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(平21.6.24、裁決事例集No.77 303頁)

《裁決書(抄)》

1 事実

(1) 事案の概要

 本件は、審査請求人(以下「請求人」という。)が、請求人の役員が請求人に対する債権を放棄したことによって債務の免除を受け、当該債務免除の額を益金の額に算入するとともに、法人税法(平成18年法律第10号による改正前のもの。以下同じ。)第59条《会社更生法等による債務免除等があった場合の欠損金の損金算入》第2項の規定により計算した欠損金額を損金の額に算入したことについて、原処分庁が、当該債権放棄による債務免除は、法人税法施行令(平成18年政令第125号による改正前のもの。以下同じ。)第117条《再生手続開始の決定に準ずる事実等》各号に規定する事実に当たらないとして法人税の更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分を行ったのに対し、請求人がその認定に違法があるとして同処分等の全部の取消しを求めた事案である。

(2) 審査請求に至る経緯

イ 請求人は、平成16年10月1日から平成17年9月30日までの事業年度(以下、「本件事業年度」といい、請求人の各事業年度について「平成17年9月期」のようにいう。)の法人税について、青色の確定申告書に所得金額を○○○○円及び納付すべき税額を○○○○円と記載して法定申告期限までに申告した。
ロ 原処分庁は、これに対し、原処分庁所属の調査担当職員(以下「調査担当職員」という。)の調査に基づき、平成20年7月4日付で所得金額を○○○○円及び納付すべき税額を○○○○円とする更正処分(以下「本件更正処分」という。)並びに過少申告加算税の額を○○○○円とする賦課決定処分をした。
ハ 請求人は、これらの処分を不服として平成20年9月1日に審査請求をした。

(3) 関係法令等

 関係法令等の要旨は、別紙1のとおりである。

(4) 基礎事実

イ 請求人は、○○の販売等を目的として昭和58年12月○日に設立された資本金10,000,000円の法人税法第2条《定義》第10号に規定する同族会社である。
ロ 請求人の役員には、代表取締役にAが、監査役にAの母であるBが平成16年11月○日にそれぞれ就任している。
 なお、Aの父であるCは、昭和58年12月○日に請求人の代表取締役に就任し、平成16年11月○日に代表取締役を辞任した後も、取締役として、また、同兄であるD(以下、A、B、C及びDを併せて「Aら」という。)は、昭和61年11月○日に請求人の取締役に就任してそれぞれ現在に至っている。
ハ 請求人の平成17年5月25日現在における発行済株式数は200株であり、その株式の保有状況は、Cが102株、Bが54株、Dが40株及びその他の者2名が2株ずつとなっている。
ニ 請求人は、E銀行P支店に平成17年8月10日作成の経営改善計画書(以下「本件経営改善計画書」という。)を提出している。
ホ Aらは、平成17年9月1日付「債権放棄の通知」と題する書面により、請求人に対する債権のうち、Aは3,000,000円、Cは4,500,000円、Bは4,500,000円及びDは3,000,000円の合計15,000,000円をそれぞれ放棄する(以下「本件債権放棄」という。)旨請求人に通知したため、請求人は、本件債権放棄による債務免除を受けた。
ヘ 請求人は、本件事業年度の法人税について、債務免除益15,000,000円を益金の額に算入するとともに、本件債権放棄による債務免除は、法人税法施行令第117条第4号に規定する「前3号に掲げる事実に準ずる事実」に当たるとして、法人税法第59条第2項の規定に基づき、本件事業年度前の事業年度において生じた欠損金額のうち12,179,794円(以下「本件欠損金額」という。)を損金の額に算入した。

(5) 争点

 本件債権放棄による債務免除は、法人税法施行令第117条第4号に規定する「前3号に掲げる事実に準ずる事実」に該当するか否か。

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2 主張

 当事者の主張は、別紙2のとおりである。

3 判断

(1) 認定事実

 請求人提出資料、原処分関係資料及び当審判所の調査の結果によれば、次の事実が認められる。
イ 請求人の平成13年9月期から本件事業年度までの法人税の確定申告書に添付された貸借対照表によれば、資産・負債の状況は、別表1のとおりであり、平成13年9月期から平成16年9月期までのいずれの事業年度も貸借対照表上は、いわゆる債務超過の状態にあった。
ロ 請求人の平成13年9月期から本件事業年度までの法人税の確定申告書に添付された「借入金及び支払利子の内訳書」には、別表2のとおり、各期末における借入先ごとの借入金残高が記載されている。
ハ 平成17年5月25日に開催された請求人の臨時株主総会(以下「本件臨時株主総会」という。)の議事録には、請求人が早急に対処すべき課題の一つとして、財務健全化の必要性があることから、未処理損失金15,000,000円余の解消のためAらに対し具体的に金額を示し、合計15,000,000円の債権の放棄(免除)を要請することを諮ったところ、出席者全員が賛成したのでこれを承認可決した旨記載されている。
ニ 請求人が当審判所に提出した「債権放棄(免除)のお願い」と題する書面(以下「本件お願い文書」という。)には、本件臨時株主総会において、請求人の債務超過(未処理損失金約15,039,000円)処理のためAらに対して債権放棄の要請を行うことを決議したので、放棄(免除)の通知をお願いする旨記載されている。
ホ 請求人のAらからの借入金は、平成17年8月31日現在、Aが3,237,512円、Cが4,522,110円、Bが5,250,952円及びDが3,292,857円の合計16,303,431円(以下「本件借入金」という。)である。
 なお、請求人の本件事業年度の総勘定元帳には、平成16年10月28日から平成17年5月12日までの期間において、請求人からCに対し150,000円、Bに対し1,195,000円の合計1,345,000円などの借入金の返済を行ったことが記載されている。
ヘ 平成20年6月6日に実施された調査担当職員によるE銀行P支店に対する調査において、同支店の次長Fは、当該職員に対して、「請求人は新規に開拓した取引先である」旨応答している。
ト 本件経営改善計画書の「改善が必要な問題点」欄には、財務面の長期借入金について、金融機関の借入先はJ銀行のみであるが、役員等からの借入れが約17,455,000円あり、債務超過の状態となっている旨、また、当該問題点に対する「具体的な改善方法」欄には、税理士と相談の上、請求人の役員等からの借入れは株主総会決議を受けてAらに対し債権放棄を要請した結果、全員から同意を得たので、本件事業年度の決算において本件債権放棄に係る債務免除益を計上し、債務超過の状態は解消される旨がそれぞれ記載されている。
チ E銀行P支店の平成17年8月4日付「『収支兼キャッシュフロー計画表』の見込額算出根拠」と題する書面には、「17年9月期」欄に、特別利益(約17,455,000円)について、役員等からの借入れを本件事業年度に債権放棄による債務免除を受けることにより、請求人は債務免除益を計上するものである旨記載されている。
リ E銀行P支店の平成17年8月22日付「融資事前協議書」と題する書面(以下「本件融資事前協議書」という。)には、「申込人」欄に請求人、「申込金額」欄に30,000,000円、営業店意見の「担当・役席意見」欄には、競売物件購入及び新店舗移転に伴う運転資金の申込みであり、本件経営改善計画書のとおり、今後は売上げも回復する旨記載され、余白に本件事業年度の決算で、役員からの借入金を債権放棄による債務免除を受けて、債務超過の状態を解消することと記載されている。
 また、営業店意見の「店長意見」欄には、純新規先、競売物件購入費等としての申請で、将来性もあり、是非、支援したい旨記載されている。
ヌ E銀行P支店長が○○信用保証協会G支所を名あて人とした平成17年10月18日付「請求人案件の補足説明」と題する書面(以下「本件補足説明」という。)には、今後の方針の項目に債務超過の状態については、固定負債(J銀行、役員等からの借入金)が主要因であるが、本件債権放棄による債務免除を受けることにより、繰越損失がなくなり、債務超過の状態は解消する旨記載されている。
ル 請求人は、平成17年10月21日にE銀行P支店から、証書貸付22,000,000円と代理業務貸付11,000,000円との合計額33,000,000円の融資(以下「本件融資」という。)を受けている。
ヲ 請求人は、平成17年○月に、次のとおり、競売事件に係る入札により、P市p町○番○の宅地ほか6筆の土地及び同所○番地家屋番号○の工場ほか1棟の建物(以下、土地建物を併せて「本件競売物件」という。)を競落している。
(イ) 本件競売物件は、平成17年○月○日に○○地方裁判所(以下「○○地裁」という。)裁判所書記官名により期間入札の公告がされたものであり、請求人は、平成17年○月○日付で入札価額○○○○円の入札書を○○地裁執行官あてに提出している。
 なお、当該入札に係る保証の額は○○○○円であり、請求人は、平成17年○月○日にE銀行P支店から3,370,000円の手形融資を受け、同支店からH銀行P支店の○○地裁名義口座に○○○○円を振り込んでいる。
(ロ) 請求人は、○○地裁裁判所書記官名により平成17年○月○日付で、請求人を買受人とする売却許可決定が確定した旨、及び納付すべき代金の額を○○○○円としてその納付期限を平成17年○月○日と定める旨記載された代金納付期限通知書を受領している。
 なお、請求人は、平成17年10月21日にE銀行P支店から受けた融資額33,000,000円の中から、同日に納付すべき代金の額○○○○円を同支店からH銀行P支店の○○地裁名義口座に振り込んでいる。
ワ 請求人の前代表取締役であるCは、当審判所に対し、要旨次のとおり答述した。
(イ) J銀行からの借入れに対する返済は、滞ったり返済ができない状況ではなく、また、仕入先への支払については、一部5か月のクレジットを組んで支払っていたので、滞ることはなかった。
(ロ) 請求人は、弁済期の到来した債務に対する支払について、役員からの借入れにより支払っていたので、破産の危機にあったとか、事業の継続に著しい支障を来たしたこともなかった。
(ハ) 請求人がAらに対し債権放棄を要請した金額を15,000,000円と算定した根拠は、請求人の帳簿上の累積欠損金の額とAらの請求人に対する債権額とがほぼ同額であり、15,000,000円の債権放棄を要請することで当該累積欠損金を整理できたからである。それ以外の理由はない。
(ニ) 請求人がAらに対して債権放棄を要請したのは、このまま債務超過の状態を放置するといずれは会社が成り立たなくなることや長年の懸案であった累積債務の解消のためである。
 また、本件債権放棄により債務免除を受けたのは、金融機関から融資を受けることを目的にしたためではなく、あくまでも請求人の経営の健全化のためにしたことであり、本件債権放棄の内容に合理性はあると思っている。
(ホ) 請求人が債権者集会を開催しなかった理由は、開催することにより取引先と取引できなくなり、請求人が事業継続できなくなることを心配したためである。
(ヘ) 請求人は、本件債権放棄による債務免除のための手続として、役員であり債権者でもあるAらに対し、本件臨時株主総会において請求人に対する債権の放棄を要請することを決議し、平成17年7月1日に本件お願い文書を作成し、同年9月1日に債権を放棄する旨の通知を受けたが、J銀行や仕入先には債権放棄についての相談、通知は行っていない。
(ト) 請求人は、このまま債務超過の状態が続けば倒産の危機にあったものの、再建計画書というものは作成しておらず、本件経営改善計画書があるだけである。
 本件経営改善計画書は、E銀行P支店の担当者に請求人の決算書等を提示し、Aが当該担当者に説明したものを基に当該担当者によってE銀行の所定の様式により作成されたものである。
(チ) 請求人の資金が足りないときは、Aらから借り入れていた。Aらに借入れや返済を繰り返した結果、借入金額が累積して債務超過となった。

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(2) 法令等解釈

イ 法人税法施行令第117条第1号から第3号までに規定する各事実は、いずれも法律によりその手続が定められているもので、その債務者の全資産を対象にすべての債権者に対して公正な弁済が行われるよう裁判所が関与して行われるものであるから、同条第4号に規定する「前3号に掲げる事実に準ずる事実」とは、債務超過に陥った債務者について、上記の手続に準じ、すべての債権者に対して公正な弁済が行われることが保障されているものに限られると解すべきである。
ロ また、上記のような解釈から、法人税基本通達(以下「本件基本通達」という。)12-3-1《再生手続開始の決定に準ずる事実等》は、行政官庁又は金融機関のあっせん等による資産の整理で旧商法の規定による会社の整理等と同様のもの、あるいは、債権者集会等で定められた資産の整理であっても、多数の債権者によって協議の上決められる等その決定にし意性がなく、その債務免除等の内容が一定の計画のもとに合理的に定められているようなものは、法人税法施行令第117条第4号に該当するが、単に債権者等との私的な協議による債務免除等は、同条第4号に該当しない旨を明らかにしたものと解されるところ、この取扱いは当審判所においても相当と認められる。

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(3) これを本件についてみると、次のとおりである。

イ 請求人は、平成17年5月25日の本件臨時株主総会において、本件債権放棄の要請を行うこととした決議により、平成17年9月1日に本件債権放棄による債務免除を受けているところ、確かに、上記(1)のイのとおり、請求人は、平成13年9月期から本件債権放棄による債務免除を受けた本件事業年度の前事業年度までの期間において、貸借対照表上は債務超過の状態にあったと認められる。
 また、上記(1)のハのとおり、本件臨時株主総会の議事録には、本件債権放棄は請求人の財務健全化の必要性があることから、未処理損失金15,000,000円余を解消するためにAらに請求人に対する債権の放棄を要請する旨、及び上記(1)のニのとおり、本件お願い文書には、債務超過(未処理損失金約15,039,000円)処理のため請求人に対する債権の放棄をお願いする旨それぞれ記載され、さらに、上記(1)のワの(ニ)のとおり、請求人の前代表取締役であるCは、請求人の債務超過の状態を放置すれば、いずれ請求人は成り立たなくなるため、累積債務の解消は長年の懸案であった旨答述していることから、本件債権放棄による債務免除は、請求人を再建するために行われたともうかがえる。
ロ しかしながら、上記(1)のハの本件臨時株主総会の議事録によると、本件債権放棄の対象は本件借入金のみであり、J銀行からの借入金及び買掛金等の営業債務については債権放棄されていないと認められること、及び請求人の再建に向けた具体的な事業計画等に関する事項に係る記載は認められないこと、また、上記(1)のワの(ホ)から同(ト)までのCの答述によれば、請求人において、再建計画書は作成されていないこと、本件債権放棄に当たって債権者集会は開催していないこと、並びにJ銀行及び仕入先には、本件債権放棄による債務免除についての相談、通知は行っていないことが認められる。
 そうすると、請求人は、本件臨時株主総会において、本件債権放棄をAらに要請することを決議しただけで、本件借入金以外の借入金及び買掛金などの営業債務に係る債務額の整理に関する事項並びに請求人の再建に向けた具体的な事業計画等に関する事項について債権者集会で協議を行うなど、上記(2)のロの本件基本通達に定める、法律等の定めに準じた一連の手続等は行われていないと認められる。
ハ また、上記(1)のワの(イ)及び同(ロ)のとおり、Cは、請求人においてそれまでにJ銀行からの借入金の返済及び仕入先に対する支払が滞るなど、請求人が破産の危機にあったとか、事業の継続に著しい支障を来たすような状況にはなかったと答述していること、及び請求人において本件事業年度の直前期末における借入金22,855,532円の約76%を占める本件借入金の債権者であるAらから本件債権放棄の直前までに一括返済を迫られるなど請求人の経営を圧迫するような事態が発生した事実も認められないことから、請求人は、本件債権放棄による債務免除を受けた直前の平成16年9月期の事業年度末において、貸借対照表上、債務超過の状態にはあるものの、事業経営が成り立たなくなるほどの経営の危機に陥っている状態ではなかったと認められる。
 さらに、上記(1)のホのとおり、本件債権放棄の直前に請求人がAらからの借入金の一部返済(1,345,000円)を行ったとはいえ、それは平成16年9月期におけるAらからの借入金残高17,455,532円の約8%にすぎず、上記(1)のワの(チ)のCの答述によると、本件借入金については定期、定額の返済は行われていなかったと認められ、本件債権放棄による効果は、請求人の資金繰りにはほとんど影響がないことからすると、請求人も自認しているように、請求人があえてAらに対して債権放棄の要請という手段を早急にとらなければ、請求人は、債務超過の状態によって倒産するという状況にあったとは認められない。
ニ なお、請求人は、貸借対照表上、債務超過の状態にありながらも、上記(1)のヘから同ヲまでのとおり、E銀行P支店から融資を受けて、○○地裁から本件競売物件を取得していることが認められる。
 そして、E銀行P支店の請求人に対する本件融資について、上記(1)のトから同ルまでのとおり、平成17年8月4日付E銀行P支店作成の収支兼キャッシュフロー計画表、本件経営改善計画書、本件融資事前協議書及び本件補足説明には、本件債権放棄により請求人の債務超過の状態が解消される旨それぞれ記載されていること、上記(1)のへのとおり、請求人は、E銀行P支店が新規開拓した取引先であることが認められること、上記(1)のリのとおり、E銀行P支店長は、本件融資事前協議書に請求人は将来性もあり、是非、支援したいと記載していることからみると、E銀行P支店は、本件競売物件の取得及び新店舗移転に伴う運転資金を必要とした請求人に本件融資を実行するために、貸借対照表上、債務超過の状態の解消を求めていたとみるのが相当である。
 そうすると、請求人は、本件競売物件の取得等に係る資金として本件融資を受けるには、E銀行P支店からの求めに応じて債務超過の状態を解消する必要があったことから、請求人の財務内容を表面上改善するためにAらに本件債権放棄の要請を行ったものと認めるのが相当である。
ホ 以上のとおり、本件債権放棄による債務免除は、多数の債権者によって協議の上決められたものでなく、単に請求人とAらとの間における私的な協議によって決定され、その内容が一定の計画のもとに合理的に定められたものではないと認められることから、法人税法施行令第117条第4号に規定する「前3号に掲げる事実に準ずる事実」に当たらず、本件欠損金額について法人税法第59条第2項の適用はできないとして、原処分庁がした本件更正処分は、適法である。
 したがって、請求人の主張には理由がない。
ヘ なお、請求人は、本件借入金が請求人の債務合計額の過半額及び整理解消すべき累積欠損金を超えていたことから、あえて債権者集会は開かず、他の債権者への相談、要請を行わなかったものであり、本件債権放棄の要請を行うこととした決定についてし意性がなく、また、本件債権放棄による債務免除は、融資を受けることが目的ではなく、債務超過の状態の解消による経営の健全化が目的であるから、その内容に合理性がある旨主張する。
 しかしながら、本件債権放棄による債務免除は、上記ニのとおり、1本件債権放棄による債務免除の効果は請求人の財務内容が表面上改善されただけのものであること、上記(1)のワの(ホ)のとおり、2請求人は、請求人の事業継続に支障が生じることから債権者集会は開催しなかったと認められること、そして、上記ホのとおり、3本件競売物件の取得に係る本件融資を受けるために行われた請求人とAらとの間における私的な協議による債務免除と認められるのであるから、この点に関する請求人の主張には理由がない。

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(4) 過少申告加算税の賦課決定処分について

 上記(3)のとおり、本件更正処分は適法であり、また、同更正処分により納付すべき税額の計算の基礎となった事実が更正処分前の税額の計算の基礎とされていなかったことについて、国税通則法第65条《過少申告加算税》第4項に規定する正当な理由があるとは認められないから、同条第1項及び第2項の各規定により過少申告加算税の賦課決定をした原処分は適法である。

(5) 原処分のその他の部分については、請求人は争わず、当審判所に提出された証拠資料等によっても、これを不相当とする理由は認められない。

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