別紙

当事者の主張

争点1 所得税に係る重加算税の賦課決定処分の適否について
 争点1−1 重加算税の課税要件充足性について

原処分庁 請求人
 請求人は、下記(1)ないし(3)の事実からすれば、本件FX取引に係る所得の申告義務を認識しており、原処分庁による税務調査を待たずとも、請求人自ら本件FX取引に係る所得を雑所得として修正申告書を提出することは可能であり、これらのことは、当初から本件FX取引に係る真実の所得金額を隠ぺいする意図を外部からもうかがい得る特段の行動に該当する。  原処分には、次に述べる理由により、事実認定に誤りがあり、通則法第68条第1項及び第2項の規定の適用に関する、平成12年7月3日付の国税庁事務運営指針「申告所得税の重加算税の取扱いについて」に掲げるような、国税の課税標準等又は税額等の計算の基礎となるべき事実の隠ぺい又は仮装の事実は一切ない。
(1) 本件FX取引に係る所得の申告義務等については、本件各FX取引先のホームページ上又は書面にて周知されており、請求人は、同所得に係る申告義務等について、認識し得る状況にあった。
 請求人の、当該所得についての申告は分離課税の株式取引と同様、本件各FX取引先が行うものと思い込んでいたとする請求人の主張には信憑性が認められない。
(1) 本件各年分の所得税の申告において、本件FX取引に係る所得を申告しなかったのは、株式の売買等の申告については、分離課税の場合は取引業者が行うことを知っていたことから、当然に本件FX取引についても、本件各FX取引先がやるものだと思い込んでいたことによるものである。
 なお、申告についての認識がなかったことから、ホームページや書面の案内等は見ていない。
(2) 本件FX取引に係る雑所得の金額は、請求人の本件各年分の給与所得の金額と比べ、約14倍から16倍となり、請求人にとって多額の金額となることから、申告の必要性は、請求人において容易に認識できた。 (2) 変動するリスク、倒産リスク等を考え、取引に対する懸念と心労の状況にあったことから、申告が必要であるという思いには至らなかった。
(3) 平成18年分の給与所得者に係る年末調整に際し、請求人が住宅借入金等特別控除申告書の「年間所得の見積額」欄を空欄のまま勤務先に提出した行為は、当初から本件FX取引に係る所得を隠ぺいすることを意図し、その意図を外部からもうかがい得る特段の行動に該当すると認められる。 (3) 住宅借入金等特別控除、株式に係る譲渡所得及び先物取引に係る繰越損失については、それらに係る書類が手元に届いていたことから、深く考えることもなく、勤務先及び税務署に提出したものであり、また、住宅借入金等特別控除申告書の「年間所得の見積額」欄を空欄のまま提出したのは、(1)のとおり、FX取引に係る所得を申告するという認識がなかったためである。

 争点1−2 その他の重加算税賦課決定処分の違法事由について

請求人 原処分庁
1 本件FX取引について、調査担当者から電話で質問されてから本件各修正申告書を提出するまでの間は、本件調査に誠心誠意協力し、その求めに応じて、本件FX取引に関する書類及び必要経費に関する領収証等の資料を提出して所得金額を確定させ、修正申告に及んだもので、隠ぺい又は仮装の事実はない。 1 重加算税の成立の時期は法定申告期限の経過の時と規定されていることから、本件調査において、法定申告期限経過後本件各修正申告書を提出するまでの間に隠ぺい又は仮装があったか否かということを課税要件としておらず、上記期間における隠ぺい又は仮装の事実の有無が、本件各賦課決定処分に影響を与えるものではない。
2 平成19年6月8日に本件各修正申告書を提出し、納付相談のために特別国税徴収官に案内される際に、調査担当者から交付されたメモには、過少申告加算税の対象となる旨の記載があったが、その後、調査担当者から電話があり、仮装、隠ぺいはないが金額が大きいので重加算税の対象である旨言われ、本件各賦課決定処分を受けたもので、これは信義則に反する。
 金額が大きいとの理由のみでは重加算税の課税要件を充足していないことから、過少申告加算税に相当する額を超える部分の本件各賦課決定処分は取り消すべきである。
2 本件各修正申告書の所得金額及び税額の算定においては、調査担当者による誤った指導もなく、また、請求人が自ら提出した本件各年分の所得税の確定申告書を提出する過程において、調査担当者が本件FX取引に係る確定申告は不要であるとの誤った指導をした事実もなく、所得金額及び納付すべき税額の算定は適法になされており、調査担当者の誤った指導により不利益を与えたとする事実もない。調査担当者が請求人に表示した重加算税についての見解において、請求人が主張するとおりの見解の表明が仮に一部にあったとしても、本件各賦課決定処分を行う前において、加算税の賦課決定についての権限ある者が決裁又は了解を与えているものではなく、調査担当者としての見解の表明にすぎない。
 原処分の理由は、上記争点1−1記載のとおりであり、単に金額が大きいことのみを理由に行われたものではない。

争点2 本件FX取引に係る本件スプレッド相当額は必要経費となるか否か。

請求人 原処分庁
 本件各FX取引先との本件FX取引においては、例えばE社の場合は、新規注文の時に1ドルにつき5銭程度のスプレッドが発生するので、本件FX取引に係る売買損益から必要経費として本件スプレッド相当額を差し引くべきである。
 平成18年分の本件各FX取引先に係る本件スプレッド相当額は、D社が○○○○円、E社が○○○○円及びF社が○○○○円で、合計○○○○円である。
 本件各FX取引先への照会に対する回答書及び本件各FX取引先のホームページからすると、本件各FX取引先の収益となるスプレッド及び取引手数料など請求人が負担すべき金額については、新規注文の時及び反対注文の時に各成立価格に含まれて売買損益の計算がされている。
 よって、請求人が主張する本件スプレッド相当額を、必要経費として売買損益から更に差し引くことには理由がない。

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