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(平17.3.15裁決、裁決事例集No.69 125頁)

《裁決書(抄)》

1 事実

(1)事案の概要

 本件は、健康食品等の購入費用が、所得税法第73条《医療費控除》に規定する医療費控除の対象となるか否かを争点とする事案である。

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(2)審査請求に至る経緯

イ 審査請求人(以下「請求人」という。)は、平成13年分、平成14年分及び平成15年分(以下「本件各年分」という。)の所得税の確定申告書に、それぞれ別表1の「確定申告」欄のとおり記載して、法定申告期限までに提出した。
ロ 原処分庁は、これに対し、平成15年7月8日付で平成14年分の所得税に係る更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分(以下「平成14年分の更正処分等」という。)を、同年11月28日付で平成13年分の所得税に係る更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分(以下「平成13年分の更正処分等」という。)を、それぞれ別表1の「更正処分等」欄記載のとおり行った。
ハ 原処分庁は、平成15年分の所得税に係る更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分(以下「平成15年分の更正処分等」という。)を、別表1の「更正処分等」欄記載のとおり行い、その処分の通知書を請求人に対して平成16年6月30日に送達した。
 なお、本件各年分の更正処分を併せて「本件各更正処分」といい、本件各年分の過少申告加算税の賦課決定処分を併せて「本件各賦課決定処分」という。
ニ 請求人は、これらの処分に不服があるとして、平成15年9月8日に平成14年分の更正処分等について、また、平成16年1月28日に平成13年分の更正処分等についてそれぞれ異議申立てをしたところ、異議審理庁は、平成15年12月8日付で平成14年分の更正処分等に係る異議申立てについて、また、平成16年4月27日付で平成13年分の更正処分等に係る異議申立てについて、それぞれ棄却の異議決定をした。
ホ 請求人は、異議決定を経た後の平成14年分の更正処分等及び平成13年分の更正処分等について不服があるとして、平成14年分の更正処分等については平成16年1月8日に、平成13年分の更正処分等については平成16年5月26日にそれぞれ審査請求をした。
ヘ 請求人は、平成15年分の更正処分等に対して不服があるとして、平成16年8月30日に異議申立てをしたところ、異議審理庁は、国税通則法(以下「通則法」という。)第89条《合意によるみなす審査請求》第1項の規定により審査請求として取り扱うことが適当であると認め、平成16年11月12日付で請求人に同意を求めたところ、請求人は同月22日付で同意したので、同日審査請求がされたものとみなされた。
ト なお、原処分庁は、平成15年分の所得税について、平成16年11月12日付で別表1の「再更正処分」欄記載のとおり再更正処分をした。
チ そこで、これらの各審査請求について併合審理をする。

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(3)関係法令等

イ 所得税法第73条第1項は、居住者が、各年において、自己又は自己と生計を一にする配偶者その他の親族に係る医療費を支払った場合において、その年中に支払った医療費の金額の合計額がその居住者のその年分の総所得金額、退職所得金額及び山林所得金額(以下「総所得金額等」という。)の合計額の百分の五に相当する金額(当該金額が十万円を超える場合には、十万円)を超えるときは、その超える部分の金額を、その居住者の総所得金額等から控除する旨規定しており、同条第2項は、前項に規定する医療費とは医師又は歯科医師による診療又は治療、治療又は療養に必要な医薬品の購入その他医療又はこれに関連する人的役務の提供の対価のうち通常必要であると認められるものとして政令で定めるものをいう旨規定している。
ロ 所得税法施行令(以下「施行令」という。)第207条《医療費の範囲》は、所得税法第73条第2項で規定する政令で定める対価は、次に掲げるものの対価のうち、その病状その他財務省令で定める状況に応じて一般的に支出される水準を著しく超えない部分の金額とする旨規定している。
(イ)医師又は歯科医師による診療又は治療
(ロ)治療又は療養に必要な医薬品の購入
(ハ)病院、診療所(これに準ずるものとして財務省令で定めるものを含む。)又は助産所へ収容されるための人的役務の提供
(ニ)あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師等に関する法律第3条の2《名簿》に規定される施術者(同法第12条の2第1項《医業類似行為を業とすることができる者》の規定に該当する者を含む。)又は柔道整復師法第2条第1項《定義》に規定する柔道整復師(以下、これらを併せて「あん摩師等」という。)による施術
(ホ)保健師、看護師又は准看護師による療養上の世話
(ヘ)助産師による分べんの介助
(以下、医師、歯科医師、あん摩師等、保健師、看護師、准看護師及び助産師を併せて「医師等」といい、医師等による診療、治療、施術、療養上の世話及び分べんの介助を併せて「診療等」という。)
ハ 所得税法第120条《確定所得申告》第3項第1号は、確定申告書に医療費控除に関する事項の記載をする居住者が確定申告書を提出する場合に、控除を受ける金額の計算の基礎となる金額その他の事項を証する書類を当該申告書に添付し又は当該申告書の提出の際提示しなければならない旨規定している。
ニ 施行令第262条《確定申告書に関する書類の提出又は提示》第1項第2号は、医療費控除に関する事項を確定申告書に記載する居住者は、当該申告書に記載したその控除を受ける金額の計算の基礎となる所得税法第73条第2項に規定する医療費につきこれを領収した者のその領収を証する書類を、確定申告書に添付し又は当該申告書の提出の際提示しなければならない旨規定している。

(4)基礎事実

 以下の事実については、請求人及び原処分庁の双方に争いがなく、当審判所の調査の結果によってもその事実が認められる。
イ 平成13年分の所得税の確定申告書には、支払医療費897,518円及び保険金などで補てんされる金額零円と記載されており、また、同申告書に添付された医療費に係る領収証等(以下「本件13年分領収証等」という。)の合計金額は904,170円である。
ロ 平成14年分の所得税の確定申告書には、支払医療費965,561円及び保険金などで補てんされる金額零円と記載されており、また、同申告書に添付された医療費に係る領収証等(以下「本件14年分領収証等」という。)の合計金額は695,336円であり、270,225円分の医療費に係る領収証等の添付又は提示はなかった。
ハ 平成15年分の所得税の確定申告書には、支払医療費903,171円と記載されており、また、同申告書に添付された医療費に係る領収証等(以下、本件13年分領収証等及び本件14年分領収証等と併せて「本件各年分領収証等」という。)の合計金額は583,829円であり、320,000円分(息子の診療交通費分)については、支払医療費に係る領収証等の添付又は提示はなかった。
ニ 本件各年分領収証等の中には、別表3記載の各支出が含まれている。

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2 主張

(1)原処分庁

 原処分は、次のとおり適法であるから、審査請求をいずれも棄却するとの裁決を求める。
イ 本件各更正処分について
(イ)医療費控除については、所得税法第73条及び施行令第207条に規定されており、医療費控除の対象となる医療費は、医師等の診療等に直接必要な費用及び治療又は療養に必要な医薬品の購入費に限られるものである。
(ロ)別表3記載の支出は、次のとおり、いずれも医師等による診療等に直接必要な費用及び治療又は療養に必要な医薬品の購入費には該当しない。
A 1ないし5及び12ないし14は、医薬品に当たらないものの購入費用である。
B 6ないし9は、当該年分以外の支出及び医薬品に当たらないものの購入費用である。
C 10及び11は自宅の改装費である。
D 15及び16は、衣料品の購入費用である。
E 17は、あん摩師等の資格を有しない者からの施術に対する費用である。
F 18及び19は、老化現象による視力の低下を補うための眼鏡購入費用である。
G 20ないし23は、医師による診療を受けるためのものとは認められない旅行代金である。
ロ 本件各賦課決定処分について
 請求人には、本件各年分の確定申告について、通則法第65条《過少申告加算税》第4項に規定する「正当な理由があると認められるものがある場合」に該当しないから、同条第1項の規定に基づき過少申告加算税を賦課決定した本件各賦課決定処分は適法である。

(2)請求人

 原処分は、次の理由から違法であり、その全部の取消しを求める。
イ 本件各更正処分について
(イ)糖尿病及び高血圧症を持病として持つ請求人にとっては、病院の薬のみでは、血糖値・血圧の安定は無理であり、食事療法などの日常の生活において健康に配慮をしていく必要がある。したがって、医療費控除の考え方も、個々人の体質などの特殊性を考慮して判断する必要がある。
(ロ)請求人にとっては、次のとおり、別表3記載の支出も健康に配慮をするために必要なものであるから、医療費控除の対象として扱われるべきものである。
A 1ないし5については、医師により推薦されたものである。
B 6ないし9については、薬を購入したものである。
C 10については、糖尿病の運動療法ために運動用具を購入したものである。
D 11については、糖尿病の薬が引き起こす便秘症状の解消のために、トイレをシャワー付のものに換えたものである。
E 12は、糖尿病用の献立書を購入したものである。
F 13及び14は、請求人が入院した際に必要となったものである。
G 17は、請求人の妻が必要としたものである。
H 18及び19は、糖尿病の進行に対し障害のないようにしたものである。
I 20ないし23は、医師の勧めにより実行したものである。
(ハ)請求人の妻は、平成15年10月25日に急性すい炎で入院治療したが、15及び16については、その際に、治療室での処置をしやすくするために前開きの下着を購入したものである。
ロ 本件各賦課決定処分について
 本件各賦課決定処分については、本件各更正処分が取り消される以上、当然それに伴って取り消されるべきである。

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3 判断

 本件の争点である、別表3記載の支出が医療費控除の対象となるか否かについて判断した結果は以下のとおりである。

(1)認定事実

 請求人提出資料、原処分関係資料及び当審判所の調査の結果によれば、次の事実が認められる。
イ J社、K社、L社、M社及びN社では、医薬品は取り扱っていない。
ロ 別表4記載の「〔1〕」は健康食品、「〔2〕」及び「〔3〕」はいずれも化粧品である。
ハ 別表5記載の「〔5〕」はシェービングジェル、別表5及び別表6記載の「〔4〕」は育毛スプレー、別表6記載の「〔6〕」はひげそり後のローション、「〔9〕」は医薬部外品の育毛促進剤、「〔10〕」は歯磨粉、「〔11〕」は食品である。
ニ 平成14年中のPに対する支出の中には、別表6の3記載の平成13年1月6日付及び別表6の4及び5記載の平成15年2月21日付の支出が混在しているが、当該支出の内容は、いずれも医薬品を購入したものである。
ホ 平成15年中の医療費控除対象額として計上されたもののうち、別表3の9記載のb社に対する支出は、同年分の支出ではなく平成13年中の医薬品購入のための支出である。
ヘ 請求人等の答述等
(イ)請求人は、当審判所に対して要旨次のとおり答述している。
A 別表6記載のP発行の1,896円の領収証等については、いつ、何を購入したものか分からない。
B 別表3の12のQ社から購入した書籍は、糖尿病用の献立書である。自宅で食事療法を行う際に参考となる書籍として医師に勧められたものである。
C 別表3の13の弁当は、請求人が入院中、妻が来院した際に昼食として購入し、妻が食べたものである。
D 別表3の14のR社○○○店に支払った10,815円については、入院に際して必要となった出費であったと思うが、現在となっては何を購入したものか思い出すことはできない。
E 別表3の15及び16は、妻が急性すい炎によって平成15年10月25日から同年11月の終わりころまで入院した際に購入したもので、診療が受けやすいように購入した前開きの下着を購入したものである。
F 別表3の17は、請求人の妻が、肩こりがひどく困っていたとき、偶然、駅前の呼び込みでこの整体院を知って、マッサージを受けたものである。
G 別表3の20ないし23までの旅行については、糖尿病に効くとの話を聴いたことから行ったものであるが、医師からの処方箋や治療指示等によるものではない。
(ロ)S社の担当者は、原処分庁の調査担当者に対し、要旨次のとおり申述している。
A 別表3の10の領収証等については、請求人に対してガスコンロの販売及び取付けを行ったものである。
B T社という会社のビルトインタイプのガスコンロであり、実際の納品と取付けは、T社○○○店が行った。
(ハ)S社の担当者は、当審判所に対し、同社では、運動用具は取り扱っていない旨答述している。
(ニ)U社の担当者は、原処分庁の調査担当者に対し、別表3の11の領収証等について要旨次のとおり申述している。
A 請求人から自宅をバリアフリー化する改装工事の話があり、全部込みで500,000円ということで依頼を引き受けた。
B この工事では、床暖房設備、シャワー付トイレ及び木材などの必要な材料を当社から販売している。
(ホ)R社○○○店の担当者は、原処分庁の調査担当者に対し、別表3の14の領収証等は「アイデア家庭用品」という催事会場で販売した物品の代金である旨、また、別表3の15の領収証等は、商品の品目は不明であるが、おそらく婦人用の寝巻き類を販売したものである旨申述している。
(ヘ)Vの○○○店の担当者は、原処分庁の調査担当者に対して、別表3の16の領収証等は、商品の品目は不明であるが、婦人用の寝巻き又はガウンを販売したものである旨申述している。
(ト)別表3の17に関して、W整体院の施術者は、原処分庁の調査担当者に対して、あん摩師等の資格は持っていない旨申述している。
(チ)X眼鏡院の店長は、原処分庁の調査担当者に対し、別表3の18は、請求人へ遠近両用の眼鏡を販売したものであるが、その際に医師の診断書等は提示されていない旨申述している。
(リ)Yの○○○店の店長は、原処分庁の調査担当者に対し、別表3の19は、通常の老眼鏡を販売したものであるが、その際に医師の診断書等は提示されなかった旨申述している。

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(2)本件各更正処分について

イ 医療費控除について
 請求人は、当該支出が医療費控除の対象となるか否かについては、個々人の体質などの特殊性に応じて判断するべきであると主張する。
 医療費控除の制度は、医療費が多額で異常な支出となる場合における担税力の減殺を調整する目的で創設されたものであるが、医療費控除の対象となる医療費の範囲について規定した所得税法第73条第2項は、医療費控除に該当するべき医療関係支出を政令で定める旨規定し、同条を受けた施行令第207条において第1号から第6号にかけて限定的に列挙されている。
 このことからすれば、これら医療費控除に係る租税法規の解釈及びその適用に当たっては、租税の公共性、課税の公平の原則を基本として社会通念に照らして合理的かつ客観的に解釈すべきものであるものの、個々の納税者の主観や価値観によって解釈を変更し、その適用範囲を拡大することを許しているものとは解されない。
 そうすると、施行令第207条において規定されている医療費とは、医師等の診療等に直接必要な費用及び治療又は療養に必要な医薬品の購入費等に限られると解するべきである。
 したがって、この点に関する請求人の主張は採用することはできない。
ロ 別表3記載の支出について
 そこで、上記認定事実、上記医療費控除の制度の趣旨及び法条の解釈に基づき、別表3記載の各支出を検討したところ、次のとおりである。
(イ)1ないし9の支出
 当審判所の調査の結果、当該物品は、専ら健康の増進や体調の維持を目的とする健康食品や日常生活の用に供するものであり、医薬品には該当しない。また、上記3の(1)のニ及びホ記載の支出は、提出年分を誤っており、いずれも提出年分の医療費として認めることはできない。
(ロ)10ないし14の支出
 10及び11の支出は、請求人の自宅の改築費用、12ないし14の支出は、施行令第207条に規定する医師等による診療や治療などのために直接必要な医療用器具を購入したものとは認められないことから、この点に関する請求人の主張は採用できない。
 したがって、当該支出を医療費の対象と認めることはできない。
(ハ)15及び16の支出
 原処分関係資料及び当審判所の調査の結果によっても具体的な商品名までは把握できなかったが、当該支出は、いずれも衣料品の購入費用であり、請求人の妻が入院した際に必要となったものだとしても、医師等による診療や治療などのために直接必要な費用とは認められないのであり、この点に関する請求人の主張には理由がない。
 したがって、当該支出を医療費控除の対象と認めることはできない。
(ニ)17の支出
 これは、請求人の妻が、W整体院においてマッサージを受けたものであるが、W整体院の施術者は、あん摩師等の資格を有していないことから、施行令207条に規定するあん摩師等に対する対価には該当せず、この点に関する請求人の主張には理由がない。
 したがって、当該支出を医療費控除の対象と認めることはできない。
(ホ)18及び19の支出
 眼鏡の購入費用は、義手、義足及び松葉づえ等の様に医師等の治療等を受けるため直接必要なものであれば、医療費控除の対象となるが(所得税基本通達73−3)、一般的な近視や遠視の矯正のためのものは医療費控除の対象とはならない。ところで、請求人は、老眼を矯正するために眼鏡を購入したものと認められるが、老眼は身体上の機能障害であるものの、眼鏡等による視力補正を行うことが常態であること、眼鏡等の使用はその障害を治療するためのものでないこと及び請求人が医師等の指示に基づいて当該眼鏡を利用した治療を受けているとも認められないことから、医師等の治療等を受けるため直接必要なものの購入の費用とはいえず、この点に関する請求人の主張は採用できない。
 したがって、当該支出は医療費控除の対象とすることはできない。
(ヘ)20ないし23の支出
 これらは、いずれも温泉を利用した旅行のための支出と認められる。ところで、医師が治療のため患者に対して温泉利用型健康増進施設として厚生労働大臣の認定を受けた施設を利用した温泉療法を行わせた場合の当該施設の利用料金(療養期間が1週間以上にわたる温泉療法が行われた場合に限る。)は、医師の治療を受けるため直接必要な費用として医療費控除の対象として取り扱われているが、本件の場合、請求人が医師からの指示に基づいて、病状に応じて特定された温泉地に赴いたものとは認められず、また、他に温泉を利用して何らかの治療又は療養を受けたことを裏付ける資料もないことから、これらの旅行を医師等による治療又は療養の一環として行われたものと認めることはできないのであり、この点に関する請求人の主張には理由がない。
 したがって、当該支出は医療費控除の対象とすることはできない。
(ト)以上のとおり、別表3記載の1ないし23の支出は、いずれも医療費控除の対象とはならない。しかしながら、当審判所が調査した結果、上記3の(1)のニ及びホ記載の支出は、いずれも医薬品を購入したものであることが判明していることから、別表3のイないしハ記載のとおり、当該支出をした年分の医療費として認めることとして、同表の「否認項目合計額」欄記載の金額から控除することとする。
 したがって、本件各年分の医療費控除の対象とは認められない金額は、別表3の「審判所の認定した否認額」欄記載の金額になる。
ハ 本件各年分の医療費控除の金額
 上記のとおり、別表3の「審判所の認定した否認額」欄記載の金額が医療費として認められず、さらに、上記1の(4)基礎事実のロ及びハに記載のとおり、平成14年分の270,225円分及び平成15年分の320,000円分については、領収証等が確定申告書に添付されておらず、また、申告書の提出の際に提示もされていないことから、それぞれ平成14年分及び平成15年分の医療費控除の対象とすることはできない。
 したがって、本件各年分の医療費の金額は別表2の「〔6〕医療費の金額」欄に記載の金額となり、本件各年分の医療費控除の金額は同表の「医療費控除額」欄に記載の金額となる。
ニ 請求人の納付すべき税額及び還付金の額に相当する税額
(イ)平成13年分及び平成14年分
 上記ハのとおり、請求人の平成13年分及び平成14年分の医療費控除の金額は、いずれも零円となり、別表1記載の本件各年分の「更正処分等」欄と同額となる。
 これに基づき、請求人の平成13年分及び平成14年分の納付すべき税額を計算すると、平成13年分及び平成14年分の各更正処分における納付すべき税額と同額となるから、当該各更正処分はいずれも適法である。
(ロ)平成15年分
 上記ハのとおり、請求人の医療費控除の金額は395,680円となり、これに基づき還付金の額に相当する税額を計算すると、当審判所の認定した金額は更正処分の金額を上回るから、平成15年分の更正処分はその一部を取り消すべきである。

(3)本件各賦課決定処分について

イ 平成13年分及び平成14年分
 平成13年分及び平成14年分の各更正処分は、上記のとおりいずれも適法であり、また、請求人には、当該各更正処分により納付すべき税額の計算の基礎となった事実が当該各更正処分前の税額の計算の基礎とされていなかったことについて、通則法第65条第4項に規定する正当な事由があるとは認められないから、同条第1項の規定に基づく平成13年分及び平成14年分の各賦課決定処分はいずれも適法である。
ロ 平成15年分
 平成15年分の更正処分は、上記のとおりその一部が取り消されるものの、過少申告加算税の基礎となる税額については原処分と同額の120,000円であることから、過少申告加算税の金額も同額となる。また、請求人には、更正処分により納付すべき税額の計算の基礎となった事実が更正処分前の税額の計算の基礎とされていなかったことについて、通則法第65条第4項に規定する正当な事由があるとは認められないから、同条第1項の規定に基づく平成15年分の賦課決定処分は適法である。

(4)その他

 原処分のその他の部分については、請求人は争わず、当審判所に提出された証拠資料等によっても、これを不相当とする理由は認められない。

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