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(平20.3.11、裁決事例集No.75 297頁)

《裁決書(抄)》

1 事実

(1) 事案の概要

 本件は、審査請求人(以下「請求人」という。)が、受取配当等の益金不算入額を計算するに当たり、請求人が受領した配当等の額から、当該配当等を実際に受領した関係法人株式等のみに係る負債の利子の額を控除したことについて、原処分庁が、配当等の有無にかかわらず請求人が保有するすべての関係法人株式等に係る負債の利子の額を控除して法人税の各更正処分等を行ったのに対し、請求人が、法人税法第23条《受取配当等の益金不算入》第1項及び同条第4項第2号の誤った解釈に基づく課税処分であるとして、これらの処分等の全部の取消しを求めた事案である。

(2) 審査請求に至る経緯

イ 請求人は、平成16年1月1日から同年12月31日まで及び平成17年1月1日から同年12月31日までの各事業年度(以下、順次「平成16年12月期」及び「平成17年12月期」といい、これらを併せて「本件各事業年度」という。)の法人税について、青色の確定申告書に次表の「確定申告」欄のとおり記載して、いずれも提出期限(法人税法第75条の2《確定申告書の提出期限の延長の特例》第1項の規定により1月間延長されたもの。)までにC税務署長へ提出した。

(単位:円)
事業年度 区分 所得金額 納付すべき税額 過少申告加算税の額
平成16年12月期 確定申告 ○○○○ ○○○○ -
更正処分等 ○○○○ ○○○○ ○○○○
平成17年12月期 確定申告 ○○○○ ○○○○ -
更正処分等 ○○○○ ○○○○ ○○○○

ロ C税務署長は、これに対し、原処分庁所属の調査担当職員の調査に基づき、本件各事業年度の法人税について、平成19年6月27日付で、上記イの表の「更正処分等」欄に記載したとおりの各更正処分(以下「本件各更正処分」という。)及び過少申告加算税の各賦課決定処分(以下「本件各賦課決定処分」といい、本件各更正処分と併せて「本件各更正処分等」という。)をした。
ハ 請求人は、本件各更正処分等を不服として、平成19年7月3日に審査請求をした。

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(3) 関係法令等の要旨

イ 法人税法(平成18年法律第10号による改正前のもの。以下同じ)第23条第1項は、内国法人が受ける利益の配当又は剰余金の分配の額(外国法人若しくは公益法人等又は人格のない社団等から受けるものは除く。以下「配当等の額」という。)のうち、関係法人株式等に係る配当等の額は、その内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上、益金の額に算入しない旨規定している。
ロ 法人税法第23条第4項は、同条第1項の場合において、同項の内国法人が当該事業年度において支払う負債の利子があるときは、同項の規定により当該事業年度の所得の金額の計算上益金の額に算入しない関係法人株式等に係る配当等の額は、その保有する関係法人株式等につき当該事業年度において受ける配当等の額の合計額から当該負債の利子の額のうち当該関係法人株式等に係る部分の金額として政令で定めるところにより計算した金額(以下「負債の利子の控除額」という。)を控除した金額とする旨規定している。
ハ 法人税法第23条第5項は、関係法人株式等とは、内国法人が他の内国法人(公益法人等及び人格のない社団等を除く。)の発行済株式の総数又は出資金額(当該他の内国法人が有する自己の株式又は出資を除く。)の100分の25以上に相当する数又は金額の株式又は出資を有する場合として政令で定める場合における当該他の内国法人の株式又は出資(連結法人株式等を除く。)をいう旨規定している。
ニ 法人税法施行令(平成18年政令第125号改正前のもの。以下「施行令」という。)第22条《株式等に係る負債の利子の額》第2項は、法人税法第23条第4項第2号に規定する政令で定めるところにより計算した金額は、同項の内国法人が同項の事業年度において支払う負債の利子の額の合計額に、次の(イ)に掲げる金額のうちに次の(ロ)に掲げる金額の占める割合を乗じて計算した金額とする旨規定している(以下、この規定を「負債の利子の控除額の計算」という。)。
(イ) 法人税法第23条第4項の内国法人の当該事業年度及び当該事業年度の前事業年度の確定した決算に基づく貸借対照表に計上されている総資産の帳簿価額の合計額
(ロ) 上記(イ)の内国法人の当該事業年度及び当該事業年度の前事業年度終了の時における法人税法第23条第4項に規定する関係法人株式等の帳簿価額の合計額(以下「関係法人株式等の帳簿価額の合計額」という。)
ホ 施行令第22条の2《関係法人株式等の範囲》第4項は、施行令第22条第2項の規定を適用する場合における法人税法第23条第5項に規定する政令で定める場合は、施行令第22条の2第1項の規定にかかわらず、同項第1号中「当該内国法人が他の内国法人から受ける法人税法第23条第1項に規定する配当等の額の支払義務が確定する日」とあるのは「当該事業年度終了の日」として適用する施行令第22条の2第1項第1号に掲げる場合とする旨規定している。
ヘ 法人税基本通達(以下「基本通達」という。)3-2-8《あん分計算の基礎となる株式等の範囲》は、施行令第22条第2項第2号に規定する「関係法人株式等」には、配当等の有無にかかわらずすべてのものが含まれることに留意する旨定めている。

(4) 基礎事実

 以下の事実は、請求人と原処分庁との間に争いがなく、当審判所の調査の結果によってもその事実が認められる。
イ 請求人の本件各事業年度に係る関係法人株式等の保有状況は次のとおりである。
(イ) D社の株式を平成9年12月から平成17年12月までの間保有しており、保有割合は60%である。
(ロ) E社の株式を平成14年7月から平成16年5月までの間保有しており、保有割合は49%である。
(ハ) F社の株式を平成9年12月から平成17年12月までの間保有しており、保有割合は34%である。
ロ 請求人の本件各事業年度における関係法人株式等からの受取配当金は、D社からのものだけであり、配当金収入の額48,000,000円が、それぞれの事業年度の損益計算書に計上されている。
ハ 請求人は、本件各事業年度の負債の利子の控除額の計算に係る関係法人株式等の帳簿価額の合計額について、別表1のとおり計算している。
ニ 原処分庁は、本件各事業年度の負債の利子の控除額の計算に係る関係法人株式等の帳簿価額の合計額について、別表2のとおり計算している。

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2 主張

(1) 請求人

 本件各更正処分は、次の理由により違法であるから、その全部の取消しを求める。
イ 法人税法第23条の解釈について
(イ) 法人税法第23条第1項は「関係法人株式等に係る配当等の額は益金の額に算入しない」とする基本を規定した上で、同条第4項では「負債の利子の支払がある場合はその額を益金不算入額から控除する」と規定し、具体的には同項第2号で益金不算入額を「その保有する関係法人株式等につき受ける配当等の額の合計額から当該負債の利子の額のうち当該関係法人株式等に係る部分の金額として政令で定めるところにより計算した金額を控除した金額」とする旨規定している。
 そして、その計算方法については、施行令第22条第2項第2号において、「総資産の帳簿価額の合計額」を分母とし、「法人税法第23条第4項に規定する関係法人株式等の帳簿価額の合計額」を分子とするとして、あん分計算の仕方を規定しているだけである。
(ロ) そうすると、本件各更正処分が妥当かどうかは、法人税法第23条第4項の解釈次第となり、同項第2号にいう当該関係法人株式等の「当該」が、配当等を支払った関係法人株式等のみを限定的に指すのか、配当等の有無にかかわらずすべての関係法人株式等を含むのかということになるが、条文技術論からみた場合、同条第1項は、関係法人株式等に係る配当等がある場合のことのみを規定しており、配当等がない場合のことについては一切触れていない。
(ハ) 一方、法人税法第23条第4項は、「同条第1項の場合において、支払う負債の利子がある場合は・・・」と述べた上で、益金不算入額からの控除を規定しているが、同条第1項の場合とは配当等がある関係法人株式等のことであるから、同条第4項第2号は同条第1項に関しての規定と解すべきところ、同条第4項第2号で「その保有する関係法人株式等」というとき、同条第1項の場合に関連して保有する関係法人株式等、すなわち「配当等を支払った関係法人株式等のみを限定的に指す」と解するのが文脈上自然である。
 したがって、施行令第22条第2項第2号に従って負債の利子の控除額を計算すると、分子となる「法第23条第4項に規定する関係法人株式等の帳簿価額の合計額」は、法文上「配当等のある関係法人株式等の帳簿価額の合計額」に限定しているものである。
(ニ) しかしながら、原処分庁は、法人税法第23条第4項第2号に規定する「当該関係法人株式等」とは、同号の「その保有する関係法人株式等」を引用していることが法文上明らかであるとした上で、「配当等の有無にかかわらず保有するすべての関係法人株式等の帳簿価額について、本件各事業年度の前期末現在額及び当期末現在額にそれぞれ含めることになる」と「配当等の有無にかかわらずすべての」の言葉を追加して結論付けるが、引用されている「その保有する関係株式等」には「配当等の有無にかかわらずすべての」の言葉は含まれておらず、含まれているとする解釈が「法文上明らか」ではないから、原処分庁の条文解釈は誤りである。
 原処分庁は「法文上明らか」と述べて説明回避するのではなく、どう法文上明らかなのか、自らの主張の根拠について説明責任を果たすべきである。
ロ 基本通達3-2-8について
 本件各更正処分は、基本通達3-2-8に記載のある「施行令第22条第2項第2号に規定する関係法人株式等には、配当等の有無にかかわらずすべてのものが含まれることに留意する。」を根拠としていると思われる。
 しかしながら、原処分庁の当該通達についての解釈は、法人税法第23条第4項第2号について基本的には立法趣旨や文脈を全く無視した上で行われたものである。
 言い換えれば、本件各更正処分は、法人税法第23条第4項第2号に規定する「その保有する関係法人株式等」とは、「配当等の有無にかかわらずその保有するすべての関係法人株式等」とも「その保有する配当支払のあった関係法人株式等」とも規定していないにもかかわらず、勝手に「配当等の有無にかかわらずすべての」を追加して行われたものであり、それは「配当等のない株式の負債の利子の額」と、「配当等のない株式等以外の株式等の配当」は本来費用と収益の対応関係にないにもかかわらず、「配当等のない株式等以外の株式等の配当」の源泉ではない、「配当等のない株式の負債の利子の額」を「配当等のない株式等以外の株式等の配当」に対応させ、受取配当等の額から控除する負債の利子の額に算入することは、企業会計原則のうちの費用収益対応の原則を平然と無視し、元々法自体が矛盾点として抱える二重課税の問題点を殊更拡大させるものである。
 さらに、当該通達は、法律ではなく、飽くまでも税務当局の見解であるから、原処分庁の主張の根拠にすることはできない。
ハ 質疑事例「受取配当等の益金不算入における特定株式等の範囲について」(以下「本件質疑事例」という。)について
 本件質疑事例は、「当該関係法人株式等」とは「配当等の有無にかかわらず保有するすべての関係株式等」を意味する根拠として、昭和63年12月の税制改正の趣旨を何ら説明することなく持ち出しているが、当該改正の趣旨は、「保有株式を区分した上で、投資対象株式については配当等の益金不算入割合を親子会社株式の場合より引き下げる。」という趣旨のものであるから、本件質疑事例は当該改正の趣旨を誤用していると判断せざるを得ず、この誤用解釈を基にした基本通達3-2-8による本件各更正処分は違法である。

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(2) 原処分庁

 本件各更正処分は、次の理由により適法であるから、審査請求を棄却するとの裁決を求める。
イ 受取配当等の益金不算入制度の趣旨について
 受取配当等の額のうち益金不算入となる金額は、単純にその50%相当額又は全額(関係法人株式等の場合)ではなく、仮に、その事業年度に負債の利子の支払がある場合には、その負債の利子の額のうち株式等に係る金額を控除した金額の50%相当額又は控除後の金額(関係法人株式等の場合)である。これは、負債によって元本たる株式等を取得している場合に、その株式から生じる配当等の額については益金不算入とし、負債の利子の額については損金算入を認めるとすると、非課税部門の収益に対応する費用が、課税部門の収益から控除されることとなり適当ではないという考え方に立っている。
 なお、平成14年度税制改正により、連結法人株式等の配当等の額については負債の利子の額を控除しないで全額益金不算入とされ、関係法人株式等の配当等の額については負債の利子の額を控除後の金額の全部が、一般株式等の配当等の額については負債の利子の額を控除後の金額の50%の額がそれぞれ益金不算入とされている。
ロ 負債の利子控除の沿革について
 負債の利子の控除額の計算方法は、資産の帳簿価額によるあん分計算方法を採用している。
 昭和40年度の改正前においては、負債の利子の控除額の計算方法としてひも付計算とあん分計算とが認められていた。すなわち、ひも付計算による方法は、配当等の元本たる株式等を取得するために要した負債であることが明らかな場合に、その配当等の額からその負債の利子の額を個別に控除して益金不算入額を計算する方法である。したがって、ひも付計算における特徴は、無配当に係る負債の利子の額のうち配当等の額から控除できなかった金額があるときは、その配当等が生じた際にそれから控除しなければならない一方、もし負債等がその配当等の元本を取得するためのものでないときは、いくら負債の利子の額があったとしても、配当等の全額を益金不算入とすることができるというものであった。一方、あん分計算の方法は、各事業年度ごとに支払った負債の利子の額を総資産に対する株式等の帳簿価額の比によりあん分して、その配当等の額に対応する金額だけは配当等の額から控除して益金不算入額を計算するものである。
 しかし、ひも付計算による場合には、株式取得後の負債の利子の額を配当等の額に対応させてその控除関係(控除の有無、控除金額、控除不足額等)を明らかにしておく必要があるとともに、負債の利子の計算期間と配当等の計算期間が異なることもあって、それらの計算が非常に複雑であったので、税制の簡素化の目的から、昭和40年度の改正において、ひも付計算は廃止され、すべてあん分計算によることとされた(DHC会社税務釈義 1561ページ)。
ハ そうすると、関係法人株式等を保有する場合の受取配当等の益金不算入額の計算は、「1当該事業年度において受ける受取配当等の額」から、「当該事業年度において支払う負債の利子の額の合計額」に、「2当該事業年度及び当該事業年度の前事業年度の確定した決算に基づく貸借対照表に計上されている総資産の帳簿価額のうちに3当該事業年度及び当該事業年度の前事業年度終了の時に保有する関係法人株式等の帳簿価額の合計額の占める割合を乗じたもの」を控除して計算することとなる。
ニ 上記ハの3の当該事業年度及び当該事業年度の前事業年度終了の時に保有する関係法人株式等の帳簿価額の合計額について、請求人は、別表1のとおり計算しており、本件各事業年度において、上記1の(4)のロのとおり配当等がない関係法人株式等の帳簿価額を、前期末現在額又は当期末現在額にそれぞれ含めていないことが認められる。
 しかし、関係法人株式等の保有状況は上記1の(4)のイのとおりであり、平成16年12月期においては、当該事業年度終了の時に保有する関係法人株式等は、D社及びF社の株式と認められ、当該事業年度の前事業年度終了の時に保有する関係法人株式等は、D社、F社及びE社の株式と認められる。また、平成17年12月期において、当該事業年度及び当該事業年度の前事業年度終了の時に保有する関係法人株式等は、D社及びF社の株式と認められる。
 したがって、本件各事業年度において関係法人株式等の帳簿価額の合計額は、別表2のとおりとなる。
ホ 本件各更正処分について
(イ) 請求人は、法人税法第23条第4項第2号に規定する「当該関係法人株式等」とは、法文上、配当等の支払のある株式等がこれに該当する旨主張するが、上記イ及びロに記載した受取配当等の益金不算入制度の改正経緯等からも分かるとおり、請求人の主張は、税制の簡素化の観点から廃止となった「ひも付計算」によるべきであるというがごときものであり、また、負債の利子の控除については、請求人が主張するような配当等の支払のある株式等の帳簿価額だけを個別に抽出して総資産の帳簿価額との割合により負債の利子を控除するというものでないことは明らかである。
 そして、法人税法第23条第4項第2号の「当該関係法人株式等」とは、同号の「その保有する関係法人株式等」を引用していることが法文上明らかであり、配当等の有無にかかわらず保有するすべての関係法人株式等の帳簿価額について、本件各事業年度の前期末現在額及び当期末現在額にそれぞれ含めることとなる。
(ロ) また、請求人は、本件各更正処分は、基本通達3-2-8にある「施行令第22条第2項第2号に規定する関係法人株式等には、配当等の有無にかかわらずすべてのものが含まれることに留意する。」を根拠としているものと思われる旨主張するが、上記イ及びロに記載した受取配当等の益金不算入制度の改正趣旨等を踏まえ、昭和44年に制定された旧基本通達(現基本通達3-2-8)においても施行令第22条第2項第2号に規定する「関係法人株式等」には、「配当等の有無にかかわらずすべてのものが含まれることに留意する」とされているのであるから、法文上も明らかであり、請求人の主張は、独自の解釈によるものであることは明白である。
 そして、基本通達3-2-8には、このことを確認する内容が明示されているが、これをもって本件各更正処分の理由としたわけではない。

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3 判断

(1) 認定事実

 請求人提出資料、原処分関係資料及び当審判所の調査の結果によれば、次の事実が認められる。
イ 原処分庁所属の調査担当職員が請求人に手交した本件質疑事例には、要旨、次のとおりの記載がある。
(イ) 照会要旨
 受取配当等の益金不算入額の計算は、昭和63年12月の改正により、特定株式等と特定株式等以外の株式等の二つのグループに分けて行い、その合計額が益金不算入となることになった。
 特定株式とは、その法人が配当等を行う他の内国法人の発行済株式の総数又は出資金額の25%以上に相当する数又は金額を、その配当等の支払義務が確定する日以前6月以上引き続き所有している場合の株式又は出資をいうとされている(法234、令22の2)。この場合、株式保有割合が25%以上あるが、無配である株式等についても特定株式等に含まれるか。
(ロ) 回答要旨
 無配の株式等であっても、株式保有割合が25%以上で、かつ、無配の決議のあった日以前6月以上引き続いて保有している場合には、特定株式等に含めるのが相当である。
(ハ) (理由)
 受取配当等の益金不算入制度は、法人間配当の二重課税排除のための調整として、法人段階では、受取配当について課税しないこととしている。
 しかし、投資対象として保有する株式に係る配当まで全額益金不算入とするのは相当でなく、親子会社間の配当のようにいわば同一企業間の内部取引とみられるものについてのみ全額益金不算入とすることに改正された。
 特定株式等とは、法文上、配当支払のある株式等がこれに該当するともいえるが、保有株式を親子会社(保有割合25%以上)と、投資対象との二つに分けて益金不算入を計算するという、今回の改正の趣旨から、株式保有割合が25%以上であれば親子会社に該当し、無配であっても、無配の決議のあった日以前6月以上引き続いて保有している場合には、特定株式等に含めて益金不算入額を計算するのが相当である。
ロ 財団法人大蔵財務協会発行の「昭和40年改正税法のすべて」には、要旨次のとおりの記載がある。
(イ) 改正前においては、負債の利子の控除額の計算の規定及びその計算が極めて複雑で、更正等があった場合にその計算を最初からやり直さなければならないようなものであるため、その簡素化についてかねてから執行面あるいは実務面から要望が強かったことから、負債の利子の控除額の計算方法が次のように大幅に簡素化された。
 従来負債の利子とは、配当等の元本を取得するために要した負債の利子という考え方となっているため、取得時におけるその取得のために要した負債の行先を常時追いかけて、その利子を計算するといういわゆるひも付計算方式が原則とされ、これができない場合には、いわゆる資産あん分方式によることができるものとされていた。
 しかし、借り入れた金銭には色分けがされていないため、取扱通達においてひも付計算方式はその株式の取得後、法人が借入れ等で得た資金の使途をすべて明らかにした場合等に限って認められることとされており、実際問題としては、本来原則とされているひも付計算方式により負債の利子の控除額を計算することは特別の場合以外は不可能に近く、この方法によっている法人もほとんどない現状になっていた。
 このような現状が考慮され、また、負債の利子という考え方としては、むしろその株式等をその事業年度間保有するために要した利子、すなわちその事業年度を通して支払った利子の額をその株式あるいは配当に配賦するという考え方の方がより一般的ではないかという見地から、今回の改正においては、従来のひも付計算方式が廃止され、資産あん分方式のみが認められることとなり、制度の簡素化が図られた。
(ロ) また、資産あん分方式は、その事業年度において、支払った負債の利子の額に総資産の帳簿価額のうちに占めるその株式の帳簿価額を乗じて計算することとされているが、今回の改正においては簡素化の見地から、この総資産の帳簿価額は法人の確定した決算に基づく貸借対照表に計上されている総資産の帳簿価額とされたものである。

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(2) 負債の利子の額の控除について

イ 受取配当等の益金不算入の制度の趣旨
 受取配当等の益金不算入の制度は、昭和25年度の税制改正で創設されたものであるが、法人が他の法人の株主となって、その利益の配当等を受ける場合に、これを投資に対する利益として課税することになると、同一の利益が配当等を支払う法人においてまず課税され、続いて受け取った法人について課税されることになる。そこで、法人株主の受取配当等について配当等を支払う法人段階とそれを受け取る株主段階とを通じる税負担の調整(二重課税の調整)を行うという趣旨で創設されたものであると解される。
 また、受取配当等の額から負債の利子の額を控除する趣旨は、上記のとおり、実質的な二重課税を排除することを前提とする税制の上に立って、受取配当等を益金とせず、課税外に置く以上、それを得るために要した負債の利子も損金とせず課税外に置こうとするものであると解される。
 負債の利子の控除額の計算方法については、上記(1)のロのとおり、昭和40年度の税制改正により資産あん分方式が適用され現在に至ったものである。同改正によれば、負債の利子の控除額は、改正前は、配当等の元本を取得するために要した負債の利子という考え方に基づいていたが、株式等をその事業年度間保有するために要した利子、すなわち、その事業年度間に支払った利子をその株式等あるいは配当等に配賦するという考え方の方がより一般的ではないかという見地から制度の簡素化が図られ、改正後は、資産あん分方式のみが認められるようになったものである。
ロ 法令の解釈
(イ) 法令の規定をみると、法人税法第23条第1項が、「内国法人から収受した配当等の額は益金の額に算入しない」と規定したのを受けて、同条第4項が「同条第1項の場合において、同項の内国法人が当該事業年度に支払う負債の利子があるときは、同項の規定により当該事業年度の所得の金額の計算上益金の額に算入しない金額は、次に掲げる金額の合計額とする」と定め、また、同条第4項第2号が、「その保有する関係法人株式等につき当該事業年度において受ける配当等の額の合計額から当該負債の利子の額のうち当該関係法人株式等に係る部分の金額として政令で定めるところにより計算した金額を控除した金額」と規定し、さらに、施行令第22条第2項において、政令で定めるところにより計算した金額は、当該事業年度において支払う法人税法第23条第4項第2号に規定する負債の利子の合計額に、次のAの金額のうちにBの金額の占める割合を乗じて計算した金額と規定している。
A 法人税法第23条第4項の内国法人の当該事業年度及び当該事業年度の前事業年度の確定した決算に基づく貸借対照表に計上されている総資産の帳簿価額の合計額
B 上記Aの内国法人の当該事業年度及び当該事業年度の前事業年度終了の時における法人税法第23条第4項に規定する関係法人株式等の帳簿価額の合計額
(ロ) これらの規定振りからすると、法人税法第23条第1項は、受取配当等の益金不算入制度の原則として、まず益金不算入の対象となる受取配当等の範囲と金額を明示しているものである。そして、同条第4項の「同条第1項の場合において」とは、同条第1項の「益金の額に算入しない場合」であるのは明らかであることから、同条第1項が、受取配当等がある場合について定めているのは当然であるが、受取配当等の範囲と金額のことを規定しているのみであって、負債の利子の控除額の計算については、同条第4項第2号及びこれを受ける施行令第22条第2項に、その保有する株式の種類に応じた負債の利子の控除額の規定と計算方法を委ねているものである。したがって、法人税法第23条第1項が負債の利子の控除額の計算における関係法人株式等の帳簿価額の関係法人株式等の範囲まで規定していると解するのは相当でない。
 また、法人税法第23条第4項第2号の「当該関係株式等」とは、同号の「その保有する関係法人株式等」を引用していることは明らかであり、配当等の有無にかかわらず、保有するすべての関係法人株式等を意味していると解される。このことは、上記(1)のロの負債の利子の控除額の計算において資産あん分方式のみを認めることになった経緯及び、上記イの負債の利子の控除の趣旨、すなわち受取配当等を益金とせず、課税外に置く以上、それを得るために要した負債の利子も損金とせず課税外に置こうとするものである趣旨に照らしても対応する関係法人株式等が無配だからといって損金とすべき理由は何ら認められない。
 そうすると、負債の利子の控除額の計算として資産あん分方式を定めた施行令第22条第2項第2号における関係法人株式等と、法人税法第23条第4項第2号に規定する関係法人株式等は、現実に配当等があるかどうかにかかわらず、期末において保有するすべての関係法人株式等をいうものと解するのが相当である。
 なお、基本通達3-2-8は、施行令第22条における資産あん分方式の計算となる株式等の範囲について上記イの負債の利子及び負債の利子の控除の考え方に基づいたものであり、その内容は相当と認められる。また、本件質疑事例は、受取配当等の益金不算入額の計算が昭和63年12月の税制改正に基づく、特定株式等に係る負債の利子の控除額についての照会に対する回答及びその理由を記載しているものであり、その内容は法令通達に照らして相当である。
ハ 請求人の主張について
(イ) 請求人は、法人税法第23条第1項は、関係法人株式等に係る受取配当がある場合のことのみを規定しているものであり、同条第4項第2号に「配当等の有無にかかわらずすべての」の文言の記載もないから、当然に配当等がある関係法人株式等だけについての規定として条文上解釈するのが自然であり、施行令第22条第2項第2号における負債の利子の控除額の計算も条文解釈上、分子は「配当等のある関係法人株式等」に限定されることになり、原処分庁の解釈は誤りである旨主張する。
 しかしながら、負債の利子の控除額の計算についての具体的な取扱いは、上記ロに記載のとおり、法人税法第23条第1項及び同条第4項の規定を受けて施行令第22条第2項において規定しているのであるから、法人税法第23条第1項が配当等がある場合のことのみを規定しているとか、同条第4項が同項の文言から、関係法人株式等で受取配当等がある株式の場合のことのみに関する規定であるとする旨の請求人の主張は、独自に法令を解釈したものであり、採用することはできない。
(ロ) さらに、請求人は、基本通達3-2-8を理由とする本件各更正処分は、1費用収益対応の原則及び二重課税排除を目的とした立法趣旨をも無視したものであること、2昭和63年12月の税制改正の趣旨を誤用した、本件質疑事例に基づくものであることから違法である旨主張する。
 しかしながら、費用収益対応を根拠とする請求人の主張は、関係法人株式等に係る配当等とそれに係る負債の利子とを対応させるべきというものであり、具体的には、昭和40年度の税制改正前のいわゆるひも付き計算方式に類似した方式を前提とせざるを得ないものと考えられるが、上記イ及びロに述べたとおり、当該税制改正において負債の利子の控除額の計算方法について、それまで認められていたひも付き計算方式が廃止され、当該関係法人株式等に係る配当等との対応関係にはこだわらず、その負債の利子の総額を関係法人株式等の総額の総資産の額に占める割合で配賦する現行の資産あん分方式に統一されたものであり、実質的に現行制度においても既に廃止されたひも付き計算方式に類似した方式を用いるべきとする請求人の主張は、失当であるといわざるを得ない。
 また、基本通達3-2-8については、上記ロの(ロ)のとおり、負債の利子及び負債の利子の控除の考え方に基づいたものであること、さらに、当該税制改正の内容は、請求人の主張どおりと認められるものの、本件質疑事例については、当該税制改正の趣旨を誤用しているとは認められないことから、請求人の主張は採用できない。

(3) 本件各更正処分について

 以上のことから受取配当等の益金不算入額の計算に係る負債の利子の控除額の計算の分子に算入される関係法人株式等の帳簿価額の合計額は、各期末に保有される関係法人株式等に該当するすべての株式の帳簿価額の合計額となるため、本件各事業年度における関係法人株式等の帳簿価額は別表2のとおりとなり、本件各更正処分と同額となることから、同処分はいずれも適法である。

(4) 本件各賦課決定処分について

 上記(3)のとおり、本件各更正処分はいずれも適法であり、これにより納付すべき税額の計算の基礎となった事実が本件各更正処分前の税額の計算の基礎とされていなかったことについて、国税通則法第65条《過少申告加算税》第4項に規定する正当な理由があるとは認められないから、同条第1項の規定に基づいてなされた本件各賦課決定処分はいずれも適法である。

(5) その他

 原処分のその他の部分については、請求人は争わず、当審判所に提出された証拠書類等によっても、これを不相当とする理由は認められない。

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