別紙2

当事者の主張

原処分庁 請求人
 本件債権放棄による債務免除は、次のとおり、法人税法施行令第117条第4号に規定する「前3号に掲げる事実に準ずる事実」には当たらないことから、法人税法第59条第2項に規定する要件を満たしていないため、本件欠損金額を損金の額に算入せずに行われた原処分は適法である。  本件債権放棄による債務免除は、次のとおり、法人税法施行令第117条第4号に規定する「前3号に掲げる事実に準ずる事実」に当たり、法人税法第59条第2項に規定する要件を満たしていることから、本件欠損金額を損金の額に算入せずに行われた原処分は違法であり、その全部を取り消すべきである。
1 法人税法第59条第2項の規定は、法人が、民事再生法の規定による再生手続開始の決定があったことその他これに準ずる政令で定める事実が生じた場合において適用されるものであり、法人が債務免除を受ける場合においては、その債務免除を受けなければいけないような事由が客観的にも認められるような状態、すなわち当該法人が経営危機に陥っているような状況を要し、一般的には、当該法人が債務超過の状態にあることなどから資金繰りがひっ迫しているような状況をいうものと考えられる。
 しかしながら、本件債権放棄による債務免除を受けた時点において、請求人は、資金繰りがひっ迫しているような状況にあったとはいえず、そもそも法人税法第59条第2項の適用の前提となる経営危機の状態に陥っていたとは認められない。
1 本件債権放棄による債務免除を受けた時点において、請求人は、確かに経営の危機という状況にはなかったが、このまま債務超過の状態を放置するといずれは会社が成り立たなくなることは目に見えていた。もし本件債権放棄による債務免除がなければ、売上げは減少し続け、倒産の危機に陥っていた。
2 請求人は、本件債権放棄による債務免除を受けるに当たり、債権者委員会等を開催せず、Aらと同様に請求人に対して債権を持つJ銀行等の債権者に請求人の再建を図る相談及び本件債権放棄に関する通知等を一切行っておらず、Aらの親族によって成立する本件臨時株主総会を開催し、出席者であるAらのみによって債権放棄を実行している。
 したがって、本件債権放棄による資産の整理は、し意的であるといわざるを得ない。
 また、請求人は、本件債権放棄による債務免除に当たり、具体的な再建の計画を立案しておらず、本件債権放棄の額が合理的な基準によるものでもなく、本件債権放棄による債務免除は、単に新規事業及び本店移転のための本件融資を得ることを目的としたものであり、経済的合理性を有していたものとは認められない。
 以上のことから、本件債権放棄による債務免除は、本件基本通達12-3-1の(3)に定める要件を満たしておらず、法人税法施行令第117条第4項に規定する「前3号に掲げる事実に準ずる事実」にも当たらないことから、法人税法第59条第2項の規定に該当しない。
2 請求人は、本件債権放棄により累積欠損金を解消できるので、本件臨時株主総会を開催し、Aらに債権放棄を要請することを決議した。
 また、Aらに対する債務額が、請求人の債務合計額の過半額を超えており、整理解消すべき累積欠損金をも超えていることから、あえて債権者集会は開かず、J銀行等他の債権者への債権放棄の相談、要請を行わなかったものである。
 したがって、本件債権放棄の要請を行うこととした決定には、し意性がない。
 また、請求人は、請求人の経営について改善が必要な問題点及びその改善方法が具体的に示してある本件経営改善計画書をE銀行P支店に提出している。
 なお、請求人の今後の事業の継続に著しい支障となるおそれのある累積した欠損金の解消は、請求人のかねてからの課題の一つで、新規事業、本店移転等の計画がなくとも、早急に処理すべき事項であった。
 そのため、請求人の累積欠損金の問題解消の時期と新規事業等の時期とがたまたま同じになったもので、本件債権放棄の目的は、資産の整理(債務超過の解消)による経営の健全化であり、本件融資を受けることが目的だったのではない。
 したがって、本件債権放棄による債務免除に係る資産の整理は、その内容に合理性がある。
 以上のことから、本件債権放棄による債務免除は、本件基本通達12-3-1に即しており、法人税法施行令第117条第4項に規定する「前3号に掲げる事実に準ずる事実」に当たり、法人税法第59条第2項の規定に該当する。

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