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(平20.4.1、裁決事例集No.75 693頁)

《裁決書(抄)》

1 事実

(1) 事案の概要

 本件は、消費税及び地方消費税(以下「消費税等」という。)の課税事業者である審査請求人(以下「請求人」という。)が、J国の法人との間で行ったK国向けに輸出される予定の○○用建設機械2台の販売取引について、消費税等が免除される本邦からの輸出として行われる資産の譲渡に該当するとして確定申告をしたところ、原処分庁が、当該販売取引は本邦からの輸出として行われる資産の譲渡に該当しないとして、消費税等の更正処分等を行ったのに対し、請求人が、同処分等の全部の取消しを求めた事案である。

(2) 審査請求に至る経緯

イ 請求人は、平成15年4月1日から平成16年3月31日までの課税期間及び同年4月1日から平成17年3月31日までの課税期間(以下、順次「平成16年3月課税期間」及び「平成17年3月課税期間」といい、これらを併せて「本件各課税期間」という。)の消費税等について、確定申告書に別表の「確定申告」欄のとおり記載して、いずれも法定申告期限までにL税務署長へ申告した。
ロ これに対し、L税務署長は、原処分庁所属の調査担当職員の調査に基づき、平成19年3月27日付で、別表の「更正処分等」欄のとおりの各更正処分(以下「本件各更正処分」という。)及び過少申告加算税の各賦課決定処分(以下「本件各賦課決定処分」という。)をした。
ハ 請求人は、これらの処分を不服として、平成19年4月27日に異議申立てをしたところ、異議審理庁は、同年7月2日付でいずれも棄却の異議決定をした。
ニ 請求人は、異議決定を経た後の原処分に不服があるとして、平成19年7月30日に審査請求をした。

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(3) 関係法令等

イ 消費税法第7条《輸出免税等》第1項第1号は、同法第9条《小規模事業者に係る納税義務の免除》第1項本文の規定により消費税を納める義務が免除される事業者以外の事業者(以下「課税事業者」という。)が国内において行う課税資産の譲渡等(以下「課税取引」という。)のうち、本邦からの輸出として行われる資産の譲渡(以下「輸出取引」という。)については消費税を免除する旨規定し(以下、この規定に基づき消費税を免除することを「輸出免税」という。)、同法第7条第2項は、同条第1項の規定は、輸出取引に該当するものであることにつき、財務省令で定めるところにより証明がされたものでない場合には、適用しない旨規定している。
ロ 消費税法施行規則(平成17年財務省令第36号による改正前のもの。以下同じ。)第5条《輸出取引等の証明》第1項は、消費税法第7条第2項に規定する財務省令で定めるところにより証明がされたものは、輸出取引を行った事業者が、当該輸出取引につき、当該資産の輸出に係る保税地域の所在地を所轄する税関長から交付を受ける輸出の許可(関税法第67条《輸出又は輸入の許可》に規定する輸出の許可をいう。)があったことを証する書類(以下「輸出許可書」という。)又は当該資産の輸出の事実を当該税関長が証明した書類(以下「輸出証明書」という。)を整理し、当該輸出取引を行った日の属する課税期間の末日の翌日から2月を経過した日から7年間、これを納税地又はその取引に係る事務所、事業所その他これらに準ずるものの所在地に保存することにより証明がされたものとする旨規定している。
ハ 消費税法基本通達7−2−23《輸出証明書等》は、消費税法第7条第2項に規定する「その課税資産の譲渡等が・・・・・・、財務省令で定めるところにより証明されたもの」は、輸出取引の場合において、その対象となる資産が関税法第67条の規定により輸出の許可を受ける貨物である場合は、その輸出許可書となるのであるから留意する旨定めている。
ニ 消費税法基本通達9−1−1《棚卸資産の譲渡の時期》は、棚卸資産の譲渡を行った日は、その引渡しのあった日とする旨定めている。
ホ 関税法第2条《定義》第1項第2号は、同法において、輸出とは、内国貨物を外国に向けて送り出すことをいう旨規定している。
ヘ 関税法第67条は、貨物を輸出しようとする者は、政令で定めるところにより、当該貨物の品名並びに数量及び価格その他必要な事項を税関長に申告し、貨物につき必要な検査を経て、その許可を受けなければならない旨規定している。

(4) 基礎事実

 以下の事実は、請求人と原処分庁との間に争いがなく、当審判所の調査の結果によってもその事実が認められる。
イ 輸出機械製品輸出業(○○用建設機械の輸出、販売等)を営む請求人は、本件各課税期間の消費税等について、K国に輸出される予定の○○用建設機械M機及びN機(以下、M機と併せて「本件各建設機械」という。)の各販売取引(以下「本件各取引」という。)は、消費税法第7条第1項第1号に規定する輸出取引に該当し、輸出免税であるとして、本件各課税期間の消費税等の確定申告をした。
ロ 原処分庁は、本件各取引は輸出取引に該当せず、輸出免税とならないとして、本件各課税期間の消費税等について、本件各更正処分及び本件各賦課決定処分をした。
ハ 請求人は、平成15年3月28日、L税務署長に対し、適用開始課税期間を平成16年3月課税期間とする消費税課税事業者選択届出書を提出した。

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2 主張

(1) 請求人

 本件各更正処分は、次の理由によりいずれも違法であるから、その全部の取消しを求める。
イ 本件各取引は、消費税法第7条第1項第1号に規定する輸出取引に該当する。
 すなわち、本件各取引は、請求人が本件各建設機械を製造し、これをJ国の法人R社に引き渡す取引であるところ、R社との間の当初の契約においては、請求人は、R社が指定した日本の港まで本件各建設機械を輸送し、輸出手続を行った上でこれを船積みすることとされており、この船積みをもって本件各建設機械のR社への引渡しと認識されていた。
 ところが、本件各建設機械については、輸出予定先の国を巡る事情等によりその引渡しに係る条件が変更され、国内においてR社に引渡しが行われたものである。
 本件各建設機械は、平成19年10月25日現在まで引き続き国内に存しているものの、輸出される予定であり、また、契約において請求人が行うこととされている指定された港までの本件各建設機械の輸送、その輸出手続及び船積みがまだ履行されていないことからすると、概念的には輸出途上にあると認識でき、輸出取引に該当すると考えられる。
ロ 消費税法第7条第2項には財務省令で定めるところにより証明がされたものでない場合には同条第1項の適用はない旨が定められ、同法施行規則第5条第1項には財務省令で定めるところにより証明がされたものとして輸出許可書等が掲げられているが、これは一例と考えるのが合理的な法解釈と考えられることから、本件各取引については、輸出取引を証明するものはないが、輸出免税とすべきである。
ハ 国家による国民の財産権の侵害を食い止める仕組みである租税法律主義において、本件の棄却の理由として、輸出取引の証明がなされたものしか輸出免税を認めないと強弁するのはいかがなものか。

(2) 原処分庁

 本件各更正処分は、次の理由によりいずれも適法であるから、審査請求をいずれも棄却するとの裁決を求める。
イ 請求人は、消費税法上の課税資産である本件各建設機械を国内に所在するS社等においてR社に引き渡していると認められるので、消費税法基本通達9−1−1により引渡しのあった日において課税資産の譲渡があったものとして取り扱うこととなる。また、本件各建設機械は、R社への引渡しの後も国内に保管されており、輸出の事実は認められない。したがって、本件各建設機械に係る対価の額を本件各課税期間の課税標準額に含めて消費税等の額を再計算した本件各更正処分は、いずれも適法である。
ロ 輸出書類について、消費税法では、同法施行規則第5条に定める書類等を保存することを要件としており、それを一例と考えるのが合理的とする請求人の主張は独自の解釈であり、理由がない。

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3 判断

 本件は、本件各取引が、輸出取引に該当するか否かに争いがあるので、判断する。

(1) 本件各更正処分について

イ 認定事実
 原処分関係資料及び当審判所の調査の結果によれば、次の事実が認められる。
(イ) 請求人は、R社との間において、平成13年8月30日、○○AGREEMENT(以下「本件ライセンス契約」という。)を締結しており、その内容は、要旨次のとおりである。
A 請求人は、R社から、○○補修に関する特許技術の独占的ライセンスを取得し、我が国をはじめ○○地域の○か国における当該特許技術を用いた○○用建設機械の独占的製造権等を20年間取得した(1.1、2.2.1、3.4.1、3.5)。
B 請求人は、ロイヤリティとして、一時金150万ドルを契約直後に、その後、請求人が○○用建設機械を販売等したときにはその販売等の価額の6%を、R社に支払う(2.3)。
C 本件ライセンス契約により、請求人が製造した○○用建設機械をR社が購入する場合の価額は、当初4年間は、保証料等込みで、1台につき120万ドルとする(3.3.1)。
D 上記Cの購入価額は、FOB価額とする(1.1)。
(ロ) 請求人は、R社との間において、平成14年4月9日に、○○AGREEMENT(以下「本件売買契約」という)を締結した。その内容は、要旨次のとおりである。
A 本件売買契約は、請求人とR社との間の○○用建設機械の部品販売及び完成品である本件各建設機械の販売、輸送手続等についての包括的な取決めである。
B R社は、○○用建設機械の部品を請求人に販売し、それを用いて請求人は、本件各建設機械を製造し、R社に販売する(D、3.1)。
C 上記Bの請求人からR社への本件各建設機械の販売価額は、1台につき120万ドル(FOBベース)とする(3.2)。
D 請求人は、R社からの指図に従い、輸出手続を行い、R社から指定された日本国の港まで本件各建設機械を運搬し、R社が手配した船(RoRo-ship:自動車専用船)にこれを積み込む(3.6)。
E R社は、請求人に販売する部品に係る代金を請求人から受領後、本件各建設機械の前払金として、1台につき50万ドルを請求人に支払うこととする(3.4)。
F R社は、FOBの規定に従って、本件各建設機械の引渡しを受ける(3.6)。
(ハ) 請求人は、R社の○○用建設機械に関する製造のライセンスを、T社へサブライセンスしており、本件各建設機械の製造をT社へ製造委託した。
(ニ) 本件各建設機械については、納入予定先の国であるK国を取り巻く国際的緊張関係が高まったことに伴い、U社製(○国製)のエンジンを搭載した製品のK国向け輸出ができないこととなったことから、製造完了後、期間が経過してもR社から船積日等の指示が来ないため、日本国内に存していた。
(ホ) その後、請求人は、日本国内に存している本件各建設機械の扱いをも含めR社との間の懸案事項について、平成16年3月12日から同月15日までの間、R社の○○事務所においてR社と交渉を行った。そこで確認された内容は、両社の署名のある平成16年3月15日付「○○」と題する文書(以下「本件議事録」という。)に取りまとめられた。本件議事録には、本件各建設機械の引渡しについて、要旨次のとおりの記載がある。
A 請求人は、R社に対して、M機の引渡しを平成16年3月31日までにR社が受けること及びS社から移動させることを要求し、R社は、検収のため、5氏をS社の工場(P市p○−○)へ派遣することを決めた(5.)。
B M機は、R社に引き渡された後、S社から出庫され、最終的な目的地が明らかになって船積みされるまでの間、W社の工場(Q市q○−○)の一時的な保管場所において保管される。R社は1月当たり31,500円又は300ドルの保管費用を負担する(5.)。
C 請求人は、S社からW社の工場まで及び同工場から○○港までの各輸送費用について負担するものとする。R社は、輸送費用1万ドルを負担する。W社での保管中、M機の所有権はR社にあるが、その管理は請求人が行う(5.)。
D N機は、平成16年4月20日までに、R社のV氏により検収が行われる見込みである(6.)。
E N機は、R社に引き渡された後、S社において、一定期間保管されるものとする(6.)。
F R社は、請求人に対し、本件各建設機械について、部品の原材料変更による追加代金(1台につき6万ドル)を、その残金とともに、支払うものとする(7.)。
(ヘ) M機については、平成16年3月29日付の「○○」と題する書面によれば、同日、T社の10氏、請求人のY取締役及びR社のV氏の立会いの下、引渡しに係る検収が行われたことが認められる。
(ト) 請求人は、平成16年3月29日付で、T社にあてて「保管依頼書」と題する書面(以下「保管依頼書1」という。)を発行しており、当該書面には、要旨次のとおり記載されている。
A 今般、貴社より購入した下記機械については、本日付をもって検収したが、下記の事由により、貴社にて一時的に保管されるよう依頼する。
B なお、R社からは、追加の改良をするよう要請を受けているので、出荷前に再度、検収手配をお願いすることになる。
C 保管物件

品名 号機 付属品
○○ M機 ――

D 保管期間 平成16年3月29日より同年6月30日まで
E 保管理由 船積日が確定しないため
F 保管場所 S社 P市p○−○
G その他 当社より依頼のない限り、本物件の出荷及び第三者への引渡しは一切行わないよう、お願いする。
(チ) 請求人は、平成16年3月30日付で、R社に対し、M機に係る売買代金126万ドルを請求する旨記載した「INVOICE」と題する書面を発行した。
(リ) 請求人の平成16年3月31日付の振替伝票及び総勘定元帳によれば、同日、R社に対するM機の対価の額140,424,400円(126万ドルの邦貨換算額)が売上げに計上されている。なお、当該売上げに係る消費税等の計上はない。
(ヌ) 請求人の平成16年3月課税期間の営業報告書には、同課税期間に、請求人がR社に対してM機を販売した旨が記載されている。
(ル) T社が請求人にあてた平成16年12月20日付の「M機・N機 保管場所移動ご連絡」と題する書面(以下「保管場所移動ご連絡」という。)には、要旨以下のとおりの記載がある。
A S社で製造した本件各建設機械を、保管場所が手狭なこと、船積み等の時期、冬場の雪害対策等を考え、W社Q市工場(Q市q○−○)に移動したので、ご連絡する。
B M機の移動日は、平成16年12月7日である。
C N機の移動日は、平成16年12月14日である。
(ヲ) 請求人は、N機について、本件議事録には平成16年4月20日までにR社への引渡しが行われる旨記載されているが、それまでに引渡しが行われなかったことから、R社との間で取引に関する再交渉を行い、本件各取引について、請求人とR社との間で2通のレター(○○及び○○。以下、2通のレターを併せて「本件各再交渉記録」という。)を平成17年3月28日付で取り交わした。本件各再交渉記録には要旨次のことが記載されている。
A 本件各建設機械は、最終購入者は未定であるが、製造は完了し、P市でR社によってM機の検収及び引渡し並びにN機の検収が行われた。その後、本件各建設機械はW社Q市工場内に保管されている(2.2)。
B 本件各建設機械の輸送費用は、請求人が負担するとともに、R社も一時金としてそれぞれ1万ドルを負担する(2.2)。
C R社は、請求人に本件各建設機械の保管料としてそれぞれ月31,500円支払う。本件各建設機械の保管領収書名は、本件各建設機械の所有者としてR社とする(2.2、2.3)。
D 本件各建設機械の取引価額については、それぞれ127万ドルとする。この内訳は、本件ライセンス契約における120万ドル並びに本件議事録における原材料変更に伴う費用6万ドル及び輸送費用1万ドルである。なお、最終仕向地がZ国の場合には、上記金額からそれぞれ20万ドルを減額する(3)。
E 請求人は、上記Dの金額を請求する場合には、INVOICEを発行するものとする(4.4)。
F 最終購入者が決まった場合には、請求人は、保管場所から船積地までの輸送に関してすべての責任を負うこととするが、本件各建設機械の所有権はR社にあるものとする(5.1)。
G FOBベースで○○港から目的地までの本件各建設機械の船積みは、請求人の協力を得て、R社が行う(5.4)。
(ワ) 請求人は、N機について、R社に早く引渡しを受けるよう再三再四要請したところ、平成17年3月にR社の代表者が来日して、同月中にR社に引き渡すことが決まった。
(カ) 請求人は、平成17年3月30日付で、R社に対し、N機に係る売買代金126万ドルを請求する旨記載した「INVOICE」と題する書面を発行した。
(ヨ) 請求人は、平成17年3月31日付で、T社にあてて「保管依頼書」と題する書面(以下「保管依頼書2」という。)を発行しており、当該書面には要旨次のとおり記載されている。
A 今般、貴社より購入した下記機械については、本日付をもって検収したが、下記の事由により、貴社にて一時的に保管されるよう依頼する。
B なお、この間R社からは追加改良ポイントの要請を受けており出荷前に再度検収手配をお願いすることになる。
C 保管物件

品名 号機 付属品
○○ N機 ――

D 保管期間 平成17年3月31日より同年5月31日まで
E 保管理由 船積日時が確定しないため、日時が確定するまで、保管をお願いする。
F 保管場所 S社 P市p○−○
G その他 当社より依頼のない限り、本物件の出荷及び第三者への引渡しは一切行わないようお願いする。
(タ) 請求人の平成17年3月31日付の振替伝票及び総勘定元帳によれば、同日、R社に対するN機の対価の額141,663,200円(126万ドルの邦貨換算額)が売上げに計上されている。なお、当該売上げに係る消費税等の計上はない。
(レ) 請求人の平成17年3月課税期間の営業報告書及び請求人のホームページには、平成17年3月31日付で、N機を販売した旨が記載されている。
(ソ) 請求人は、平成17年4月5日付の「CONFIRMATION REQUEST」と題する書面により、R社に対して、同年3月31日現在における請求人のR社に対するM機に係る売掛金残高が36万ドルであること及びN機に係る売掛金残高が76万ドルであることの確認を求めており、当該文書に対して、R社は、同年4月8日付で、同額を確認している。
(ツ) N機について、最終合意として、請求人とR社との間でレター(○○。以下「本件再々交渉記録」という。)を平成17年9月26日付で取り交わしているところ、本件再々交渉記録には要旨次のことが記載されている。
 なお、下記のAからCまで及びEからHまでについては、平成17年9月25日付のM機に係るレター(○○)にも同様の記載がある。
A 最終購入者は未定であるが、製造は完了し、R社によって、工場で検収も行われ、かつ、引渡しも行われた(2.2)。
B R社からの指示に基づく船積みまでの間、保管場所(Q市q○−○)に移されることとなる。請求人は、追って行われる本船積込みのため、この保管場所への搬入輸送、及びこの保管場所からの搬出輸送を行い、その費用を負担する。R社も、これらの費用につき、総額1万ドルを負担する(2.2)。
C R社は、請求人に保管料として月31,500円支払う(2.3)。
D 取引価額については、FOBベースで127万ドルとする。この内訳は、本件ライセンス契約に基づく120万ドル並びに部品材料変更による6万ドル及び輸送費用1万ドルである。なお、最終仕向地がZ国の場合には、上記金額から20万ドルを減額する(3)。
E R社は、前渡金として、50万ドルを請求人に支払った(4.1)。
F 上記取決めに従い、保管場所まで請求人が輸送することとする。最終購入者及び船積日が決まり、R社からその連絡を受けると、請求人は、保管場所から○○港までの輸送及び本船積込みを行い、そのすべての責任を負うが、所有権はR社にある(5.1)。
G 請求人は、現金での支払又はL/Cを受け取るまでは、輸送する義務は無い(5.2)。
H FOBベースで○○港から目的地までの輸出手続等は、請求人の協力を得て、R社が行う(5.5)。
(ネ) 請求人が原処分庁に提出した平成18年12月12日付「N機のR社向け売上げ計上に至る経緯説明」と題する書面(以下「本件経緯説明書」という。)には、要旨次のとおりの記載がある。
 掲題のN機については、平成17年3月31日付で、契約相手先のR社向けに売上げを計上している。
 最終仕向地未定のままの売上計上の措置は、本件各建設機械の請求人からの購入及び需要家への販売の両面での責任者であるR社に対し、正式発注に基づき製作されて以降かなりの期間を経過している事情を勘案の上、同社の社長に来日を求め両社協議の結果、合意を得て同社の管轄下に移行することにした。
 R社から平成14年4月に発注された3機については、当初より製作完成後速やかに同社に引き取られることを想定していた。しかるに本件各建設機械については、R社が納入を予定していた先の事情などにより出荷時期が予定より遅れる見通しとなったため、平成16年3月末に請求人と対策を協議の上本件各建設機械の措置につき基本線を取り決めた。
 当時製作が完了していたM機については、平成16年3月31日付で売上計上の措置とすること、また、引き続いて製作が完了するN機についても同様の措置とすることにしていたが、その実施時期については上記のとおり改めてR社の同意を取り付けた上で平成17年3月31日での売上計上の措置とした。
ロ 本件各建設機械の譲渡の時期等について
(イ) 譲渡日について
 消費税法基本通達9−1−1は、棚卸資産の譲渡を行った日について、その引渡しのあった日とする旨を定めているところ、商品等の販売による収益の計上については、企業会計原則においてはいわゆる販売基準によることとされているところから、消費税法においてもこれに合わせた取扱いをしたものであり、当審判所においても、この取扱いは相当であると認められる。
(ロ) M機の引渡しの時期及び場所について
 本件ライセンス契約(上記イの(イ))、本件売買契約(上記イの(ロ))、本件議事録(上記イの(ホ))、保管依頼書1(上記イの(ト))、本件経緯説明書(上記イの(ネ))などによれば、当初は、本件売買契約に基づき、請求人がFOBベースでR社に引き渡すこととされていたものの、R社が納入を予定していた先の事情などによりM機を本件売買契約のとおりにR社へ引き渡すことができないこととなったこともあり、請求人及びR社が引渡条件などについて協議を行った結果、引渡条件の変更があったことが認められる。そうすると、M機の請求人からR社への引渡しの時期及び場所については、1上記イの(ヘ)の書面に、T社、請求人及びR社の立会いの下検収の行われた日が、平成16年3月29日であった旨記載されていること、2上記イの(ヌ)のとおり、請求人の平成16年3月課税期間の営業報告書には、同課税期間に、請求人がR社に対してM機を販売した旨が記載されていること、3上記イの(チ)のとおり、請求人が、平成16年3月30日付で、R社に対し、M機に係る売買代金126万ドルを請求する旨記載した「INVOICE」と題する書面を発行していること、4上記イの(リ)のとおり、請求人は、平成16年3月31日付で、R社に対するM機の対価の額140,424,400円(126万ドルの邦貨換算額)を売上げに計上していること、5上記イの(ソ)のとおり、請求人が、平成17年4月5日付の「CONFIRMATION REQUEST」と題する文書により、R社に対して、同年3月31日現在における請求人のR社に対するM機に係る売掛金残高が36万ドルであることの確認を求めたところ、R社は、同年4月8日付で、同額を確認したことが認められることなど、かかる状況からして、平成16年3月中の国内であったことが容易に推認できる。
 また、請求人は、上記2の(1)の主張に記載されているとおり、M機については、R社への引渡し後、平成19年10月25日現在まで引き続き国内にあると自認しており、当審判所の調査によってもこれを覆すに足る証拠はないことから、同日まで国内にあったと認められる。
(ハ) N機の引渡しの時期及び場所について
 本件ライセンス契約(上記イの(イ))、本件売買契約(上記イの(ロ))、本件議事録(上記イの(ホ))、保管依頼書2(上記イの(ヨ))、本件経緯説明書(上記イの(ネ))などによれば、当初は、M機と同様に、本件売買契約に基づき、請求人がFOBベースでR社に引き渡すこととされていたものの、R社が納入を予定していた先の事情などによりN機を長期にわたってR社に引き渡すことができないこととなったこともあり、請求人及びR社が引渡条件などについて協議を行った結果、引渡条件の変更があったことが認められる。そうすると、N機の請求人からR社への引渡しの時期及び場所については、1上記イの(ヲ)のとおり、本件各再交渉記録によると、N機について製造は完了しR社によって検収も行われていること、2上記イの(ワ)のとおり、平成17年3月にR社の代表者が来日して、同月中にR社に引き渡すことが決まったこと、3上記イの(ツ)のとおり、本件再々交渉記録によると、N機について製造は完了しR社によって検収も行われ、引渡しも行われたこと、4上記イの(レ)のとおり、請求人の平成17年3月課税期間の営業報告書及びホームページには、同課税期間に、請求人がR社に対してN機を販売した旨が記載されていること、5上記イの(カ)のとおり、請求人は、平成17年3月30日付で、R社に対し、N機に係る売買代金126万ドルを請求する旨記載した「INVOICE」と題する書面を発行していること、6上記イの(タ)のとおり、請求人においては、平成17年3月31日付で、R社に対するN機の対価の額141,663,200円(126万ドルの邦貨換算額)を売上げに計上していること、7上記イの(ソ)のとおり、請求人が、平成17年4月5日付の「CONFIRMATION REQUEST」と題する文書により、R社に対して、同年3月31日現在における請求人のR社に対するN機に係る売掛金残高が76万ドルであることの確認を求めたところ、R社は、同年4月8日付で、同額を確認したことが認められることなど、かかる状況からして、平成17年3月中の国内であったことが容易に推認できる。
 また、請求人は、上記2の(1)の主張に記載されているとおり、N機については、R社への引渡し後、平成19年10月25日現在まで引き続き国内にあると自認しており、当審判所の調査によってもこれを覆すに足る証拠はないことから、同日まで国内にあったと認められる。
ハ 輸出免税について
(イ) 輸出免税の適用要件について
 輸出免税について、消費税法第7条及び同法施行規則第5条は、上記1の(3)のイ及びロのとおり規定しているところ、ある取引が輸出免税とされるためには、当該取引が課税事業者による課税取引であることを前提として、1当該取引が輸出取引に該当すること、及び2当該取引が輸出取引に該当することの証明書類を当該事業者が保存していることの二つの要件を具備することが必要である。
 これを本件についてみると、以下のとおりである。
(ロ) 課税事業者による課税取引該当性
A 請求人は、上記1の(4)のハのとおり、平成15年3月28日、原処分庁に対し、適用開始課税期間を平成16年3月課税期間とする消費税課税事業者選択届出書を提出していることから、本件各課税期間において課税事業者に該当する。
B 本件各取引は、本件各建設機械の譲渡であるから、課税資産の譲渡に該当する。
C 消費税法第4条《課税の対象》第3項第1号は、資産の譲渡が国内において行われたかどうかの判定は、当該譲渡が行われる時において当該資産が所在していた場所が国内にあるかどうかにより行うものとする旨規定しているところ、当該譲渡が行われる時とは、原則として、譲渡の目的物の引渡しを行った時をいうものと解される。
D これを本件各取引に当てはめると、上記ロのとおり、本件各建設機械は、国内において引渡しが行われた後、審判所が調査を行った時まで引き続き国内に保管されており、そうであるならば、本件各取引は国内において行われた資産の譲渡に該当する。
E 以上のとおり、本件各取引は、課税事業者により国内において行われた課税資産の譲渡であると解され、課税事業者による課税取引に該当する。
(ハ) 輸出免税の実体要件及び手続要件該当性
A 「輸出」については、一般には、貨物を本邦以外の外国に向けて送り出すこと、すなわち、外国に仕向けられた船舶又は航空機に積み込むことを指すとされている(吉国一郎ほか共編「法令用語辞典」)。関税法では、保税地域からの外国貨物の積戻しと区別するために、特に、内国貨物を外国に向けて送り出すことを「輸出」としているが、消費税法第7条第1項第1号にいう「輸出」は、同法中に特に定義規定が置かれていないことから、上記のような一般的な意義を有するものと解される。
B このように「輸出」とは、貨物を外国に仕向けられた船舶又は航空機へ積み込むという貨物の物理的な移転行為をとらえた概念であることから、消費税法第7条第1項第1号にいう「本邦からの輸出として行われる資産の譲渡」とは、資産の譲渡取引のうち、当該資産を外国に仕向けられた船舶又は航空機に積み込むことによって当該資産の引渡しが行われるものをいうと解するのが相当である。
C これを本件各取引に当てはめてみると、上記ロのとおり、本件各建設機械については、いずれも、その引渡しが国内で行われ、引渡し後も引き続き国内に保管されており、本件各建設機械が船に積み込まれたことを裏付ける証拠及び形跡がないことをもってすれば、本件各取引が消費税法第7条第1項第1号にいう「本邦からの輸出として行われる資産の譲渡」、換言すれば「資産の譲渡取引のうち、当該資産を外国に仕向けられた船舶又は航空機に積み込むことによって当該資産の引渡しが行われるもの」に該当しないことは明白であるというべきであり、また、上記2の(1)のロの請求人の主張のとおり、輸出免税の手続要件である輸出許可書又は輸出証明書を取得(入手)していないことからも、当然に輸出免税に該当しないと解するのが相当である。
ニ 請求人の主張について
(イ) 請求人は、本件各取引は、輸出予定先の国を巡る事情等によりその引渡しに係る条件が変更され、国内においてR社に引渡しが行われたものであるが、本件各建設機械は、輸出される予定であり、また、契約において請求人が行うこととされている指定された港までの本件各建設機械の輸送、その輸出手続及び船積みがまだ履行されていないことからすると、概念的には輸出途上にあると認識でき、輸出取引に該当する旨主張する。
 しかしながら、たとえ、本件各建設機械について、請求人とR社との契約内容のうち輸出手続等の行為が未了であったとしても、上記イの(ヲ)及び(ツ)の本件各再交渉記録及び本件再々交渉記録から、FOBベースで○○港から目的地までの船積みはR社が行うこととされていることから、請求人は輸出手続等の単なる補助をするにすぎず、R社との間で既に国内において引渡しが完了している事実からすると、本件各取引が輸出取引に該当するとは到底認められないため、請求人の主張は採用できない。
(ロ) また、請求人は、消費税法第7条第2項には財務省令で定めるところにより証明がされたものでない場合には同条第1項の適用はない旨が定められ、同法施行規則第5条第1項には財務省令で定めるところにより証明がされたものとして輸出許可書等が掲げられているが、これは一例と考えるのが合理的な法解釈と考えられることから、本件各取引については、輸出取引を証明するものはないが、輸出免税とすべきである旨主張する。
 しかしながら、上記1の(3)のイ及びロのとおり、消費税法第7条第2項及び同法施行規則第5条第1項第1号は、輸出取引については、輸出許可書又は輸出証明書を保存していない場合には、輸出免税としない旨規定しているところ、これらの規定は、輸出がなされたことの証明が公的になされたものに限り免税とすることを明らかにしたものと解されるため、請求人の主張は採用できない。
(ハ) さらに、上記2の(1)のハの請求人の主張は、租税法律主義が国家による国民の財産権の侵害を食い止める仕組みであることにかんがみれば、将来輸出されることが確実である本件各建設機械について、消費税法第7条の文言を形式的にとらえて判断することは、不当である旨の主張と解されるが、本件各取引が輸出免税の適用とされないことについては、上記ハのとおりであり、また、R社が実際に本件各建設機械を輸出するか否かは未確定である以上、請求人の主張には理由がない。
ホ 小括
 以上のとおり、本件各取引は、輸出取引に該当せず、輸出免税の適用もないため、本件各取引に係る対価の額を消費税の課税標準額に含めた本件各更正処分は、いずれも適法である。

(2) 本件各賦課決定処分について

 上記(1)のとおり、本件各更正処分はいずれも適法であり、また、本件各更正処分により納付すべき税額の計算の基礎となった事実が本件各更正処分前の税額の計算の基礎とされていなかったことについて、国税通則法(平成18年法律第10号による改正前のもの)第65条《過少申告加算税》第4項に規定する正当な理由があるとは認められないから、同条第1項及び第2項並びに地方税法附則第9条の9《譲渡割に係る延滞税等の計算の特例》第1項の規定に基づいてなされた本件各賦課決定処分は、いずれも適法である。

(3) 原処分のその他の部分については、請求人は争わず、当審判所に提出された証拠資料等によっても、これを不相当とする理由は認められない。

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