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(平19.12.17、裁決事例集No.74 478頁)

《裁決書(抄)》

1 事実

(1) 事案の概要

 本件は、原処分庁が、審査請求人(以下「請求人」という。)の滞納国税を徴収するため、その所有する不動産について差押処分をしたのに対し、請求人が、同処分は裁量権を濫用した不当な処分であるなどと主張して、その全部の取消しを求めた事案である。

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(2)  審査請求に至る経緯

イ 原処分庁は、別表1の請求人の各滞納国税(以下「本件各滞納国税」という。)について、同表の「納期限」欄記載の各納期限までに納付されなかったため、同表の「督促年月日」欄記載の各日付で督促した。
ロ 原処分庁は、本件各滞納国税を徴収するため、別表2の各不動産(以下「本件各差押不動産」という。)を平成18年10月23日付で差し押さえた(以下「本件差押処分」という。)。
ハ 請求人は、平成18年11月22日に本件差押処分を不服として異議申立てをしたところ、異議審理庁は、平成19年2月19日付で棄却の異議決定をした。
ニ 請求人は、平成19年3月15日に異議決定を経た後の原処分に不服があるとして審査請求をした。

(3) 関係法令等

イ 国税徴収法(以下「徴収法」という。)第47条《差押の要件》第1項第1号は、滞納者が督促を受け、その督促に係る国税をその督促状を発した日から起算して10日を経過した日までに完納しないときは、徴収職員は、滞納者の国税につきその財産を差し押さえなければならない旨規定している。
ロ 徴収法第48条《超過差押及び無益な差押の禁止》第1項は、国税を徴収するために必要な財産以外の財産は、差し押さえることができない旨規定し、同条第2項は、差し押さえることができる財産の価額がその差押えに係る滞納処分費及び徴収すべき国税に先だつ他の国税、地方税その他の債権の金額の合計額を超える見込みがないときは、その財産は、差し押さえることができない旨規定している。
ハ 国税徴収法基本通達第47条関係18《着手前の催告》は、督促状を発した後6か月以上を経て差押えをする場合には、あらかじめ、催告をする旨定めている。

(4) 基礎事実

イ 請求人は、本件各差押不動産を所有する。
ロ 請求人は、C社から次のとおり、家賃収入を得ている。
(イ) 平成17年1月1日から同年12月31日までの期間 ○○○○円
(ロ) 平成18年1月1日から同年12月31日までの期間 ○○○○円
ハ 請求人は、D社の代表取締役である。

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2 争点

 本件差押処分は、裁量権を濫用した不当な処分であるか否か。

3 主張

請求人 原処分庁
 本件差押処分は、次のとおり、裁量権を濫用した不当な処分である。  本件差押処分は、次のとおり、不当な処分ではない。
(1) 差押えに至る経緯等
 本件各滞納国税は、本件差押処分時において、すべて納期限から1年未満のものであり、請求人が分割納付の申出及び差押留保を依頼したにもかかわらず、原処分庁は、臨戸による納付の指導及び請求人が依頼した具体的な納付の指導を全く行うことなく、突然一方的に本件差押処分をした。
 また、原処分庁は、D社の一事業部門の売却資金による納付計画に耳を傾けることなく、本件差押処分をした。
(1) 差押えに至る経緯等
 本件差押処分は、徴収法第47条第1項第1号及び第68条《不動産の差押の手続及び効力発生時期》の規定に基づき適法に行われており、請求人が主張する不当性に関する法令の規定はない。
(2) 差押財産の選択
 原処分庁は、次のとおり、差押財産の選択を誤っている。
イ 本件各滞納国税の課税客体がC社からの家賃収入であることは明らかであり、原処分庁は、C社に対する家賃債権(以下「本件家賃債権」という。)の差押え及び取立てにより本件各滞納国税を徴収できるにもかかわらず、本件家賃債権の差押えを怠っている。
ロ 原処分庁は、請求人がD社に対する貸付金(以下「本件貸付金」という。)を有している事実の把握を怠っている。
ハ 本件差押処分が、本件各差押不動産に設定された金融機関の抵当権等を加味した上での差押えであるとしても、事前の指導協議もされず、請求人の了解を得たものではなく、本件差押処分は、本件各差押不動産の差押えの必要性について十分な検討がされないまま行われた、単に便宜主義による職権濫用処分である。
(2) 差押財産の選択
 差押えの対象となる財産は、1財産が納税者に帰属していること、2財産が徴収法施行地内に所在すること、3財産が金銭的価値を有すること、4財産が譲渡性を有すること及び5差押禁止財産ではないこととされているところ、差押えの対象としてどのような財産を選択するかについて、法令の規定はなく、徴収職員の裁量(合理的判断)にゆだねられていると解されているから、請求人の主張は、本件差押処分を不当とする理由には当たらない。
(3) 超過差押
 請求人の滞納税額に対する差押えとして、9筆にも及ぶ本件各差押不動産の差押えは、本件差押処分時の滞納税額及び本件各差押不動産の評価額からみて、過大な差押えである。
(3) 超過差押
 不動産の評価に当たっては、1不動産自体の評価額、2優先担保権等の債権額等を考慮する必要があるため、本件差押処分は、超過差押には該当しない。

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4 判断

(1) 認定事実

 原処分関係資料及び当審判所の調査の結果によれば、次の事実が認められる。
イ 原処分庁は、請求人に対し、本件各滞納国税について、別表1の「督促年月日」欄記載の各日付で督促状を発したが、平成18年10月23日現在で完納されていない。
ロ 原処分庁所属の徴収担当職員(以下「本件徴収担当職員」という。)は、請求人に対し、平成18年4月17日付で差押予告書を送付し、別表1の番号1の滞納国税の自主納付をしょうようするとともに、納付できない事情があるときは本件徴収担当職員に連絡又は相談することを求め、滞納国税の納付も相談もないときは財産の差押えを行う旨の連絡をした。
ハ 本件徴収担当職員は、平成18年4月20日に請求人から「5月下旬から6月中旬ごろに私の所有している不動産の売却代金にて滞納国税を納付する。」旨の電話連絡を受け、請求人に対し、納付計画書の提出を求めたが、請求人から納付計画書の提出はなかった。
ニ 本件徴収担当職員は、請求人に対し、平成18年6月12日付で「未納国税の納付について」と題する催告書を送付し、別表1の番号1ないし3の滞納国税の自主納付をしょうようするとともに、納付できない事情があるときは本件徴収担当職員に連絡又は相談することを求め、滞納国税の納付も相談もないときは法律に定められた手続を行う旨の連絡をした。
ホ 本件徴収担当職員は、請求人に対し、平成18年7月25日付で「不動産収入、不動産等の差押えを執行します。」と手書で追記した差押予告書を送付し、別表1の番号1ないし3の滞納国税の自主納付をしょうようするとともに、納付できない事情があるときは本件徴収担当職員に連絡又は相談することを求め、滞納国税の納付も相談もないときは財産の差押えを行う旨の連絡をした。
ヘ 本件徴収担当職員は、平成18年7月27日に請求人から「不動産の処分も考えたが、買い手がつかず、そのままになってしまった。家賃収入も全額銀行からの借入金に対する返済に充てられて手元に残らない。」旨の電話連絡を受け、請求人に対し、滞納国税の納付計画を立てること及び納付の相談をするために原処分庁へ来署することを求めるとともに、納付が長期にわたる場合は財産の差押え又は担保の提供が必要となる旨説明した。
ト 本件徴収担当職員は、平成18年8月2日に請求人から「関係会社に対する貸付金があり、8月中旬までに○○○○円、8月下旬から毎月○○○○円が返済されることになったので、入金があり次第現金で納付する。」旨の電話連絡を受けたが、請求人は、滞納国税を納付しなかった。
チ 原処分庁は、本件各差押不動産の処分予定価額について、次のとおり、97,801,000円と算出した。
(イ) 本件各差押不動産の処分予定価額97,801,000円は、別表2の番号1ないし3の宅地及び番号8の工場等(以下、これらを併せて「本件工場及び敷地」という。)並びに同表の番号4ないし7の宅地及び番号9の居宅(以下、これらを併せて「本件居宅及び敷地」という。)を、それぞれ一括で評価した次のA及びBの価額の合計額である。
A 本件工場及び敷地 62,807,000円
B 本件居宅及び敷地 34,994,000円
(ロ) 別表2の番号1ないし7の宅地の価額は、地価公示法により公示された標準地(P市p町○番○)の価格を基に算出した価額である。
(ハ) 別表2の番号8及び9の建物の価額は、当該建物に係る平成18年度の固定資産税評価額を基に算出した価額である。
(ニ) 本件工場及び敷地はD社が使用し、本件居宅及び敷地は請求人が使用していることから、それぞれについて、借地権及び借家権等による減額調整が行われている。
(ホ) 公売の特殊性として、10%の減額調整が行われている。
リ 本件各滞納国税の各法定納期限等は、別表1の「法定納期限等」欄記載のとおりである。
ヌ 本件工場及び敷地には、抵当権者をE銀行、債務者を請求人、債権額を25,000,000円とする抵当権の設定が共同担保として、平成15年4月○日に登記されている。また、本件各差押不動産には、抵当権者をE銀行、債務者を請求人、債権額を40,000,000円とする抵当権の設定が共同担保として、別表2の番号4ないし7の宅地については、平成15年2月○日に登記され、同表の番号1ないし3の宅地並びに番号8及び9の建物については、同年7月○日に登記されている。さらに、本件各差押不動産には、根抵当権者をE銀行、債務者をD社、極度額45,000,000円とする根抵当権の設定が共同担保として、平成15年12月○日に登記されている。
ル 上記ヌの抵当権及び根抵当権の平成18年10月25日現在の被担保債権額は、別表3のとおりである。
ヲ 本件差押処分時における請求人の滞納国税の額は、申告所得税、消費税及び地方消費税の本税額○○○○円、延滞税額○○○○円の合計○○○○円である。

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(2) 法令解釈等

イ 徴収法第47条第1項第1号の規定によれば、滞納者が督促を受け、その督促に係る国税をその督促状を発した日から起算して10日を経過した日までに完納しないときは、徴収職員は、滞納者の国税につきその財産を差し押さえなければならない旨規定しているが、差押処分をするに当たって、滞納者に対し納付の指導をしなければならない旨及び滞納者の了解を得なければならない旨を定めた法令の規定はない。
 なお、国税徴収法基本通達第47条関係18は、督促状を発した後6か月以上を経て差押えをする場合には、あらかじめ、催告をする旨定めているところ、督促状を発してから相当の期間を経過して差押えを行う場合には、滞納者に事前に納付の催告をした後、差押えを行うことが適当であるから、その取扱いは当審判所においても相当と認められる。
ロ 徴収法により差し押さえる財産は、徴収法施行地内にある滞納者に帰属する財産のうち、金銭的価値を有し、譲渡性を有するか又は取立てが可能なものであって、かつ、法令が規定する差押禁止財産に当たらないものでなければならないが、その財産のうち、いかなる財産を差し押さえるかについては、徴収法その他の法令には、差押財産の種類又は順序について制限を設けた規定はないから、専ら徴収職員の合理的な裁量にゆだねられているものと解され、また、徴収職員は滞納者の全財産を把握しなければならない旨を定めた法令の規定はない。
ハ 徴収法第48条第1項に規定する超過差押の判断をする際の財産の価額は、差し押さえた時の処分予定価額によるべきものと解され、超過差押となるか否かは、差し押さえた時点における財産の処分予定価額と徴収すべき国税の額(延滞税等の額も含む。以下同じ。)とを比較して判断するのが相当であり、また、差押えに係る国税に優先する他の債権がある場合には、その処分予定価額から国税に優先する債権の額を控除した額と徴収すべき国税の額とを比較して判断するのが相当である。
 なお、処分予定価額の算出に当たっては、差押不動産が更地・空家でない限り、客観的な時価から借地権・借家権価額を控除して算出するのが相当であり、また、差押財産の換価は原則として徴収法第94条《公売》の規定によって行われるところ、公売は、1強制売却であるところからいわば「因縁付」の財産の買い取りであるという感情を伴いがちであること、2買受後の返品、取替ができず買受人に不利な要素があること、3代金一括納付を原則としていること及び4任意売買に比べて手続が煩わしいことから、公売価格が一般の任意売買による売却価格を下回ることは通常のことであると認められるため、この公売の特殊性として、上記の客観的な時価から借地権・借家権価額を控除した後の価額の30%程度の範囲内の額を、更に減額して算出するのが相当である。

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(3) 判断

 これを本件についてみると、次のとおりである。
イ 差押えに至る経緯等
(イ) 上記(1)のイのとおり、原処分庁は、請求人に対し、別表1の番号1の滞納国税の督促状を発した後、相当の期間を経過しても、請求人が当該滞納国税を完納しなかったことから、上記(1)のロ、ニ及びホのとおり、当該滞納国税の自主納付のしょうようを行い、納付の催告をしたが、それでも請求人は当該滞納国税を完納しなかったことから、原処分庁は、徴収法第47条第1項第1号の規定に基づき、本件各滞納国税を徴収するため、本件差押処分を行ったものと認められる。
 したがって、本件差押処分時において、本件各滞納国税が完納されていないことからすれば、原処分庁が請求人の意に反して本件差押処分をしたとしてもやむを得ないというべきであり、本件差押処分が裁量権を濫用した処分とは認められない。
(ロ) なお、請求人は、原処分庁は臨戸による納付の指導及び請求人が依頼した具体的な納付の指導を全く行うことなく、突然一方的に本件差押処分をした旨並びに原処分庁は分割納付の申出及びD社の一事業部門の売却資金による納付計画に耳を傾けなかった旨主張する。
 しかしながら、差押処分をするに当たって、滞納者に対し納付の指導をしなければならない旨及び滞納者の了解を得なければならない旨を定めた法令の規定はなく、本件徴収担当職員は、請求人に対し、1上記(1)のロ及びホのとおり、差押予告書により、滞納国税の納付も相談もないときは財産の差押えを行うことを明確に予告していること、2上記(1)のロ、ニ及びホのとおり、差押予告書及び催告書により、滞納国税を納付できない事情があるときは本件徴収担当職員に連絡又は相談することを求めていること、3上記(1)のハのとおり、納付計画書の提出を求めたが、これを請求人が提出しなかったこと、及び4上記(1)のヘ及びトのとおり、納付計画の作成を求めるとともに、納付が長期にわたる場合は財産の差押え又は担保の提供が必要となる旨説明したところ、請求人は、滞納国税を平成18年8月中旬以降、毎月納付する旨申し出たが、その後、滞納国税の納付をしなかったことが認められ、本件差押処分に至る経緯において、本件徴収担当職員が裁量権を逸脱、濫用した事実は認められない。
 したがって、この点に関する請求人の主張には理由がない。
ロ 差押財産の選択
(イ) 本件各差押不動産は、前記1の(4)のイ及び別表2のとおり、請求人が所有するP市内の不動産であり、金銭的価値を有し、譲渡性を有することが認められるが、法令が規定する差押禁止財産に当たるとは認められない。
また、滞納者に帰属する財産のうち、いかなる財産を差し押さえるかについては徴収職員の合理的な裁量にゆだねられていると解されるところ、請求人に帰属する財産のうち、本件各差押不動産を差し押さえたことが、本件徴収担当職員の合理的な裁量の範囲を逸脱したものとは認められない。
(ロ) なお、請求人は、原処分庁は本件家賃債権の差押え及びその取立てにより本件各滞納国税を徴収できるにもかかわらず、本件家賃債権の差押えを怠っていること及び本件貸付金の把握を怠っていることから、差押財産の選択を誤っている旨主張する。
 しかしながら、上記(1)のヘのとおり、本件徴収担当職員は、請求人から家賃収入は全額銀行からの借入金の返済に充てられて手元に残らない旨の説明があったことから、本件家賃債権を差し押さえなかったことが認められ、それが徴収職員の合理的な裁量の範囲を逸脱したものとは認められない。
 また、上記(1)のトのとおり、本件徴収担当職員は、請求人から、関係会社に対する貸付金の返済金から滞納国税を納付する旨の申出を受けたことが認められるところ、徴収職員が差押処分をするに当たり、滞納者の全財産を把握しなければならない旨を定めた法令の規定はなく、本件徴収担当職員が本件貸付金を把握していないとしても差押財産の選択を誤っているとはいえない。
 したがって、この点に関する請求人の主張には理由がない。
ハ 超過差押
(イ) 上記(1)のチの(ロ)及び(ハ)のとおり、原処分庁は、地価公示法により公示された標準地の価格を基に宅地の価額を算出し、平成18年度の固定資産税評価額を基に建物の価額を算出したことが認められるところ、地価公示法第2条《標準地の価格の判定等》第2項によれば、地価公示法により公示された標準地の価格は、土地について自由な取引が行われるとした場合におけるその取引において通常成立すると認められる価格であること、及び総務大臣が定めた固定資産評価基準によれば、家屋の固定資産税評価額は、家屋の再建築価格から家屋の建築後の年数の経過によって生ずる損耗の状況により補正された価額であることからみれば、原処分庁の上記の算出は、客観的な時価を算出したものであると認められる。
また、上記(1)のチの(ニ)のとおり、本件工場及び敷地並びに本件居宅及び敷地が、更地でも空家でもないことからすれば、原処分庁が、借地権及び借家権等による減額調整を行ったことは相当であり、さらに、本件各差押不動産の換価が原則として徴収法第94条の公売の規定によって行われることからみれば、上記(1)のチの(ホ)のとおり、公売の特殊性として、10%の減額調整を行ったことについても、相当であると認められる。
 以上のほか、原処分庁が算出した1本件工場及び敷地62,807,000円、2本件居宅及び敷地34,994,000円の計算過程においても不合理な点は認められず、原処分庁の本件各差押不動産の処分予定価額を不相当とする理由はない。
(ロ) 次に、上記(1)のリ及びヌのとおり、本件各差押不動産に設定された抵当権等は、いずれも本件各滞納国税の各法定納期限等以前に設定されたものであることから、徴収法第16条《法定納期限等以前に設定された抵当権の優先》の規定に基づき、本件各滞納国税は、本件各差押不動産の換価代金につき、別表3の「優先債権額」欄の「合計」欄の93,294,062円に次いで徴収することとなる。
(ハ) そうすると、上記(1)のヌのとおり、本件工場及び敷地には、債権額を25,000,000円とする抵当権の設定が共同担保として登記され、本件各差押不動産には、債権額を40,000,000円とする抵当権及び極度額45,000,000円とする根抵当権の設定が共同担保として登記されていることから、処分予定価額の1本件工場及び敷地62,807,000円と2本件居宅及び敷地34,994,000円の合計額から本件各滞納国税に優先する債権額を控除した額と徴収すべき国税の額とを比較して、本件差押処分が超過差押に該当するか否かを判断するのが相当であるところ、本件各差押不動産の処分予定価額の合計額97,801,000円から国税に優先する被担保債権額93,294,062円を控除すると4,506,938円となり、この金額は本件差押処分時の徴収すべき滞納国税の額○○○○円に満たないことが認められるから、本件差押処分は、超過差押に該当しない。
(ニ) なお、徴収法第48条第2項によれば、差し押さえることができる財産の価額がその差押えに係る滞納処分費及び徴収すべき国税に先だつ他の国税、地方税その他の債権の金額の合計額を超える見込みがないときは、その財産は、差し押さえることができないことから、原処分庁は、本件各差押不動産のうちの一部ではなく、上記(1)のヌのとおり、抵当権・根抵当権の設定が共同担保として登記された本件各差押不動産のすべてを差し押さえたことが認められる。
(ホ) したがって、本件差押処分時の滞納税額及び本件各差押不動産の評価額からみて、本件差押処分が過大な差押えである旨の請求人の主張には理由がない。
ニ 以上のとおり、請求人の主張にはいずれも理由がなく、本件差押処分について、裁量権の逸脱、濫用の事実は認められないから、本件差押処分は、裁量権を濫用した不当な処分ではない。

(4) 原処分のその他の部分については、当審判所の調査によっても、これを不相当とする理由は認められない。

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