請求に至る経緯

イ 請求人は、平成13年分の所得税について、青色の確定申告書に次表の「確定申告」欄のとおり記載して、法定申告期限までに申告した。

項目 区分確定申告更正処分等
総所得金額53,648,326円117,648,326円
内訳  
不動産所得の金額23,820,76187,820,761
配当所得の金額652,565652,565
給与所得の金額29,175,00029,175,000
納付すべき税額○○○○○○○○
過少申告加算税 2,729,000

ロ 原処分庁は、これに対し、平成15年2月14日付で上表の「更正処分等」欄のとおりの更正処分(以下「本件更正処分」という。)及び過少申告加算税の賦課決定処分(以下「本件賦課決定処分」という。)をした。
ハ 請求人は、これらの処分を不服として、平成15年4月2日に審査請求をした。

(3)関係法令

イ 所得税法第26条《不動産所得》第2項は、不動産所得の金額は、その年中の不動産所得に係る総収入金額から必要経費を控除した金額とする旨規定している。
ロ 所得税法第36条《収入金額》第1項は、その年分の各種所得の金額の計算上収入金額とすべき金額又は総収入金額に算入すべき金額は、その年において収入すべき金額とする旨規定している。

(4)基礎事実

 以下の事実は、請求人及び原処分庁の双方に争いがなく、当審判所の調査の結果によってもその事実が認められる。
イ 請求人の夫であったA(平成4年3月21日死亡、以下「被相続人」という。)が所有する、P市Q町○番○、同番○、同番○、同番○、同番○、同番○及び同番○所在の土地(以下「甲土地」という。)、並びに同番○所在の土地(以下「乙土地」といい、甲土地と併せて「本件土地」という。)は、当初農地であったが、学校法人B大学(以下「B大学」という。)は、本件土地を、運動場として使用するため、被相続人との間で、昭和56年8月4日に、土地賃貸借契約(契約内容は別紙1に記載、以下「本件契約」という。)を結び、本件土地を造成した上、運動場として使用した。
 その際、農地転用の条件として、運動場に雨水の調整機能をもたせる必要があったことから、B大学は、P市との間で「遊水池の管理に関する協定」を締結し、本件土地の外周に土盛りを施し、遊水調整機能をもった運動場にした。
ロ 平成4年3月21日、被相続人の死亡により、甲土地は請求人が、乙土地は被相続人の子C及びDが、それぞれが相続したが、乙土地については、R国税局長から相続税物納許可通知を受け、国有地となった。
ハ 請求人は、上記ロの事情により本件契約内容の一部変更をする必要が生じたことから、B大学との間で、平成5年9月9日付で、「土地賃貸借契約事項の一部変更に関する附属協定書」を締結し、本件契約のうち、〔1〕賃貸人を、被相続人から請求人に、〔2〕賃貸土地を、本件土地から甲土地に、〔3〕その地積の減少に伴い、保証金を、160,000,000円から68,843,500円に変更する旨をB大学と約した。
 なお、乙土地については、B大学は、○○財務局S財務事務所(以下「S財務事務所」という。)との間で、新たに国有財産有償貸付契約を結んでいる。
ニ 請求人は、B大学から、平成13年8月4日以降、本件契約の更新をしない旨の通知を受け、同大学との間で、同年7月31日付で合意書(合意事項は別紙2に記載、以下「本件合意書」という。)を交わし、B大学は、請求人に対し64,000,000円(以下「本件合意金」という。)を支払い、同年8月3日に甲土地を返還することとした。
ホ 請求人は、本件合意書に基づき、B大学が請求人に対して有する保証金68,843,500円の返還請求権と、上記ニの請求人が同大学に対して有する本件合意金64,000,000円の請求権とを相殺し差額4,843,500円を、同大学に対して支払い、平成13年8月3日に甲土地の返還を受けた。
ヘ 請求人は、本件合意金は預り金であるとして、当該合意金を、平成13年分の不動産所得に係る総収入金額に算入せず、所得税青色申告決算書(不動産用)に次表のとおり記載して、確定申告書に添付して提出した。

項目金額
総収入金額〔1〕39,502,287円
必要経費〔2〕15,581,526
青色申告特別控除額〔3〕100,000
不動産所得の金額23,820,761

(〔1〕−〔2〕−〔3〕)
ト 請求人は、平成14年に、本件合意金から遊水調整設備設置工事等の費用を控除した37,235,500円を原状回復工事費差額益として計上した上、平成14年分の不動産所得に係る総収入金額に算入して確定申告書を提出した。

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2 主張

(1)原処分庁

 原処分は、次のとおり適法であるから、本件審査請求を棄却するとの裁決を求める。
イ 本件更正処分について
(イ)原処分に係る調査によれば、上記1の(4)の各事実が認められるほか、B大学の担当者は、原処分庁所属の調査担当職員に対し要旨次のとおり説明した。
A 本件契約の解除は、B大学の都合により請求人に申し入れたものである。
B B大学が甲土地を請求人に返還する際に問題となったのは、甲土地が遊水池の機能を有していないと同土地の管理責任者をB大学から請求人に変更することができず、平成13年8月3日までに、これを変更することは困難であった。
(ロ)ところで、所得税法第36条第1項に規定する収入すべき金額とは、収入すべき権利又は経済的利益が確定した金額、すなわち、納税者が収入金額として管理・支配し得ることになった金額をいうものと解されている。
 これを本件についてみると、〔1〕平成13年8月3日に甲土地の原状回復工事が完了していなかったものの、B大学が甲土地の原状回復工事の履行義務に代えて請求人に対し本件合意金を支払うことで現状のまま甲土地を返還し、本件契約を解除していること、〔2〕本件契約終了の際、本件合意金は本件保証金と精算され、この過不足金が平成13年7月31日に請求人からB大学に支払われていること、〔3〕本件合意金をもってB大学の本件契約に係る原状回復義務は消滅していること、及び〔4〕当該義務の消滅した後に本件合意金を変更することはないことからすれば、本件合意金を受領する請求人の権利は、本件契約が終了した平成13年8月3日をもって確定したものと認められ、本件合意金は、平成13年分の不動産所得の金額の計算上、総収入金額に算入すべき金額である。
(ハ)また、本件合意金は、見積書に記載された金額を基礎としてその金額が決められていることから、本件合意書に記載された内容を合意する時点で、甲土地の原状回復により生じる金銭的負担を確定し、その負担を補償した性格を有するものであることが認められる。
 しかしながら、本件合意金が預り金であれば、甲土地の原状回復工事の完了後にその代金との精算が予定されているところ、本件合意書には、本件合意金の支払をもって甲土地の原状回復に係る債権債務が消滅する旨記載されていることからすれば、本件合意金は、甲土地の原状回復工事の後にB大学と請求人との間で、精算を予定しているとは認められない。
 したがって、本件合意金がB大学からの預り金とすることはできない。
(ニ)以上のとおり、本件合意金は、平成13年分の不動産所得の金額の計算上総収入金額に算入すべき金額となるから、上記1の(4)のヘの総収入金額に加算して不動産所得の金額を算定すると、87,820,761円となり、この金額は、本件更正処分に係る不動産所得の金額と同額となるので、本件更正処分は適法である。
ロ 本件賦課決定処分について
 本件賦課決定処分については、国税通則法第65条《過少申告加算税》第4項に規定する「正当な理由があると認められるものがある場合」に該当しないので、同条第1項及び第2項の規定に基づく本件賦課決定処分は適法である。

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(2)請求人

 原処分は、次の理由により違法であるから、その全部の取消しを求める。
イ 本件更正処分について
 本件合意金は、次のとおり、B大学が行うべき原状回復工事の費用を、同大学の都合から請求人が預かったものであるから、甲土地の原状回復工事が完了した平成14年7月31日までは、本件合意金を預り金とすべきであり、平成13年分の不動産所得に係る収入とはならない。
(イ)本件土地は、B大学が運動場として使用することに伴い、遊水池の管理業務が必要となったところ、B大学は、本件契約の終了に当たって、本件土地の原状回復工事を行うために、請求人、P市及び乙土地の賃貸人となったS財務事務所と原状回復工事に伴う協議を重ね、その原状回復工事のための手続を進めていた。
(ロ)B大学が甲土地の原状回復工事をするに当たり、請求人の関係法人であるE株式会社に対して当該工事の見積額の算出を依頼し、同社は、その費用の見積額を60,360,000円とする見積書を作成し、B大学に提出した。
(ハ)しかし、B大学は、本件土地が甲土地及び乙土地に分割されたことに伴い、それぞれ個別に遊水池の機能を維持しなければならないという事態になったことから、P市との遊水池の管理に関する協議が長期化し、本件契約の期限である平成13年8月3日までに原状回復工事を終了することができなくなった。
(ニ)また、B大学は、理事会において本件契約を更新しない旨決議され、本件契約の期間満了後の支払地代の予算措置ができなくなるとともに、職員を長引く本件土地の原状回復工事の雑務から解消させたいという意向も生じていた。
(ホ)そこで、B大学は、本件土地の原状回復工事に伴う既設遊水池の分離分割に伴う諸々の工事及び管理責任者の変更手続などのすべての未解決の問題を本件合意書に盛り込み、本件契約と切り離す形で本件合意書を交わし、本件契約を終了させたのである。
(ヘ)以上のように、甲土地の原状回復工事については、本件合意書を交わすまでにはB大学と何度も協議を重ね、解約に関する真意を基礎に本件合意書を交わしたものであり、B大学が甲土地の原状回復義務の履行を請求人に委任するに際し、本件合意金に過不足を生じたとしても精算を行わないこととしたのは、B大学における予算等の諸般の事情及び強い意向を汲んで、請求人が受諾したものである。
ロ 本件賦課決定処分について
 上記イのとおり、本件更正処分はその全部を取り消すべきであるから、これに伴い本件賦課決定処分もその全部を取り消されるべきである。

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3 判断

 本件の争点は、本件合意金は、平成13年分の不動産所得に係る収入金額として計上すべきか、あるいは預り金として処理すべきかにあるので、以下審理する。

(1)本件更正処分について

イ 認定事実
 請求人から提出された証拠資料、原処分関係資料及び当審判所の調査の結果によれば、次の事実が認められる。
(イ)請求人は、平成13年3月頃より、S財務事務所に対し本件土地の一括利用又は一体利用を申し入れているほか、本件契約終了に伴う甲土地に係る固定資産税の宅地なみ課税の回避策などを検討していたこと。
(ロ)平成13年春頃から、請求人は、甲土地の利用に関して、F株式会社に相談をし、同社との間で、平成15年1月30日に甲土地に係る賃貸借契約を結んだが、平成14年夏頃には、実質的に当該契約の話がまとまっていたこと。
 なお、当該契約は、F株式会社が甲土地を51年間の定期借地権により賃貸借するというものである。
(ハ)請求人は、平成13年中には本件合意書で合意に至った遊水調整設備設置工事等を了していないこと。
(ニ)B大学とP市との協定書にある甲土地に係る遊水機能保持に関し、G株式会社は、平成14年4月以降も再三にわたり、P市と協議を重ね、土地利用の変更に伴い、遊水池の調整機能の変更を求めていること。
(ホ)甲土地上には、現在、終身利用権方式のシニア住宅(建築主:F株式会社、以下「本件シニア住宅」という。)が建設されているが、当該建築計画の標識設置は平成14年3月11日であること。
(ヘ)P市は、本件シニア住宅着工時に、採用する遊水の貯留形式について、建物地下形式と表面貯留形式の双方を採用する予定との情報は得ているものの、最終的には、住宅建築終了後に貯留機能保持検査を行い、確認するとしていること。
(ト)平成14年5月14日に、B大学から請求人に遊水池の管理に関する地位の承継がなされ、請求人は、P市との間で、遊水池の管理に関する協定を締結したこと。
ロ 請求人の答述
 当審判所に対し、請求人は、要旨次のとおり答述した。
(イ)甲土地の原状回復の理想的な工事の見積りに基づいて、本件合意書を交わした。
(ロ)本件合意金を受け取ったことで、本件契約は終了し、B大学との関係はなくなったと考えているので、本件合意金の残余金を同大学に返していない。
(ハ)甲土地の遊水池設置工事等の工期変更について、B大学に連絡していない。
(ニ)当該工期の遅れは、請求人とP市との協議に時間がかかったからである。
ハ 収入すべき時期
 所得税法第36条第1項に規定する「その年において収入すべき金額」とは、その年において収入すべきことが確定し、相手方にその支払を請求し得ることとなった金額、すなわち、収入すべき権利の確定した金額をいうものであって、不動産所得の場合、契約等により支払期の定めのあるものはその支払期、支払の定めのないもので請求義務の確定するものは請求の時、その他のものは支払を受けた時と解するのが相当で、返還を要しないことが確定した場合には、その確定した金額を収入金額として計上することになる。
ニ そこで、認定事実等にこれを照らして、以下判断する。
(イ)請求人及びB大学が、保証金68,843,500円と、本件合意金64,000,000円とを相殺し、請求人が同大学に対し残額4,843,500円を支払ったことにより、B大学は、本件合意金の支払義務を履行したことが認められるが、本件合意書第3条第2項によれば、本件合意金の支払義務履行によりB大学の原状回復義務は消滅し、B大学は請求人に対し甲土地を現況の状態に復し返還したことになり、また、同5条によれば、当該支払義務履行により、請求人とB大学との間には何らの債権債務も存しないのであるから、請求人には、本件合意金の返還義務はないことになる。
 このことは、請求人の答述や、計上時期等はさておき、請求人が本件合意金から遊水調整設備設置工事等で要した費用を除いた37,235,500円を、請求人の収入として計上し、B大学に返還していないことからも明らかである。
(ロ)ところで、請求人は、本件合意金はB大学が行うべき原状回復工事の費用として預ったものであるから、工事が完了するまでは、預り金に該当する旨主張する。
 しかしながら、上記のとおり、本件合意金の支払義務履行により請求人とB大学との間には何らの債権債務も存せず、本件合意金の返還義務はないのであるから、本件合意金をB大学からの預り金であるとするのは相当ではなく、平成13年中に確定したものとして、平成13年分の不動産所得に係る収入金額として計上すべきものと認められる。そして、仮に、請求人に遊水調整設備設置工事等に要した支出がある場合には、当該工事が完了した時点で、請求人の必要経費ないし資本的支出とするのが相当である。
 したがって、この点に関する請求人の主張を採用することはできない。
 さらに敷衍するに、請求人は、平成13年8月3日に本件契約を了する以前から、甲土地の利用に関して、S財務事務所やF株式会社に赴き、相談しているほか、〔1〕B大学と約した遊水の貯留設備設置が未だ完了していない平成14年3月11日には、すでに甲土地に本件シニア住宅建築計画の標識が設置されていること、〔2〕本件契約終了に伴い、請求人が答述する理想的な見積り、換言すれば、請求人は、工事費用を最大限に見積もった上、本件合意金を受領したにもかかわらず、その後も、甲土地に係る遊水池機能保持に関し、G株式会社が再三にわたりP市に対し甲土地に係る遊水池の調整機能の変更を求めていること、〔3〕本件合意書第3条第3項の但し書では、工事完成日時が遅延したときは、B大学と協議することになっているが、請求人はこの協議を行っていないこと、〔4〕本件合意書第3条第4項による遊水調整設備の設置完了を待たず、B大学から請求人に遊水池の管理に関する地位承継がなされていることなどからすれば、請求人のいう遊水調整設備工事は、甲土地の原状回復というより、むしろ本件シニア住宅建設を前提にした遊水の貯留設備設置にあると認めるのが相当で、本件合意金を、B大学に代わり原状回復を行うための預り金として認めることはできない。
 したがって、この点からしても請求人の主張を採用することはできない。
(ハ)不動産所得の金額について
 以上の結果、本件合意金は、平成13年分の不動産所得の金額の計算上総収入金額に算入すべき金額と認められるから、上記1の(4)のヘの総収入金額に加算して平成13年分の不動産所得の金額を算定すると、87,820,761円となる。
 そうすると、上記の不動産所得の金額は、本件更正処分に係る不動産所得の金額と同額となるので、本件更正処分は適法である。

(2)本件賦課決定処分について

 本件更正処分は上記(1)のとおり適法であり、また、本件更正処分により納付すべき税額の計算の基礎となった事実が本件更正処分前の税額の計算の基礎とされていなかったことについて、国税通則法第65条第4項に規定する正当な理由があるとは認められないから、同条第1項及び第2項の規定により過少申告加算税の賦課決定処分をした本件賦課決定処分は適法である。

(3)その他

 原処分のその他の部分については、請求人は争わず、当審判所に提出された証拠資料等によっても、これを不相当とする理由は認められない。

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別紙1 本件契約(要旨)

第1条 被相続人は、本件土地を、B大学が設置する学校の運動場として同大学に賃貸する。
第3条 保証金は160,000,000円とし、本件契約の締結時にB大学が被相続人に預託する。
第4条 賃貸借期間は、契約締結の日から20年間とするが、被相続人とB大学は、期間満了日6ヶ月前までに協議の上、賃貸借期間を定めて更新することができる。
第10条 本件契約が期間満了、解約、解除等により終了した時は、B大学は本件土地上に所有又は保管する物件の全部をB大学の費用負担にて速やかに収去し、本件土地を原状に復して被相続人に返還する。ただし、返還時の事情により協議によって本件土地を現況の状態で無償返還することができるものとする

別紙2 本件合意書(要旨)

第1条 請求人及びB大学は、本件契約(変更後のものをいう。以下同じ。)が平成13年8月3日をもって終了することを確認した。
第2条 B大学は、請求人に対し、平成13年8月3日を期限として甲土地を返還する。
第3条第1項 B大学は、本件契約に係る原状回復義務の履行に代えて、請求人に対し64,000,000円を支払う。
第3条第2項 B大学が本件合意金の支払義務を履行することによって、B大学の請求人に対する原状回復義務は消滅するものとし、B大学は請求人に対し甲土地を現況の状態で返還するものとする。
第3条第3項 請求人は、平成14年2月末までに、B大学から返還を受ける甲土地と乙土地にまたがる既存雨水調整池をP市と協議の上分割し、甲土地に法的に適合した雨水調整池の築造工事及びその他の原状回復工事を請求人が指定した業者に請け負わせて完了させるものとする。
 但し、B大学の責めに帰属しない事情等で工事完成日時が遅延したときは、請求人とB大学との協議により上記完了日時も変更について合意する。
第3条第4項 上記第3項の工事が完了したときは、請求人は甲土地に新たに築造した雨水調整池の「遊水池の管理に関する業務」をP市の同意を得て、B大学から引き継ぐものとする。
第3条第5項 B大学は、上記第4項の業務の引継ぎに際し、上記第3項記載の既存遊水池の分離分割工事に伴い生ずる乙土地(国有宅地)内の残存施設に対する補修、改良等の諸工事は、B大学の出捐と責任において行う義務を有するものとする。
第4条 請求人及びB大学は、同大学が請求人に対して有する保証金68,843,500円の返還請求権と、請求人がB大学に対して有する本件合意金64,000,000円の請求権とを対等額で相殺することを合意し、請求人はB大学に対し、相殺残額4,843,500円を平成13年8月3日までにB大学が甲土地の返還を行うのと引換えに支払う。
第5条 請求人及びB大学は、本件契約に係る甲土地の原状回復に関しては、本件合意書に定めるもの以外何らの債権債務が存在しないことを確認する。