(平22.1.19、裁決事例集No.79)

《裁決書(抄)》

1 事実

(1) 事案の概要

 本件は、審査請求人(以下「請求人」という。)の所得税並びに消費税及び地方消費税について、原処分庁が、請求人が金属スクラップの売却等に係る収入金額の一部を事業所得の金額の計算上総収入金額に算入しなかったことは隠ぺい行為に基づくものであるとして、重加算税の各賦課決定処分を行ったのに対し、請求人が、原処分庁の認定には誤りがあるとして、同処分の全部の取消しを求めた事案である。

(2) 審査請求に至る経緯

イ 平成17年分、平成18年分及び平成19年分(以下、これらを併せて「本件各年分」という。)の所得税について、審査請求(平成21年4月6日請求)に至る経緯及び内容は、別表1のとおりである。
 なお、以下、平成20年11月11日付でされた本件各年分の所得税の重加算税の各賦課決定処分(平成19年分については平成21年3月9日付でされた異議決定により一部が取り消された後のもの)を「本件所得税重加算税各賦課決定処分」という。
ロ 平成18年1月1日から平成18年12月31日まで及び平成19年1月1日から平成19年12月31日までの各課税期間(以下、「平成18年課税期間」及び「平成19年課税期間」といい、これらを併せて「本件各課税期間」という。)の消費税及び地方消費税(以下「消費税等」という。)について、審査請求(平成21年4月6日請求)に至る経緯及び内容は、別表2のとおりである。
 なお、以下、平成20年11月11日付でされた本件各課税期間の消費税等の重加算税の各賦課決定処分(平成19年課税期間については平成21年3月9日付でされた異議決定により一部が取り消された後のもの)を「本件消費税等重加算税各賦課決定処分」という。

(3) 基礎事実

イ 請求人の事業等
(イ) 請求人は、P市Q町○丁目○番○号所在の事業所において、金属スクラップの卸売業及び産業廃棄物収集運搬業を営んでいる。
(ロ) 本件各年分における請求人の事業に係る収入は、N社及びG社などに対する金属スクラップの売却収入並びに事業所等から排出される産業廃棄物等の収集運搬収入である。
ロ 請求人の提示書類
 請求人及び請求人の子かつ事業専従者であるHが、原処分に係る調査(以下「本件調査」という。)において、本件調査の担当者(以下「本件調査担当者」という。)に対し、本件各年分に係る帳簿書類として提示したのは、次の書類のみであった。
(イ) N社が請求人に対して発行した仕切書(平成19年1月及び同年11月の2か月分の収入に係るもの)及びN社が請求人からの仕入金額等を記録した補助元帳の写し(平成19年2月から同年10月までの各月及び同年12月の10か月分の収入に係るもの)
(ロ) N社に売却した金属スクラップの仕入れに係る平成19年1月から同年12月までの仕切書の控え
(ハ) 平成19年分の仕入れ以外の必要経費に係る領収証
(ニ) 平成19年分の所得税の青色申告決算書に記載した収入金額及び仕入金額の内訳を記載した大学ノート
(ホ) 本件各年分の「産業廃棄物処理管理票(マニフェスト)」(以下「マニフェスト」という。)

(4) 争点

 隠ぺい又は仮装があったか否か。

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2 主張

原処分庁 請求人
 請求人には、次のとおり、隠ぺいがあった。
(1) 請求人は、確定申告書の作成をHに任せていたところ、同人は、平成18年分及び平成19年分の各青色申告決算書の作成に当たり、G社に対する金属スクラップの売却収入について、金属スクラップを売却する都度、G社が計量に際して作成する計量伝票を廃棄した上で、事業所得の金額の計算上総収入金額に算入せず、また、本件各年分の産業廃棄物等の収集運搬収入についても、事業所得の金額の計算上総収入金額に算入していない上、本件調査において、請求書の控えを提示しなかった。
 さらに、Hは、平成17年分及び平成18年分の所得税に係る事業所得の金額の計算に必要な帳簿書類を本件調査において、一切提示しなかった。
 請求人には、次のとおり、隠ぺいはなかった。
(1) 請求人は、G社に対する金属スクラップの売却収入及び産業廃棄物等の収集運搬収入については、計量伝票や請求書の控えなどの保存の重要性を認識していなかったため、これらの書類を確定申告書の作成前に誤って処分してしまい、事業所得の金額の計算上総収入金額に算入することを失念したものである。
 また、Hは、平成17年分及び平成18年分の事業所得の金額の計算の基となった帳簿書類を保存するという重要性を知らず、これを確定申告書提出後に誤って処分したため、本件調査において、提示することができなかったものである。
(2) Hは、本件調査において、本件調査担当者から具体的な指摘を受けるまでは、一貫して、売上先はN社のみである旨の虚偽の申述をした。 (2) 請求人及びHは、売上先はN社以外にもある旨申述しているし、また、N社以外の売上先の存在を明らかにするマニフェストも提出しており、虚偽の申述などしていない。

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3 判断

(1) 認定事実

 原処分関係資料及び当審判所の調査によれば、次の事実が認められる。
イ 所得税の申告の内容等
(イ) 請求人は、金属スクラップの各売却収入について、平成17年分のN社及びG社に対するものは、計算誤りの金額を除きその全部を、平成18年分のN社に対するものはその全部を、平成19年分のN社に対するものは消費税等相当額を除きその全部を、別表3のA欄、C欄及びE欄のとおり、本件各年分の事業所得の金額の計算上総収入金額に算入し、別表1の「確定申告(青色申告)」欄のとおり、それぞれ確定申告をした。
 請求人は、本件調査の結果に基づき、別表3のB欄、D欄及びF欄のとおり、本件各年分の事業所得の金額の計算上総収入金額に算入し、別表1の「修正申告」欄のとおり、それぞれ修正申告をした。
 なお、以下、別表3の2(G社)欄のD欄及びF欄並びに別表3の3(J社)欄のF欄の金属スクラップの各売却収入を「本件金属スクラップ収入」といい、別表3の「産業廃棄物等の収集運搬収入」欄の産業廃棄物等の各収集運搬収入を「本件産廃等収入」という。
(ロ) 請求人は、本件金属スクラップ収入に対応する仕入金額を、平成18年分及び平成19年分の確定申告において、事業所得の金額の計算上必要経費に算入せず、当該各年分の修正申告において、事業所得の金額の計算上必要経費に算入した。
ロ 事業専従者の業務への従事状況等
 H及び請求人の子であるKは、本件各年分において、請求人の事業専従者として、請求人の指示の下、請求人の業務の全般に従事していた(以下、HとKを併せて「本件各事業専従者」という。)。
 なお、請求人は、本件各年分において、請求人の確定申告書の作成に関する事務をHに任せていた。
ハ 請求人の取引形態等
(イ) 金属スクラップの売却取引
A N社との取引
 請求人とN社との取引は、請求人又は本件各事業専従者が鉄スクラップをN社に持ち込む都度、N社の担当者がこれを計量して計量伝票(鉄スクラップの種類別の重量が記載されたもの)を請求人あてに発行し、売却代金については月末締めで計算され、請求人又は本件各事業専従者が、翌月最初に鉄スクラップを持ち込んだ際に、前月分の売却代金をまとめて現金で受領するとともに、前月分の売却代金等が記載された仕切書又は補助元帳の写し(いずれも取引年月日、鉄スクラップの種類、重量、単価及び金額が記載されたもの)をN社から受け取るという形態であった。
B G社との取引
(A) 請求人とG社との取引は、請求人又は本件各事業専従者がステンレススクラップをG社に持ち込む都度、G社の担当者がこれを計量して計量伝票(ステンレススクラップの種類別の重量が記載されたもの)を発行するとともに、請求人又は本件各事業専従者が、売却代金を現金で受領し、併せて精算書(取引年月日、ステンレススクラップの種類、重量、単価及び金額が記載されたもの)をG社から受け取るという形態であった。
 なお、請求人は、G社との間で、本件各年分を通じて毎月2回程度、年間30回程度の取引を行っていた。
(B) 請求人とG社との取引は、本件調査が行われた平成20年9月時点においても継続しており、本件調査担当者は、請求人及びHに対し、平成20年分の取引に係る帳簿書類の提示を求めたが、請求人及びHは、G社から交付された計量伝票及び精算書を提示しなかった。
C J社との取引
 請求人とJ社との取引は、請求人の事業所において、請求人が銅スクラップをJ社に売却するという方法で行われ、J社の担当者が銅スクラップを計量し、請求人又は本件各事業専従者が売却代金を現金で受領し、併せて仕切書(取引年月日、銅スクラップの種類、重量、単価及び金額が記載されたもの)を受け取るという形態であった。
(ロ) 産業廃棄物等の収集運搬取引
A 請求人は、産業廃棄物収集運搬業者としてL県知事から許可を受け、本件各年分において、産業廃棄物等を排出する8事業所(別表3の5から12までの各欄の法人に係る事業所をいい、以下「本件各事業所」という。)からの委託を受け、本件各事業所から排出される産業廃棄物等を収集し、処分場に運搬していた。
 なお、請求人と本件各事業所との取引は、請求人が本件各事業所から連絡を受けることによりこれを受託し、請求人自らが作業を行うほか、本件各事業専従者に指示して作業を行わせていた。
B 本件各事業専従者は、上記Aの産業廃棄物等の収集運搬代金について、本件各事業所の月ごとの締日に合わせて、「産業廃棄物処理費」、「運搬費一式」等を品名として各代金を記載した請求書を作成し、本件各事業所に対して請求した。
 なお、上記請求書は市販の2枚複写のもの(請求書及び請求書の控えを1セットとする50セットのもの)であり、請求書を発行した場合には、その控えが請求人の手元に残るようになっていた。
C 請求人は、上記Aの産業廃棄物等の収集運搬代金の振込口座としてM銀行○○支店の請求人名義の普通預金口座(口座番号○○○○。以下「本件振込口座」という。)を本件各事業所に対して指定し、当該代金のほとんどを本件振込口座への振込みにより受領していた。
 なお、本件各年分において、産業廃棄物等の収集運搬代金を本件振込口座への振込みにより受領した金額の割合は、平成17年分が約91%、平成18年分が100%、平成19年分が約96%である。
D 請求人は、本件振込口座に係る預金通帳を保管していた。
E Hは、平成20年9月9日、平成20年分の産業廃棄物等の収集運搬代金に係る請求書の控え(同年1月から同年8月までの取引に係るもの)を本件調査担当者に提示した。
ニ 帳簿書類の保存等
 Hは、本件各年分の請求人の事業に関し、日々の取引を継続的に記録した帳簿を作成していないところ、請求人及びHは、事業所得の金額の計算上必要となる次の各書類について、本件各年分の各確定申告前に処分していた。
(イ) 平成18年分及び平成19年分のG社に対するステンレススクラップの売却収入に係る精算書
(ロ) 平成19年分のJ社に対する銅スクラップの売却収入に係る仕切書
(ハ) 本件産廃等収入に係る請求書の控え
(ニ) 本件金属スクラップ収入に対応する仕入れの仕切書の控え

(2) 判断

イ 関係法令及び法令解釈
 国税通則法(以下「通則法」という。)第68条《重加算税》第1項は、同法第65条《過少申告加算税》第1項の規定に該当する場合において、納税者がその国税の課税標準等又は税額等の計算の基礎となるべき事実の全部又は一部を隠ぺいし、又は仮装し、その隠ぺいし、又は仮装したところに基づき納税申告書を提出していたときは、当該納税者に対し、過少申告加算税に代え、重加算税を課する旨規定している。
 そして、「事実を隠ぺいした」とは、課税標準等又は税額等の計算の基礎となる事実を隠ぺいしあるいは故意に脱漏したことをいい、また、「事実を仮装した」とは、所得、財産あるいは取引上の名義等に関し、あたかも、それが真実であるかのように装うなど、故意に事実をわい曲したことをいうと解するのが相当である。
ロ 本件金属スクラップ収入について
(イ) 上記(1)のハの(イ)のとおり、請求人の金属スクラップの売却収入について、請求人は、N社については同社が1か月分の取引をまとめて作成した仕切書又は補助元帳の写しを、G社については同社が取引の都度作成した精算書を、J社については同社が取引の際に作成した仕切書を各取引先から受け取っているところ、これらの書類には、取引年月日や取引金額等が記載されているのであるから、請求人は、これらの書類を基にすれば、本件金属スクラップ収入の金額を計算することが可能であったものと認められる。
(ロ) この点、Hは、当審判所に対し、N社との取引について、「N社の毎月送ってくる帳簿は、おやじが家の仏壇を置いているタンスの引き出しに入れていました。N社は帳簿を毎月送ってきますので、それを基に申告しました。」旨答述しているところ、上記1の(3)のロの(イ)及び上記(1)のハの(イ)のAの各事実に照らせば、請求人が保存していた「N社の毎月送ってくる帳簿」とは、請求人がN社から鉄スクラップの売却代金を受領する際に併せて交付を受けた仕切書と補助元帳の写しであると認められる。
 そして、上記(1)のイの(イ)のとおり、請求人は、本件各年分のN社に対する鉄スクラップの売却収入について、平成17年分につき計算誤り、平成19年分につき消費税等の処理について税込経理方式を選択しているにもかかわらず、消費税等相当額を減算した計算誤りがあったものの、すべてについて申告していること、上記1の(3)のロの(イ)のとおり、請求人及びHが、本件調査担当者に対し、平成19年分の取引に係る仕切書又は補助元帳の写しを提示したこと、Hが当審判所に対して、N社に対する収入金額について、「手元にあるN社の帳簿を集計した。」旨答述していることからすると、請求人及びHは、N社から交付された仕切書又は補助元帳の写しを本件各年分の各確定申告書を作成するまでは適切に保存し、これを基にN社に対する鉄スクラップの売却に係る収入金額を計算したものと認められる。
(ハ) また、Hは、本件調査において、本件調査担当者に対し、G社との取引について、「計量した時に作られた伝票の控えを受け取っていますが、伝票は、N社のように保存せず、持って帰ったらすぐに捨てています。G社にはステンレスを売っているのですが、これについては実は仕入れがあります。その仕入れは何人かの個人から現金で買っていますが、仕切書も作ってないし、領収書ももらえず名前が出せないものなので申告しませんでした。もし、売上げだけだせば税金がものすごく高くなるので、仕入れが申告できず仕方なくのことです。」旨申述しているところ、Hは、平成18年分及び平成19年分の確定申告において事業所得の金額の計算上、G社に対するステンレススクラップの売却に係る収入金額を総収入金額に算入せず、かつ、当該収入に対応する仕入金額を必要経費に算入していない理由を具体的かつ詳細に申述していること、上記申述内容は自然であり、かつ、父親である請求人にとって不利益なものであること、Hは、上記申述が録取された「聴取書」の末尾に「以上のとおり間違いありません。」と自ら記載し、署名押印していることからすると、上記申述は信用できる。
 これに対して、Hは、当審判所に対して、伝票を持って帰ったらすぐ捨てるとの上記申述については、「そのようなことは言っていません。G社から受け取った計量伝票は、後で整理しようと思い、車の中や事務所の机の上に置いていたが、申告のときには無くなっていました。」旨答述するが、金属スクラップの売却収入を適正に申告するためには、取引先から交付される書類の保存が不可欠であること、上記(ロ)のとおり、N社に対する鉄スクラップの売却収入については、仕切書又は補助元帳の写しを保存することにより、すべての取引に係る収入が申告されていることからすると、Hが、G社に対するステンレススクラップに係る収入について申告する意思があったとすれば、交付された書類を紛失しやすい車の中や机の上に放置するということ自体考え難く上記答述は信用できない。
 以上からすると、請求人及びHは、G社に対するステンレススクラップの売却収入について、当初から申告する意思はなかったものと認められ、G社から精算書の交付を受けた直後、その都度、その精算書を廃棄していたものと認めるのが相当である。
(ニ) また、J社との銅スクラップの売却取引は、上記(1)のハの(イ)のCのとおりであり、その収入金額は、別表3の3欄のF欄の金額であるところ、当審判所の調査によれば、請求人及びHは、本件調査において、1本件調査担当者が調査により把握した取引先を明らかにするまでは、金属スクラップの売却先はN社以外にはない旨の申述を繰り返し、具体的な取引先を申述しなかったこと、2本件調査担当者が具体的に「J社」の名称を出して取引の有無を確認して初めて、J社との取引があったことを認めたものの、その後も、ここ数年はJ社とは取引をしていない旨申述したことが認められ、このような請求人及びHの態度からすれば、請求人及びHは、J社に対する銅スクラップの売却収入についても、G社に対する収入と同様に、当初から申告する意思はなかったものと認められる。
 そして、上記(ハ)のとおり、G社から交付を受けた精算書を廃棄していたと同様に、請求人又はHは、J社から仕切書の交付を受けた直後、その仕切書を廃棄していたものと認められる。
(ホ) 以上から、請求人及びHは、本件金属スクラップ収入について、当初から申告する意思がなく、平成18年分及び平成19年分の各確定申告前において、本件金属スクラップ収入に係る精算書及び仕切書を廃棄していたものと認められる。
ハ 本件産廃等収入について
(イ) 上記(1)のハの(ロ)のBのとおり、本件産廃等収入について、本件各事業専従者が本件各事業所あてに請求書を発行し、その控えが請求人の手元に残ることからすると、請求人は、本件各年分について、請求書の控えを基にすれば、本件産廃等収入の金額を計算することが可能であったものと認められる。
(ロ) この点、Hは、本件産廃等収入を申告しなかった理由について、当審判所に対して、「申告書を作成する時には、請求書の控えが無くなっていたので、申告しませんでした。」と答述し、請求書の控えが無ければ、なぜ本件振込口座に係る通帳を確認しなかったのかという当審判所の質問に対して、「そこまで頭が回らなかったので、通帳は確認していません。」と答述する。
 しかしながら、請求人は、上記(1)のハの(ロ)のC及びDのとおり、本件産廃等収入のほとんどを本件振込口座への振込みにより受領していること、本件振込口座に係る預金通帳を請求人が保管していることからすると、仮に請求書の控えが無くなっていたとしても、確定申告書作成時点において、当該通帳を確認すれば、本件産廃等収入のほとんどを確認することが可能であることはだれでも容易に気付くことであり、申告する意思があったのであれば、本件各年分の3年分にわたり、頭が回らず通帳を全く確認しなかったというようなことは極めて不自然といえるから、Hの上記答述は信用できない。
 そもそもHは、本件調査担当者に対し、本件産廃等収入を申告しなかった理由について、「小口の収入については、まあ少ないのでしなくてもよいかというところもありました。」と申述していたのであり、当該申述内容は自然であり、かつ父親である請求人にとって不利益なものであることからすると信用できる。
 そうすると、請求人及びHが本件産廃等収入を申告しなかった理由は、単に申告する意思がなかったからと認められる。
(ハ) また、Hは、当審判所に対し、本件産廃等収入に係る請求書の控えが無くなった理由や時期について、「重要とは思っていなかったので、申告の前の年の12月の大掃除の時などに捨てたかも分かりません。」旨答述する。
 しかしながら、上記(1)のハの(ロ)のA及びBの各事実からすると、本件産廃等収入に係る請求書は、取引の実態に基づいて本件各事業専従者が作成しているもので、当該請求書の控えは、請求人の手元に残る唯一の書類である上、上記ロの(ロ)のとおり、請求人及びHは、N社から交付された仕切書又は補助元帳の写しを紛失しないように保管し、これを基にN社に対する鉄スクラップの売却収入を申告していることからすると、Hが本件産廃等収入に係る請求書の控えを重要と思っていなかったとは到底考えられず、重要と思っていなかったので捨てたという上記答述は信用できない。
 そうすると、請求人及びHは、請求書の控えをその重要性を認識した上で捨てるなどの処分をしたと認められる。
(ニ) 上記(ロ)及び(ハ)からすると、請求人及びHは、当初から申告する意思がなく、本件各年分の各確定申告前において、本件産廃等収入に係る請求書の控えを廃棄していたものと認められる。
ニ まとめ
 上記ロ及びハのとおり、請求人及びHは、本件金属スクラップ収入に係る精算書及び仕切書並びに本件産廃等収入に係る請求書の控えを本件各年分の各確定申告前に故意に廃棄していたのであるから、請求人は、これにより、これらの収入の事実を隠ぺいしたものと認められる。
ホ 請求人の主張
(イ) 請求人は、上記2の「請求人」欄の(1)のとおり主張するが、上記ニのとおり、同人はこれらの書類を故意に廃棄していたものと認められるから、この点に関する請求人の主張には理由がない。
(ロ) 請求人は、上記2の「請求人」欄の(2)のとおり主張するが、当審判所の調査によれば、平成20年9月9日の第2回目の調査において、請求人及びHが本件調査担当者の求めに対し、マニフェストを提示したことは認められるが、同月2日の第1回目の調査時には、請求人及びHは、取引先はN社のみであると申述し、同月9日の調査時には、上記のとおり、マニフェストを提示したものの、そのマニフェストに関する産業廃棄物等の収集運搬に係る取引先及びN社以外の金属スクラップの売却に係る取引先について何ら申述せず、同月29日の調査時にも金属スクラップの売却に係る取引先はN社のみであると申述し、同年10月2日の調査時においても、本件調査担当者が調査により把握したその他の取引先を明らかにするまでは、請求人及びHは、金属スクラップの売却先はN社以外にはない旨の真実とは異なる申述を繰り返し、自ら具体的な取引先を申述しなかったことが認められるから、この点に関する請求人の主張には理由がない。
(ハ) 請求人は、本件各年分の所得税の修正申告に係る事業所得の金額の計算上、仕入れ等の一部を必要経費に算入していないため、当該修正申告に係る所得等の金額が過大であり、これを基礎として賦課決定された本件所得税重加算税各賦課決定処分は違法である旨主張する。
 しかしながら、修正申告に係る所得等の金額の過大は、更正の請求によらず主張することはできないから、賦課決定処分についても、更正の請求に係る争いとともに争う場合に限り、修正申告に係る所得等の金額の過大を理由として、処分の違法を主張できると解すべきところ、請求人は、本件審査請求において、重加算税の賦課決定処分のみを争っているのであるから、修正申告に係る所得等の金額の過大を理由として、同処分の違法を主張し、その取消しを請求することはできない。
 したがって、この点に関する請求人の主張には理由がない。

(3) 本件所得税重加算税各賦課決定処分

 請求人は、上記(2)のニのとおり、本件金属スクラップ収入及び本件産廃等収入を隠ぺいし、過少に計算した総収入金額を基に所得金額等を算定して確定申告書を提出していたことが認められるところ、以上の事実は、通則法第68条第1項に規定する重加算税の賦課要件を満たしているから、同項の規定に基づいて行われた本件所得税重加算税各賦課決定処分は適法である。

(4) 本件消費税等重加算税各賦課決定処分

 請求人は、上記(2)のニのとおり、本件金属スクラップ収入及び本件産廃等収入を隠ぺいし、過少に計算した総収入金額を基に消費税等の課税標準を算定して確定申告書を提出していたことが認められるところ、以上の事実は、通則法第68条第1項に規定する重加算税の賦課要件を満たしているから、同項及び地方税法附則第9条の9《譲渡割に係る延滞税等の計算の特例》第1項の規定に基づいて行われた本件消費税等重加算税各賦課決定処分は適法である。

(5) その他

 原処分のその他の部分については、請求人は争わず、当審判所に提出された証拠資料等によってもこれを不相当とする理由は認められない。

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